iOS/Androidゲームインプレッション
ドラゴンクエストIV 導かれし者たち
名作「DQIV」をスマホで! その魅力とは!?
- ジャンル:
- RPG
- 発売元:
- 価格:
- 1,800円
- 発売日:
- 2014年4月17日
- プレイ人数:
- 1人
(2014/4/29 00:00)
何を隠そう筆者、「ドラゴンクエスト」(DQ)シリーズの中で「IV」が1、2を争うぐらいに好きだ。「DQIV」はシリーズ唯一の全5章からなる“章立て形式”で、各章では勇者以外の仲間達の冒険が描かれている。それぞれに物語と個性があり、いわゆる“キャラが立っている”作品だ。
余談だが、1990年代には「DQ」を題材にした4コママンガ集「ドラクエ4コマ」が多数出版されていたのだが、そこでもキャラの個性が強い「DQIV」を題材にしたものは多かった。それらも含め、筆者にとって思い出深い作品というわけだ。
「ドラゴンクエストIV 導かれし者たち」自体は、1990年にファミコン版が登場以降、3Dリメイクされ追加ストーリー「第6章」が加わったプレイステーション版、ニンテンドーDS版が登場したわけだが、DS版が2007年に発売されてからはや7年が経った2014年春、iOS/Androidのスマートフォンで「DQIV」が楽しめるようになった。なお、プレイにはiPhone5を使用している。
片手操作で楽に遊べるスマートフォン移植! 色あせない魅力を持った「DQIV」
スマートフォン版の「DQIV」は、3Dグラフィックスでリメイクされたプレイステーション版、ニンテンドーDS版がベースになっている。ファミコン版との大きな違いとして、グラフィックスが3Dになって町中や一部のダンジョンで視点の回転ができるようになっているほか、追加ストーリー「第6章」がプレイ可能だ。画面レイアウトは縦持ち用の縦画面のみとなっている。
やっぱり何よりも気になるのは“操作が快適にできるのか?”だろう。スマートフォンのタッチ操作で家庭用からの移植タイトルをプレイするのに、厳しさを感じたことがある人は少なくないと思う。実は筆者も、スマホでのタッチ操作でゲームプレイをするのには思うところがある。手を出してみてもすぐに断念してしまう事もあった。タッチ操作の合う合わないは、ゲームジャンルによるところが大きいのだ。
そんな言うなれば否定派に近い筆者だが、この「DQIV」は順調にプレイできている。スマートフォン版「DQIV」の操作は、8方向のバーチャルスティックで移動し、話すや調べるをまとめて行なえる「便利ボタン」機能を画面タッチで使用する。スマートフォン版「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」と同じ、片手で操作できるスタイルだ。
これがよくできている。3D視点である「DQVIII」はまだしも、2D見下ろし画面な「DQIV」だとどうだろうか? という不安もあったのだが、プレイ当初に多少細かなコントロールに手間取る事(階段に吸い込まれるように昇り降りしたり)があったぐらいで、30分もプレイしていると手に馴染むようになった。
とは言っても、歩いている村人を追いかけつつ話したり、前述のように階段の横を通り過ぎようとしたのに昇り降りしてしまったり、1度手を離してから操作を再開しようとすると便利ボタンが押されたり、思っていない方向に移動してしまったりと、プレーヤー側が気を使って回避しないといけない操作のクセのようなものがある。それらを理解するのも含めて、慣れは必要だ。
そういうところはありつつも、片手でスマホを持ちつつ親指1本でプレイできる快適さはかなりのもの。車内等の移動中でもスッとスマホを取り出して、WEBやメールを見ているかのような自然なスタイルでプレイが楽しめるのは非常に魅力的だ。筆者の場合、外ではレベル上げしたりカジノに入り浸ったりし、家に帰ってからはボスやダンジョン攻略に挑むというような楽しみ方をしている。
一方、この片手スタイルにどうしても慣れない、しっくりこないという人への柔軟さがもう少し欲しいところもあるだろうか。横画面での方向キー&ボタンのような両手で持つスタイルも可能なら、より多くの人にすんなりと受け入れられるかもしれない。欲を言えば、横画面スタイルに併せて、iOSで言えば、ロジクールの「G550」やSteelSeriesの「Stratus」、AndroidでもBluetoothコントローラーなどへの対応がされれば、テレビ画面へ出力しての本格プレイもできるのだが……。1ファンとして、今後のシリーズ作品移植の際にもご一考願いたい。
続いては“DQらしさ”について。ストーリーやゲームバランス等の内容については、ニンテンドーDS版からの移植ということもあり、基本的に共通している(ファミコン版と比べれば、3Dリメイク時に演出等の変化はある)。ここでは“操作レスポンスの良さ”について触れたい。
筆者は、「DQ」の良さは操作レスポンスの良さからくる気持ち良さにあると考えている。ボタンを押すと「ピッ!」とお馴染みの効果音が鳴り、戦闘も会話もさくさく展開していく。その、気持ちいいレスポンスこそが秘訣だと。
そしてこのスマホ版はというと、レスポンスの良さに関してとても優れているといえる。家庭用プラットフォームでは、圧縮データの受け渡しからメモリ内での解凍&展開というプロセスがあり、それがいわゆる読み込み時間(処理時間)を生む。昨今ではディスクメディアでなくともどうしても発生しがちなものだ。それがわずかなものでも、「DQ」のレスポンスの良さを乱す。
だが、今時のスマートフォンの充分なスペックなら、そうしたテンポを乱す処理時間も軽減されていて、さくさく動く。演出的な間を除けばファミコン版レベルのレスポンスの良さだ。片手でも“スムーズに遊べるタッチ操作”と“処理の軽いレスポンスの良さ”。これが両方備わっているからこそ、筆者のようなタッチ否定派でもなんだかんだと遊べているというわけだ。そこにはもちろん、「DQIV」という作品自体の魅力も加わっている。
一応、細かいところを言うと、戦闘で「このモンスターなら全員『たたかう』でいーや」と、タップ連打していると、ターン終了前に「これで戦う」という誤操作防止の最終確認が現われるのだが、これは少々親切心が行きすぎているのかもしれない。1タッチ増やさなくてもいいのでは? と個人的には思う。
本作が、「リメイク」ではなく「移植」なのだと強く思わせるところにグラフィックスがある。さすがにベースとなっているニンテンドーDS版のものを高解像度な現代のスマートフォンに持ってくるのでは不足が感じられるところがあり、全体的に引き延ばし感があってジャギが目立ってしまっていた。
また、戦闘ではモンスターがレイアウト内に収まるよう小さめに表示されるのだが、そのぶん細部がだいぶ潰れてしまっている。キングスライムのグラデーションがかった体の色味も階段状になっていた。このあたりは今回のスマートフォン版はリメイクではなく、DS版の移植なのだと割り切って遊ぶほかないかもしれない。
逆に、サウンドは言う事なし。オーケストラアレンジされ、本格的な音でしっかりと楽しめる。お馴染みのオープニング曲、各章の主人公のテーマ曲、操作を気持ちよくさせる効果音の数々と、しっかり取りそろえられている。これまでリメイク移植されたハードとスマートフォンのスペックを考えると、サウンド周りに関しては最も豪華なのかもしれない。
プレイを中断できる「ちゅうだん」セーブがほとんどの場所で可能なのも嬉しい。大概の場合は、アプリをそのまま切り替えておくだけでも後にそのままプレイ再開できたが、念のため「ちゅうだん」できるというのは安心だ。
なんだか褒めつつも細かなところにチクチクと書いたインプレッションになってしまったが、これも愛あればこそ。繰り返すが、筆者は細かなところが気になりつつというところはあるものの、没頭して楽しめた1作だ。
「DQIV」は天空シリーズの幕開けを飾った作品であり、冒頭にも書いた「キャラの魅力」が光る名作。後にドラクエ4コマでネタにされたほどに孤独な王宮戦士の旅に、思いがけないユニークな仲間が加わった時の喜びたるや。プレイ済みの人は覚えているだろうか、あの喜びを……。
おてんばな姫と、なんだかんだ言いつつもついてくる気弱な神官とじいやの冒険。世界一の武器屋を目指して「DQ」の世界で商売をする斬新さ。美しい姉妹のシリアスな敵討ちの旅。いずれも個性的で、いろんな魅力がつまっている。そして、7人の“導かれし者たち”はそれぞれに世界の危機を知り、勇者と運命を共にしていく。
プレイ済みの人はもう1度その面白さと感動を、未プレイの人はこの機会にぜひ味わってもらいたい。
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