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「JAPAN Game Music Festival」のスピンオフライブ「FACE to FACE vol.2」開催
“イトケンの部屋”第2回は「世界樹の迷宮」を駆け抜ける「ソニック」!
2019年7月1日 00:00
- 2019年6月22日開催
- 会場:渋谷ストリームホール
ゲームミュージックの音楽フェス「JAPAN Game Music Festival」のスピンオフとして企画されたライブイベント「FACE to FACE vol.2」が6月22日、渋谷ストリームホールで開催された。
「JAPAN Game Music Festival(以下、JGMF)」は、ライブハウスでの“生音”の良さを活かし、新たなゲームミュージックとの出会いや、ゲームミュージックをさらに好きになってもらうことを目的とした祭典である。
前回の「FACE to FACE vol.1」は「ロマサガ」と「グラブル」の対バン形式で今年の1月19日に行われたが、半年を待たずして第2回が開催されることになった。今回も対バン形式となり、「世界樹の迷宮」シリーズライブの演奏でお馴染みの、上倉紀行氏率いる「SQ F.O.E band」と、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」シリーズの楽曲などを多数手掛けている、瀬上純氏率いる「SONIC ADVENTURE MUSIC EXPERIENCE」が激突した。
「世界樹の迷宮」シリーズは、広大なダンジョンをじっくりと腰を据えて攻略していくRPGなのに対し、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」シリーズはスタートからゴールまで文字通り駆け抜けるアクションゲームという対照的な2作品の競演となったが、どちらもノリノリの曲をピックアップ・バンドアレンジを施し、双方のゲームファンそしてゲームミュージックのファンで満員となった会場内を存分に沸かせた。
なお、「FACE to FACE」発起人のひとりであり、「FACE to FACE vol.1」でSpecialバンドを率いた作曲家の伊藤賢治氏は今回はMCと進行役に徹していた。「FACE to FACE vol.2」のセットリストは以下のとおり。
【SQ F.O.E band】
・「世界樹の迷宮 IV」 戦場 疾風
・「世界樹の迷宮 II」 戦場 初陣
・「世界樹の迷宮 III」 戦場 初陣
・「世界樹の迷宮 I」 鉄華 討ち果て朽ち果て
・「世界樹の迷宮 III」戦乱 剣を掲げ誇りを胸に
・「世界樹の迷宮 V」 戦場 明日を掴むは死闘の先
・「世界樹の迷宮 X」 戦乱 生きとし生けるものの黄昏
・「世界樹の迷宮 IV」 戦乱 吹き荒ぶ熱風の果て
【SONIC ADVENTURE MUSIC EXPERIENCE】
・「SONIC ADVENTURE - Emerald Coast」 Windy and Ripply
・「SONIC ADVENTURE 2 - Prison Lane」 This Way Out
・「TEAM SONIC RACING」 Frozen Junkyard
・「SONIC ADVENTURE - Character Select」 Choose Your Buddy! -Slap Bass ver.-
・「SONIC ADVENTURE - Station Square」 Welcome to Station Square
・「SONIC GENERATIONS/SONIC HEROES - Seaside Hill/Ocean Palace」 Seaside Hill: Act.2
・「SONIC ADVENTURE 2 - Sky Rail」 Mr.Unsmiley
・「SONIC ADVENTURE 2 - Green Forest」 Won't Stop, Just Go!
・「SONIC ADVENTURE」 Theme of "Dr. Eggman"
・「SONIC ADVENTURE - Speed Highway」 Run Through The Speed Highway
・「TEAM SONIC RACING」 Market Street
・「TEAM SONIC RACING」 Haunted Castle
・「TEAM SONIC RACING」 Wisp Circuit
・「TEAM SONIC RACING」 Mother's Canyon
アンコール【SQ F.O.E band and SONIC ADVENTURE MUSIC EXPERIENCE】
・「SONIC ADVENTURE 2 - Metal Harbor」 That's The Way I Like It
・「世界樹の迷宮 V」 戦場 明日を掴むは死闘の先
出演者(敬称略):
伊藤賢治(MC)
<SQ F.O.E band>
Gt.& Key:上倉 紀行
Gt.:宮崎 大介
Sax.:藤田 淳之介
Vn.:テイセナ
Ba.:中西 道彦 from Yasei Collective
Dr.:白川 玄大
Special guest
Key.:古代 祐三
<SONIC ADVENTURE MUSIC EXPERIENCE>
Gt.:瀬上 純
Ba.:種子田 健
Dr.:Act.
全曲バトル曲で攻めてきたF.O.E!
今回先攻を務めたのは「SQ F.O.E band」。各シリーズから満遍なく戦闘曲一色で固めてきた。中央前方に「世界樹の迷宮」シリーズの作曲者でもあり、スペシャルゲストでもある古代祐三氏をキーボードに据えてその両側をサックス藤田淳之介氏・バイオリン テイセナ氏の“ツインリード”で固め、両翼にギター上倉氏、宮崎大介氏、そしてやや後左方にベース中西道彦氏、そして中央後部にドラム白川玄大氏という、ゲーム中の戦闘隊形さながらの配置である。
今回はそのサックス・バイオリンを前面に押し出したフュージョン風味のバンドアレンジとなっており、時にはメロディの掛け合いという名の「世界樹の迷宮V」のセスタスを彷彿させる連続攻撃、時にはハーモニーを奏でる合体攻撃と、多彩な方法でオーディエンスに攻撃を仕掛けてくる様はまさに手ごわいF.O.Eそのものであった。古代氏からは、今回のアレンジを手掛けた上倉氏へ「世界樹の迷宮III」のスーパー・アレンジ・バージョンのようなアレンジにして欲しいとリクエストしたという。
中央に鎮座する古代氏は、本人曰く「全曲演奏できるクラスになれた」と、前回からクラスチェンジを果たし名実ともにメンバーの一員として最初から最後まで演奏に参加、見事な指使いでキーボードパートを務めあげ“演奏者古代祐三”としていつもの作曲者とは違った一面をファンへ披露した。古代氏は野球の投手で例えると先発完投型で尻上がりに調子を上げていくタイプであり、今回のように最初から最後まで演奏を続けて最後の方でようやく腰を据えた演奏ができたと演奏後にコメントしていた。まだステージには慣れておらず、どこを弾いているか分からなくなるときがあるらしいが、その時はなんと頭の中で即興で作曲しながらそれをほぼリアルタイムで演奏してカバーするという型破りなアドリブをしているというから驚きである。
ただ、据え置き型キーボードはギターやドラム等に比べて正面のオーディエンス側からだと弾き手が見えづらく、パフォーマンスが伝わりづらいという一面もある。次は是非横向きか、無茶を承知で言えば上倉氏よろしくショルダーキーボードを手に、さらにクラスチェンジしたパフォーマンスを存分に見せつけていただきたいところである。
疾走感溢れるギターに乗ってコースを駆け抜ける「ソニック」!
そして後攻の「SONIC ADVENTURE MUSIC EXPERIENCE」が登場、ここでいきなり流れるロック調の「Happy birthday to you」。実は6月23日は「ソニック」シリーズの第一作目であるメガドライブ版「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」(海外版)が発売された記念すべき日であり、それに合わせての演出である。そして間髪入れずに1曲目の「Windy and Ripply」が切り込んできた。
主要メンバーは3人だが、新作の「TEAM SONIC RACING」のごとく、ギター瀬上氏、ベース種子田 健氏、ドラムAct.氏の三位一体の見事なチームプレイを見せた。ドラムは重めのセッティングでキックとスネアが体に突き刺さるような迫力であり、ベースは音の屋台骨をしっかり支えつつも時にはSlap奏法でまた違った表情を見せる、そして学生時代からロック一筋でバンド活動を行ってきた瀬上氏のギターは、表情はクールに、但しギターを奏でる手は情熱的に、ライブステージで踏んできた場数の多さを醸し出していた。
また、瀬上氏のMCも軽妙で、MCから演奏への入り方もするっと次の曲に移っていくなど息もつかせぬ展開で14曲を音速のように駆け抜けた。セット後半の「Haunted Castle」では同曲の収録に参加していたテイセナ氏が登場し、疾走する「ソニック」に負けじとバイオリンを奏で、「Wisp Circuit」と「Mother's Canyon」では「SQ F.O.E band」から上倉氏と藤田氏がショルダーキーボードとサックスをそれぞれかついで登場し、見事なコラボレーションを見せた。
特筆すべきは映像とのシンクロである。公演中はステージ後部のスクリーンに演奏中の曲にちなんだゲーム画面やPVが流れていたが、各曲の元になったコースのシーンはいわずもがな、演奏の終わりにタイミングを合わせてゴールするシーンが流れ、ゲームの追体験をするにはうってつけの見事な演出であった。また、ソニックをモチーフとした服を着ていたり、ソニックのぬいぐるみをペンライト代わりに振っていたコアなソニックファン、そして熱狂する海外からの来訪者も見受けられた。
今回もあったコラボレーションアンコール!
アンコールは前回と同様、お互いの持ち曲を連合軍で演奏するという、ファンにとってはたまらない展開になった。「SONIC ADVENTURE MUSIC EXPERIENCE」側からは人気曲である「Metal Harbor」、「SQ F.O.E band」側からはこのメロディを瀬上氏に弾いてほしいという上倉氏たっての希望で「戦場 明日を掴むは死闘の先」をチョイス。「SONIC ADVENTURE MUSIC EXPERIENCE」に、「SQ F.O.E.band」のメンバーが加わるカタチとなり、下地は「ソニック」だが、古代氏を中心に両翼を「SQ F.O.E band」が展開するという、これぞ「FACE to FACE」の醍醐味である。特に「戦場 明日を掴むは死闘の先」ではリードギター瀬上氏の演奏に、筆者の脳内に迷宮内をF.O.Eなどの敵と戦いながら走り回る「ソニック」という愉快な情景が浮かんでしまったほどであった。会場内は熱気と観客・演者の笑顔で溢れ、それが最高潮に達したところで本公演は終了となった。
作品を越え、世代を越えて共鳴するゲームミュージック
そして幕間では出演者達がトークに花を咲かせた。瀬上氏と古代氏は共演するのは初とのことだったが、瀬上氏はセガ入社前にゲーム音楽の作り方の教材にしたのが古代氏が独自に開発したFM音源ドライバーの「MUSIC LALF」だったり、古代氏が代表取締役を務めるエインシャントを設立するきっかけになったのは、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」セガ・マスターシステム(日本だとゲームギア)版である8bitバージョン製作を受けるためであったり等、実はお互い関係が深かったことが判明した。
伊藤氏と古代氏についても、伊藤氏はゲームのゲの字も知らなかったままスクウェアへ入社したが、後にプロデューサーからもっと勉強しろと渡された曲のひとつが古代氏の作品だったり、古代氏も「世界樹の迷宮」の楽曲を制作するにあたって提示されたイメージサンプルの約半分が伊藤氏の作品であったりと、こちらも良い相乗効果をもたらしているようだ。中でも今回演奏もされた「世界樹の迷宮X」「戦乱 生きとし生けるものの黄昏」は提示されたイメージサンプルが伊藤氏の某代表作であったが、初期バージョンは余りにも酷似していたためリテイクしたという。それでも同曲はイトケン節が色濃く出ているので、気になる方はチェックしてみてはいかがだろうか。どこかでそのリテイク前バージョンもお目にかかりたいところである。
上倉氏は、いわゆる「ゲーム音楽の先駆世代」の曲を聴いて育ってきた世代となるが、ゲーム音楽という旗の名のもとに各世代が集い、コラボレーションするというのはゲーム音楽ライブならではの楽しみと言えよう。また、上倉氏はライブ活動等をしてないいわゆる表に出てこない方々を含めたあまねく存在するゲーム音楽家の皆々へ声をかけ、マッチングしていきたいという。前回・今回と味わった感動のコラボレーションに思いを馳せつつ次回の「FACE to FACE」の開催に期待したい。