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アジアeスポーツ大会「AESF e-Masters 成都 2020」へ向けた日本代表選考会開催!

IeSFで総合優勝に輝いた日本代表の凱旋報告会の様子もお届け

12月21日開催

会場:PANDASTUDIO 浜町スタジオ

 ゲーマーの社会的立場やPCの普及度の低さから、日本は長らくeスポーツ後進国とされてきた。しかし先日韓国で開催された「第11回 IeSF world championship 2019」では、日本代表は30超ヵ国を抑えて見事総合優勝に輝いた。日本のeスポーツシーンの発展が実らせた、eスポーツ後進国脱却への第一歩となる結果といえよう。

 12月21日、都内で「AESF e-Masters 成都 2020」へ向けた日本代表選考大会が開催された。「AESF e-Masters 成都 2020」は、アジアeスポーツ連盟(以下AESF)が新設した競技会「e-Masters」の第1回目となる大会だ。競技種目は「伝説対決 -Arena of Valor-」、「eFootball ウイニングイレブン 2020」、「リーグ・オブ・レジェンド」、「Warcraft III: The Frozen Throne」の4種目で、賞金総額は7,500万円を超える。

 アジアeスポーツシーンの成長を画して創設された「e-Masters」。その皮切りとなる大会に、日本からも代表選手がJeSUによって派遣される。韓国での総合優勝を経て、いっそう重くなった“日本代表”の称号。選考大会では、その称号に敵う選手を決めるべく、強豪たちによる熱い戦いが繰り広げられた。

【「AESF e-Masters 成都 2020」日本代表選考会】

LoL日本代表の初陣!プロチームAXIZに立ち向かう!

 まず登壇したのは「リーグ・オブ・レジェンド」部門に派遣される日本代表チームの5名だ。LoLに限っては、代表チームが一般公募によって決められることになっており、本大会の開催と共に厳正な審査を通過した5名が発表された。メンバーは全員若手揃いで、中にはLJLで活躍した経験もある選手もいる。

発表された日本代表の面々。左からPhantom選手、Marimo選手、I CAN INGLISH選手、Yunika選手、Gifted選手

 そんな彼らが、初陣の相手として戦ったのがLJLにも名を連ねる名門プロチームAXIZだ。AXIZは日本代表応援のため2018春季のメンバーを再招集して、エキシビションマッチに挑んだ。本試合が初陣となる日本代表チームは、必然的にチームワークではAXIZに劣るため、個人技でどこまで食い下がれるかが注目された。対するAXIZは、プロの意地にかけて負けるわけにはいかない。

AXIZの選手たち。左からThintoN選手、Day1選手、Gariaru選手、iSeNN選手、Uinyan選手

 「勝ちよりもアグレッシブな攻めを優先」。そうコーチにオーダーを受けていた日本代表チームだが、前半戦は彼らの個人のスキルが存分に発揮される展開となった。試合開始から11分ごろにはトップレーンで日本代表Gifted選手がAXIZのUinyan選手をソロキルし、また16分ごろにはサポートとジャングルが連携してAXIZのiSeNN選手をキルしてみせた。

Gifted選手がUinyan選手を討ち取ったシーン

 しかし集団戦になるとやはりチームワークの差が出てしまう。17分ごろに4対4の場面が到来すると、AXIZはたちまち日本代表チームから4キルを奪取。最初の1キルから数的有利を活かした連携プレイは、さすがプロといったところだろう。日本代表チームとしては、こういった場面でも冷静さを保ち、上手く逃げれるようになりたいところだ。

AXIZ4キルのシーン

 24分ごろ、AXIZがチームアップして日本代表チームに勝負をかける。日本代表I CAN INGLISH選手がキルされると、チームメイトたちは必死にフォローしようとするが、AXIZは持ち前の連携で日本代表の4名を囲う。日本代表も必死にあがき、Gifted選手がGariaru選手を1:1トレードに持ち込むが、そこから4対3の状況から脱出できず、そのままAXIZがエースを獲得する。やはりチームワークで差が出るか。

AXIZエースのシーン

 このエースが日本代表の陣形を崩す形となり、なだれ込むようにAXIZが攻めを展開。日本代表には焦りが見え、冷静な対処ができていないようだ。試合開始29分ごろ、最終的なキル数は日本代表12、AXIZは23で大差をつけてAXIZの勝利となる。

 日本代表としては課題が多く見つかった試合となったが、初陣としては健闘したといえる。特にGifted選手やYunika選手はところどころで個人の上手さが光っていた。試合後のインタビューで日本代表選手たちは「すぐに修正できるミスが多くあったので、練習してチームの連携を高めていきたい」とし、また「LJLで戦うプロの選手たちと戦えていい経験になった」と述べた。AXIZの選手たちは日本代表を「これからの練習次第では世界大会でも結果を残せるチームになり得る」と評しており、実際に対戦しても彼らからは才能を感じたようだ。

反省点を語ったI CAN INGLISH選手

 実際、結成初日にプロのチームと対戦できたのは彼らにとって大きな収穫となっただろう。エキシビションマッチでの課題を踏まえて、アジア大会までの2か月間を有意義に過ごせれば、彼らから良い結果が望めるかもしれない。日本代表チームの今後に要注目だ。

ウイイレ日本代表は誰の手に?白熱した決勝戦

 韓国の大会では日本代表のうでぃ選手が準優勝という快挙をなしとげた「ウイニングイレブン 2020」。今回選ばれる日本代表にも、アジアの舞台でうでぃ選手に劣らない結果を残すことが期待される。そんな代表選手の選考方法だが、JeSUがあらかじめ推薦した19名の国内トッププレイヤーたちが、トーナメント形式で戦い、優勝者1名が日本代表に選ばれる。

 強豪ぞろいの19名から見事決勝戦まで勝ち上がったのは、やま選手とまーさん選手だった。やま選手は茨城国体優勝、まーさん選手はPES LEAGUE 2019アジア大会・COOP部門にて3位など、両者その実力を裏付けるような実績を有している。大舞台にもなれているだろう両者、まさにどちらが勝ってもおかしくない試合だ。

やま選手(左)まーさん選手(右)

 使用チームは両者共にユヴェントス、各選手のフィジカルが強いチームだ。フォーメーションに若干の違いはあるものの、条件は同じ。試合は実力勝負によって決されることとなった。試合展開としては、やま選手が攻守バランスのいい展開を得意とするのに対し、まーさん選手はディフェンシブなプレイが得意な印象だ。前半に1点先制をしてから総力を守備に徹し、反撃の隙すら与えずに勝利する、まーさん選手にかかればそんな戦法も可能だ。

決勝戦はユヴェントスミラー

 試合が始まると、やま選手が果敢に相手陣内へと攻めていく。どうやらやま選手は先制点を許してしまうことを恐れ、攻め急いでいる様子だった。しかしまーさん選手は持ち前の守備力でやま選手の攻めをなんなく凌いでいく。するとまーさん選手はやま選手の焦りを察知したか、ボールを取り返すとすぐにカウンターへ転じる。カウンターへの切り替えの早さも、さすが国際大会経験者といったところだ。やま選手は素早いカウンターに対応できず、前半に2失点を許す。

まーさん選手の先制ゴール

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まーさん選手

 2-0。まーさん選手リードで始まった後半戦、やま選手としては何としてもまず1点取り返したい。虎視眈々と反撃の隙を狙っていたやま選手、後半63分ごろ、自陣から2回のパスで見事ボールを相手ペナルティエリアまで送り込み、そのままシュートを決める。まーさん選手の牙城を崩し、やっとの思いで1得点だ。これで2-1となり、ここからやま選手が巻き返すと思われた。

やま選手の初得点
やま選手

 しかし、まーさん選手が今度は一気に攻めに転ずる。果敢に相手パスをカットしボールを得ると、左サイドのクリスティアーノ・ロナウドを活用し一気にラインを上げる。このあたりの緩急の付け方もまーさん選手の上手さか。立て続けに2点を奪いとり、やま選手は一向に同点に追いつけない。試合はそのまま終了となり、4-1でまーさん選手の勝利。「ウイニングイレブン 2020」部門の日本代表はまーさん選手となった。

試合は4-1でまーさん選手の勝利だ

 試合後のインタビューでまーさん選手は「日本代表となったからにはうでぃ選手以上の、一番いい色のメダルを持ち帰れるようにしたい」と述べ、東アジア予選への意気込みを語った。

日本代表となったまーさん選手
JeSU岡村会長とまーさん選手

USGが意地を見せた「伝説対決 -Arena of Valor-」部門

 最後に開催されたのが「伝説対決 -Arena of Valor-」の代表決定戦だ。こちらもウイイレと同じように、あらかじめJeSUに推薦された国内トップの3チームの中から予選を経て決定される。日本代表を決定する決勝戦のカードは、予選でSCARZを破り決勝へと駒を進めたKillerGaming(以下KG)と、シードのUnsold Stuff Gaming(以下USG)だ。

KillerGamingのメンバー。左からToraコーチ、Agenio選手、Greed選手、Johndoe選手、Alka選手、Threez選手、Take選手
Unsold Stuff Gamingのメンバー。左からMai選手、Kabuki選手、Tatuki選手、Slashmoon選手、Dejiwa選手、FitchManコーチ

 今回が初のオフライン大会となるKGに対し、USGは「Arena of Valor International Championship 2019」にも日本代表として出場、TOP8を記録した強豪チームだ。前評判ではUSGの勝ちとされているが、KGがどこまで食い下がれるか注目された。

 BO5で争われることになった決勝戦、まず第1試合はUSGが貫禄を見せつける展開になった。試合中盤までは互角かと思われた形勢も、中盤以降はUSGのジャングルKabuki選手のヴォルカスが無双する展開に。マップを縦横無尽に行き来し数的有利を作っては相手をキルする様は圧巻で、また相手に追われている時の生存能力も高い。第1試合はキル数27‐9と3倍の大差をつけてUSGが勝ち取る。

圧倒的な存在感だったKabukiヴォルカス

 続く第2試合、KGとしては悪い流れをなんとか断ち切りたい。試合開始7分ごろ、ミッドレーンで5対5の総力戦が勃発すると、KGが底力を見せる。一丸となってラインを押し上げ、第1・第2タワーを立て続けに撃破、一気に流れをつかんだかと思われた。

KG怒涛の攻め

 試合開始から10分ごろ、KGが今度はボットレーンで攻めを展開し、第3タワー撃破までこじつけるが、ここでKGの攻めを防いだのはまたしてもKabuki選手。自陣で見事なトリプルキルを披露し、その間にチームはラインを上げ、反撃ののろしを上げる。そのままUSGが一丸となった攻めを展開し、終わってしまえば27‐11とまたしてもキル数に大きく差をつけ勝利した。

またしても大活躍のKabuki選手

 KGとしては後がない状況になった第3戦は、前2戦とは違い拮抗した展開に。お互いの手のうちが分かった後で両チーム中々攻めづらくなっているようだったが、そんななかKGが意地で勝利。3-0で負けるという最悪のシナリオは回避された。

 しかしKGは已然後がない状況だ。選手たちからも疲労が伺えた第4戦、序盤からUSGが勝負を仕掛ける。その怒涛の攻めはまるで今までの試合が前哨戦だったかのような勢いで、KGの選手は圧倒されたか次第にミスが目立つようになる。USGはゴールドでも大差をつけ、KGに一つもタワーを壊させない。そして試合開始からわずか12分、USGが18-4とキル数でも大差をつけ、勝利。KGは完封されてしまった。

USGの大勝で幕を閉じた

 最終的には前評判通りの結果となった「伝説対決 -Arena of Valor-」部門だが、USGの選手たちによると「KGは手ごわい相手で、一時も油断できなかった」とのこと。日本代表としての意気込みを聞かれると「優勝を目指して戦いたい」と力強いコメントを残した。

握手を交わす両チーム
日本代表となったUSGの面々

 以上3種目で日本代表となった選手・チームは、まず年明けに開催される各種目の東アジア予選に参加し、それを勝ち抜くことができれば3月に中国は成都で開催される本戦へ出場することとなる。日本代表がアジアのeスポーツシーンにどれだけの存在感を見せれるのか、期待がかかる。

代表選手今後のスケジュール

IeSF日本代表凱旋報告会

 さて成都でのアジア大会に向けた代表選考会の他に、本会場では韓国で開催されたIeSF主催の世界大会で見事総合優勝に輝いた日本代表選手陣による凱旋報告会も行われた。登壇したのは「ウイニングイレブン」部門のうでぃ選手と「Dota2」部門のENLIFE TMだ。

IeSF日本代表選手たち。中央に見えるのは総合優勝トロフィーだ

 日本のDota2シーンは海外に比べてレベルが低いと言われるなか、ベスト8という快挙を成し遂げたENLIFE TM。結果について感想を求めらると「元々は1勝することを目指していて、その結果ここまで健闘できたのは自分たちにとってとてもプラスになった」と述べ、また勝因について聞かれると「自分たちは仲がいいのでオフライン環境での対戦に強い。互いに顔を見ながらプレイするといつもより良いパフォーマンスを発揮できる。」と述べた。

インタビューに応えるENLIFE TMの野球犬選手

 続いて初めての海外大会ながら準優勝という輝かしい成績を残したうでぃ選手。感想を求めらると「準優勝という悔しい結果ではあったが、世界2位という結果は純粋にうれしく、誇りに思う。」と述べ、また勝因については「最初は慣れない環境で緊張もしたが、3日目の時点ではゲームを楽しめるようになっていて、それが好成績につながった。」と述べた。準優勝に輝いたうでぃ選手には、JeSUから報奨金が贈られた。

インタビューに答えるうでぃ選手
岡村会長から報奨金を受け取るうでぃ選手

日本を代表して韓国の地で世界を相手に健闘した選手たち。総合優勝という栄冠を持ち帰ってくれた彼らの功績を、今一度称えたい。