PC/MACゲームレビュー

The Elder Scrolls Online

ついに始まったタムリエル全土の大冒険
ソロ派も戦争好きにも応える新しいMMOの形

ジャンル:
  • MMORPG
発売元:
  • ベセスダ・ソフトワークス
開発元:
  • ZeniMax Online Studios
プラットフォーム:
  • WIN
価格:
5,980円
発売日:
2014年4月4日
プレイ人数:
1人

 MMORPG「The Elder Scrolls Online(TESO)」の正式サービスがついにスタートした。本作の正式サービスのスタートは4月4日だが、予約特典として3月30日から“アーリーアクセス”が可能で、今回はそのアーリーアクセスの内容をベースにレビューをお届けしたい。

 弊誌ではβテストレポートと、大戦争体験レポートで本作の基本システムや感触は紹介している。本稿では前回と勢力、職業を変えた上で“The Elder Scrolls”シリーズとしての面白さ、MMOならではの楽しさ、そしてRVRの内容を掘り下げていきたい。

 本作は英語版のMMORPGである。「『Skyrim』や『Oblivion』はディスクがすり切れるほど遊んだけど、今回はハードル高すぎるよな」と思っている人は、正直多いと思う。確かに英語でストーリーの細部はわかりにくい、他の人がいるというところに尻込みする気持ちもわかる。しかし、“新たなタムリエルの物語”が描かれているのだ。あの心地良く、楽しい世界が最新の姿で生まれたのである。まず飛びこんでみてはいかがだろうか。心躍る冒険をきちんと体験できるだろう。心配は無用だ。

タムリエルでの冒険が始まる。「Skyrim」との違いは?

予約特典の馬に乗って、アーリーアクセスの世界を進む
Daggerfall周辺地域。南にあるDaggerfallから北に冒険の地域は広がっていく
Dragonknightでのプレイ。鎧は重装のものに

 「TESO」では、カラーが黄色で鷲がシンボルの「Aldmeri Dominion」と、カラーが青でライオンがシンボルの「Daggerfall Covenant」、カラーが赤でドラゴンがシンボルの「Ebonheart Pact」の3つの勢力が存在する。前回のレポートで筆者はEbonheart Pactに所属したが、今回はDaggerfall Covenantでプレイを始めた。職業も魔法使いのSorcererから、接近戦のエキスパートDragonknightにした。

 勢力を変えて実感できたのは“展開するストーリーが全く違う”ということだ。Ebonheart Pactのストーリーはまさに“苦難の連続”だった。スタート地点の村は焼かれ、プレーヤー達は避難民と一緒に何とか敵を押しとどめ船から脱出しなくてはならなかった。逃れた地もまた敵の侵攻を受けており、火山地帯など不毛の大地で必死に生き残る道を探す、といった展開だった。

 一方、Daggerfall Covenantはタムリエル大陸の西側にあり、活気のある港町で、緑も豊かだ。序盤に中東風の島に船で出かけたりもする。異世界オブリビオンの侵略にProphet(預言者)と共に立ち向かうというメインストーリーは同じものの、地域のストーリー、関係するNPCも大きく異なる。平和な地域から、やがて侵略を受けている地域の調査に……という感じで、Ebonheart Pactとの違いに驚かされた。RPGファンは3勢力全部楽しみたくなるだろうと思った。

 さて、ここからは具体的にシリーズの特に「Skyrim」との違いを挙げていきたい。まず“クラス制”というのは大きな違いだ。また、基本的には種族と勢力が固定されている(ただし、予約特典で自由に選べる)。「Skyrim」でも所属勢力でクエストが異なる場合があるが、「TESO」ではストーリーが展開する地域そのものが大きく異なる。「Skyrim」はタムリエル大陸の1地方を扱っていたが、「TESO」は大陸全土が舞台となる。3勢力のストーリーは大陸の様々な場所で展開していく。

 「Skyrim」では敵を倒すと敵の装備品がごっそり入手できたが、「TESO」では敵により傾向はあるが基本的にランダムドロップで、入手できるものは少ない。このためなかなか欲しいアイテムが揃わなかったりする。「Skyrim」ではアイテムの重量で身動きが取れなくなっていたが、「TESO」のインベントリはアイテムの種類で上限が決まっているため、金属鎧を数個持ち歩くことも可能だ。ただし生産材料やルーンなどなどアイテムの種類はとても多いため、持ち運びに悩みが尽きないのは「TESO」でも同様だ。こまめに不要なアイテムを売り、必要なものは銀行に預けるのが良いだろう。

 戦闘は敵の攻撃を避けるなどアクション性はあるが、“アクションゲーム”程のシビアさがないのは「Skyrim」と同様と言えるだろう。敵に接近し打撃とスキルの連打といった、ちょっと大味な戦い方はシリーズの伝統を受け継いでいると感じた。ただ、「TESO」はクラス制の上、スキルを上げていくと新しいアビリティを取得できる。

 各クラスは3系統のスキルがあるだけでなく、どのアビリティを重視するかでも変わってくる。この多彩さは「Skyrim」以上ではないかと感じた。キャラクターは「Skyrim」のドラゴンボーンほどに驚異的な強さを感じさせる描写はないが、スキルは派手で見応えがある。また、“3人称”で戦いやすいというのも気がついた点だ。敵の攻撃をかわしたり、敵との距離感を計るなど戦闘システムは「Skyrim」以上に戦いやすかった。

 世界観とゲームの感触は、過酷な世界に様々な種族や勢力の人々が活きている感じ、多彩なクエストなどまさに「Skyrim」や「Oblivion」を受け継いでいる。ただ、新地域の発見がそのまま大冒険に繋がっていく「Skyrim」に比べると、「TESO」はクエストドリブンの傾向が強く、レベル上げの導線がはっきりあり、そこを見失ってしまうと敵が強くてどこに進むかが見えにくくなるということがあった。

 あえて結論を先に言ってしまえば、「Skyrim」や「Oblivion」に夢中になった人に、「TESO」はオススメだ。タムリエルという独特の文化と自然を持った世界で、思う存分冒険ができる。邪悪な異世界からの侵略、権力争いや陰謀を張り巡らす権力者達、小さな願いを胸に持って生きている村人達……様々なストーリーが描かれる。ダンジョンや遺跡、精霊やドワーフの古代文明など、シリーズで慣れ親しんだ要素もてんこ盛りだ。もっともっとタムリエルで冒険したい、という人の願いに応える作品である。

 「英語だとストーリーがわからないのではないか?」と心配になる人も多いとは思うが、“あまり困らない”というのが正直なところだ。丁寧なクエストトラッカーはあるし、NPCの会話を聞き漏らすとゲームが進められないという状況もない。「Skyrim」や「Oblivion」をプレイした人ならば、同じような感覚でプレイできるし、ストーリーも仮に英語が全くわからなくても“なんとなく”わかる。

 雰囲気に酔い、キャラクターを育て、ダンジョンを踏破し、強大な敵を撃ち倒す……。この大冒険は英語が苦手でもきちんと体験できる。もちろんメッセージの日本語化は実現して欲しいが、いま、この勢いがある世界を体験しないのはもったいない。「Skyrim」、「Oblivion」のファンならばもちろん、そうでない人も、ぜひ飛びこんでもらいたい。

【多彩なクエスト】
燃える鎖で敵を引き寄せる「Fiery Reach」
敵を引き寄せ、強力な打撃を加える
Daggerfallは活気のある港町
北にある巨大な森
砂漠のある島などを巡る
地下にある施設
精霊や幽霊からクエストを依頼されることも
巨大ボスとの対決
ゲートを開ける魔術士や、空からの楔など異世界からの侵略も。こういった要素は「Oblivion」を思い出させる
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(勝田哲也)