カプコン、iPhone/iPod touch用アプリの開発者トークイベントを開催

片手操作を追求した新作「逆転裁判 蘇る逆転」を発表


12月3日 開催

会場:アップルストア銀座



 株式会社カプコンは12月3日、iPhone/iPod touch用アプリ開発者によるトークセッション「Meet the App Developer: 『カプコンのゲームデザイン』」を、アップルストア銀座にて開催した。

 このトークセッションは、11月23日から全国のアップルストア7店舗を巡って実施されているもので、銀座が最後の会場となった。登壇者は、カプコンMC開発部長兼プロジェクト企画室長の手塚武氏と、MC開発部プロジェクト企画室の伊藤幸正氏。同社が配信中のiPhone/iPod touch用アプリ「バイオハザード4」と「魔界村騎士列伝」の開発について語るとともに、新作となる「逆転裁判 蘇る逆転」の発表も行なわれた。




■ タッチ操作をポジティブに考えた「ビジュアルパッド」による「バイオハザード4」

カプコンMC開発部長兼プロジェクト企画室長の手塚武氏

 「バイオハザード4」では、スクリーン上に方向ボタンやアクションボタンを配置してあり、そこにタッチして操作するスタイルを採用している。この方式は、コンシューマーゲーム機のコントローラーに存在するボタンを、スクリーン上で仮想的に再現するという意味から、一般的に「バーチャルパッド」と呼ばれている。

 しかし手塚氏は、本作におけるインターフェイスを「ビジュアルパッド」と呼んでいる。「ボタンがないから仕方なく作ったのではなく、スクリーンにボタンを置けることをポジティブに考えたい」という。具体的には、残りの体力が減るとボタンの色が赤く変わって知らせたり、はしごの近くに行くと自動的に上るボタンが現われて迷わないようにしたりと、ハードウェアでのボタンではできない表現を取り入れている。

 またバーチャルパッドでの方向ボタンは、プレーヤーが触っているつもりの位置と、実際に触っている位置が、若干ずれていることが多く、操作の不快感を生む原因となっている。カプコンではこれを裏で補正するような処理を加えているという。またバーチャルパッドの位置そのものを変更できるようになっており、これも「ビジュアルパッド」ならではの利点だとしている。

 ちなみに画面を直接タップするというアクションも実験したそうだが、手塚氏は「手前の敵から倒すという瞬間的な選択がゲームの面白さを生むが、タッチだと順番に関係なく倒せてしまい、つまらなくなる」と導入しなかった理由を説明。「面白い操作に合わせてゲームを作るのではなく、面白いゲームを作るための操作を考えることが重要だ」と述べた。


バーチャルパッドの方向ボタンは、指の腹が膨れている位置が付け根に近いことから、実際に触れる位置がプレーヤーの感覚とずれていることが多いはしごに近寄ると、ボタンが増える。どこで何のアクションが可能なのかがビジュアル的に判断でき、ガイド代わりになる
ボタンの表示位置や透明度を自由に変更できるタップ操作ではゲームの面白さが失われるという



■ iPhone/iPod touch向けに難易度を思い切って下げた「魔界村 騎士列伝」

カプコンMC開発部 プロジェクト企画室の伊藤幸正氏

 次に伊藤氏が、「魔界村 騎士列伝」について説明した。本作は配信開始から7日間、App Storeのランキング1位を獲得し続けた人気アプリ。携帯電話版が先に出ているが、iPhone/iPod touch向けにビジュアルを作り直し、クオリティアップしている。

 本作では、難易度設定について語られた。本作は当初、ノーマルモードでプレイできたが、鎧がなく1発でミスとなる「パンツモード」が後のアップデートで追加された。これについて伊藤氏は、「元々、パンツモードが本来のノーマルモードとして作られたもの」と説明した。

 「魔界村」シリーズは元々、非常に難易度が高いことで知られている。本作のノーマルモードについて伊藤氏は、「思い切って難易度を下げた。iPhone/iPod touchユーザーは幅が広く、やさしく作ってもレビューで難しいと言われることが多い」と述べ、対象となるユーザーに合わせたチューニングであることを説明した。

 その上で本作では、In App Purchase(アプリ内課金)に対応し、鎧が強くなる、コンティニュー回数が無限になるといったお助けアイテムも販売している。伊藤氏は「チートアイテムに相当するもの。元々の難易度でも十分クリアできると思うが、iPhone/iPod touchで久しぶりにゲームを遊ぶという人にも遊んでもらえるよう配慮した。難しいからといって全く遊ばれないのが最も嫌なこと」という。

 またこの追加アイテムの売り上げについては、「アイテム課金型のオンラインゲームで想定される数字より、かなりいい数字が出た」としている。


「思い切って難易度を下げた」という「魔界村 騎士列伝」。「パンツモード」が本来の「魔界村」のバランスだという「チートアイテム」というほど、さらに難易度を下げるアイテムをIn App Purchaseで販売



■ 新作は片手操作を追求した「逆転裁判 蘇る逆転」

「フリックライクインターフェイス」で片手でも快適な操作を実現

 最後に、カプコンのiPhone/iPod touch向けの次回作として、法廷バトルアドベンチャー「逆転裁判 蘇る逆転」が配信予定であることが明らかにされた。「逆転裁判 蘇る逆転」は、元々はゲームボーイアドバンス用として発売された「逆転裁判」シリーズの1作目に、シナリオを追加してニンテンドーDS向けに移植したもの。

 ゲームの内容はDS版を完全移植しつつ、iPhone/iPod touchを片手で持って操作できるインターフェイスを追求しているという。各種のコマンドを選ぶ際に、画面のアイコンに触れると、上下左右に別のコマンドアイコンが表示される。そのまま指を選びたいコマンドの方にスライドして離すことで、コマンドを選択できる。

 直接ボタンをタッチする形にすると、片手では操作ミスを犯しやすく、ストレスとなる。そこで上下左右に指をスライドすることで、選びたいものを明確にし、ミスをなくすというアイデアを採用した。同社はこの操作を「フリックライクインターフェイス」と呼んでいる。フリックとは、iPhone/iPod touchで画面をスクロールする際などに、スクリーン上で指を滑らせるように動かす操作のことで、それに似たインターフェイスという意味だ。

 配信時期は近日中としている。価格は未定。配信地域は日本地域と発表されている。


【スクリーンショット】
片手で縦向きに持ってプレイするスタイル。電車の中など、両手が使いづらい状況でも遊べるようにしたいという狙いがあるそうだ

(C)CAPCOM

(2009年 12月 3日)

[Reported by 石田賀津男]