ディズニー/DeNA、ワールドワイドでの事業提携を発表

「ディズニーパーティ」など3タイトルを展開、他事業の提携も視野に


3月30日開催

会場:パークハイアット東京



 ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社と株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)は3月30日、東京都内にて共同で記者会見を行ない、ソーシャルゲームに関するワールドワイドでの事業提携を発表した。

日本限定ではなく、ワールドワイドを対象にしている点が大きな特徴となる

 発表会では3つのソーシャルゲームタイトル「ディズニーパーティ」、「ディズニーファンタジークエスト」、「マーベル カードバトル型ゲーム(仮)」の存在を明らかにし、日本のMobageのみならず、DeNAが進出している欧米、中国、韓国のMobageでも展開していくことを発表。また、具体的な詳細は明らかにされなかったものの、ソーシャルゲーム事業以外での提携も前向きに検討するとしており、近年、事業を多角化させる両社のユニークなコラボレーションに含みを持たせる発表会となった。

 各タイトルのサービススケジュールは、「ディズニーパーティ」が3月28日、「ディズニーファンタジークエスト」が4月2日、「マーベル カードバトル型ゲーム(仮)」が今夏としている。海外展開についてはいずれも今夏を予定。ビジネスモデルはいずれも基本プレイ無料のアイテム課金。


【ディズニー&DeNA】
「ディズニーパーティ」「ディズニーファンタジークエスト」「マーベル カードバトル型ゲーム(仮)」




■ DeNA守安社長「ディズニータイトルをグローバル展開の起爆剤に」

DeNA代表取締役社長守安功氏
ディズニーのコンテンツパワーと、DeNAのプラットフォームパワーを組み合わせた強力なコラボレーションとなる
日本展開は春、海外展開は夏。DeNAはグリーと異なり単一のプラットフォーム戦略を採らないため、海外展開は常にタイムラグが発生する

 発表会では、ディズニーからはディズニーインタラクティブジャパン代表取締役社長のポール・キャンドランド氏、ディズニー・インタラクティブ・メディアグループ ゼネラルマネージャー/バイスプレジデントのジャスティン・スカルポーネ氏、そしてDeNAからは代表取締役社長の守安功氏、取締役 ソーシャルゲーム事業本部 事業本部長 小林賢治氏という両社のトップが顔を揃えた。

 最初に登壇した守安氏は、2011年4月にリリースした「ディズニーマイランド」から両社の提携関係がスタートしたことを披瀝しながら、「ようやく本日大きな発表をできることになった」とホッとした表情で話した。

 守安氏は、今回の提携のポイントとして、1タイトル限定ではなく、現時点で発表できるものだけで3タイトルの大型の提携であること、そして日本のメーカーであるDeNAと、ディズニーグループの日本法人の提携でありながら、展開地域は日本に限定されず、ディズニーグループの本拠地である北米を含む、日本、欧米、中国、韓国と対象地域が広範にわたることを強調。

 2011年はサムスンやバイドゥなど海外のアライアンス先が増えたことに触れながら、各アライアンス先に向けた魅力的なコンテンツ、引きの強いソーシャルゲームを提供していくことが重要とし、今回の提携を通じて、世界中のユーザーに愛されるディズニーコンテンツを提供することで、世界中で利用される魅力的なソーシャルゲームプラットフォームに育てていきたいと抱負を述べた。

 守安氏は、今回の提携を通じて3つのことを期待しているという。1つはソーシャルゲーム市場の拡大。守安氏によればMobageのユーザー比率は男性が多く、コンテンツも男性向けのものが多いが、ディズニーコンテンツを加えることで、これまでMobageを使っていない層、具体的には20~30台の成人女性層も取り込めるのではないかと期待しているという。

 2つ目は、DeNAがプロ野球事業を始めたことに触れながら、各事業コンテンツを組み合わせることで、ソーシャルゲームに限定されない、新しい価値の創出ができるのではないかとした。3つ目については、守安氏が「これがもっとも期待していること」と前置きして、海外市場の開拓を挙げた。

 守安氏は、2012年の日本のソーシャルゲーム市場規模は4,000億円程度を見込んでおり、これと比較すると海外の市場規模はまだまだ小さく、「立ち上がっていない」と見ている。日本では2009年10月にDeNAが「怪盗ロワイヤル」をリリースすることで、数年で市場が急拡大したことを踏まえ、海外のマーケットにおいても、ディズニーコンテンツを投入することで、これが起爆剤となり、日本と同じような規模のマーケットが生まれるのではないかと期待を寄せているという。DeNAとしてもMobageを世界の人に利用されるプラットフォームを作って行くために、ディズニーコンテンツは必要不可欠な存在と考えているようだ。


【DeNAの基本戦略】




■ ディズニー・ジャパン「携帯コンテンツを日本で開発して多言語対応していく。これはディズニージャパンにとって初の試み」

ウォルト・ディズニー・ジャパン代表取締役社長ポール・キャンドランド氏
ディズニーグループの原点である「蒸気船ウィリー」
ディズニーが得意とし、ソーシャルゲームが不得意としてきたのが、20~30台の成人女性の獲得。今回の事業提携では彼女たちがメインターゲットとなる

 続いて登壇したウォルト・ディズニー・ジャパン代表取締役社長ポール・キャンドランド氏は、ディズニーグループの各事業を紹介するパワフルなトレーラーを挟み、ディズニーの原点である1928年に制作されたアニメ「蒸気船ウィリー」を見せながら、「このアニメーションは簡単なことに見えますが、当時は最先端のテクノロジーでした」と笑顔で口火を切り、グローバルメディアカンパニーとして常に新しいメディアを取り入れていることをアピールした。

 挨拶の中で強調していたのは、今回の事業提携が、フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行の大きな節目となるということだ。これまでディズニーグループでは、12年前からフィーチャーフォン向けに、壁紙やボイスを皮切りに様々なコンテンツを提供してきたことに触れながら、「スマートフォンは我々にとって大きなビジネスチャンス」とし、メディアカンパニーとして映像やゲームといったリッチコンテンツを流すことができると、その意義を説明した。

 ソーシャルゲーム事業の基本戦略と、3タイトルの紹介については、ディズニー・インタラクティブ・メディアグループ ゼネラルマネージャー/バイスプレジデント ジャスティン・スカルポーネ氏が説明を担当。

 スカルポーネ氏は、同社のソーシャルゲーム事業の基本戦略として、「ゲームフランチャイズの育成」、「ユーザー層の拡大」、「フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行」、「ディズニーグループとの連携」の4つを挙げた。

 ディズニーインタラクティブとしては、昨今のスマートフォンの爆発的普及と、ソーシャルゲームのムーブメントを踏まえ、これらに積極的に参入していくことで、「ゲームプロバイダーのディズニーを目指したい」と、今後スマホソーシャルを主要展開プラットフォームとしていくことを明言。

 ユーザー層の拡大については、今回の提携を通じてディズニーが得意としてきた20~30台の女性層に向けたコンテンツ配信を行なっていきながら、傘下の有力IPである「MARVEL」のソーシャルゲームも展開していくことで、従来の男性層にもしっかりとアピールしていく考えを披露。

 フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行についてはキャンドランド氏の発言を踏襲しながら、「日本に制作拠点を持ってグローバル展開していく。携帯コンテンツを日本で開発して多言語対応していく。これはディズニージャパンにとって初の試みです」と、日本法人としても非常に大きなチャレンジであることを報告した。


【ディズニー・ジャパン】
今回は、ディズニー・ジャパンとしてスマートフォンへの移行を明言したことが大きな発表となる




■ テーマパークと同様のキャラクターグリーティング体験が楽しい「ディズニーパーティ」

ディズニー・インタラクティブ・メディアグループ ゼネラルマネージャー/バイスプレジデント ジャスティン・スカルポーネ氏
DeNA取締役 ソーシャルゲーム事業本部 事業本部長の小林賢治氏
サービススケジュール。最初の2タイトルは日本と海外で展開時期がずれるが、「マーベル」から同時期の展開を目指す
両社の業務提携はソーシャルゲームのみに留まらないということだが、今後どのような広がりを見せていくのか楽しみだ

 タイトル紹介はスカルポーネ氏と、DeNA取締役 ソーシャルゲーム事業本部 事業本部長の小林賢治氏が、それぞれの立場から説明を行なった。

 まず、フラッグシップタイトルとなる「ディズニーパーティ」については、プレーヤーはパーティーのホストとなり、パーティーの準備をすることで、ディズニーキャラクター達がパーティーに参加してきて、記念撮影をはじめとしたキャラクターグリーティング体験が楽しめるという“パーティー運営ゲーム”。

 小林氏は「ディズニーキャラクターが大集合します。フィーチャーフォンでは様々な制約があったが、スマートフォンではリッチな動きをしてくれる」とコメントし、続けて「大きく言うと“育成ゲーム”。非常に高いカスタマイズ性を備え、自分だけのディズニー世界の構築が可能で、さらに高いソーシャル性によってユーザーとの交流が、ゲームの進行上キーとなる」と簡潔に説明。「今回は静止画ですが、可愛らしい動きをする。ディズニーファンにも納得のいくものが作れたのではないか」と開発責任者として手応えを感じさせるコメントを述べた。

 「ディズニーファンタジークエスト」は、カード化されたディズニーキャラクターを集めて、彼らと共に様々な冒険に乗り出すカードコレクションゲーム。「クエスト」、「ショー」、「合成」、「進化」、「ガチャ」とカードゲームとしてはオーソドックスな作りながら、ディズニーキャラクターがカード化されているのはやはり魅力的。同じキャラクターでも複数のイラストバリエーションを備えているということで、ディズニーファンにはたまらないカードゲームとなりそうだ。

 小林氏は「カードコレクションもので、カードゲームファンも納得していただけるようにたくさんの枚数を用意しました。ディズニーの世界観やストーリーをうまくゲームに取り込んで、ソーシャルゲームとして友人と協力、競争しながら進めていく」と説明。小林氏によればミッキーだけでも非常に多くのパターンが存在するという。

 3つ目の「マーベル カードバトル型ゲーム(仮)」については、開発はこれからということで、タイトルも仮称となる。世界中で人気のスーパーヒーロー集団である「MARVEL」のキャラクター達が総登場するカード型バトルゲームとなる。ゲームの詳細についてはスカルポーネ氏からも小林氏からも語られなかったが、キャンドランド氏は8月17日に「MARVEL」シリーズ最新作となる映画「アベンジャーズ」の公開を予定していることを踏まえ、同時期にゲームも提供したいとコメントしていた。

 小林氏は海外展開について触れ、対応言語は日本語、英語、中国語、韓国語の4言語で、すでにローカライズ作業もはじまっているという。ローカライズの方針については「日本語版をベースに、ソーシャルゲームの運用経験を活かし、サービスを行ないながら最適解を見つけていきたい」とコメント。海外展開においてもスピード感のある運営を継続していく方針を明らかにした。

 発表会後に行なわれた質疑応答では、大手同士の大型の業務提携ということで多くの質問が寄せられた。

 いくつか拾っておくと、まず開発については、「ディズニーパーティ」はDeNAの内製タイトルで、「ファンタジークエスト」はサイバーエージェントのモバイルゲーム会社Cygamesを交えた3社での共同開発となる。ビジネスモデルについて、従来と同じで、ディズニーとのレベニューシェアとなる。その比率については非公開。また、会員獲得数、売上目標についても非公開。

 他の事業との連携については、明言を避け、映画の劇場公開に合わせて、その映画に即したイベントをゲーム内で開催し、ゲームに新たなストーリーを提供すると同時に、間接的な映画の告知効果も期待できる一石二鳥の考え方を紹介するに留まった。もちろん対象は映画のみならず

 最後にディズニーがDeNAをパートナーとして選んだ理由については、1つはグローバルでの実績、知識があること。2つ目は日本で3,500万人の会員を擁しており、ディズニー/マーベルに馴染みが薄いユーザー層にもディズニーコンテンツをアピールできること。そして3点目は開発スタジオとしての実績があること。ディズニージャパンとしては「キングダムハーツ」シリーズに続く、成功事例を日本で築き上げることを目標としており、そのパートナーとしてふさわしいと考えているという。


【ディズニーパーティ】

【ディズニーファンタジークエスト】

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(2012年 3月 30日)

[Reported by 中村聖司]