SCEJ、PS3「グランツーリスモ5 SpecII」

「グランツーリスモ アジアチャンピオンシップ2012」を開催
山内一典氏とルーカス・オルドネス選手のトークも詳報


8月11日 開催

会場:日産グローバル本社ギャラリー



山内一典氏

 株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEJ)、およびソニー・コンピュータエンタテインメントアジア(SCE ASIA)は、プレイステーション 3用リアルドライビングシミュレーター「グランツーリスモ5 SpecII(GT5 SpecII)」の大会「グランツーリスモ アジアチャンピオンシップ2012」決勝大会を8月11日に神奈川・日産グローバル本社ギャラリーにて開催した。ここでは、大会やトークセッションなど主だったコーナーを時系列にレポートしていく。

 「グランツーリスモ アジアチャンピオンシップ2012」は、日本をはじめアジア諸国(韓国、台湾、香港、シンガポール、タイ、インドネシア)からP3「GTアカデミー 2012」上位入賞者によってアジア最速ドライバーを決める決勝大会。「GTアカデミー 2012」上位ランカー15名と、マレーシアで開催された「アジアオンライントーナメント2012 スーパーGTカップ」優勝者1名の計16名によって争われた。

 出場選手の大半が10代ということで、本シリーズのプロデューサーを務める山内一典氏は「『グランツーリスモ』のファンは“高齢化”してるんじゃないかと思っていた。日本のスポーツカーファンは高齢化してますので。ところが『グランツーリスモ5』がリリースされた後にずいぶんと世代交代が起きて、こんなに若い人たちが遊んでくれることに本当に驚きました」とコメント。

 予選ラウンドは、16人をAとBの2グループにわけて進行。各グループの上位4人が決勝戦に進出する。オンライン走行会(フリー)モードを使用し、スタート方式はピットスタート。スタート間隔は各車15秒おき。4周(アウトラップは非計測)3ラップでタイムが競われる。コースは「Tokyo R246」。車種は「370Z(GT Academy)'08」でタイヤはComfort:Softを使用。なお、公平を期するため使用コースや車両などの情報は直前まで選手たちに知らされていなかった。

 予選ラウンドレギュレーションの意図についてきかれた山内氏は「彩りもあって攻めがいもあって、かつ『グランツーリスモ』伝統のコース。タイヤに関しては、難しすぎず、簡単すぎず」といい、コースの攻略法についてきかれると「市街地コースなので、ミスをしないことだろうと思いますね。壁にヒットするとダメージが大きいかなと思います」とアドバイス。

 解説席は、山内氏が解説、モータースポーツ番組などでおなじみの中島秀之さん(モータースポーツアナウンサー)が実況をそれぞれ担当。くじ引きでグループと枠が決められた後、詰め掛けた大勢のファンが見守るなか予選ラップがスタートした。

 激戦を制してきたトップドライバーだけあって、予選は初っ端からハイレベルな争いが繰り広げられる。アウトラップでタイヤを暖めつつ、周回を重ねていく。神宮球場手前のS字、オーバルといった難所も、各選手とも限界と紙一重の領域まで攻めていく。グループA、Bともにトップタイムが2分2秒台という凄まじい走りを披露。山内氏やギャラリーから感嘆の声が漏れるなか、決勝に進出する全8選手が決定された。


現実のレースさながらのタイムアタックに会場もヒートアップ。面白かったのは、据え付けられたコクピットの操作系への各選手の対応。靴を脱ぐ、はだしになる、さらにはホイールではなくPS3標準コントローラーを使用するなど、選手ごとに自分なりのベスト環境を模索。視点もコクピット一択かと思いきや、海外選手のひとりは鳥瞰を選択していた

ルーカス・オルドネス選手

 予選後は、山内氏とレーシングドライバーのルーカス・オルドネス選手(以下:ルーカス選手)のトークセッションが行なわれた。

 ルーカス選手は、スペイン・マドリッド出身。大学でMBA取得を目指していた2008年にレーシングドライバー養成プロジェクト「GTアカデミー」欧州初代優勝。2009年に「FIA GT4欧州選手権ランキング」2位を獲得。2011年のル・マン24時間レースではLMP2クラス2位に輝き「ル・マンの表彰台に立つ」という幼い頃からの夢を叶える。同年インターナショナル・ル・マン・シリーズLMP2クラス年間チャンピオンとなる。2012年は山内氏とともにニュルブルクリンク24時間レースに初参戦し、日産GT-RでSP8Tクラス優勝。冷静沈着で正確なドライビング、鋭いマシンセッティング能力が持ち味。

 山内氏は「強調しておきたいのは、レーシングドライバーとしてだけなく人間としても凄く素敵な奴。ぜひそれをみなさんに紹介したい」とルーカス選手を紹介。ルーカス選手は「こんにちは。ルーカスです。今日はアジアGTドライバーの皆と会えて、とてもうれしいです。山内さん、招待いただきありがとうございます。よろしくお願いします」と、ややつたないながらも、完全な日本語で自己紹介。「この配慮が凄いでしょ? ちゃんと覚えないと話せないですから!」という補足からも、山内氏との良好な関係がうかがえる。

 日本は初めてですか? と聞かれたルーカス選手は「去年の11月にル・マンカップ最後のレースが中国で行なわれたのですが、そのあとに『ぜひポリフォニー・デジタルにいきたい』と思い山内さんにご連絡し、訪問させていただきました」とコメント。制作現場を目の当たりにして「みなさんにお会いできるだけで、凄い体験でした。日本に来ること自体が夢だったし、山内さんにお会いできることも夢みたいな話でした」と説明した。

 ルーカス選手をデビュー戦から見ている山内氏は「(デビュー当時は)ごくごく普通の若者だったんですよ。物凄く緊張しながらレースをやっていた。それから2年経ちル・マンシリーズでチャンピオンになって会ったとき、もう全然違った人になっていた。物凄くたくましくなった」と、その成長ぶりを語る。

 GTアカデミーをはじめたキッカケについてきかれると、山内氏は「元々は日産ヨーロッパとSCEヨーロッパが、ちょっとした企画としてはじめたプロジェクト。ちょっと面白いからやってみようよと始まったが、最初に勝者となったルーカスの人柄と才能が凄かったんですね。その結果、GTアカデミーが続くようになり、どんどん規模も大きくなって現在に至る、ということですね」と説明。

 ル・マンのコースを初めて走ったときの印象をきかれたルーカス選手は「GTアカデミーに入ってからレーシングドライバーになる夢はずっとあったが、まさかル・マン24に参戦できるとまでは思っていませんでした。2011年に初出場して本当に夢がかない、2008年から大きくステップアップでき、2位という結果も出せたし、凄く色々な勉強になった。日産、PS3、『グランツーリスモ』それぞれにとって偉大な瞬間だったと思います」とコメント。

 ルーカス選手とともに参戦したニュルブルクリンク24時間についてきかれた山内氏は「(準備に時間がかかったのでは?)そうですね。今年は特に……日本から持参したレースをするということだったので、準備だけで2カ月くらいかかりました」といい「今回は市販車でレースに出るという試み。レースをするならレーシングカーのほうが楽なんですよね。市販車にスリックタイヤを履かせてレースをするのは、結構大変。運転がスーパー難しい車だったんですけど、そこに1番苦労しましたね」と続けた。

 ルーカス選手の走りについてきかれた山内氏は「僕とは比較にならない優秀なレーシングドライバー。ルーカスは今回(ニュルブルクリンクは)初めてで『どんな感じでコースを攻めていくのかな』と思ったら、1周目から全開。本当に凄いなぁと思いました」とコメント。

 ルーカス選手は「世界最高のコース。1番長く、1番難しく、1番危ない“三拍子”揃ったコース。そこで山内さんと一緒にGT-Rを走らせられるというのは凄い機会でした。GT-Rは凄く速い車だけど、山内さんが仰ったようにロードカーみたいな状態で、運転もトリッキーでしたし、セットアップも物凄く時間がかかって。2カ月間、物凄く労力をかけて仕上げました。最終的にはクラス優勝して『グランツーリスモ』チームとしては最高の結果を残せたのではないかと思います」とコメント。クラス優勝だけでなく、総合30位も素晴らしい結果といえる。

 “ドライバーとしての山内氏”についてきかれたルーカス選手は「『いつか一緒に走りたいね』と毎年冗談みたいにいっていたのが、やっとここで実現できて、凄くいい体験でした。山内さんたちは、本物の車をシミュレーターで再現する作業に特化したチームなので、物凄くセットアップに詳しい。見ていて凄く勉強になりました。いい結果も出せたので、かけがえのない経験です」とコメント。

 セッションでは、ギャラリーからの質問に答えるコーナーが設けられていた。「今後、どういったレースに参加したいですか?」という質問には「今年は今年でテーマがあって。ひとつはルーカスとGTアカデミーの卒業生と一緒にレースに出ること。今回レースエンジニアをすべてポリフォニー・デジタルのトップエンジニアで構成し、マシンのセットアップなどをすべてそのチームでやった。それは物凄く大きな経験になり、未来の『グランツーリスモ』に確実に活かせるという手ごたえを感じている。また何か新しいテーマ、目的が見えたら、リアルなレースをやってみたい。ただニュルブルクリンクは凄く危ないところなので、ほどほどにしないとまずいかなと。本当にそう思います」と回答。

 今後出てくるダウンロードコンテンツについてきかれると「準備はしています」と回答。「GTアカデミーに参加して、そのプロデュースはあなたにとってどう変わりましたか?」ときかれたルーカス選手は「人生を180度変えた。最初僕はスペインのどこにでもいる大学生だったんですけど、その4年後に日産のプロドライバーで山内さんとニュルブルクリンクを走れて、何もかも変わってしまった感じ。GTアカデミーがどんどん成長していることも、今日みなさんにお会いできたことも凄く嬉しい」と回答。

 最後に司会進行から「『グランツーリスモ6』はいつですか?」ときかれた山内氏は「鋭意製作中、ということで。うっかり『いつ発売』っていっちゃうと、また遅れただのなんだのという話になる。もう言わない(会場笑)」と回答。最後には山内氏、ルーカス選手、会場のファンから抽選で選ばれた6人でエキシビジョンマッチを実施。コースはニュルブルクリンク GP/F、車はGT-R N24 GT Academy'12、タイヤはRacing:Hardを使用。接触でバリケードがふっとんでいくシーンに会場から笑いが漏れるなか、各選手とも素晴らしい走りを披露。3周で行なわれたレースは、ルーカス選手が2位、山内氏が5位という結果で終了した。


山内氏、ルーカス選手、そして会場から抽選で選ばれた6人がエキシビジョンマッチで対戦。各選手とも、とてもエキシビジョンとは思えない素晴らしい走りを見せてくれた

 「グランツーリスモ アジアチャンピオンシップ2012」決勝ラウンドは、コースとマシンがそれぞれ異なる3ラウンドのポイント制。1位10ポイント、2位7ポイント、3位6ポイント、4位5ポイント……(以下8位1ポイント)となっており、3ラウンドの合計ポイントが1番多かった選手が優勝となる。故意の接触、ペースアップにつながる悪質なショートカット、コースアウトを行なったプレーヤーは、各ラウンドから2ポイントがペナルティとして引かれる。

 決勝ラウンド1はコースにHigh Speed Ringを使用。周回数は5、車はSILVIA spec-R Aero(GT Aacademy)'02、タイヤはComfort:Softを使用。決勝ラウンド2はDeep Forest Racewayを使用。周回数は8。車は370Z Tuned Car(GT Academy)'08、タイヤはSports:Hardを使用。決勝ラウンド3はGrand Valley Speedwayを使用。周回数は10.車はGT-R R35 TC、タイヤはRacing:Hardを使用。

 開始に先立ち山内氏は「長いあいだ『グランツーリスモ5』オンライン上でレースを積み重ねてきた勝者たちですから、速く走ること、あるいは生き残ること、色々なことが全部パーフェクトにできると思うんですね。その名人芸を見たいなと思います」とコメント。予選ラウンドが終始クリーンな戦いだったことについてきかれると「それはね、恐らく“クリーンでなければ生き残れないから”なんだと思いますね。(ラフなファイトではオンラインのなかで戦っていけない? ときかれ)長続きをしない、ということだと思いますね」と指摘。

 山内氏が指摘したとおり、猛者8人によるレースは常にクリーンかつ激しい、とても素晴らしいものとなった。決勝ラウンド2に至っては、1位と2位がほぼ同時にゴールイン、+00.012差という凄まじい展開も。実況解説席の中島さん、山内さん、ルーカス選手が思わずうなるほどで、ギャラリーから大歓声と拍手が沸き起こる。激しい戦いを制したのは、決勝ラウンド1をトップで抜け、残り2ラウンドも粘り強い迫真の走りで会場を魅了した山田和輝選手が優勝。決勝トーナメントに進出した全8選手に、盾と特製ダイキャストモデルが進呈された。

 山内氏は「本当に素晴らしいですよね。2戦目、3戦目もそうなんですけど、重要なオーバーテイクがアウトから行なわれる。これ、物凄くハイレベルだからこそ起こることなんですよね」とコメント。トップドライバー8人による気高く激しい決勝大会は、大盛り上がりのうちに終了した。


実際のレースでも滅多に見られない白熱の競り合いの応酬。各選手の華麗かつ力強い走りにギャラリーから歓声と拍手が起こる、実に素晴らしい決勝戦となった。TOP3は、1位が山田和輝選手(日本)、2位が川尻拓麿選手(日本)、3位がANDIKA RAMA Maulana選手(Indonesia)

 イベントの最後には「グランツーリスモ」シリーズに数々の楽曲を提供してきたミュージシャン「daiki kasho」さんが、今回のために編成されたバンドを率いてスペシャルライブを実施。メンバーはdaiki kasho(Guitar)、Jonathan Underdown(Vocal)、hiroaki adachi(Digital Guitar)、rui(Drums)、noriyuki(Bass / 以上敬称略)。

 ハードロック超の激しいサウンドが響き渡ると、日産グローバル本社ギャラリーが一瞬でライヴハウスに早変わり。「EDGE OF THE WORLD」、「SOUL ON DISPLAY」、アンコール曲「SURVIVE」など全6曲を披露。ライヴの中ごろには、山内氏をステージに呼び込んで「Happy Birthday」を演奏するサプライズ演出。バンドがこっそり企画した本当のサプライズだったようで、山内氏ご本人は照れることしきり。大きな花束とダイキャストモデルが手渡されると、会場からはお祝いの大きな拍手が贈られた。

 30分を超える白熱のライヴは、最初こそVocalのJonathanさんが「ミンナ オトナシイネ!?」と煽るシャイな流れだったが、アンコール曲になるとボルテージが一気に爆発。椅子に座っていたギャラリーも全員総立ちで拳を振り声をあげる、感動的かつ素晴らしいものとなった。


ライブ終盤、先週誕生日を迎えられた山内氏をバンドメンバーとルーカス選手がお祝いするサプライズ演出。これには会場からも大きな拍手が贈られる。疾走感あふれるパワフルなライヴは、アンコールまで右肩上がりという理想的な盛り上がりを見せた


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(2012年 8月 12日)

[Reported by 豊臣孝和]