レビュー
「カプコン ファイティング コレクション」レビュー
幻の名作「ウォーザード」がついにプレイできる! カプコン珠玉の10タイトルがオンライン機能をひっさげて蘇る!!
2022年6月20日 12:00
- 【カプコン ファイティング コレクション】
- 6月24日 発売予定
- 価格:
- 4,990円(ダウンロード版)
- 5,489円(PS4/Switch パッケージ版)
- 6,990円(ファイティング レジェンズ パック)
- 7,689円(PS4/Switch パッケージ版ファイティング レジェンズ パック)
2月21日に、カプコンより待望の最新作「ストリートファイター6」の制作が発表された。シリーズのファンを大いに賑わせたニュースだったが、その発表では「ストリートファイター6」とは別にもう1つのタイトルが紹介された。
そのタイトルが、6月24日にプレイステーション 4/Xbox One/Nintendo Switch/PCでリリースされる「カプコン ファイティング コレクション」である。
「ストリートファイターV」プレーヤーであれば、あのルークとリュウの姿に心躍ったと思う。そしてそれ以上に、長年カプコンの格ゲーと付き合ってきたオジ格ゲーマーにとっては「カプコン ファイティング コレクション」も大いに心震えたハズだ。
「カプコン ファイティング コレクション」は、「ヴァンパイア」シリーズをはじめとしたカプコンの名作格闘ゲーム10タイトルを収録した極上の1本となっている。全タイトルでネットワーク対戦が可能で、過去に発売された「ストリートファイター 30th アニバーサリーコレクション インターナショナル」の一部オンライン対応だったが、今作はすべてが対応している!
本稿ではPC版「カプコン ファイティング コレクション」をプレイし、収録されている各タイトルの見所や、当時を振り返ってあーだこーだと語っていきたいと思う。筆者と同じく発売を心待ちにしているオジ格ゲーマーはもちろん、近年格ゲーを始めた人にもぜひ読んでもらいたい。
硬派なものからカジュアルまで! バラエティに富んだ名作の数々をプレイ
「ヴァンパイア」
カプコンの格闘ゲームといえば「ストリートファイター」シリーズの知名度と人気が圧倒的で、その他のタイトルはシリーズが長く続いていない印象が強い。そんな中、5タイトルもシリーズ展開された作品がある。それが「ヴァンパイア」シリーズだ。
「スーパーストリートファイターII X」稼働後の1994年に「ヴァンパイア」がアーケードに登場。何よりも衝撃だったのが、格闘ゲームといえば格闘家たちがぶつかり合う人間同士の戦いというのが当たり前だった時代に、「ヴァンパイア」は世界の伝承や伝説に登場する怪物たちを集めて戦わせるという斬新過ぎるコンセプトの作品だったのだ。
吸血鬼やゾンビ、ミイラや狼男など12体のダークストーカーズ(モンスター)が同じ舞台で殴り合う――誰も見たことのないドリームバトルに男なら心熱くならない訳がないだろう。
登場キャラがモンスターになったことで、演出や表現などは型にはまらないユニークなものになっているのも面白いポイント。ミイラが包帯で相手をグルグル巻きにしたり、ゾンビが自身の肋骨で相手をぶっ刺したりと、攻撃アクションはかなり荒唐無稽だ。
さらに攻撃を食らった際のダメージ表現では、炎で黒コゲになったり、刀で斬られて体が真っ二つになったりと、人間のキャラクターでは表現不可能の演出も見所。また、キャラクターがアニメ調のグラフィックスとなり、その美しさも引き込まれるポイントだった。
ゲームシステムも「スーパーストリートファイター」シリーズとは大きく変わり、複雑な操作を必要とせずに爽快な連続攻撃を行える「チェーンコンボ」や、ガードの硬直を消して反撃に転じれる「ガードキャンセル」などの革命的なシステムが導入されたのも特徴的だった。
昔の格ゲーあるあるだが、格ゲーブーム初期の作品だけあって、今プレイしてみると初代「ヴァンパイア」のCPUは結構強い。こちらの動きに合わせて超反応で的確に対処してプレーヤーを地獄に叩き落してくる。ものすごいスピードで100円を吸い込むインカムモンスターっぷりに、当時少年だった筆者は随分泣かされた(財布的に)。
シリーズ1作目ということもあり、チェーンコンボやガードキャンセルの受付がシビアだったり少々粗削りな部分はあるが、総合すれば完成度は高い。高い火力設定もあって非常に爽快感のあるゲームになっている。
「ヴァンパイアハンター」
シリーズ中もっとも人気の高かった2作目の「ヴァンパイアハンター」。前作をベースにしながらもチェーンコンボルートの拡大や、追撃システムの追加、スペシャルゲージ周りの調整など、対戦の面白さと遊びやすさが格段に上がり格闘ゲームファンを夢中にさせた。
新キャラクターには、キョンシー少女の「レイレイ」と、半魔族の狩人「ドノヴァン」が追加され、両キャラクターともに個性的で、圧倒的な存在感を放っていた。さらに前作ではCPU専用キャラであった「フォボス」と「パイロン」がプレイアブルキャラとして登場したのも熱かった。
「ヴァンパイアセイヴァー」
3作目の「ヴァンパイアセイヴァー」は格闘ゲームの常識を大きく変えた意欲作。従来の格闘ゲームなら2ラウンド先取制で、1ラウンドの勝敗が決したら互いに体力満タンになって次のラウンドが始まるのが基本。しかし本作ではラウンド制を廃止して、2本分の体力ゲージを失うと敗北となる「インパクトダメージゲージ」を採用している。勝った方は体力がそのままの状態で試合が継続するのだ。如何に体力を減らさずに戦い続けるかが重要になり、開幕から緊張感のある戦いが楽しめる。
ラウンド制の概念が無くなっただけではなく、全体的なゲームスピードも格段に向上したことで、テンポの良いスピーディーな攻防が楽しめるのも本作の魅力。
速過ぎが故に一部のキャラの中段攻撃は見てからガード不可能だったりと行き過ぎ感もあるが、食らっている側は置いておいて攻めてる側の爽快感は凄まじく、2D格闘ゲーム屈指の気持ち良さである。
本作からの新キャラクターに「リリス」、「キュービィ」、「バレッタ」、「ジェダ」の魅力的な4人が追加された。中でも筆者イチオシなのが、赤ずきん姿のバレッタである。
見た目はグリム童話の赤ずきんそのままの可愛らしい少女なのだが、その本性は残忍で、ダークストーカーズを狩って懸賞金を得ることを生業とする凄腕のダークハンター。生粋の人間ながら、人外であるダークストーカーズと互角に渡り歩くとてつもない戦闘力の持ち主。
戦い方は狡猾で、無力な少女を装って油断させ、マシンガンをぶっ放したり、ナイフで相手の喉元を掻っ切るなど過激極まりない。基本は可愛い声色を作っているが、戦いの中では時折“ドスの効いた地の声”が出ているのも面白い。人間の怖さが全開のホラー感漂うバレッタエンディングは必見だ。
「ヴァンパイアハンター2」&「ヴァンパイアセイヴァー2」
現状でのシリーズ最終作となるのが、「ヴァンパイアセイヴァー」稼働から僅か4ヶ月で登場した「ヴァンパイアハンター2」&「ヴァンパイアセイヴァー2」。なんとこの2タイトルはアーケードに同時リリースされたという異色の作品である。
バージョン違いということもあり、オープニングのデモシーンは2作品とも同じフォーマットで統一しているという面白い演出がなされていた。各作品のメインキャラとなるハンターがダークストーカーズを狩っているシーンは鳥肌ものだ。
その名の通り「ヴァンパイアハンター」と「ヴァンパイアセイヴァー」の続編に当たる内容。基本のゲームシステムはどちらも前作の「ヴァンパイアセイヴァー」を踏襲し、一部登場キャラが異なるのが大きな違いとなっている。
新作2作同時リリースというかつてない戦略に「マジか!?」と驚かされたのは今でも覚えている。仮に今「ストリートファイター6」が2バージョン同時発売されるなんてことになったら「カプコンどうしまったんだ?」と話題が持ちきりになるのが想像できるだろう。
「ヴァンパイア」2タイトルが当時の格ゲーシーンの話題を総取りに――することはなく、むしろ前作以上にひっそりと稼働されていたと記憶している。
何故こんなにも陽の目を浴びなかったのか。それはリリースされた1997年がアーケード格ゲー熱が最高潮の時期で、毎月数多くの格闘ゲームがリリースされては消えていく戦国時代だったからである。それ故に陰に隠れてしまうタイトルも少なくはなかった。
そしてさらに、この2タイトルが稼働した同月には先行で「マーヴル・スーパーヒーローズ VS. ストリートファイター」という超大型タイトルがアーケードの人気を独占していたのだ。そんな状況で登場した「ヴァンパイア」最新作だったが、悲しい事にほとんどの格ゲーマーの興味は「マーヴル・スーパーヒーローズ VS. ストリートファイター」に向いてしまっていた。
不遇の作品であり、当時はほどんど対戦をする機会がなかった2作品だが、今回のオンライン機能の実装により対人戦が存分に楽しめるのは非常に嬉しい。
「サイバーボッツ」
人間ではなくロボット同士がぶつかり合う、カプコンの中でも極めて異色の格闘ゲーム「サイバーボッツ」もラインナップ。過去にリリースされたベルトスクロールアクションゲーム「パワードギア」からVA(ロボット)などの一部設定を引き継ぎ、より洗練された作品へと進化した。
近年では、カプコンのレトロゲームを集めた「カプコンアーケードスタジアム」にも収録されていたがオンライン機能はなく、本作で初のオンライン対戦が実装された。
「マーベル VS. カプコン」シリーズや「ストリートファイターV」のリュウのコスチュームでお馴染みの「ジン・サオトメ」が初めて登場した作品で、彼の勇姿が見られる貴重なタイトルでもある。「ストリートファイター」や「ヴァンパイア」よりもストーリー性があり、まるでロボットアニメを見ているような熱い展開も注目のポイント。
従来の格闘ゲームとは違い、本作では使用するパイロットとVAの両方を選択するが可能で、自分の好きなキャラとロボの組み合わせで遊ぶことができる。なお、性能は全てVAに依存するので、プレーヤーの士気が上がる以外はパイロットによる性能の変化は特にない。
重厚なロボットでありながら動き自体は非常に軽快で、触っていて非常に気持ち良い操作感。さらに本作のキモといえる「ブーストシステム」も軽快さをさらに爆上げしている。ブーストボタン1つで高速の前後移動ができるのはもちろん、空中ではジャンプ後にさらにブーストで上昇することも可能。相手の対空攻撃を誘って虚をつくというような自由度の高い戦い方ができるのも本作の魅力である。
軽快なだけではなく“ロボットバトルらしい重厚さ”も忘れてはいない。攻撃がヒットした際のSEは“鉄と鉄がぶつかった様な重い衝撃音”が響き、バトルを盛り上げる。
本作には「アームダメージゲージ」という概念があり、ダメージを受け続けてゲージが0になると腕が吹っ飛び欠損状態になってしまうのだ。腕が無い状態だと一部の技や攻撃が使用できなくなるというペナルティがある。戦闘でパーツが破壊されるという、ロボットモノの燃える要素をゲームシステムにうまく落とし込んでいるのはさすがの一言。
VAのバリエーションの豊富さも熱い。王道の二足歩行タイプをはじめ、キャタピラや四つ足、さらには「足なんて飾りです」といわんばかりの形状をしたVAなど、とにかくロボット好きのツボを押さえたゲームとなっている。少しでも気になった人はぜひプレイしてもらいたい。
「ハイパーストリートファイターII」
ここまで少々マニアックなタイトルが並んだが、カプコンの格ゲーとしては外すことはできない「ストリートファイターII」も収録。しかも「TURBO」や「X」ではなく、「ストII」の集大成ともいえる「ハイパーストリートファイターII」。
本作は2003年にプレイステーション2、2004年にアーケードで稼働したタイトルで、初代「ストII」から「スーパーストリートファイターIIX」までのすべてのバージョンからキャラクターを選ぶことができるのが最大の特徴。「ダッシュ」リュウVS「スパII」リュウなどの、誰もが妄想したドリームマッチが楽しめるのだ。
古くからのファンへ向けたお祭り作品だけあってファンサービスがとにかく素晴らしい。バージョンによってキャラ性能が全く異なるのは当たり前の話だが異なるのは性能だけではなく、キャライラストやドット絵、さらにはボイスまでもそれぞれのバージョンのものになっているのだ。初代「ストII」の投げボイスは全員共通なので、投げのときだけリュウやケンの声が急に野太くなるのもシュールで面白い。
往年のオジ格ゲーマーならば、“これさえあれば一生遊べる”といっても過言ではないタイトルなので、収録されて嬉しい1本である。
「ポケットファイター」
カプコンの格ゲーは男臭い硬派なタイトルが多いのだが、中には可愛いキャラクターたちが活躍する格闘ゲームも実は存在していたりする。それが「ポケットファイター」である。
タイトルからも可愛らしさがにじみ出ている本作は、二頭身にデフォルメされた「ストリートファイター」や「ヴァンパイア」の人気キャラクターが集結。“東京にアイスを食べに行く”ことや“おネエちゃんをナンパしに行く”などのゆるーい目的のために12人のファイターがぶつかり合う。
ビジュアルだけを見ると、一見子供向けの作品に思えるかもしれないが、実の中身は誰でも遊べる簡単操作ながら、このゲーム独自の要素が詰め込まれた意欲作。
攻撃に弱・中・強の概念は無く、使用するボタンは「パンチボタン」と「キックボタン」、ガード不能技を繰り出す「スペシャルボタン」の3つだけというシンプルさ。コマンドを入力する必殺技も各キャラ3つずつしかないので、コマンドがすんなりと頭に入るのも良い。
必殺技の成長要素もあり、対戦中に出現するジェムを集めてレベルが上がると必殺技の性能がアップする。最大のレベル3になるとかなり強いので、着実に強化させていくのが勝利のカギだ。
本作の目玉システムでもある、コマンドいらずのボタン連打で繰り出せる「フラッシュコンボ」。流れるように連続攻撃を叩き込むのだが、攻撃時にビジュアルがコロコロ変化するのが面白い。チアガールやメイド、さらにはどこかで見たことのあるキャラクターの姿に扮したりと非常にコミカル。
フラッシュコンボはとても強力なのでCPU相手ならばこれだけで勝ててしまうのも格ゲー初心者に優しい。フラッシュコンボのパターン1つだけではなく、パンチとキックのボタンを押す順番によってコンボが変化する。CPU戦では1つのボタンをひたすら連打するのもアリだが、対人戦では状況によってコンボを使い分けるのも重要。カジュアルに遊んでも、ガチで遊んでも楽しいので、幅広いプレーヤーにプレイしてもらいたい。
「スーパーパズルファイターIIX」
全タイトル格闘ゲームと思わせながら、変化球で「スーパーパズルファイターIIX」も収録。「ストリートファイター」×「ヴァンパイア」の初のクロスオーバー作品で、「リュウとドノヴァンが同じ空間で戦っている!」と当時は興奮したのを覚えている。
後の「ポケットファイター」では晴れて格闘ゲームとなるのだが、本作は可愛いデフォルメキャラがぶつかり合う落ち物パズルゲームとなっている。ゲームセンターでお目当てのゲームが埋まっていた際によくプレイしていたタイトルで、この手のジャンルがさほど得意ではない筆者でも直感的に楽しむことができた数少ないパズルゲームだ。
上から降ってくる赤・緑・青・黄の4色の「ノーマルジェム」を積み上げて、同じ色の「クラッシュジェム」を隣接させて配置してノーマルジェムを消していくのがゲームの基本。これだけ覚えておけば問題なく遊ぶことができる。
「パズルファイター」という名前だけあって、バチバチのバトル要素はもちろんある。1度に消したジェムの量によってキャラクターが攻撃を仕掛け、相手にお邪魔ジェムの「カウンタージェム」を送り込むことができるのだ。互いにジェムを消し合って殴り合う攻防は「ファイティングコレクション」のラインナップにふさわしいゲーム性である。
同じ色のノーマルジェムを四角い形で積み上げていくと、1つの大きな「パワージェム」に変化するのも本作の大きな特徴。特大のパワージェムを作って消せば、超強力な「スーパーコンボ」や「EX必殺技」を繰り出すことができる。大きな塊がガシャンと音を立てて消える瞬間は爽快の一言。
積極的に大きなパワージェムを作っていきたいが、時間を掛け過ぎてしまうと相手のカウンタージェムで埋められてしまったりもする。相手の状況を見つつパワージェムを消すタイミングを計って立ち回る、この熱い駆け引きが本作の醍醐味である。パズルゲームが好きな人はぜひ触ってもらいたい1本だ。