「Anthem」レビュー

Anthem

全てがアタッカーの緩い共闘プレイと世界観が魅力! BioWareの新しいチャレンジにして、ポテンシャルを感じさせるアクションRPG

ジャンル:
  • アクションRPG
発売元:
  • EA
開発元:
  • BioWare
プラットフォーム:
  • PS4
  • Xbox One
  • Windows PC
価格:
8,424円(税込)
発売日:
2019年2月22日

 「Dragon Age」シリーズや「Mass Effect」シリーズといったアクションRPGの名門BioWareが新規IP、かつ新たなジャンルに挑戦した作品「Anthem」がいよいよ発売された。

 ジャンルは例に上げたタイトルと同様にアクションRPGとはなっているが、ゲーマー向けにわかりやすく表現すると“トレハン+TPS”というゲームだ。トレハンは何度も敵を倒しより良いアイテムを入手することを目指すというRPGの遊び方、TPSは銃撃やアクションで敵を倒すというシューターという遊び方。単体でも面白い要素をかけ合わせた作品になる。

 この組み合わせだけでもある意味では面白さへの期待値が上がるというものだ。FPSとTPSの違いや世界観など細かな違いはあるものの、同ジャンルには「Borderlands」シリーズや、「Destiny」シリーズ、「The Division」シリーズなどがあり、それぞれ一定の評価を得ているところからも本作へのハードルは上がる。

 それでは本作はどうか。結論から言ってしまうと、BioWareのチャレンジは成功と言える。とはいえ気になる部分もあるし、これからのアップデートによる変化に期待したい部分もある。

 それではどこが成功で、どこが残念な部分だと感じたか。早速レビューの方へと移っていこう。

【これが「Anthem」だ | ゲームプレイシリーズ、パート2】

強化外骨格・ジャベリンをカスタマイズして戦うトレハン要素強めのアクションRPG

 「Anthem」は、「Dragon Age」シリーズや「Mass Effect」シリーズで知られるBioWareが送り出す新規IPの作品だ。ストーリー性に重きを置いたこれまでの作品とは少し毛色を変え、空を翔ける爽快なアクションや、良いアイテムを入手できるまで繰り返しミッションにチャレンジするようなトレハン要素にウェイトを置いている。

 だがストーリーや世界観をないがしろにしているわけではなく、しっかりと作り込んでいる。ある事件でかつての高度な文明は滅んでおり、様々な脅威がはびこり、苛烈な環境下でなんとか生き延びている人類。プレーヤーは「ジャベリン」と呼ばれる強化外骨格に身を包み「フリーランサー」として、この状況を好転させるべく敵に立ち向かっていくというストーリーだ。

 世界観を表現するためにNPCとの会話や様々な資料にもこだわっていて、会話ではアドベンチャーゲームのように選択肢が表示されることや、町にあるオブジェクトからは様々な情報を得ることができる。入手した情報を整理して表示できる「ジャーナル」というシステムがあるのだが、このスクリーンショットを見ていただければこの圧倒的な作り込みの一端は伝わるかと思う。逆にこの点は気になる点でもあるのだが……そこは後ほど触れさせていただければと思う。

ジャーナルや細かな要素の作り込みはさすがの一言につきる。迷惑メールまで作るとは

 ゲームシステムはアクションRPGで、プレーヤーはこの「ジャベリン」という強化外骨格を強化しながらストーリーを進めていったり、より難易度が高いミッションに挑戦していくというシステムだ。

 ジャベリンの強さは基本的に装備が全てになる。つまり強い装備を入手することがジャベリンの強化に繋がるのだ。通常攻撃用の銃はスナイパーライフル、アサルトライフル、マシンガン……など様々な種類があるし、スキルも「ギア」というパーツの装備を変えることでスキルの種類や威力が変わる。さらにジャベリン自体に「MOD」というパーツをつけるスロットがあり、MODをつけることでジャベリンの性能強化や、より個性を引き出すことができるという仕組みになっている。

ジャベリンの装備を集めてカスタマイズするのが楽しい。どんな装備をするかでジャベリンの戦い方や性能がガラリと変わる

 ジャベリンのカスタマイズが終わったら出撃しよう。本作には大きく目的を達成するとクリアになる「任務」、高難易度ながらも豪華な報酬が期待できる「ストロングホールド」、自由に世界を探検できる「フリープレイ」という3つのモードがある。

 ストーリーは基本的に任務がベースになっており、ストーリー任務をクリア、ジャベリンの装備や素材を入手、さらにジャベリンを強化して次のストーリー任務へというのがベースの流れになる。ストーリーの途中でストロングホールドやフリープレイもプレイする必要があるので、まずはストーリーを追っていけば本作の遊び方が一通りわかるようなシステムになっている。

 ストーリーが終わった後はエンドコンテンツとして難易度を上げてストロングホールドやフリープレイに挑戦することができる。筆者はまだその領域までは達していないが、ここまできてからがトレハンの醍醐味になるのだろう。

基本的には任務をクリアしながら進めていく。エンドコンテンツは難易度を上げてストロングホールドやフリープレイを繰り返しトレハンすることだ。はやくその領域に到達したい!

爽快感、ゆるい共闘、そしてトレハン。魅力が詰まった本作

 本作の魅力はなんといってもこの爽快感だ。銃撃戦だけでも銃で撃って敵を倒すという、これまで数々のゲームに受け続かれてきた、本能に訴えかけるような爽快感は本作でも味わうことができる。RPG要素が強めなので、どんな武器でもヘッドショットで一撃とはいかないが、弱点という概念はあるのでそこを狙う楽しさはあるし、射撃音やヒットの感触などシューターとしての気持ちよさは本作でも楽しめる。

 またジャベリンという強化外骨格を使ったスピーディでアクロバティックなアクションもポイント。戦闘のフィールもジャベリンごとに異なるのだが今筆者が最もプレイしているのは「ストーム」というジャベリンだ。1キャラクターで様々な属性攻撃ができることが特徴で、シールドに効果的な属性を持つ氷のスキルを使ってシールドを削り、持続ダメージを与える炎のスキルを使って敵にダメージを与えるというような戦い方ができる。

シューターとしての本能に訴えかける気持ちよさは本作でも楽しむことができる

 また複数のスキルやアクションを組み合わせた「コンボ」というシステムがあるのだが、ストームはスキルの組み合わせでソロプレイでもコンボシステムを活かすことができるので大ダメージを与えることもできるし、超必殺技的な存在の「エレメンタルストーム」で一帯の敵を文字通り一掃することができる。このド派手で爽快感のあるアクションが筆者のお気に入りだ。

 他のジャベリンもガッツリと触れられたわけではないが、巨大な盾で前線に立ちつつ火炎放射器で敵を燃やし尽くす「コロッサス」は歩く戦車的な存在だし、高速で敵を切り刻む「インターセプター」はニンジャ的である。本作では1番汎用的な「レンジャー」でも数々のスキルで属性攻撃もできるし、銃撃戦もそつなくこなし、ゲージを溜めれば複数ロックオン可能なミサイルを撃ち込むができるといった具合で、未来的なスーパーパワーを持つジャベリンを生かしたパワフルで爽快感のあるプレイフィールはたまらない。

ジャベリンの持つユニークなスキルで戦えるのも魅力だ

 また緩い共闘を楽しめるのも良い。細かな役割は異なるもののどのジャベリンも“アタッカー”なので、極端に言えば全員が銃を撃ってスキルを使っていればOKだ。そのためテキストチャットやボイスチャットで細かな連携を取ることが必須というようなバランスにはなってない。さらに言うなら本作にテキストチャットは存在しない(ボイスチャットはある)。これも「雰囲気で共闘プレイをやってもらえれば万事OK」という開発元の考えの現われだろう。

 ただパーティーで連携するとよりスムーズに攻略できるのも事実だ。ザコ敵は各々が自由に倒していくというやり方で問題ないとしても、強敵は状態異常やコンボを積極的に活かしていった方が早く殲滅できる。ボイスチャットなどで連携していれば「今凍らせてるから集中攻撃して!」や「コンボ入れられるようにしてあるからスキル当てて!」といった具合で連携ができる。さらに慣れているプレーヤー同士では暗黙の了解的に連携して敵をサクサクと倒している。

 ゆるい共闘感を維持しつつ、連携すれば効果的に先に敵を倒せる、という絶妙なバランスは、ソロプレイでも楽しめるしパーティプレイでも楽しめるという美味しいどころをうまく両立させている良調整だと感じた。

緩い共闘感は魅力。ダウンしても復活してもらえるし、コンボも入れやすくメリットが大きい

 そして本作の1番の魅力はやはりジャベリンの強化、つまり“トレハン”である。

 トレハンは良い装備を入手できるまでグルグルと敵を倒し続けるというゲームの楽しみ方で、筆者はこのトレハンが大好きで、あらゆるゲームのトレハンにハマってきた。狙っているアイテムや強力なアイテムが入手できた瞬間の快感は何にも代えがたい。そして本作にもトレハンという魔の魅力を持った要素が盛り込まれているのだ。

 とは言っても筆者はまだゲームの進行度的には中盤、最終装備になり得るような逸品には出会えていない。だがゲーム序盤でもスキルのクールタイムが短くなるような効果や、氷など特定の属性ダメージを強化するものなどを入手できた。これが前述のストームと相性が良く、スキルのクールタイムが短くなればバンバンスキルを打ち込めるし、よく使うスキルの属性ダメージを強化すればそのまま火力アップに繋がる。こうして装備を集めていくのはそのままジャベリンの強さにも反映されるし、良いアイテムが出たときの快感たるや!

 ちなみに筆者はフレンドとプレイしているのだが、フレンドによるとさらに高ランクのミッションをプレイすると、ユニークな効果を持った「レジェンダリー」というレアリティの装備がドロップすると話してくれた。入手したレジェンダリーによってはスキル構成などを変更したくなるほどの効果もあるとのことで、早速トレハンの沼にハマっているようだった。筆者も早く最終装備を目指してトレハンがしたい!

これは序盤のスクリーンショットだがミッションをクリアするだけで、これだけ多くのアイテムが入手できる。レアリティによってアイテムの色が異なるので高レアなアイテムを狙いたい!

できれば吹き替えが欲しかった……。こだわったストーリーを満喫できないのは及第点

 一方で気になる点もある。これは魅力という解釈もできるのだが、本作は世界観やストーリーに非常にこだわりを持っている。本校でも触れたがゲーム中に挟まれるカットシーンやNPCの会話、そしてゲーム内の収集要素などをまとめたジャーナルなど、その偏執的なまでのこだわりは「Mass Effect」や「Dragon Age」シリーズといった濃厚なRPGを送り出してきたBioWareならではのこだわりだろう。

 ただ筆者にはこのこだわりがあまり魅力的に感じられなかった。NPCの会話からはゲームの世界観を表すために本作のオリジナルの用語が多数飛び出し、重要な会話かな?と思い話を聞いてみるとなんてことのない雑談であったり、ストーリーの肝は何か、何を伝えたいのかが伝わってこなかった。NPCの会話がゲームの進行条件になっているのだが、会話が冗長な上に一々選択肢を求められる。選択肢がストーリー展開に大きな影響を与えるわけではないようだ。インタラクティブ性を出したい気持ちはわかるのだが……。

 アクション部分がスピーディで展開も早いので、まどろっこしく要するに何が言いたいかわからない会話部分は噛み合っていない印象があった。カットシーンでも同じことが言え、ハイスピードな戦闘でアドレナリンが出てプレーヤーとしては興奮しているのに、内容が掴みにくいNPCの会話に字幕が入るとせっかくのスピード感が失われるのが残念だ。

 さらにミッションによっては戦闘中にもNPCがガンガン話しかけてくる。せめてこれが吹き替えなら戦闘中も会話を聞く余裕があるかもしれないが、最前線で敵の攻撃を避けながら銃撃戦を繰り広げている時に、皮肉や独自の言い回し、さらにゲーム内の用語を畳み掛けるように字幕で話しかけられても、正直困ってしまった。せめてもう少しわかりやすい表現、理想を言えば日本語吹き替えなどがあれば没入感も違ったのだろうが……。

冗長で独特な言い回しとゲームの専門用語、そして戦闘中も容赦なく話しかけてくるNPCと、ストーリーに重きを置いている気持ちは非常によくわかるのだが……

 他にも長すぎるロード時間や、小さなバグなど細々としたシステム的な不具合もいくつか見られたが、さすがに体験版の時にあった「日本語だとログインできない」というような致命的なバグはきっちりと潰されていたし、原稿執筆時点で配信されたDay1パッチで長過ぎるロード時間などをはじめ様々なシステムが改善されていた。先行配信から1週間で改善されたことや、今後も短いスパンでコンテンツを追加していくことも発表されているので、筆者は不具合やバランス調整などは順次解消されていくのではないかとポジティブに捉えている。

 ゲームのベース部分は非常に魅力的だったものの、体験版での不具合でミソがついてしまった印象がある本作。個人的には製品版の発売にあたり不安な部分もあったのだが、その不安点は概ね解消され、やっと本作ならではゲーム体験にちゃんと触れられた。今後も様々なコンテンツが追加されることは発表されているし、高いポテンシャルを感じた作品である。