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「ZENAIM KEYBOARD 60」、「ZENAIM ARCADE CONTROLLER」詳報
「ZENAIM KEY SWITCH」が拓く新たなゲーミングの地平。次はいよいよマウスやヘッドセットへ
2024年9月27日 22:08
- 【東京ゲームショウ2024】
- 会期
- ビジネスデイ:9月26日・27日 10時~17時
- 一般公開日:9月28日 10時~17時
- 9月29日9時30分~16時30分
- 会場:幕張メッセ 展示ホール1~11(千葉県千葉市美浜区中瀬2-1)
東海理化のゲーミングブランドZENAIMは9月26日、東京ゲームショウ ZETA DIVISIONブースにおいて、ZENAIMシリーズの新製品「ZENAIM KEYBOARD 60」および「ZENAIM ARCADE CONTROLLER」を発表した。ブースでは、開発機を用いて、実際にゲームを操作しながら実機を体験することができる。本稿では、東海理化 ZENAIMプロダクトマネージャーの橋本侑季氏に話を伺うことができたのでまとめておきたい。製品概要については発表レポートを参照いただきたい。
今回の発表は、2製品とも嬉しいサプライズだった。国内唯一のラピトリ&ロープロファイルキーボードである「ZENAIM KEYBOARD」を60%で出す。言って見ればただそれだけだが、「ZENAIM KEYBOARD」は既報のように出足で大きく躓き、そのリカバリーに長い時間を要した。「ZENAIM KEYBOARD 60」の発表は、東海理化が「ZENAIM KEYBOARD」のトラブルを克服し、ブランドへの自信とクオリティを取り戻したことを意味する。
「ZENAIM ARCADE CONTROLLER」は、ZENAIMが伝家の宝刀である「ZENAIM KEY SWITCH」をレバーレスアケコンに採用したらどうなるのか? というゲーマーの期待に真っ向から応えた、レバーレス界に突如やって来たダークホース的存在だ。どいらもゲームファンをワクワクさせるゲーミングデバイスといっていい。それではさっそく順番に見ていこう。
ラピトリ&ロープロ&60%キーボード「ZENAIM KEYBOARD 60」
「ZENAIM KEYBOARD 60」は、「ZENAIM KEYBOARD」のラピッドトリガー対応、ロープロファイルキー、プローティングデザインといったデザイン面、機能面の強みはそのままに、60%サイズに収めた有線ゲーミングキーボード。カーソルキー等を排除し、左右の間隔も縮めたさらにスマートな外観を獲得している。ゲーミングキーボードとして極めてクールなビジュアルだが、テンキーに加えて、カーソルキーもないため、普段使いには向かない。使い手に覚悟を求める、まさにゲームを遊ぶためのキーボードだ。
触ってみた感じ、ゲーマーとして本能的に「これは欲しい」と思わせるオーラをビンビンに放っている。「ZENAIM KEY SWITCH」のスッと入りぐらつきの一切ない上質な打鍵感、キートップのサラッとした触り心地、左右をギリギリまでそぎ落とし、さらに無駄を廃したシンプルを突き詰めたデザイン。そのいずれもが所有欲を大いにそそってくれる。今回体験したのはJIS配列だがUS配列も同時開発で進められており、日本とグローバルで同時展開を目指す。
橋本氏によれば、「ZENAIM KEYBOARD」完成後、かなり早いタイミングで60の展開を考えていたということで、現時点で完成度は非常に高い。強いて言えば、「ZENAIM KEYBOARD」と比較してさらにコンパクトになった分だけ軽くなった影響か、打鍵時にやや本体が動く感じ、グリップ力が十分でない印象を受けた。ただ、これはプロが見逃すはずもなく、製品化までにしっかり改良してくるだろう。
橋本氏が悩んでいるのが、キーキャップの素材だという。現行モデルではABSを採用しているが、これPBTにするかどうか。PBTにすると、キートップの耐久性が向上し、文字の刻印が剥げにくくなるが、キートップの感触が変わってしまうだけでなく、極小フォント施されたキートップの文字の刻印が難しくなる。耐久性を取るか、デザインを取るか。あるいはすべての課題を綺麗に解決する方法はないのか。ここはもう少し悩みたいという。気になる価格については、60だから安くなるというわけではないが、市場の動向も踏まえてできるだけ手に取って貰いたい価格を目指していきたいとしている。
レバーレスを制覇するポテンシャルを秘めた「ZENAIM ARCADE CONTROLLER」
「ZENAIM ARCADE CONTROLLER」は、昨今の格闘ゲームのムーブメントに合わせてマーケットが急拡大しているレバーレスコントローラーのZENAIM版だ。ボタン入力を検知するスイッチに「ZENAIM KEYBOARD」と同じ「ZENAIM KEY SWITCH」を採用しているのが最大の特徴で、それはつまり、アケコンで有りながらラピッドトリガーに対応しているということだ。
ラピッドトリガーは、従来のメカニカルスイッチとは原理的に次元の異なる入力の速さを実現する機構で、ざっくり表現するとキー(ボタン)の入力をアナログ検知し、0.1mm単位で入出力を判定できる仕組み。メカニカルスイッチでは、入力のオンオフに数mm単位の押し込み、戻しが必要となっていたが、ラピッドトリガーなら、わずか0.1mmレベルでそれが可能となる。
そして「ZENAIM KEY SWITCH」は、このアナログ検知を、磁気センサーによる無接点方式を採用しており、耐久性の面でも通常のメカニカルスイッチが数百万回レベルのところを1億回以上という途方もない耐久性を実現している。
橋本氏によれば、製品化はもう少し先をイメージしていたが、実際に開発に着手してみたところ、想定より早く製品化のめどが付いたという。今回出展されていたのは、「ZENAIM KEY SWITCH」でボタンを駆動させる基板とボタン、ハーネスをとりあえず組み込んだ初期のプロトタイプ。現行の仕様としては、標準的なサイズの筐体にレバーレスの上限となる16ボタンを扇状に配置、上部にはシステムキーが点在していた。カラーはブラックで、ネジ穴なども見えていたが、カラー、デザイン、細部の仕様はすべて変わるという。
内部基板や丸ボタン、スイッチ機構、ハーネスなど、「ZENAIM ARCADE CONTROLLER」を構成する各パーツは「ZENAIM KEYBOARD」と同様にすべて自社製ということで、他社では真似の出来ないオンリーワンのレバーレスとなる。アケコンと言えば、パーツ交換やカスタマイズも特徴だが、そこは一部を別売パーツとして用意する方針。逆に言うと、好みでボタンだけを三和電子製に差し替えるといったことはできない。これは、メイン基板、ボタン、スイッチ、スイッチ内基板、ハーネスが一体となって初めて「ZENAIM KEY SWITCH」として機能するためで、東海理化も、ニューカマーにして凄まじいレバーレスを生み出しつつある。
気になる発売時期は、「ZENAIM KEYBOARD 60」より後、2025年終わり頃を想定。プロゲーマーらによる本格的なテストやヒアリングもこれからということで、「ZENAIM KEY SWITCH」を採用したレバーレスというコアのコンセプト以外は、まだまだ大きく変わる可能性があるという。
もうひとつ気になるのが対応プラットフォームだろう。格闘ゲームはアーケードで産まれ、コンソールで大きく花開いたジャンルだ。PC対応だけでは、格闘ゲームファンを満足させることは難しい。
橋本氏は、「まだ各プラットフォーマーと調整する前段階」と前置きした上で、相談した上で対応が可能なものなら対応するが、開発工数や自社パーツで完結できないような場合は、PCのみ対応という仕様からスタートする可能性もあるとしている。橋本氏が心配しているのは、プラットフォーマーがライセンスにあたって課す条件だ。代表的な例では、PS4/5ではタッチパッドへの対応、Xbox Series X|Sでは専用チップの埋め込みが必須となる。ここの工数、コストがまだわからないため判断できないようだ。
なお、ラピッドトリガー対応キーボード界隈で話題になりつつあるソフト/ハードによる入力自動化が、一部タイトルで規制されつつある状況について橋本氏は、「しっかりメーカーとコミュニケーションを取って、大会で使えないということがないようにしていく」とコメントしてくれた。安心してランクマッチや大会で使えるというのは、ユーザーとしては嬉しいポイントだろう。
橋本氏に、2023年4月に開催されたZENAIM発表会で見せてくれたロードマップについて話を向けると、「当然やっていくつもりです。マウス、マウスパッド、ヘッドセット、チェアもありますからね」と改めて継続中であることをコメントしてくれた。
「ZENAIM KEYBOARD」にしても「ZENAIM ARCADE CONTROLLER」にしても、共通しているのはパーツメーカーという出自を活かして自社パーツで構成されていることだ。「マウスのトラッキングセンサーも自社開発するのか?」と尋ねたところ、「さすがにそこまでは考えていません。それをやっていたら何年かかるかわかりませんので」と、苦笑しながら語ってくれた。マウスにはPIXARTの最新のセンサーが採用される見込みで、スイッチやボディに東海理化らしさ、ZENAIMらしさを表現していくだろう。
、「ZENAIM KEYBOARD 60」と「ZENAIM ARCADE CONTROLLER」は、いずれもゲーム体験を深化させてくれるワクワクするようなゲーミングデバイスだ。ネックとなりそうなのは生産台数と価格だが、ひとまず、多くのゲーマーを魅了してくれる斬新なゲーミングデバイスの登場を喜びたい。時期が来たらレビュー記事をお届けするのでお待ちいただきたい。
(C)ZENAIM