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【GDC 2013】北米No.1スマホアプリベンダーが語るサクセスの道

スタートアップは大胆であれ、そして進歩と成長を探し続けろ

3月25日~29日開催(現地時間)

会場:San Francisco Moscone Center

CEOのPerry Tam氏

 Storm8は2009年に北米で創業した、カジュアルゲーム開発を専門にするベンチャー企業。CEOのPerry Tam氏はOracleやfacebookを経てStorm8を立ち上げ、わずか数年でアメリカNo.1のスマホアプリベンダーへと成長させた。「GDC 2013」の時点では、会員数200万人以上、総ダウンロード数4億、DAU(デイリー・アクティブ・ユーザー)は1,000万人を数えている。

 スマートフォンアプリの市場は成長し続けており、次々と新しいベンチャーが名乗りを上げている。このセッションでは、Tam氏がStorm8を設立してから現在までの軌跡を3つの時期に分けて解説しつつ、Tam氏が目指す次の一手も紹介したい。

2009年、逆境の中でスマートフォンアプリの未来に賭ける

Storm8のゲームは2億台のデバイスで遊ばれている

 Tam氏がfacebookに籍を置いていた時代、facebookは右肩上がりの急激な成長で毎週のように世界を驚かせていた。このままどこまでも上がり続けていくのだと思わせるに十分な勢いだった。モバイルの世界ではまだまだフィーチャーフォンが大勢を占めており、2009年のiPhoneのマーケットシェアはわずか1%、Androidに至っては数字もでないほどだった。リーマンショックに端を発する不況が世界を覆っていた時期、スマートフォンアプリの会社を設立しようとするのは、誰が見ても無謀な冒険でしかなかった。

 誰もが「facebookにいた方がいいよ」というそんな時、Tam氏はすでにfacebookの次は何がくるのだろうと考えていたという。そしてiPhone Appでは稼げないと言われていた時代であったにも関わらず、次は必ずスマートフォンの時代がやってくると思った。次々とベンチャー企業がつぶれていく不況の中、スタートアップには時期が悪すぎると多くの人が思っていたが、逆に競争が少ない今こそがチャンスだと思い、Tam氏は2009年にStorm8を設立した。Tam氏は「スタートアップはチャンスを見逃さず、大胆に動くべき」と語った。

【会社設立時期の市場の動向】
Tam氏が在籍していたfacebookは右肩上がりに成長を続けていた
モバイル市場に置けるスマートフォンのシェアは、iPhoneのわずか1%のみだった
リーマンショックの不況で、スタートアップには厳しい時期だと言われていた
Tam氏はスマートフォンの将来に賭けることにした
チャンスを逃さず、大胆に動くことが大切

ベンチャーキャピタルか、それとも自力か。資金調達の選択

ソーシャル系のITベンチャーには30億ドルもの投資が集まった

 米Appleは2008年3月にiPhoneやiPod touch向けのソフトウェアを開発するためのSDKを公開した。2009年から2010年にかけてのアプリ創世記、Storm8は主にMMORPGを配信していた。この時期に急成長したのは Storm8だけではない。DeNAの傘下に入ったNgmoco、グリーが買収したOpenFeintなども北米市場でそれぞれ気を吐いていた。facebookではZyngaやPlaydomが爆発的なヒットを記録し、「GDC 2010」では初めて「Social & Online games summit」が開催され、ゲーム業界がソーシャルゲームを無視できなくなってきた。この頃ソーシャルやモバイルのベンチャー企業に投資された金額は、実に30億ドルにも上った。

 Storm8にも2つの選択肢があった。ベンチャーキャピタルのファンドから資金を調達するか、それとも自力で調達するか。どちらもメリットとリスクがあった。ベンチャーキャピタルから資金を調達すれば、更なる成長のために資本金を積み増すことができる。そしてベンチャーキャピタルが持っているネットワークの人脈や人材を活用できる。自力調達のメリットは早い段階で利益を手にすることができる。そしてスピードの速いIT業界のなかでファンドからの資金を待っている間にチャンスを逃す心配がない。結果的には、ベンチャーキャピタルから資金を調達したが、その決定を下す前にはすべての選択肢を評価、検討すべきだとTam氏は語った。

【資金調達から次のステージへ】
ベンチャーキャピタルか、それとも自力調達かの選択
2011年時点でのStorm8の状況
設立からこれまでのウォークスルー
現在のStorm8の状況

2012年からはソーシャルカジノ、アーケードに本腰

次のステージではさらなる他地域展開も

 2010年から2011年にかけては、カジュアルソーシャルゲームにも進出した。これまで配信してきたMMORPGはコアな男性ゲーマーをターゲットにしていたが、スマートフォンで受けるゲームはカジュアルでライトな女性向けのものが多く、このままMMORPGにとどまっていてはいけないと判断した。そして、全く違うターゲット層、ゲームの見た目や操作感、ゲームデザインを取り入れた。2011年から2012年にはGoogle PlayとAmazon AppStoreにもゲームを提供し始めた。こうして多様なユーザー、多様なプラットフォームへ展開を果たした。

 2012年からは、現在アメリカでトレンドとなりつつあるソーシャルカジノとソーシャルアーケードジャンルへと進出した。アメリカでは2013年にニュージャージー州でオンラインカジノ法案が通り、いよいよネットギャンブルが解禁されようとしている。ちなみに「GDC 2013」でもギャンブルに関するセッションがいくつか用意されていた。Tam氏はこのジャンルへの進出を、会社の第3ステージだと考えている。

 モバイル業界で成功する為には、とにかくスピードが命だ。たくさんのアプリを素早いサイクルで開発して、ゲーム同士のネットワークを構築していく。そして当然だが、常に新しいことに挑み続けることだ。スマートフォン市場は伸び続けており、特にAndroidはいまはまだ北米市場が中心になっているため、アジアやその他だけでなく市場にはたくさんのチャンスが眠っている、と今後はさらなる他地域展開への道筋を予想させた。常に成長し進歩し続ける会社でありたいという、おそらくそれは多くのベンチャー企業が目指す目標なのだろう。今年の勝者が、来年もまだ勝者でいられるかどうかすら分からないほどに変化の早いソーシャルゲーム業界には、まだ成功のセオリーは何も存在しない。だからこそ、多くの人を惹き付けてやまないのかもしれない。

(石井聡)