インタビュー
【特別企画】サードウェーブのeスポーツ事業はどこに向かおうとしているのか?
尾崎健介会長らキーパーソン3名にインタビュー
2017年5月17日 13:18
ゲーミングPC「GALLERIA」および「GALLERIA GAMEMASTER」を展開するサードウェーブデジノスは、3月にeスポーツ大会「GALLERIA GAMEMASTER CUP」の開催発表、4月には代表取締役会長の尾崎健介氏の日本eスポーツ協会(JESPA)理事への就任発表、そして5月には世界最大規模のeスポーツイベント「Intel Extreme Masters(IEM)」への観戦ツアーを行なうなど、これまでにも増してeスポーツへの取り組みを深めつつある。
5月6日と7日にオーストラリアシドニーで開催されたIEMでは、ツアーに当選した3名の引率と視察も兼ねて、3名のスタッフが参加していた。前述の尾崎氏に加え、サードウェーブデジノス顧問で、JESPAとの実務を担当している早船淳司氏、そしてコミュニケーション開発部部長で、同社のeスポーツ事業を直接担当している大浦豊弘氏の3名となる。いずれも同社のeスポーツ事業を推進している人物ばかりであり、3名の当選者と共に、今回のIEMのために同社が制作した真っ白なロゴ入りパーカーを着込み、一緒になって大会を楽しむ姿が印象的だった。
それにしても、同社はなぜここまでeスポーツを重視するのだろうか。また、尾崎氏のJESPA理事就任は何を意味し、「GALLERIA GAMEMASTER CUP」はどのようなeスポーツ大会になるのだろうか。今回のシドニー取材では、そういった疑問を、3人のキーパーソンに直接ぶつける機会を得ることができた。eスポーツファンはぜひ注目していただきたい。なお、IEMそのもののレポート(参考記事その1、参考記事その2)も行なっている。合わせて参照いただきたい。
尾崎氏「日本のeスポーツをもっと身近なものにしていきたい」
――IEMはまだ初日を終えたところですが、初日を観戦された感想はいかがですか?
尾崎健介氏: 日本と比較してすごく盛り上がっていて、さすが海外だなと。
――サードウェーブデジノスさんが「CSGO」の日本大会を発表されましたが、その参考になりましたか?
尾崎氏: とても参考になりました。試合の映し方もそうですし、イベントとしての盛り上げ方とか、キャスターの話し方など、日本よりかなり進んでいるなと思いました。
――今回の視察の目的は何ですか?
尾崎氏: これから日本でどんどんeスポーツを盛り上げていきたいと思っています。すでに先行している海外を目にして、eスポーツの試合を実際肌で体感したいというのが正直なところですね。
――今回のIEMでは、シドニー観戦ツアーキャンペーンとして3名の方を招待するという、非常に珍しいキャンペーンを実施しましたが、どうしてこのようなキャンペーンを実施しようと考えたのですか?
尾崎氏: 我々だけではなく、PCゲームユーザーの人たちに実際に海外でやっていることを体験してもらう。雰囲気を味わってもらったり、試合を見てもらったりすることで、その後の広がりを期待しています。
早船淳司氏: 今回の当選者はたまたま20歳前後の方々ですが、そういう若い人たちに、自分たちのTwitterなどのSNSでつぶやいてもらったりして、eスポーツは海外でもこんなに熱いんだということを、まずはお友達とか知り合いに広めていただきたいと思っています。
――私が昨日IEM初日を観戦して感じたのは、客席の皆さんは、試合前からビールをがんがん飲んで、ポテトをガツガツ食べてるじゃないですか。日本とは年齢層が少し高い気がしますが、結構年齢が高い方もeスポーツを観戦されているんだなと思いましたね。
早船氏: 私も思ったのは、楽しみ方も上手いなと。観客もすごく盛り上がっていたじゃないですか。ああいうのが日本だとあそこまではないかなと。楽しませる側はもちろん、楽しむ側も上手いなと。
――イベント慣れしている感じですね。
早船氏: そうですね。
――日本だとeスポーツ大会そのものが少ないので、こういうときにどう楽しめばいいか戸惑うところがあるのでしょうね。
早船氏: そうそう。日本の方はちょっとかしこまっているところもあると思うのですが、先ほどのビールもそうですが、海外の方はすごく自由ですよね。
――この春、尾崎さんは「一般社団法人 日本eスポーツ協会(JESPA)」の理事に就任されましたが、この経緯と狙いを教えてください。
尾崎氏: 経緯はJESPA自体も2年くらい前から知っていて、ずっと準備委員会という形で関わっていたのですが、昨年正式に設立されて、われわれもeスポーツを日本の中で広めていきたいというJESPAの意義に賛同して、支援することにしました。
――尾崎さんのeスポーツに対するイメージはどのようなものですか?
尾崎氏: もうこちらでは、それこそ野球やサッカーと同じで、スポーツと認知された状況ですよね。今はまだ、日本ではそこまで行っていないですね。
――尾崎さんは日本のeスポーツをどのように変えたいと思っていますか?
尾崎氏: やはりもっと多くの人たちにとってeスポーツを身近なものにしていきたいと思っています。今はまだ一部のマニアというか、一般の人たちにとってはちょっと遠い存在なので。今は本当に好きな人たちが、さらに自分たちからアクセスしないといけないため、結構ハードルが高い世界になっています。これをもっと多くの人に経験、体験してもらえるようにしていきたいです。
――サードウェーブデジノスさんはこれまでも大会の協賛や機材提供という形で、eスポーツに協力してきましたけれど、サードウェーブデジノスさんがeスポーツを重視する理由は何ですか?
尾崎氏: 我々はコンピューターの会社です。コンピューターの発展が世界を広げていくなかで、ゲームやVRは、今後広がりを見せる可能性が一番大きい所だと思います。今までできなかったような描画、映像表現が、コンピューターの進化によって可能になり、特にeスポーツがその最先端だと思っています。
――サードウェーブデジノスさんのeスポーツに対する取り組みは、最終的にはビジネスに繋げていきたいのだと思いますが、ときおり、ビジネス以上の何かを感じるところがありますよね。ここまでやるかという(笑)。
尾崎氏: 単純にもっと楽しんでもらいたいですね。コンピューターをみんなに。その使い方の1つがeスポーツですね。
GALLERIA GAMEMASTER CUPの構想を語る
――先月、GALLERIA GAMEMASTER CUPの開催を発表しました。なぜPCメーカーがeスポーツ大会をホストしようと考えたのですか?
尾崎氏: 最新のテクノロジーを積んだ我々の製品を、今までだとそれを待ってくれていた、いわゆるヘビーユーザーのお客様に提供してきたのですが、それをeスポーツを通じて、その存在や、実際のPCの使い方、楽しみ方、そういったことを総合的に多くのお客様に広げられる良いチャンスだと思っています。製品を売るだけではなくて、実際にそのハードウェアを使って、「PCってこんなに楽しいんだよ」というところをもっと広げていきたいのです。
――GALLERIA GAMEMASTER CUPについてはまだ詳細が発表されていませんが、どのような計画なのでしょうか?
早船氏: 部門を2つ用意しています。チャレンジ部門というのは、BenQ様がやっている「eXTREMESLAND」というアジアの大きな「CSGO」の大会があるのですが、その予選を日本で初めて開催し、我々がその大会を主催します。そちらはプロフェッショナルなチームも含めて、強い「CSGO」のチームを日本で選んで送ります。それからエントリー部門というのが、先ほどの話にもありましたように、みんなが楽しめて、できるだけすそ野を広げたいというのがあるので、上手い人ばかりが集まるゲーム大会には参加しづらいと感じている方にも気軽に参加いただけるような部門。その2本建てで行こうかと思っています。
――詳細はいつごろ発表されますか?
大浦氏: 6月の頭くらいになると思います。
――大会はどのような形で開催されるのですか?
大浦氏: トーナメントはネット中心にやって、最終の決勝だけはオフラインで行ないます。それと実は、全国ミニイベントというのを並行してやっていこうと思っています。僕としては全国ミニイベントのほうがより重要だと考えていまして、ユーザー層の拡大が大きな目的です。今その場所をどこで開催するのか最終の詰めを行なっているところです。
――その全国ミニイベントは予選も兼ねるイメージですか?
大浦氏: 始めはそういうことを考えていたのですが、1年目は完全に種まきと捉えて、並行でやっていこうと考えています。先ほど早船からも説明があったとおり、トーナメントは、チャレンジ部門とエントリー部門の2つに分かれていて、チャレンジ部門はこの間発表されたタイトル「CSGO」で、エントリー部門は3タイトルで実施します。その3タイトルは全国のミニイベントで多くの方に体験いただきたいと考えています。そのイベントの中でトーナメント大会も紹介し、「もしよかったらお友達と参加してね」という告知もしていこうと思っています。2年目、3年目でもっともっとユーザー層が増えてきたら、そこから予選を兼ねた大会にしていきたいです。まずは1年目に関しては、草の根運動という形でまずは体験者数を増やしていきたいと考えています。
――エントリー部門のタイトルは、どのようなジャンルを選択する予定ですか?
大浦氏: できれば異なるジャンルで選びたいなと考えています。その中でも今回大きく僕たちがこだわりたいなと思っているのは、エントリーユーザーでも参加しやすい・楽しめるタイトルということです。今まさにタイトル選定を詰めている最中で、複数のゲームメーカー様からのお問い合わせもいただいているところです。我々としては、人気のタイトルという観点ももちろん大事ですが、それ以上に初めて参加したお客様にいかに楽しんでいただけるかが大切だと思っています。また今後我々は長期的な活動としてやっていきたいので、我々と一緒に頑張っていただけるパートナー様であるかどうか等、いろいろな視点から選定しています。
――IEMの初日はすごく盛り上がっていましたが、日本ではまだそこまでの「CSGO」コミュニティというか、ユーザー層がありませんよね。そこについてはどのように育てていくのですか?
早船氏: おっしゃる通りあまり人口は多くはないです。とはいえ、世界で戦うという意味で言うと、BenQ様もeXTREMESLANDの種目に「CSGO」を指定されています。我々としても、日本代表を決める以上、プロフェッショナルなチームだったり、それに準じたチームとすでに話をしていて、できるだけ強いチームを選抜して送り出したいと考えています。
大浦氏: 「CSGO」はグローバルで人気のあるタイトルなので、チャレンジ部門では世界を目指したいと考えている人にチャレンジして欲しいと思います。エントリー部門に関しては、別にグローバルで人気があるタイトルとかそういったことは抜きにして、日本でまずは人気があって参加者の皆様に楽しんでいただく。そんな位置づけにしたいと考えています。
ただ、チャレンジ部門にしても、いきなり世界のトップクラスを目指せるようなプレーヤーを多数輩出する状況にはならないと思っています。どのスポーツでもそうだと思いますが、プレーヤー人口のユーザーのピラミッドができ上がらない限り無理だと思います。野球とかサッカーが、今世界で戦えるのは、小学校、中学校、社会人にきちんとしたピラミッドができているからですよね。そのスポーツを愛する人たちがたくさんいて、その中で切磋琢磨して上がっていった人が世界で活躍できるということで、今活躍中の日本のeスポーツプレーヤーに続くプレーヤーが続々と現われないと世界で戦えないと思うのです。
そう考えると、遠回りかもしれないけれど、eスポーツプレーヤー人口の裾野を広げていくことが重要であると考えています。そのためには、まずは触れてもらうこと、経験して貰うことが大切です。PCでゲームをするという、まずはその第一歩を踏み出してもらうという機会を増やせるかどうかが鍵だと思うのです。もちろん世界を目指す人たちを僕らは応援していきます。それと同時にプレーヤー人口の裾野拡大の活動にも力を入れていきます。
――先月行なわれた発表会で大会を告知したことで、「CSGO」コミュニティは目標ができてモチベーションが上がったと思うんですね。やっと日本にも大会参加への道が開かれたと。といってもその頂点であるIEMには一足飛びには参加できないわけですけれど、最終的にはサードウェーブデジノスとしてそこまで面倒を見るというとおかしいですが、道を用意する計画はあるのですか?
早船氏: そこは、いますぐにというわけではなくて、今後またそういうことは検討していきたいという感じですね。まずはBenQ様がやっているeXTREMESLANDがターゲットです。それが9月末に中国で決勝戦があるのですが、今年はまずはそれに向けてやっていきたいと考えています。
大浦氏: まだ具体的にそこまでのことは考えていないです。まずはアジアできちんと戦える環境や機会を作ること。そういったことを目指してくれる人をたくさん増やすことが僕たちの役割であって、そこから先、世界と戦えるかというところは、我々の力だけでどうにかできる話ではなく、そこを目指す人をどれだけ増やせるか。切磋琢磨できるような環境を用意してあげられるかということが我々の役割なのではないかと考えています。
――オンライン予選は何チームくらいが参加するイメージですか?
大浦氏: 最終的には100チームとか200チームとかそのくらいの規模で参加して欲しいと思っています。
――サードウェーブデジノスさんは、日本で大会を行なっているJCGさんともパートナーシップがあるのである程度把握されていると思いますが、今日本にはいくつくらいの「CSGO」クランがあるのですか?
大浦氏: 「CSGO」という観点から考えると、本当に世界を目指せるというクラスは20チームとか30チームしかいないのではないかと思います。なので、「CSGO」の大会に関しては、チーム数の多さではなくて、本当にアジアで戦える強いチームに参加してもらいたいと思っています。
――IEMの賞金額の大きさ(「CSGO」1部門で総額20万ドル)にも驚かされますが、日本ではそのあたりの制限もありますよね。
大浦氏: よく賞金の額が問題になっていますけれど、問題はそこだけなのかってことを根本的に思っています。将来的には賞金問題についてはある程度解決されていくのではないかと個人的には思っていますが、今の問題はその前の段階だと思います。まずプレーヤー人口とファン層の拡大が第一であり、トップレベルの皆さんについては、そもそも大会が少なくなってますよね。であれば、賞金云々の前に、大会に出場できる環境が用意されているかとか、世界の大会に出場できるとか、まず活躍の場を作ってあげることが先決じゃないかなと。
――それは大会を開催するだけではなくて、一歩上を目指せるような、クランを育てていくためのシステムをサードウェーブデジノスさんが提供するようなイメージですか?
大浦氏: まだそこまで大がかりなことは考えていません。今JESPAでリーグが立ち上がっていますが、それをどう盛り上げるかというところが、まずは喫緊の課題です。
――JESPA主催リーグにおけるサードウェーブデジノスさんの役割というのは、どのようなものですか?
大浦氏: 基本的にはまずそこを盛り上げて、認知度を上げる。一般のお客様にeスポーツの楽しさというものを味わってもらうということを我々としても支援していきます。
――まだ一般にはJESPAリーグの全体構想が伝わっていませんが、今水面下でどの程度動いているのですか?
大浦氏: 我々はJESPAに加盟していますが、JESPAのスタッフではないので、全体の戦略というところに関しては、まだお伺いしていないです。逆に我々の方がJESPAの後押しをするという意味で、もともとJESPAと全国各地のネットカフェなどでユーザーを増やしていきましょうというお話をした中で、我々がまず汗をかいて動いていくと。ちなみにこれからやろうとしていることは、もともとJESPAさんと話をして、こういうことができたらいいよねという話の中で出てきた内容をやっていることなので、我々だけでという話ではありません。
――先ほど大浦さんがおっしゃった全国ミニイベントというのは、いつくらいに実施する予定なのですか?
大浦氏: できれば6月から開始したいと思っています。
――というと発表からすぐという感じですね。
大浦氏: できればそのくらいのスピードでできればと思っています。
――同時に大会の告知を行ないながら、同時平行して予選を実施する感じですか?
大浦氏: そうです。
――決勝戦はオフラインで開催するということですが、会場はどのあたりを想定されていますか? さすがにIEMの会場ほど大きくはないと思いますが(笑)。
早船氏: IEMというのは、何万人という規模じゃないですか。こんなに集められたらいいんですが(笑)。万単位のファンを集めて、このスタジアムが埋まるくらい、将来はこういうふうにしたいですが、いきなりは無理なので。今年はもっと秋葉原とか、あの辺りか、まあわからないですが。そこまで大きくないところでやろうかと。そんな感じです。
大浦氏: 場所は今いくつか候補が上がっているところです。都内の、ある程度の収容人数のあるところではやりたいなと思っています。
――開催期間は1日だけですか?
大浦氏: 当初1日で考えていたのですが、もしかしたらタイトルが増えるかもしれないので、2日になるかもしれません。
――例えばチャレンジとエントリーで計4タイトルだとすると、その4タイトルすべてのトーナメントを2日間かけて実施するわけですか?
大浦氏: エントリー部門のタイトルは3タイトルと決めていて、その3タイトルと「CSGO」を入れた4タイトルというところは動かないのですが、それ以外に特別枠のようなもので何タイトルかを追加するかもしれないです。エキシビションマッチのような形で。
IEMから受けた様々な刺激。実況解説者も含めてeスポーツの裾野拡大へ
――大浦さんは、シドニー観戦ツアーの当選者の引率もされていましたが、どのような感想を持ちましたか?
大浦氏: やはり若い人たちは僕ら以上に詳しいので、色々勉強になってますし、僕たちがやろうとしていることは間違っていなかったなと実感しています。
――それはどのあたりで感じますか?
大浦氏: 当選者の方のコメントですが、これまでeスポーツはオンラインでずっと見ているし、それで自分自身盛り上がっているからわざわざ来る必要はないと思った。けれど、実際に来てみたら、この会場の圧倒されるような熱気と、演出の格好良さ、選手もまさにアスリートという感じで、すべてがカッコイイ。観客の応援も凄いですね。自分たちの想像していたeスポーツはぜんぜん違う世界だった、という感想を持ったようです。また、日本にもこんなeスポーツの盛り上がりが早く来て欲しいと、嬉しい言葉まで貰えました。
今回のツアーを企画したのは、僕らも含めて世界最高峰の本当のライブ感というのを目の当たりにするとマインドチェンジを起こせるのではないかというところがあったので。やはり企画として間違っていなかったと思います。
――若い世代のゲームファンと接して感じるのは、ゲームって遊ぶものではなく見るものだと捉えている人が多いことです。人のプレイしている映像を見てそれで完結する。これはゲーム業界にとっても危機的な状況だと思うのですが、こういうところに来ると、どんな人間も変わりますよね。遊んでみよう、あるいは参加してみようと。ちょっとずつゲームに対するマインドが変わってきますね。
大浦氏: 今回応募してきた方、みんなそれぞれすごく思い入れの強い方です。昨日ツアーの参加者と一緒に歩いていたら、外国人が前から歩いてきたんですよ。普通の若い外国人だと思ったら、それはデンマークのeスポーツプロチームAstralisで、今、世界最高峰のチームだったんですね。それを僕らはわからないんです。でもツアー参加者は一瞬でわかってるんです。そのあとすぐに握手して、写真撮って、みたいな風に交流を楽しんでいました。
例えでいうと、街を歩いていたらサッカーのブラジル代表チームと偶然会って記念撮影して貰うようなそんな感じですよね。それは感動するでしょう。若い世代は自分の好きなことは自らどんどん深掘りして情報を集めて楽しむというパワーを持っていますが、eスポーツの熱狂的なファンもやはり世界の情報をいち早くゲットしているんだなと。そういう熱狂的なファンがさらに大きな感動と出会えたらマインドチェンジが起こって周りの人たちにも影響を与えるんだろうなと。こういうことが少しずつ広がっていくといいなと思いました。
早船氏: 昨日会ったプロチームもそうですが、やはり彼らはスターなんですよね。憧れみたいな。日本はまだ残念ながらそこまでのチームっていないのですが、そういう憧れるようなプロフェッショナルなチーム、街中で出会ったら一緒に写真を撮りたいファンがたくさん集まってくるような選手。そういう存在を日本でも確立させていきたいですよね。
――IEMで様々な“気づき”がありましたが、ひとつは実況がすごく上手いですよね。試合の実況もそうですが、セミファイナルで2:0であっさりSK Gamingが勝って、次の試合まで1時間以上空いてしまってどうするのかと思ったら、その間しゃべくり倒すんですから驚きました。
早船氏: さっそく試合を振り返ったりしてましたね。
大浦氏: キャスターが大人のスポーツキャスターですよね。日本では、どちらかというとわりとまだ若いキャスターというイメージがあるのですが、今日のキャスターはきっちりしゃべって、やはりイベントとして成熟しているなという印象です。日本を悪く言うわけではないですが、やはり選手だけでなくキャスターも含めてれっきとしたスポーツなんだなという感じがしました。
――GALLERIA GAMEMASTER CUPでは実況はどうする予定ですか?
大浦氏: 今我々は、eスポーツというものを育てないといけないという中で、実況できる人を育てていくことがすごく重要ではないかと思っています。我々もまだ勉強中なので、やはりルールだとか、試合中に何が起こっているのかなど、このプレーヤーのどこが凄いのかが正直よくわからなかったりします。それをやはりエントリーユーザーの方にもわかりやすくお伝えいただけること、面白く伝えていただけることは、実はeスポーツプレーヤーを育てるためには、そこも頑張らなければいけないという気がしています。これからそういう実況する人たちを応援していくことにも力を入れようと思っています。
――具体的にどのようなことをやろうと考えているのですか?
大浦氏: まだ企画中ですが、例えば、この間のファンフェスだったら、YouTuberや人気生主を一堂に集めるようなことをやりました。ゲームをやる人から見ると、単に可愛い女の子をイベントに呼べばいいということではないんです。ゲームを知ってないとダメなんです。「あ、こいつゲームのことわからないな」とすぐにばれちゃうから。やはりちゃんとゲームのことがわかっていて、それを面白可笑しくしゃべれる人。そういう人が今後重要になってくると思います。ですから、今、既に何人か当たっています。
――先日のイベントはまさにそういう主旨になっていましたね。あれがある意味伏線というかトライアルになっていたわけですね。
大浦氏: 我々はあれで、自分たちの目指すものは間違っていないということが確信に変わりました。人気の生主さんが10人くらい集まって、そこで実は初めてプレイしたゲームという生主さんがたくさんいたのですが、それでもすごく楽しみながらやってくれていて、僕自身もそれを見て楽しかったのです。やはり日本にはこのアプローチが有効だなと思いました。
例えばeスポーツでも韓国とか中国では完全に土壌ができ上がって、若い男の子が勝ち負けにこだわって切磋琢磨しているという状況だと思いますが、今の日本人の若い子に、そういう映像を見せてもたぶん引かれるんじゃないかと思います。それよりはみんなでワイワイ楽しむというところが重要で、ファンフェスで感じたのもまさにそれです。人気生主さんを複数集めてみて、若手の芸人みたいにみんなで遊ぶという状況を創れたのですが、日本はまずはそこじゃないのかなと。エントリーユーザーが、自分はまだやったことがないし、下手なんだけれど、参加してみようと思わせる、その大きな一歩を踏み出させるためにはああいう空気感が重要なのではないかと。
――エントリー部門の実況は想像が付きましたが、「CSGO」の実況はどうする方針ですか?
大浦氏: 全然違うものになると思います。「CSGO」は正当なeスポーツ実況で、エントリー部門はどちらかというとお笑い芸人みたいにワイワイやってみようという。共通項としては、「きちんとゲームがわかってるよね」ということが大事です。
――現在大浦さんは、サードウェーブデジノスのeスポーツ事業を推進しているわけですが、その最終目標はどこにあるのですか?
大浦氏: まずはやはり、日本の中でeスポーツのカルチャーがきちんと世の中に認められることですかね。それを1つの大きな目標にしています。
――1年は種まきで、2年目、3年目とおっしゃってましたが、今何年計画で考えているのですか?
大浦氏: 具体的に何年計画だと決まっているわけではないのですが、我々の中では3年計画として目標をセットし、戦略を立案しています。それの最終完成系がいつかというのはまだわからないですが、まずは2020年というのが1つの大きなターニングポイントになると考えています。いわゆるオリンピックの年に、次のオリンピックを狙うとか、裏ゲームオリンピックを開催するとか、そこまでに世界的な認知が広がっているところを目指したいです。
――もし日本、東京のオリンピックにeスポーツが何らかの形でオリンピック競技に関連するようなことになったとしたら、何らかの形でサードウェーブデジノスさんも協力する?
大浦氏: していきたいと思っています。
――上手くいけば日本武道館みたいなところで、でっかいeスポーツイベントができるといいなと。
大浦氏: いずれそういったことをやっていければいいなと。
――Qudos Bank Arenaはデザインが日本武道館っぽくて、日本武道館でやったらこんな感じなんだろうなと思いました。
早船氏: 似てましたよね(笑)。
大浦氏: これぐらいだったら日本でも将来的に開催できるかなと感じました。もちろん、日本にあれだけ観客がいなければいけませんが。試合の演出や映像、実況も含めて、かっこいいと思いますけれど、日本にも優秀な人間はたくさんいるので、同じ事は十分できるなと思いました。後はそこに熱狂して集まってくれる人たちをどこまで増やせるか。それは一足飛びにはいかず時間が掛かると思います。
――今回、主催のインテルさんともミーティングを行なったと伺いました。インテルさんとはeスポーツにおいて今後どのようなパートナーシップを結んでいくのでしょうか?
尾崎氏: インテル様とはいろいろな所で繋がっているのですが、インテル様も当社も、もっとeスポーツを盛り上げていきたいというところでは共通しています。お互いに別の立場がありますので、それぞれeスポーツの発展のさせ方、盛り上げ方、支援の仕方はそれぞれやり方が違うところはあると思うのです。ただ要はゲーム大会のサポートとか、多くの人に触れてもらうにはどうすればいいのかというところは、お互い協力できるところがありますので、その都度模索しながらやっていければいいなと考えています。
――私は、その話を聞いたとき、サードウェーブデジノスさんが協賛する形で、日本でのIEMの開催を模索しているのかなと期待したのですが。
尾崎氏: まだそこまではいかないですね。このインタビューで「狙ってますよ」なんて言っちゃうと、インテル様に伝わっちゃうから(笑)。
――ただ、尾崎さんがここにいるというのは、それなりに真面目に考えているという証拠ですよね。
尾崎氏: そうですね。今後もしそういう展開があるのであれば、何かしらの形で我々も関わっていきたいですよね。
――最後に日本のeスポーツファンに向けてメッセージをお願いします。
尾崎氏: 我々は本当に本気で日本でeスポーツのムーブメントを起こして、最終的にサッカーや野球と並ぶようなカルチャーにまで持っていきたいなと思っています。我々の活動にぜひ期待していただきたいですし、その活動に賛同するよという方々は、ぜひ僕らと一緒に頑張っていきましょう。
早船氏: 私もeスポーツに携わってきて半年くらいですが、実際にいろんなところでeスポーツの波は起こっているんですね。日本は全然遅れていると思っていたのですが、それなりに育ってきています。JESPAも今年2回目のリーグをやりました。いろんなところで種が芽吹いてきているなと言うのを肌で感じていて、ここでガッと気合を入れていって、上の方向に向ければ、日本のeスポーツ業界も盛り上がっていくのではないかなと。今年何とか盛り上げて第一歩を踏み出せればなと思います。
大浦氏: 日本のeスポーツはこれからという段階ですが、実際にはeスポーツのコミュニティはすでにあるんです。後は、世の中にオープンな環境にするだけです。我々も、すでにeスポーツに対して熱い想いを持ったユーザーがいる、というところはすごく感じているので、まさしく今年から、まさしくこのタイミングから、というところだと思います。これからゲームイベントをどんどん開催していきたいと思っているのでぜひ期待して参加してください。
――期待しています。ありがとうございました。