「Outward」レビュー
Outward
2020年12月9日 18:00
「チュートリアル」はゲーム開始前にプレイしないこと
「何を言っているんだ」と思われそうなのだが、このゲームのチュートリアルは主に「ゲーム本編中でわからなくなったことを確認しにくる場所」だと思ってほしい。
なお筆者もまずチュートリアルから開始したのだが、情報、情報、情報の洪水で、完全に頭がパンクした。
「なるほど、わからん」くらいの体でゲームをスタートさせてみたが、結果的にあまりチュートリアルの内容は必要なかったと感じた。 というのも、攻撃ボタンや回避ボタンなどの基本的な操作も全てゲーム本編で知る機会もあるし、他の要素も様々な試行錯誤を楽しむゲーム性のため、最初からチュートリアルをプレイしてしまうとかえってこのゲームの面白さを損ないかねない。
また、魔法などの要素もチュートリアル内で説明されているが、魔法はゲーム開始時には解放されていないので、チュートリアルで覚えておく必要がないのだ。
確かにチュートリアルでカバンや台所のところに触れておくだけで、なんとなくゲーム開始当初、自宅で何をするべきかなどもわかるのだが、35項目に及ぶチュートリアルの中で既にカバンの話がどこかに飛んでいた筆者は、自宅でカバンを背負った後、商店でカバンを買い替えようという気持ちにすらならなかった(なので1キャラ目の時は、自宅で手に入れたカバンのまま、数時間プレイをしていた)。
例えば魔法をいざ覚えた時に魔法の使い方を改めて確認しに行く場所だったり、戦闘で「回避やガードを忘れてしまった」という時に確認しにいったり、そういう取扱い説明書的なものが本作のチュートリアルだと思って良いだろう。
一方で、チュートリアルで戦う敵すら全く弱体化されておらず、チュートリアルながらいきなり死ぬこともあるというのが本作らしい。
ちなみに何度も「死ぬ」という言葉を使ってはいるものの、このゲームには明確なゲームオーバーは存在しない。闘いに敗北しても着ぐるみ剥がされたり、捕虜にされたり、その時によって状況は違うが、何かしらのシナリオは進行してゆく。敗北シナリオもいくつもあり、シナリオによってリスポーン地点も変わる。
時には「前にも助けてくれたあの人が、再び助けてくれた!」なんていうこともあり、そういうNPCには自然と愛着も湧く一方で、死ぬと本当に多くのものを失う時もある。その時はこの世界全てへのヘイトが漏れなく高まるので、注意してほしい。
このゲームでは、「データをセーブしておいて、こちらの選択肢を見てからまたロードしよう」ということは不可能。これは敗北シナリオに限った話ではなく、全てにおいて、「起こった出来事は変えられない」という、本作の信念とも言える部分だ。
余裕が出てきたら少し観光でもいかが?
危険な世界・オーライだが、美しい景色も魅力のひとつ。余裕が出てきたら、色んな世界を色んな時間、色んな季節で見て回ってほしい。
グラフィックス自体は決して最先端のものではなく、むしろどちらかというとPS3時代くらいのものに近い印象を受けるが、作り込み自体に妥協は見られず、各所で「凝っているなぁ」と感じる場面も多い。しかも、どこのフィールドでも音楽がめちゃくちゃ壮大である。
細かい点は多々あれど、それを上回ってくるスルメゲーム
今回のレビューでは、まだまだ本作の特徴に触れていない部分もある。最初こそ(ゲーム上では)ほんの数十分も経ったかで喉が渇き、腹が空き、眠くなり、敵と戦ってはすぐに怪我をしたり、感染症になったり、風邪を引いたり、消化不良を起こしたりという状態に手を焼きもしたが、不思議なことに理解ができてくるほど「もっと遊びたい」という欲求が湧いてくるのだ。
このゲームでは、敵と戦ってレベルアップするようなことはない。基本的にはお金を稼ぎ、装備をアップグレードしていくことで、攻撃力や防御力があがっていき、序盤に苦労していた敵はたった2~3回殴れば撃沈するようになり、一方で全く歯が立たなかった敵とも、互角に渡り合えるようになってゆく。何はともあれ、金。そしてその金を稼ぐためには、追い剥ぎが最高効率である。エリアを移動するたびに払う”旅人の糧食”も、お金があれば解決する。
なお、筆者はシエルツォからベルグへといくルートを辿り、しばらくベルグを拠点に活動していたが、必要な魔法を修得したり(銀貨が必要)、必要なクラススキルを修得したり(銀貨が相当数必要)、新たな装備を買ったり(当然銀貨が必要)、新たな家を買ったり(銀貨500枚が必要)と、相当数の銀貨を稼いでは消費した。この頃には既に「お金稼ぎ楽しい~!」と完全に頭が切り替わっており、受けたクエストすら放置して追い剥ぎ行為に精を出していたので、この世界でどう暮らすかはまさにプレーヤー次第だ。
プレイ当初はここまでクセの強いゲームだとは思っておらず、ゲーム開始序盤では深い心の傷(?)を負ったが、今では「『Outward』に出会わせてくれてありがとう!」という気持ちすら持っている。序盤の厳しいところさえ抜ければ、厳しさこそが胸に刺さってハマってしまうゲームで、死にゲーと呼ばれるジャンルが好きな人にも合っているのではないかと思う。
だが一方で、日本語の翻訳については少々残念なところもある。
余談になるが、このゲームは非常に実況向きだと、筆者は感じた。とにかくわからないことが多い中、配信者と視聴者とで話し合いながら進めていける上に、ボイスもワンポイントなので邪魔になりにくい。しかもこのゲームの大半は移動と戦闘のため、配信者も喋りやすく、視聴者もコメントを入れやすいのではないだろうか。なので、日頃からゲームの配信などをしている人にこそ、ぜひプレイしてみてほしいゲームだ。
もちろん配信以外にも、「ここまでこだわるか」という過酷な世界を楽しみたい人たちならば、絶対オススメ。本作でしか味わえないサバイバルライフを、楽しんでほしい。
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