DeNA、「モバゲーオープンプラットフォームForum2009」開催

パートナー企業を順次拡大。2010年3月に完全開放


10月5日 開催

会場:恵比寿 ザ・ガーデンホール



ディー・エヌ・エー代表取締役社長兼CEOの南場智子氏

 株式会社ディー・エヌ・エーは10月5日、同社が運営しているSNS「モバゲータウン」のオープン化に関する発表会「モバゲーオープンプラットフォームForum2009」を、恵比寿 ザ・ガーデンホールにて開催した。

 モバゲータウンのオープン化については、OpenSocialをベースにした「モバゲーAPI」を公開することが8月に発表されている。今回はその仕様だけでなく、ビジネススキームや今後のスケジュールについて発表された。

 まずディー・エヌ・エー代表取締役社長兼CEOの南場智子氏は、「オープン化の背景には、ソーシャルゲームの盛り上がりがある」と述べた。ソーシャルゲームとは、他のユーザーとプレイすることを前提とした社交性の高いゲームのことで、既に巨大なコミュニティを持つ海外のSNSを中心に、ここ1、2年で急激に盛り上がっている。

 南場氏は「ソーシャルゲームの盛り上がりがモバイルに押し寄せるのは間違いない」という。モバイルにおいてのソーシャルゲームは世界的にも未知数だが、「内部制作のタイトルでβテストを行なっているが、投入した瞬間に大盛況。ユーザーは準備万端で待ち構えている」としている。

 さらに今回のテーマであるモバゲーのオープン化については、「ディー・エヌ・エーとしてどう取り組んでいくか考えた。ずっと内部制作でやっていくのも1つの方法だが、多くのクリエイターが自由に創造していく場のほうが最後は勝利するだろうと思い決断した」としている。さらに、「決めたからにはナンバーワンになりたい。国内だけでなく世界を見据え、まずは日本で大きなプラットフォームを築き、皆さんと一緒に世界に進出していきたい」と語った。




ディー・エヌ・エー取締役ポータル事業本部長兼COOの守安功氏

 次にビジネススキームおよび今後のスケジュールについて、ディー・エヌ・エー取締役ポータル事業本部長兼COOの守安功氏が説明した。オープン化の検討時には多くのデベロッパーと話をしたそうで、その中で多く聞いた声が「オープン化されたら積極的にゲームを提供したい」と、「mixiにゲームを提供したが、本命はモバイルだと思っている」という2つだったという。これを受けて、オープン化を決断したという。

 ゲームを提供するパートナーへのサポートプログラムは、立ち上げ、マネタイズ、運用の3フェイズで提供される。立ち上げでは資金調達やプロモーションについて個別に相談に応じるという。

 マネタイズにおいては、課金システムとして既に既存のゲームで使われている「モバコイン」があり、そのまま流用される。「モバコイン」はキャリア課金、クレジットカード、WebMoneyに対応している。収益はゲーム提供者が7割、ディー・エヌ・エーが3割のレベニューシェアとなる。

 また広告については、既存のCPA(成果報酬)型アフィリエイト「ポケットアフィリエイト」、CPC(クリック単価)「ポケットマッチ」を提供し、さらにCPMに対応したものも用意するとしている。広告も7対3のレベニューシェアとなる。特にCPA型では、広告にアバターなどのインセンティブを付与できる仕組みが考えられており、最も重要な広告スタイルになるとしている。

 さらにアバターについては、ゲーム内でアバターを表示できるのはもちろん、アバターアイテムも販売できる。特定のアイテムをつけるとゲーム内のパラメーターが変化するなど、アバターと連動する機能も使用できるという。「モバゲータウン」ではアバターへのユーザーの関心が高く、アバターが欲しくてゲームを始めるという逆の流れも期待できるとしている。

 運用サポートについては、カスタマーサポート用のツールが提供されるほか、有料で一時受付の代行を提供することも考えているという。またソーシャルゲームでしばしば問題視される、急激なユーザー増加にインフラの増強が間に合わない問題について、対応できるインフラサービスを提供できるパートナー企業を紹介することも検討しているという。

 さらに、サイトのトップページやゲームトップページを改変し、よりソーシャルゲームを重視したユーザー導線を作るとともに、広告枠も準備。「モバゲータウン」内のミニメールを使ったプロモーションも提供するという。

 ユーザー間のコミュニケーションで必要になる自由文入力については、ディー・エヌ・エーが提供する「TextData API」を利用することで、テキストがディー・エヌ・エーのサーバーに保存され、そこでチェックされる。このAPIを使わないでもゲームは提供できるが、その場合はディー・エヌ・エーのチェックがない状態になるため、自動的に18歳未満はプレイ禁止となる。

 続いて守安氏が、ゲーム公開までの流れを説明した。まず本日10月5日からパートナー登録が開始され、続いてサンドボックス(開発環境)が近日公開される。ゲームの開発後は公開申請を行ない、ディー・エヌ・エーが審査する。この審査はゲームのクオリティチェックなどは行なわず、規約と公序良俗などのガイドラインに則っているかどうかだけがチェックされる。審査には3営業日程度かかるとしている。

 今後のスケジュールとしては、大半のユーザー導線機能と課金、CPA広告を2010年1月時点で公開予定。アバターアイテム販売やCPC、CPM広告は2月以降順次導入するとしている。

 なおパートナーについては、「安定稼動可能なプラットフォーム提供のために順次拡大したい」としている。既に先行開発を行なう30社が発表されているが、12月には80社、2010年2月に200社に拡大し、2010年3月に全解放される予定。今後拡大するパートナーの選定は、企画を11月中に提示してもらい、その中から選ぶとしている。


課金には既存の「モバコイン」を使用。ユーザーは違和感なくオープン化後のゲームをプレイできる独自のアバターを作れるだけでなく、ゲーム内のパラメーターに影響を与えるものも提供できる
トップページやゲームトップページが、よりソーシャルゲームを目立たせる形で改変される。自動集計のランキングや広告枠も用意されるパートナー企業は順次拡大される。完全開放は2010年3月の予定



 このほか、ディー・エヌ・エー モバゲーオープンプラットフォーム技術責任者の山口徹氏が「モバゲーAPI」についての技術説明を行なった。この内容については、モバゲーオープンプラットフォームについてのページで公開するとしている。また先行開発パートナーに選ばれた30社の中から、3社の代表者が今後の展開などについて語った。


ディー・エヌ・エー モバゲーオープンプラットフォーム技術責任者の山口徹氏「モバゲーAPI」の技術仕様については公式サイトで順次公開される予定
KLab株式会社代表取締役社長の真田哲弥氏。「恋してキャバ嬢」、「トイボットファイターズ」など提供予定の4タイトルを発表するとともに、携帯アプリとインフラ開発の実績をもとに「モバゲーアプリ参入支援サービス」を始めたいという株式会社ドリコム代表取締役社長の内藤裕紀氏。mixiアプリでの経験から、「ソーシャルゲームはヒット10本よりホームラン1本が重要。今後はアプリの本数を減らして1本に時間をかける」とコメントした株式会社ハドソン執行役員の柴田真人氏。「ハドソンの価値とは何か考えてやっていかなければならない。今後はコンシューマー、PC、モバイル、スマートフォンに向けて全方位的に展開し、今回提供するゲームがそのままiPhoneやPCで遊べることを目指す」という

 「モバゲータウン」のオープン化は、それそのものがユーザーのメリットに直結するものではない。ただ長い目で見れば、「モバゲータウン」のコミュニティを活かしたソーシャルゲームが多数出てくることは間違いない。特にこの半年間で「モバゲータウン」のゲームが大きく様変わりするはずなので、今後新たに登場するゲームに期待しておくといいだろう。


(2009年 10月 5日)

[Reported by 石田賀津男]