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国別対抗のeスポーツ大会「IeSF World Championship 2019」、日本が総合優勝に

34か国が参戦した「鉄拳7」部門はタケ。選手準優勝。優勝は韓国のKnee選手!

12月14日開催

会場:VSG Arena

 12月14日、韓国はソウルにて「IeSF World Championship 2019」が開催された。今年で11回目の開催となる今大会は、国際eスポーツ連盟が主催する、由緒ある大会だ。競技種目は「鉄拳7」、「ウイニングイレブン 2020」、「Dota2」の3部門で、それぞれに多数の国から代表選手が出場している。

 日本からも各部門に代表選手が出場しており、それぞれが世界の舞台で日本の存在感を誇示すべく奮闘した。「鉄拳7」部門ではタケ。選手が準優勝、「ウイニングイレブン 2020」部門でもうでぃ選手が準優勝、「Dota2」部門ではENLIFE TMがグループリーグ3勝2敗と大健闘した。各競技の部門優勝は惜しくも逃してしまったものの、この成績から日本は他の出場国すべてを抑えて総合優勝を獲得した。

 なかでも本大会の「鉄拳7」部門には、3部門最多の34ヶ国から代表プレーヤーが出場し、実に国際色に強い大会になった。昨今はプロシーンの多様化が話題になっている「鉄拳7」だが、それを加味してもここまで多くの国から選手が出場している大会は他になかっただろう。先週末の「TWT Finals 2019」の興奮が冷めやらぬままに開催された本大会の「鉄拳7」部門。各国の代表が世界一の座を目指して戦う様子を、現地からレポートする。

【第11回 IeSF world championship 2019】

予選からハイレベルな戦いの連続! トップ選手のKnee選手やAnakin選手の姿も

 「鉄拳7」は他の格闘ゲーム同様、競技シーンでは日本や韓国といった特定の国が強いゲームだ。そのため本大会に参加した選手の中には、普段の鉄拳ワールドツアーでは見かけない国から参戦する選手も多数いた。しかしそんな中、世界大会常連プレーヤーの顔もちらほら。特に地元韓国代表のKnee選手は、“鉄拳神”と呼ばれるほど、鉄拳プレーヤーであれば知らぬ者はいないほどの古豪だ。Knee選手は「EVO 2013」鉄拳部門優勝をはじめ、最近では「TWT Finals 2019」3位など、世界大会で成績を残し続けている。今大会でも間違いなく優勝候補だ。

 Knee選手の今大会での活躍も、鉄拳神の呼び名に恥じないものだった。予選グループを難なく通過し、TOP16初戦のメキシコ代表もあっさり撃破。加えてTOP8ではアメリカ代表、「TWT Finals 2019」ではTOP8の舞台であのノビ選手を破ったAnakin選手にも勝利した。

メキシコのDivine Exorcist選手(左)韓国のKnee選手(右)

 Anakin選手との対戦でKnee選手は、コンボキャラクターであるギースを採用し、当たり判定が大きいAnakin選手のジャックの弱点を突くような攻めを展開した。Anakin選手も意地を見せるが、Knee選手が4-2で勝利。強豪相手にここまで落ち着いてプレイできるのは、さすがベテランプレーヤーだ。

アメリカ代表のAnakin選手
最後には投げが通りKnee選手が勝利

 一方、日本からは、昨日のレポートでもお伝えしたように、Team YAMASA所属のタケ。選手が代表として出場している。タケ。選手はラスベガス開催の格闘ゲーム世界大会「EVO 2019」での4位入賞をはじめ、数多くの輝かしい成績を持つ選手だ。鉄拳プロシーンの最前線で戦うプレーヤーで、他国の選手たちと比べても遜色のない選手と言える。

タケ。選手

 タケ。選手の予選グループには、世界でも名の知れたプレーヤーであるインド代表のTejan選手やフィンランド代表のJopelix選手がいた。これはリーグ通過も一筋縄ではいかないかと思われたが、タケ。選手は安定した立ち回りを見せ見事予選を通過。さらにTOP4では、TWT当日予選でもTOP36入りを果たしたフィリピン代表のDoujin選手にも、5-1と大差をつけて勝利した。

タケ。選手(左)Doujin選手(右)

 Doujin選手との対戦では、序盤から持ち前の防御的な試合作りを徹底し、Doujin選手に全くと言っていいほど攻める隙を与えなかった。困ったDoujin選手は2度もキャラクターを変更し、手を変え品を変え攻めてはみたものの、タケ。選手の堅牢な守りを崩すことはできなかった。

スカし確定が決まり手となりタケ。選手が勝利

決勝戦は日韓戦!Knee対タケ。

 3日間にわたる熾烈な戦いの末、決勝戦まで勝ち抜いたのは韓国のKnee選手と日本のタケ。選手だった。34か国の代表選手がいるなかで決勝戦が日韓戦になるとは、なんと因果な事だろう。その実、鉄拳の競技シーンにおいてはこの2国が歴史的に強く、先週末の「TWT Finals 2019」の決勝戦も日韓戦だったのだ。

決勝戦に臨むタケ。選手

 タケ。選手としてはこの日韓戦を制し、「TWT Finals 2019」で韓国の選手を差し置いて優勝したチクリン選手に続きたいところだ。対するKnee選手は、自国開催の大会ともあって、負けるわけにはいかないという想いがあっただろう。しかもこの両名は古くから鉄拳シーンの最前線で活動しており、相まみえた回数は数えきれないほどだ。決勝戦はまさしく意地のぶつかり合いとなった。

集中するKnee選手

 タケ。選手は本来一美を使いこなすプレーヤーなのだが、試合が始まると両選手ともにスティーブを選択していた。スティーブのミラーマッチというのは、両者ライトゥーや下段始動コンボを持たないため、かなり硬派な試合となる。ただ純粋に「鉄拳力」の高いプレーヤーが勝つ、そんなマッチアップだ。

決勝戦はまさかのスティーブミラーに

 Knee選手は、「TWT Finals 2019」でもスティーブを選択しており、その仕上がりは圧巻だった。そんなKnee選手のスティーブに同キャラで立ち向かっていけるのかどうか不安だったが、実はタケ。選手のスティーブはKnee選手対策で用意していたものなのだとか。真っ向から同キャラ戦を挑むとは、腕に自信があってこそだろう。

 試合は近距離でのジリジリとした削り合いになった。両者慎重な立ち回りから、大きなコンボ始動技は狙わずに、ひたすら小技で相手のガードを揺さぶっていく。上段技をしゃがんで反撃、下段技をガードして反撃、鉄拳の基本的な技術・読み合いが詰まった展開となった。

両者至近距離で競り合う

 そんなジリジリとした展開のなか、タケ。選手が徐々に攻撃のリズムをつかみ、リードしていく。ダッキングでプレッシャーを与え、相手の立ちガードに下段技を次々と差し込んでいく。さらに相手のレイジドライブなどはジャブで止め、反撃の隙も与えさせない。するとゲームカウントはたちまち3-1とタケ。選手の大幅リードになり、Knee選手を追い詰めた。

集中するタケ。選手

 しかしKnee選手がここから意地を見せる。地元韓国のプレーヤーとして、そして世界トップレベルのスティーブ使いとして、負けるわけにはいかない。3-1のビハインドにも屈さず、カウンター狙いの左フックやコマンド投げなど、徐々に攻め手を増やしていく。

 さらに今までKnee選手を苦しめていたタケ。選手の下段技に対しても、ガードではなく捌く対応に変更することで、より大きなリスクを背負わせていく。するとペースは次第にKnee選手のものとなり、ここからなんと4ゲーム連勝。ゲームカウント5-3でKnee選手が勝利、「IeSF world championship 2019」鉄拳部門はKnee選手の優勝で幕を閉じた。

接戦の末Knee選手が勝利
喜ぶKnee選手

 優勝後Knee選手に話を伺うと「ミラーマッチは難しいんです、よく勝てたと思います。実は「TWT Finals 2019」に向けて、パキスタンのHeera選手のスティーブを参考にずっと練習していました。今日はその練習のおかげで勝てたので、本当にうれしいです」と語ってくれた。

インタビューに答えてくれたKnee選手

 惜しくも準優勝で終わったタケ。選手は、「Knee選手のスティーブ対策でこちらもスティーブを用意していたのですが、最終的にはキャラクターの練度で差がついて負ける形になってしまいました。」とのこと。本大会を振り返っては「結果は準優勝でしたが、これだけの面子の中での準優勝なので自分にとってもプラスになったと思います。またこういう大会があれば出場したいです。」と語ってくれた。

インタビューに答えてくれたタケ。選手

 あと一歩のところで日本代表は優勝を逃してしまったが、それでも決勝戦は実に見ごたえのある、鉄拳らしい試合だった。そんなタケ。選手やKnee選手が主戦場とする「鉄拳ワールドツアー」は、来年から新シーズンに突入する。彼らの今後の活躍からは目が離せない。

日本は総合優勝国に!

 「鉄拳7」部門の結果は準優勝となったわけだが、日本代表は「ウイニングイレブン 2020」部門でもうでぃ選手が準優勝、「Dota2」部門でもグループリーグ3勝2敗とENLIFE TMが期待を大きく上回る成績を残した。そんな日本代表は、数ある出場国を抑え「IeSF world championship 2019」総合優勝に輝いた。

総合優勝トロフィーを手にするうでぃ選手(左)タケ。選手(右)

 アジアでは韓国やフィリピンなどがeスポーツに力を入れている傍ら、今まで日本はeスポーツ国としてあまり存在感の無い印象だった。そんな中こうして総合優勝を獲得できたことはとても誇らしいことだし、日本のeスポーツシーンの発展がもたらした結果だといえる。日の丸を背負って戦った日本の選手たちの健闘を称えたい。

【総合優勝した日本チーム】
おめでとうございます!