2019年4月23日 00:00
キャラアニは、プレイステーション 4/Nintendo Switch用戦術型シミュレーションRPG「ラングリッサーI&II」を4月18日にリリースした。本作は、90年代に人気を博したシミュレーションRPG「ラングリッサー」の1作目と2作目をセットにし、グラフィックスの一新、フルボイス化、シナリオやキャラクターの追加などの新要素を加えたリメイク作品である。
91年にメガドライブでリリースされた「ラングリッサー」だが、その後、PC、PCエンジンと様々な機種に移植された。初代プレイステーションやセガサターンでも「ラングリッサーI&II」がセットになった仕様で発売されており、過去にプレイステーション版を熱心にプレイしていた記憶がある。
本稿では、「ラングリッサーI&II」をプレイした感想や手触り、本リメイクで進化したポイントなどを紹介していきたいと思う。
「ラングリッサー」が持つ奥深い戦闘システムがさらに進化!!
剣と魔法の世界、エルサリア大陸を舞台に、邪悪を封印したと言い伝えられる伝説の秘剣「ラングリッサー」をめぐる国同士の戦争、そして闇の軍団との戦いの物語を描いている。もとが90年代初期の作品だけあり、世界観やストーリーは王道中の王道。
本作で収録されている初代「ラングリッサー」と「ラングリッサーⅡ」はどちらからでもプレイできる仕様。基本となる作りは共通で、1ステージをクリアするごとに章が進んでいく、ステージクリア型の形式となっている。
本作は敵と味方が交互にユニットを動かしていくターンベースのシミュレーションRPGだ。キャラクターのカッコ良さや可愛さも「ラングリッサー」シリーズの魅力の1つではあるのだが、やはり本作の真髄は“戦略性の高い戦闘システム”にあると言えよう。キャラクターは指揮官ユニットとなり、指揮官ごとに最大6つの傭兵ユニットを雇って部隊を編成できるのが本シリーズの特徴。
傭兵は指揮官ほど性能は高くはないが、敵ユニットへの削り役や、ときには指揮官を守る壁になったりとかなり重要な存在である。ユニットにはそれぞれ属性があり、“歩兵は槍兵に強く”、“槍兵は騎兵に強く”、“騎兵は歩兵に強い”という3すくみの相性がある。これによりステージの敵に合わせて、どの傭兵を雇えば有利になるかという戦略を練るのも面白い。強いクラスの傭兵になればなるほど雇用費用が高くなるので、所持金との兼ね合いも大事になってくる。
指揮官ユニットには「指揮範囲」というものがあり、その範囲内にいる自軍の傭兵はステータスが大幅アップする。指揮範囲内で戦わせることで圧倒的に有利にはなるのだが、指揮官が成長していない序盤のうちは指揮範囲が狭いので活用するのがなかなかに難しい。この指揮範囲をうまく使えるかで戦況が大きく変わる。
自軍と同様に、敵も基本的には傭兵ユニットを引き連れている。そういった理由もあって1ステージに出現する敵は結構な数がいる。「ラングリッサー」シリーズを初めてプレイするユーザーが見たら“これは面倒くさそう”と思うかもしれない。確かにすべての敵を相手していたらステージクリアまで結構な時間が掛かってしまうが、部隊を率いる指揮官を倒せばその部隊の傭兵も全滅するので一気に敵を一掃することができる。大量な敵が用意されているからこそ、まとめて蹴散らしていくのが最高に爽快なのだ。
指揮官を集中的に狙っていくのが最も効率の良い戦い方ではあるのだが、筋金入りの貧乏性である筆者は、経験値欲しさに傭兵から1体1体潰していき、最後に指揮官を倒すというプレイスタイルを貫いている。正直地道な作業ではあるのだが、RPGで延々とレベルリングするのが苦にならない身としては、お気に入りのキャラクターを前線でチマチマ戦わせて成長させていくのを楽しんでいる。
戦闘の基本的な部分はリメイク前と変わらないのだが、グラフィックスが一新されたことにより戦闘シーンに迫力が増している。過去作ではめちゃくちゃシンプルな戦闘描写だったものが、今作ではキャラクターが細かく動き、ド派手なエフェクトを出して攻撃している。今作もグラフィックスをウリにしているゲームではないのだが、過去作を知っているとこの進化に感激してしまう。
進化したのはグラフィックスだけではない。システム面でも細かなところに手が加えられており、とても遊びやすくなっている。中でも大きかったのは、攻撃を仕掛ける前に予測ダメージや命中率がわかるようになったことだ。近年で考えたらそんなのはあって当たり前とも思うのだが、このリメイク以前の作品ではそれが無かったのだ。攻撃をするまで相手にどの程度ダメージを与えられるかが全くわからないという仕様で、強敵との戦闘だと相手にダメージを1も与えられないで返り討ちに合い、無駄死にをする場面も多かった。
他にも、戦闘シーンのスキップや、敵ユニットとの相性の有利不利が表示されるようになったりと、いたる部分で快適になっていることに驚かされた。
先でも、キャラクターを成長させるのが楽しいと述べたが、それは本作にある「クラスチェンジシステム」が面白くさせている。レベルが上がると手に入るCPというポイントを溜めることで上位のクラスにクラスチェンジができる。クラスチェンジをするとパラメータが飛躍的にアップし、さらにスキルの獲得や雇える傭兵の種類が増えるなど、キャラ育成を夢中にさせる要素が詰め込まれているのだ。
最大5段階までクラスチェンジさせることができる。成長過程で選んだクラスによって、最終段階の最上位クラスが変化するという作りになっている。原作では、成長させきった先の最上位クラスがイマイチだったとしてもやり直しがきかず、最後までそのクラスと付き合っていくしかなかった。
しかし、今作からは下位のクラスに戻すこともできるので、自分が理想とするクラスに成長させることが可能。過去作ではプレイする前になりたい最上位クラスを攻略本で調べて、そこから逆算して成長させていたものだが、今作ではそんな面倒なことは必要なく気軽にクラスチェンジさせられるのが素晴らしい。
新キャラクターやシナリオの追加、遊びやすさを随所に取り入れた神リメイク!!
今回のリメイクで、作品の印象を良くも悪くもガラリと変えたのが、キャラクターデザインの変更だ。過去の「ラングリッサー」シリーズのほとんどは、美少女を描かせたら右に出るものはいない(と思っている)うるし原智志氏がキャラクターデザインを務めていた。
ドリームキャスト・ワンダースワンの「ラングリッサー ミレニアム」や、ニンテンドー3DSの「ラングリッサー リインカーネーション-転生-」など、キャラクターデザインを変更した作品も中にはあったのだが、個人的には“コレジャナイ感”が否めなかった。
そして、今回のキャラクターデザインを務める凪良(なぎ りょう)氏だが、女の子のイラストがめちゃくちゃ可愛い。そして、男キャラも青年からオジサンまでのすべてがカッコいい。イラストの方向性は違えど、男キャラはカッコよく、女キャラは可愛いという、うるし原氏が描く「ラングリッサー」キャラの魅力にバシっとハマっているのだ。
これまで、「ラングリッサー」はうるし原氏以外には考えられないと思っていたが、今回のキャラデザには昔からのシリーズのファンである筆者も納得である。さらに初回生産特典には、イラストやマップがリメイク前の仕様になる「クラシックモード」がプレイできるDLCが封入されている。原作のうるし原氏のイラストで遊ぶことができるのは嬉しい特典だ。
キャラデザの変更に合わせて、キャラクターの声優陣も一新された。主人公のレディン役に逢坂良太さん、ヒロインのクリス役に佐倉綾音さんなど、現在第一線で活躍する実力派声優が数多く出演している。
リメイク以前はイベントシーンの一部にのみボイスがついていたが、今作では戦闘シーンからイベントシーンまでフルボイス仕様になっている。これによりキャラクターの魅力がさらに増している。二面性を見せるレディンの熱演は是非注目してもらいたい。
「ラングリッサーⅡ」以降では、選んだヒロインにより物語が分岐するのが特徴だったが、初代「ラングリッサー」ではルート分岐が無く、1本道のストーリーであった。しかし今作では大幅な追加ルートが用意されており、遊び応えが大幅にアップしている。
追加ルートには、新たなヒロイン「ベティ」が登場する。はじめ見たときは正統派ヒロインのような印象だったが、追加ルートをプレイしたらこのキャラの見方が一変した。ネタバレになるので深くは言えないが、かなりの衝撃的な展開が待っており、先が気になり過ぎてエンディングまでノンストップでプレイしてしまったくらいだ。ベティが活躍するルートは是非実際にプレイしてもらいたい。
今回から追加された新機能「シナリオツリー」もかなり便利だった。レベルやアイテムなどすべて現状のままで、クリア済みのステージ戻ることができるのだ。過去作では裏技コマンドでステージセレクトができたが、今回は正式にシステムとして導入されている。
難しくて行き詰ったときのレベル上げや、ルート分岐のポイントに戻って別のシナリオに進みたいときなど、さまざまな用途で重宝する。ただし、1つ注意点があり、クリア済みのステージに“戻ることはできても進むことはできない”。仮に10章から7章に戻ったとすると、8章、9章と自力でクリアして10章まで戻らなくてはならないのだ。
シナリオ間の移動には多少の制約はあるものの、有効的に活用すれば周回プレイもサクサク楽しむことができる。シナリオツリーではルート分岐のポイントや、分岐条件なども見られる親切設計なのも嬉しいところだ。
今回「ラングリッサー」シリーズをプレイするのはかなり久々であったが、正直止め時を見失うほどハマってしまった。もとが90年代の作品だけあって目新しいという要素はあまりないが、戦略性の高い戦闘システムやプレーヤーをどんどん引き込んでいくストーリーなど、今遊んでも色褪せない面白さがあるのだ。
昨今のゲームと比べるとグラフィックス面では確かに弱いかもしれない。リメイク以前にあったアニメムービーの削除などの惜しい部分もあるにはあるのだが、そういったマイナス部分を帳消しにする程の高い完成度で仕上がっている。
1本に2タイトル収録されているので遊び応えもかなりあり、ゲームクリア後はレベルを引き継いで周回プレイもできるので、何度も繰り返し遊んでしまう中毒性の高さがある。じっくり腰を据えて楽しめるゲームを求めているなら、「ラングリッサーI&II」をこのゴールデンウィークに遊び倒してはいかがだろうか。