レビュー

「ラチェット&クランク パラレル・トラブル」レビュー

ビジュアル・振動・操作感……PS5の機能を巧みに取り込んだシリーズ最新作の新体験に注目!

【ラチェット&クランク パラレル・トラブル】

ジャンル:アクション

発売元:ソニー・インタラクティブエンタテインメント

開発元:ソニー・インタラクティブエンタテインメント、インソムニアックゲームズ

プラットフォーム:PS5

価格:
[スタンダード版] 8,690円(税込)
[デジタルデラックス版] 9,790円(税込)
発売日:6月11日

 2002年よりプレイステーションシリーズにて展開されているアクションゲーム「ラチェット&クランク」の最新作「ラチェット&クランク パラレル・トラブル」が、6月11日に発売される。ソニー・インタラクティブエンタテインメントが贈るプレイステーション5タイトルで、開発は同シリーズに長く携わるインソムニアックゲームズが手がけている。

 PS5ファンとしては待望のPS5専用タイトルであり、インソムニアックゲームズが「Marvel's Spider-Man:Miles Morales」などで培った最新の技術を投入して開発している。「ラチェクラ」シリーズとしてのアクションを極めつつ、PS5のハードウェア性能を生かしたこれまでにあまり体験したことがないような斬新な演出を盛り込んだ、インパクトのある作品となっている。今回のレビューでは製品版を実機でプレイして、その概要をお伝えするとともに、本作で体験することができるPS5ならではの演出に注目してみたい。

【『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』“超爽快アクション!”トレーラー】

CG映画を見ているような演出は、PS5のマシンパワーでさらに極まった

冒頭からド派手なシーンが展開され、プレイヤーの心をがっちり掴む

 2002年にPS2にて発売された「ラチェット&クランク」は、インソムニアックゲームズがサーニーゲームズとノーティドッグの力を借り、当時の開発技術を結集して作られたタイトルであった。フル3Dで遠方まで見える背景や、リアルタイムCGによるムービーシーンなど、当時としては画期的な演出を取り入れ、打撃と投擲が可能な「オムレンチ」と、「ガラメカ」と呼ばれる様々な武器を使いこなして進めていくアクションは実に楽しく、当時のPS2ユーザーに強い印象を残した作品だ。

 2足歩行の猫のような姿の種族「ロンバックス」の「ラチェット」と、ロボットの「クランク」の名コンビはこの初代タイトルから続いていて、普段はバックパックのような姿に変形したクランクを背負ったラチェットを操作してゲームを進めるが、シーンによってはクランクを操作してプレイするところもあり、ストーリーも含め主人公2人の友情をドラマチックに描いていた。

 その後発売されたシリーズはリマスター版なども含め17タイトルにも及び、プレイステーションシリーズとともに進化を遂げてきた作品でもあるのだ。

本作冒頭のパレードでは、クランクがラチェットにこれまでの礼を述べ、彼の家族を探すために次元間転移装置を渡すが、それが今回の事件のきっかけになってしまう

 この「ラチェット&クランク パラレル・トラブル」は、2013年にPS3で発売された「ラチェット&クランク INTO THE NEXUS」から続く物語が描かれている。その冒頭、ラチェットとクランクの活躍を讃える「ヒーローフェスティバル」のシーンから、PS5の映像表現が遺憾なく発揮されている。

 空中に浮遊する都市で繰り広げられている祭典は無数の観客が参加していて、ラチェットとクランクを讃えている。画面ではその全員が個別に動いている様子がわかる。チュートリアルにもなっている空中パレードは、次元間転移装置「ディメンジョネイター」を奪ったドクター・ネファリウスによって大混乱に陥っていくわけだが、映画さながらの演出で描写されるシーンが連続する中でラチェットを動かせるのが実に気持ちがいい。ラチェットが振り回すオムレンチで箱や敵を吹っ飛ばすと飛び散るボルト、それを使って入手する多彩なガラメカのアクションなど、シリーズ恒例のシステムが健在なのも嬉しいところだ。

パレードの背景に見える人々は、1人1人が個別に動いている
スピード感のあるグラインドアクションも展開。遊園地のアトラクションのような気分だ
手前がクッキリ見えて奥に行くほどぼやける、被写界深度のある映像演出も見栄えがする
次元の裂け目を使って遠方へ移動する「ワープテザー」。裂け目の中から遠方の景色が迫ってくる不思議な演出は必見だ

 シリーズ初期の頃から凝ったビジュアルが目立っていた本作だが、PS5の映像処理能力を得たことにより、細かな部分の表現がより美しくなっているのも見どころの一つだ。例えばクランクの体は、ステンレスのような鈍い輝きの金属感でありながら、卵形の頭部には手や体の一部がぼんやり反射して映り込んでいるのがわかる。一方のラチェットや新キャラクター「リベット」の毛並みは、アップになったときはもちろん、引いたときでもよく見るとフサフサしている質感がわかるはずだ。

ラチェットの体、ドクター・ネファリウスの頭部など、映り込みの演出に注目
これまで以上にフサフサしているラチェットの毛並み
同じロンバックスながら、ラチェットよりも毛足が短いリベット

 レイトレーシングによる光の反射や陰影の表現は、前述のクランクやドクター・ネファリウスなどのキャラクター描写のほか、次元を超えてラチェットが訪れるネオン街で体験することができる。夜の街の街頭やネオンなど、あらゆる方向から差す光源に応じてラチェットらの足元に影が落ちる。影は光源に近寄れば短くなり、遠ざかれば長くなる。当たり前のことすぎて見落としてしまいそうになるが、意識して見てみると、その自然さに驚かされるはず。ラチェットとファントムなる謎(!?)のキャラクターが屋外のエレベーターに乗るシーンでは、階層のライトが通り過ぎるたびに影が伸びたり縮んだりしている。ここは会話がメインとなるので、その演出が特に目を惹いたシーンだ。

光源の位置により、ラチェットの影の落ち方がリアルタイムに変わる。飛んでいるボルトにも影があることに注目
何気ないカットだが、ファントムの影の伸び方に目を惹かれたシーンだ

効果音に振動を加えた、触覚による演出をその手で感じる

 本作はこうした映像の演出に合わせて、DualSenseのハプティックフィードバックを使った振動による演出が備えられている。コントローラーの振動による演出はPS4のDUALSHOCK 4などでも見受けられたが、本作における振動演出のクオリティはその遙か上をいっている。

 耳で聴く「効果音」に対して、指で感じる「効果振動」とでも言うか、ともかくプレイ中に効果音が聞こえる多くのシーンで、大小の振動による演出が施されているのだ。例えばタイトル画面から繋がるオープニングでは、ビルの間を飛行する宇宙船の飛行音に振動が加えられているわけだが、宇宙船の形によって振動のパターンが異なるという懲りっぷりだ。ヒーローフェスティバルのシーンでは、ラチェットが乗る足場が飛行する微細な振動を感じる中で、その上でラチェットがジャンプすると別のパターンの振動を感じられる。

飛行する宇宙船の振動は、種類によって違っている
ボスとのバトルは、指で感じる振動からも状況を把握できる
乗り物に乗っているときは、スピードや走っている場所によって振動の強さが変わる

 これもまたネオン街での演出となるが、ラチェットが聞き込みに入る「クラブ・ネファリウス」では、店に近づくと聞こえてくるビートに合わせて振動も少しずつ大きくなっていき、店の中でそれが最高潮に達する。ゲーム本編には直接影響しない演出ながら、プレイしていてかなりインパクトがあり、この演出のためにクラブのシーンを導入したのではと思ったほどだ。

クラブ・ネファリウスでのシーン。音と振動の演出に加えて、モブキャラの多さにも驚かされる

 このハプティックフィードバックによる演出は、オプションの「振動設定」の「体感的」を選んでいるときに機能するものだ。これを「機能的」に設定しておけば、アイテムを取ったときや敵を倒したとき、ダメージを受けたときなど、ゲームに直結した振動でプレイすることも可能だ。しかし最初はぜひとも「体感的」な設定で、これまでのゲームでは味わうことのできなかった演出を楽しんでみてほしいもの。

コントローラー設定の「振動設定」と「アダプティブトリガー」は「体感的」にしておくことが、本作を最も楽しめる設定だと個人的には思う

武器となるガラメカは、アダプティブトリガーにより、実際に撃っているような感覚を味わえる

 ラチェットやリベットが武器として使うガラメカは、ショップである「マダムズーコン」から購入することができる。ゲームを進めることでその品数は増えていき、それぞれの使い方は動画で教えてもらえるなど、至れり尽くせりの仕様だ。また入手後は道中で拾える「ラリタニウム」を使うことでアップグレードも可能となる。ガラメカはシリーズの売りとなる要素の一つであり、本作でも新しい感触でプレイヤーを楽しませてくれるわけだが、今回それに一役買っているのが、PS5のアダプティブトリガーだ。

攻撃用のガラメカは「武器ガラメカ」と呼ばれる。道中で拾ったボルトとの交換だ
ラリタニウムを使ってアップグレードすることで、より強力になる

 近接攻撃用のオムレンチに対して、武器ガラメカは弾数制限のある遠距離攻撃用の飛び道具で、L2でエイムし、R2で発射する仕組みだ。アダプティブトリガーの設定を「体感的」または「機能的」に設定しておくと、R2には段階的な抵抗が設けられるようになり、押し込む段階によって発射時の機能を変えられるのだ。

 アダプティブトリガーを「体感的」に設定時に「バーストピストル」を装備すると、R2を最初に抵抗のあるところまで押し込むとエイムが現れ、次の段階まで押し込むと連射の遅い精密射撃、そして一番深く押し込むと早い連射の高速射撃が行える。また「シャッターボム」のような爆弾系の武器ガラメカは、半押しで軌道が表示され、フル押しで投擲するといったように、カテゴリーによって異なる操作感覚が用意されている。

R2を軽く押し込むと照準が現れる。L2を押さなくても狙いを付けられるのだ
ショットガンのような武器ガラメカ「エンフォーサー」。半押しで1発、フル押しで2発が発射される
爆弾系は半押しでその軌道が表示される

 「体感的」の設定が振動も含めた操作となるのに対し、「機能的」は抵抗の段階を減らして振動もなくなる設定で、操作感覚もわずかに変わる。このあたりは実際に触ってみて、好みで設定してみよう。

PS5の機能を駆使した演出が、プレイヤーを「ラチェット&クランク」の世界へと導く

 PS5の機能を実体験するソフトとして、本体発売と同時に「ASTRO's PLAYROOM」が配信されたが、同作がテクニカルデモ的な意味合いが強かったのに対し、この「ラチェット&クランク パラレル・トラブル」は、人気アクションゲームの最新作であり、シリーズのプレイフィールを継承しつつ、PS5の機能を上手く取り入れ、新しい体験も同時に提供している。本作は過去シリーズを知らなくても問題なく楽しめる作品なので、PS5ユーザーはぜひこの機会に「ラチェット&クランク」の世界に触れてみてほしい。

別の次元や惑星で繰り広げられる壮大なストーリーも本作の大きな魅力だ