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「JAPAN Game Music Festival」のスピンオフライブ「FACE to FACE Vol.1」が開催
“イトケンの部屋”第1回は「サガ」VS「グラブル」に!
2019年1月22日 17:39
ゲームミュージックライブイベント「JAPAN Game Music Festival」のスピンオフとして企画されたライブイベント「FACE to FACE Vol.1」の1月19日、日本橋三井ホールで開催された。
「JAPAN Game Music Festival(以下、JGMF)」は、ライブハウスでの“生音”の良さを活かし、新たなゲームミュージックとの出会いや、ゲームミュージックをさらに好きになってもらうことを目的とした祭典であり、2013年6月に第1回、2018年1月に第2回が開催され、名だたるゲームミュージックアーティスト達が顔を揃えた。
そのJGMF第2回公演終了後、JGMFの総合イベントプロデューサー稲垣良太氏と音楽プロデューサーである上倉紀行氏、そして作曲家の伊藤賢治氏が発起人となりJGMFのスピンオフ企画が持ち上がった。そして1対1のいわゆる“対バン”形式としたことから「FACE to FACE」と伊藤氏が名付け、記念すべき第1弾は作曲家の成田勤氏を招いて、成田氏率いるバンド「Stella Magna」と伊藤氏率いる「伊藤賢治スペシャルバンド」の競演となった。
「FACE to FACE Vol.1」のセットリストは以下のとおり。
【伊藤賢治スペシャルバンド】
・「パズル&ドラゴンズ」 Fight The Fantasics
・「ブレイブフロンティア2」 闇との決戦
・「カルドセプトセカンド」 Bookmark
・「あかねさす少女」 いけない世界
・「乖離性ミリオンアーサー」主題歌Million Ways=One Destination
・「聖剣伝説~FF外伝~」 最後の決戦
・「ロマンシング サ・ガ2」 七英雄バトル
【Stella Magna】
・「GRANBLUE FANTASY」 ユグドラシル・マグナ
・「GRANBLUE FANTASY」 リヴァイアサン・マグナ
・「GRANBLUE FANTASY」 プラチナ・スカイ
・「GRANBLUE FANTASY」 二十二の使徒
・「GRANBLUE FANTASY」 新世界秩序
・「GRANBLUE FANTASY」 ローズクイーン
・「GRANBLUE FANTASY」 ラスト・グローミング
・「GRANBLUE FANTASY」 ジ・アルティメット
アンコール【伊藤賢治スペシャルバンド and Stella Magna】
・「Canvas」 Red Nail
・「サガスカーレットグレイス」 冥魔・堕されしものども
・「GRANBLUE FANTASY」 バトル3
・「GRANBLUE FANTASY」 黒銀の翼
出演者(敬称略):
伊藤賢治(Key.)
成田勤(Gt.& Key.)
上倉紀行(Gt.& Key.)
<Stella Magna>
Gt. 宮崎大介
Ba. アベノブユキ
Key. 藤岡久瑠実
Dr. 岡島俊治
Vn. 伊藤友馬
Vo. 遠藤フビト
Guest Vocalists:
・MICHI
・STEVIE(44MAGNUM)
・CHiCO(ACE)
・霜月はるか
身をもって味わえ、イトケンサウンド!
まずは「伊藤賢治スペシャルバンド」が“先攻”として登場。「Fight The Fantatics」を先制パンチとしてお見舞いし、「闇との決戦」、「Bookmark」と続く。初っ端から立ち上がりそうになる観客を伊藤氏は「まだ早いから。先は長いので最初の3曲は座って聴いてね」と制し、じっくりと会場を温めていった。
「カルドセプトセカンド」のデータセーブ時のBGMである「Bookmark」は、エレキギターをアコースティックギターへ持ち替えてしっとりと演奏。アコースティックギター特有の弦に触れる音、きしむ音が静まり返った会場に響き渡った。イトケンサウンドというとバトル曲のイメージが強いが、静かな物悲しい曲を好む伊藤氏の一面を垣間見ることができた。
中盤に演奏された「あかねさす少女」はアニメ・ゲーム版が同時にリリースされ、ゲーム版のメインテーマを伊藤氏が担当して一曲。ライブでは双方の主題歌を歌っているMICHI氏がゲストヴォーカルとして登場し、ゲーム版主題歌の「いけない世界」を熱唱。伸びやかな歌声で会場を圧倒した。
続いて伊藤氏/前山田健一氏の共作である「乖離性ミリオンアーサー」の主題歌「Million Ways=One Destination」のインストゥルメンタルバージョンを披露。水樹奈々さんのヴォーカル部分をヴァイオリンが務めた。他の曲でも言えることだが、伊藤氏の曲はリズムの激しさとは裏腹にメロディはしっとりとしており、ヴァイオリンがよくマッチしていた。
最後にイトケンファンお待ちかねの「聖剣伝説」と「ロマサガ2」からそれぞれ1曲ずつバンド編成用にアレンジされて演奏され、会場の熱気はさらに高まった。特に「聖剣伝説」の「最後の決戦」は、1ループが短い原曲を2ループ→ブレイク(ソロ)→ループと、イトケン節を維持しつつ観客を飽きさせない巧みな手法でトリを飾った。
セットリストを見て頂ければ判るが、伊藤氏はこれまでに手掛けた様々なジャンルの新旧タイトルから歌モノ、インスト、バトルをはじめとする激しい曲、静かな曲などを満遍なくチョイスしており、実に多彩だった。
伊藤氏の演奏が終わり、トークパートを挟んで今度は“後攻”の成田氏率いる「Stella Magna」が登場。それを見ていた伊藤氏は「あれ?なんだかデジャヴを感じますね」と笑いながらコメント。先ほどの「伊藤賢治スペシャルバンド」メンバーと顔ぶれがほぼ同じである。それもそのはず、「Stella Magna」結成時に成田氏が稲垣氏や上倉氏を交えてメンバーを選定していった結果、見事に「伊藤賢治スペシャルバンド」のメンバーと同じになってしまったらしく、成田氏から伊藤氏へ伺いの連絡を入れる事態になったという。なお伊藤氏は、後になって『僕は「Stella Magna」のメンバーとして呼ばれてないぞ?』と思った事を冗談交じりにコメントし、会場を笑いの渦に巻き込んだ。
疾走!一点突破の騎空団
「Stella Magna」はのっけから「ユグドラシル・マグナ」、「リヴァイアサン・マグナ」とバトル曲で斬りこんできた。2バス系の疾走感溢れる「プラチナ・スカイ」が続き、最初からクライマックスの様相を呈してきた。続く「二十二の使徒」ではゲストヴォーカルのCHiCO氏が登場、コーラスパートを朗々と歌い上げた。CHiCO氏はそのまま残り、同じくゲストヴォーカルのSTEVIE氏が登場、「新世界秩序」へとなだれ込んだ。CHiCO氏とSTEVIE氏のツインヴォーカルで会場を温めに温めた。
今度は同じくゲストヴォーカルの霜月はるか氏が登場。メロディアスな「ローズクイーン」を情感たっぷりに歌い、酔いしれる会場。またもやバトル曲である「ラスト・グローミング」を経て、待ちきれないと言わんばかりにヴォーカルの遠藤フビト氏が飛び出してきた。途端にサイリウムで真っ赤に染まる会場。「ジ・アルティメット」の登場だ。
「ジ・アルティメット」は超高難度コンテンツでなおかつ特定状況でないと聴けないパートがある“選ばれた者”のための人気ナンバーだ。遠藤氏は温まりきった会場をさらに煽り、遠藤氏のアツい歌声に会場内のテンションは最高潮に達した。
「Stella Magna」は「伊藤賢治スペシャルバンド」とは対照的にグラブルオンリー、しかもほぼテンションが上がりっぱなしのアッパーチューンという“一点突破型”で突き抜けた。
演奏を終えた「Stella Magna」は一旦降壇。鳴りやまない拍手はいつしかアンコールに変わり、やがて両バンドのメンバーが登場。通常の対バンだと、リーダーのみが他方に混じってゲスト的演奏を行なうのだが、今回は違う。両バンドのメンバー構成を考えれば全メンバーのジョイントを予感していたファンも多かったであろう。果たしてその予感はアンコール演奏で現実のものとなった。
伊藤氏の言葉を借りるとすれば、伊藤氏が望んでいたであろう「Stella Magna」への加入が叶ったといったところだろうか。
競演から共演、そして饗宴へ。これが新しいライブの形だ!
アンコールは伊藤氏、成田氏お互いから2曲ずつの4曲もの大盤振る舞いとなった。全員登壇して、ステージを縦横無尽に駆け回り最高のパフォーマンスを見せる上倉紀行・伊藤賢治・Stella Magna連合軍。再び遠藤氏が客席を煽って再加熱すると、ゲストヴォーカル達も次々と参戦、超満員の会場は沸きに沸いた熱気と歓声に包まれ本公演は終了となった。
また、曲間やバンド転換時には上倉氏、成田氏、伊藤氏が登壇し、トークに花を咲かせた。実は伊藤氏は「ロマサガ2」制作当時はスランプに苦しんでいたり、「グラブル」のヘヴィユーザでもある成田氏は曲を作るたびにネタバレに頭を悩ませていた事や、グラブル汎用戦闘曲である「バトル3」は実際のゲーム上で曲が流れるイベントの関係で“世界一かっこいいスライム戦”とどこかの下水道で聞いたような二つ名を付けられてしまった、等の裏話が披露され、会場を大いに沸かせた。
伊藤氏のライブに足を運んだ方にはご存知だろうが、伊藤氏はトークが大好きで今回も「曲とトーク、どっちが聞きたい?」となんとも返答に困る問いかけをしていた。
本公演は大成功のうちに幕を閉じ、開演前は観客の入り具合を気にしていた上倉氏、成田氏の懸念は杞憂に終わった(片や伊藤氏は心配していなかったとコメントしている)。大成功の背景には何といっても競演という名の概念を超えたクロスオーバーの楽しさにあったと言えよう。伊藤氏と成田氏の対照的なステージを演出しつつもそれが合わさったときに生み出される比類なき熱量。稲垣氏と上倉氏はそれを予感していたのではないだろうか。JGMFの理念を体現したとも言える本公演は、ゲームメーカーもゲームサウンド制作会社の垣根も無く、純然たるゲームミュージックの味わいがそこにあった。
“Vol.1”と銘打たれている通り、「FACE to FACE」は続いていくだろうし、また別の新しいライブの形を具現すべくJGMFのスピンオフ企画が立ち上がるかもしれない。いちゲームミュージックファンとしても今後の動向にますます目が離せなくなった。