レビュー
「星のカービィ ディスカバリー」レビュー
30周年を迎えたシリーズ最新作は、ワクワクと発見の連続の3Dアクションに
2022年3月25日 00:00
- 【星のカービィ ディスカバリー】
- ジャンル:アクション
- 開発元:ハル研究所
- 発売元:任天堂
- プラットフォーム:Nintendo Switch
- 発売日:3月25日
- 価格:
- パッケージ版 6,578円(税込)
- ダウンロード版 6,500円(税込)
任天堂は3月25日、Nintendo Switch用アクションゲーム「星のカービィ ディスカバリー」を発売した。ハル研究所が開発する「星のカービィ」シリーズの最新作で、メインシリーズとしては初めて3Dアクションとなった作品だ。
突然の渦にワドルディ達と共に巻き込まれてしまったカービィが、「新世界」と呼ばれる未知の世界で、囚われの身となったワドルディを助ける冒険に出る物語が描かれる本作。弊誌では3月冒頭に、新システムである「ほおばりアクション」に注目したファーストインプレッションをお届けしていたが、本稿ではゲームシステムやプレイフィールなどの部分に関して、もう少し突っ込んだレビューをお届けしていきたい。
2022年でシリーズ30周年を迎えた「星のカービィ」。そのタイトルは30種以上にも及ぶ
「星のカービィ」シリーズは、1992年4月27日にゲームボーイで産声を上げた。現在は「大乱闘スマッシュブラザーズ」の開発を手がけるゲームクリエイター桜井政博氏がハル研究所在籍時代にディレクターをつとめたタイトルで、まん丸な体をした主人公カービィが口から空気や敵を吸い込み、それを吐き出して倒すという独自のゲームシステムとシンプルなルールで、ゲームボーイの発展期を支えるタイトルとして貢献。その後も続編となる「星のカービィ2」(1995)や、「カービィのピンボール」(1993)、「カービィのブロックボール」(1995)、「カービィのきらきらきっず」(1997)などの派生作品がゲームボーイにて発売され、当時ユーザーだったプレーヤーは遊んだ記憶も多いかと思う。
ちなみにカービィのもう1つの特徴である「コピー能力」は、翌1993年3月23日発売のファミリーコンピュータ版「星のカービィ 夢の泉の物語」にて備わったものだ。実は、筆者が「星のカービィ」シリーズを初めて遊んだのも「星のカービィ 夢の泉の物語」で、「Nintendo Switch Online」で配信中のシリーズ2作品(「星のカービィ 夢の泉の物語」とスーパーファミコン版「星のカービィ スーパーデラックス」[1996])を遊んでみて、コントローラーが2ボタンだった頃の操作が体に身に付いていることに改めて気づかされた次第だ。
筆者がゲームボーイで「星のカービィ」を初めてプレイした頃はすでに大人だったこともあり、あれから30年が経過している実感はあまりないというのが正直なところだ。筆者が多く遊んだゲームボーイ版やファミコン版はニンテンドー3DSやNintendo Switch、あるいは手持ちの実機などで現在もプレイする機会があり、現在までに30タイトル以上のシリーズがコンスタントにリリースされ、カービィというキャラクターが長く愛されていることも、懐かしさを感じさせない理由なのだろう。
カービィの吸い込みやホバリング、コピー能力などを3Dアクションへと違和感なく昇華
本題となるこの「星のカービィ ディスカバリー」は、今年迎えたシリーズ30周年を機に、それまでの主軸だったサイドビューの2Dスタイルのアクションから、奥行きの概念のある3Dアクションへと大きな変貌を遂げている。グラフィックスが3Dだったり、3Dの概念を採用したスピンオフ的な作品があったりもしたが、ナンバリング的なタイトルとしては初めてのことだ。30年にもわたって続いてきた2Dアクションが3Dアクションになったことで、一体どのような変化があったのか強い興味を惹かれたことが、筆者が今回のレビューに手を挙げた理由だったりもする。
ゲームのオープニングから導入部まではごくシンプルに作られていて、文字による説明はほとんどなく、カービィの基本アクションである吸い込みと吐き出し、コピー能力、そして新システムの「ほおばりヘンケイ」などを自然な流れで体験させる作りの巧さはさすがなところ。それと同時に、BGMのない薄暗い森の中から、明るいフィールドに出ると同時に、新たな舞台「新世界」の世界観を、口ずさみたくなるような軽快なBGMとともに見せていくのは、プレーヤーに新しいカービィの世界をアピールするのにふさわしい演出であった。このあたりは体験版でも見られるが、製品版にはここにもうひとつグッとくる演出があるので、そちらもお楽しみにしていただきたい。
カービィのアクションは従来のシリーズを踏襲していて、吸い込みと吐き出し、コピー能力、ホバリングといったアクションをLスティックと5つのボタンで行なえる。元々複雑な操作ではなく、ホバリングや飲み込み、しゃがみガードのアクションがボタンへと転換されている程度の違いなので、カービィシリーズの経験あるなしに関わらず、プレイするのは容易なはずだ。2段階選べる難易度が易しいほうの「はるかぜモード」をデフォルトにしているのも、幅広い層のプレーヤーを意識したものなのだろう。ちなみに難しいほうの「ワイルドモード」は前者よりも歯ごたえのある難易度となっている。その分、ゲーム内の様々な場面で使用するコインスターもたくさん入手できるようになっている。両者はゲーム中も変更が可能だ。
朽ちた文明と大自然が融合した「新世界」。歩き回ると、必ず新しい“発見”がある
カービィが旅する「新世界」は、過去に存在していたであろう文明が大自然に覆い尽くされて廃墟となった世界だ。そこには草原や海岸、雪原、面白いところでは広大な遊園地など、カービィの新しい旅の舞台にふさわしいワクワクするシチュエーションのワールドが存在している。これらワールドには複数のステージがあり、ゴールまで進むと次のステージが現われる仕組みだ。同じワールド内のステージでも、コピー能力や新システムの「ほおばりヘンケイ」などに依存するギミックはそれぞれ手触りが異なり、ステージごとに新しい体験を味わえるレベルデザインが施されている。
廃墟という舞台設定はプレーヤーの好奇心を刺激し、実際に“いかにも”な場所がそこここに存在していて、歩き回って探索したくなる衝動に駆られる。それらしい場所には何らかのギミックがあり、コインや食べ物が出てきたり、隠し通路の先にワドルディが捕らえられていたりすることもある。ゲーム中はプレーヤーがカメラを動かせないのもニクい仕様で、見えない通路がカメラの死角に巧妙に隠されて、それを見つけるとカメラもそちらに動きステージの全景がわかるようになる。いつの間にかゴールそっちのけでカービィをあらゆるとこに動かして寄り道探しをしていることもあり、それがまた実に楽しい。タイトルの“ディスカバリー(発見)”は伊達ではないのだ。
もちろん寄り道のことは考えず、どんどん進めてしまうプレイスタイルもありだが、ワールド最後のボスステージは最終ステージのクリアと同時に、ワールド内で救出したワドルディの規定数でアンロックされるので、急ぎすぎるとワドルディの数が足らない可能性もある。ステージに制限時間はないので、コピー能力やほおばりヘンケイを駆使して色々と試してみることをオススメする。
またワールドにはステージをクリアすると「トレージャーロード」という特別なステージが出現する。これはコピー能力やほおばりヘンケイを駆使して、制限時間以内にクリアを目指すチャレンジングステージ的な存在で、クリアするとコピー能力の進化に必要な「レアストーン」を入手できるようになっている。コピー能力やほおばりヘンケイのチュートリアル的な意味合いもあり、さらにボーナスがもらえる「もくひょうタイム」は結構シビアに設定されているので、このタイムを縮めていくやり込み的な要素も楽しめるはず。
おなじみのコピー能力が進化。進化させれば強さも手触りも大きく変わる
シリーズおなじみのコピー能力は、特定の敵を吸い込むと身に付けることができ、任意に手放すことも可能だ。拠点となる「ワドルディの町」に「ワドルディのぶき屋」ができれば、それまでに身に付けたことのある好きな能力を受け取れ、さらにそれぞれを「進化」させて強化ができる。進化させたコピー能力は、以降も進化した状態で入手できるようになるが、ワドルディのぶき屋で進化前の状態にも戻せるようになっている。
コピー能力は過去シリーズの感触を残しつつ、本作のゲームデザインにマッチするように作られているわけだが、進化させることで強さや使い勝手が大幅に変わるのが面白いところだ。例えば「ソード」を「ギガントソード」に進化させると、攻撃力と当たり判定が大幅に向上し、さらにガード時にシールドを出して、前方を完璧に防御できるようになる。「ボム」は「チェインボム」へと進化し、転がした複数の爆弾が連鎖して複数の敵を巻き込める、といった具合だ。ボスとの戦闘時など、選択や使い方で大きく有利になるものがあるので、詰まってしまったときは進化によって打開できることがあるかもしれない。進化が複数用意されているコピー能力もあり、そのたびに強力になっていく。
そして本作で新たに備わったカービィの新しい能力「ほおばりヘンケイ」は、コピー能力とはまったく別の、ステージ上にある様々な物質(アイテムと呼称)にカービィが変形し、その形状に依存する能力を使えるというもの。アイテムならではの動きがが行なえるものの、通常のアクションが大幅に制限され、次のステージに持ち越すこともできないため、基本的にはその場限りの能力である。
朽ちたアイテムが点在する廃墟の世界観にマッチしたゲームシステムで、ゲームの冒頭で体験する「くるま」のような動くものだけでなく、三角コーンや金属アーチなどの無機物や、水道管から噴き出す水を蓄えてのヘンケイなど、意外なアクションが行なえることもあり、新たなアイテムを発見するたびに「どんなことが起こるんだ!?」という気持ちが強まる。また、ほおばりヘンケイを使うと見つけられる隠し要素も多いので、何かにヘンケイしたら周囲を見回してみるといいかもしれない。
ワドルディを助け出し、ワドルディの町を発展させれば、冒険が豊かなものに
ゲームのもう1つのお楽しみとして、拠点となる「ワドルディの町」の存在がある。ステージクリア時に救出したワドルディ達が集い、廃墟となった町を復興していくという要素で、ワドルディの数によって使える施設が増えていくのだ。
ゲーム進行中は前述の「ワドルディのぶき屋」でのコピー能力の管理や、「ワドルディカフェ」での回復用アイテムの購入などで立ち寄ることが多いと思われるが、ボスと連戦をする「コロシアム」や、ミニゲームの「はたらく!ワドルディカフェ」や「ドキドキ!せつなのつりぼり」など、ゲーム本編とは別に報酬をもらえる要素もあり、コピー能力の強化や回復アイテムを余分に持っておきたいという人にもありがたい存在となる。
何より、たくさんのワドルディ達が集まるこの場所は、カービィ(プレーヤー)にとっての癒しの空間となることは間違いない。自宅の「カービィハウス」で休めば体力も回復できるので、旅に疲れたら立ち寄ってみよう。
プレーヤーをワクワクさせる“発見”が満載の30周年記念作。サウンドも絶品!
最後にもう1つだけ、本作はサウンドの完成度が非常に高いということをお伝えしておきたい。体験版をプレイ済みの人は、最初のワールド「ネイチェル草原」のメインBGMをすでに聴いているかと思うが、口笛でユニゾンしたくなってしまうような軽やかなメロディは聴いていて本当に気持ちがいい。ワールドごとにいくつかのBGMが用意されていて、どれもカービィの新しい冒険にふさわしいものばかりが揃っている。全曲収録のサントラの発売を期待するとともに、今年8月11日に開催予定の「星のカービィ 30周年記念ミュージックフェス」でもこれらの楽曲が演奏されることが期待され、大いに楽しみとなったところだ。
ゲームを実際に触ってみると、ワールド3〜4あたりから少しずつ手応えが上がっていく印象で、バランス的にはちょうどいい感触であった。もし手応えが欲しかったら、コピー能力を進化させない状態で挑んだり、コピー能力を使わず生身のカービィで進んでみるのも面白いかもしれない。
メインとなるワールドの冒険に加えて、トレジャーロードや町のミニゲームなど、楽しめる要素はたくさんあり、プレーヤーを飽きさせない。捕らえられたワドルディの救出も初見で全て発見するのは結構大変で、筆者ももちろん全ては見つけられておらず、製品版でさらに探してみようと思っている。現在配信中の体験版を楽しいと思えたなら、以降もそれ以上の体験ができるのは間違いないので、シリーズ30周年のこの機会に遊んで、カービィの新しい旅の楽しさを“発見”してほしい。
© HAL Laboratory, Inc. / Nintendo