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日本eスポーツ連合、台湾台北市で日本のeスポーツの現状を報告
2019年はアジアを視野に。今後は「アジア全域を巻き込んだ大会」を目指す
2019年1月25日 00:46
「Taipei Game Show 2019(台北国際電玩展)」の併催イベントのひとつであるゲームカンファレンス「ASIA PACIFIC GAME SUMMIT(APGS)」が1月24日開幕し、初日最初のセッションとして、日本eスポーツ連合(JeSU)副会長浜村弘一氏の講演「日本のeスポーツの現状について」が行なわれたのでまとめておきたい。
APGSでは、毎年日本のゲームクリエイターを招き、ゲーム開発に関する講演を行なっている。今年はゲームクリエイターではなく浜村氏が選ばれたのは、1つはTaipei Game Show 2019でeスポーツがメインテーマの1つとなっており、日本のみならず、台湾でも関心が高まっており、日本の最新事情を聞きたいという要望が多かったようだ。
もっとも、ゲーム界はともかく、eスポーツ界ということに関して言えば、台湾の方が大先輩だ。もともと、PCが強いゲームマーケットだったため、日本よる遙かにeスポーツの立ち上がりが早く、eスポーツ団体である台湾電子競技連盟(TESL)は2008年に設立されており、アジアでは中国、韓国に次いでeスポーツ人口が多い。格闘ゲームのプロゲーマーGamerBee選手やOil King選手、「ハースストーン」の現世界チャンピオンであるtom60229選手など、グローバルで活躍する多くのプロゲーマーが存在する。
その一方で、TESLとは別に、台湾国際電子競技運動協会(TleSA)や中華民国電子競技運動協会(CTESA)といった団体も別に存在し、JeSU成立以前の日本の状態が続いているという見方もできる。この点においてJeSUによる講演は参考になると考えたのかもしれない。
さて、浜村氏の講演は、日本で12月に行なわれたメディア向け報告会(参考記事の内容をベースに、日本唯一のeスポーツ団体としてのJeSUの特色、強みなどが紹介された。浜村氏が語るJeSUの強みとは、JeSU正会員29社中16社がIPホルダーという点、JeSUの特色は、世界でも類を見ないプロライセンス制度の存在をそれぞれ挙げた。
正会員にIPホルダーが多いことについて浜村氏は、16社のIPホルダーの名前を1つずつ挙げながら、「JeSUはソフトメーカーの支援を受けながら、国際大会に選手を送り込む体制ができている」と語り、タイトル選定の上で大きなアドバンテージとなっていることを強調した。
プロライセンスはこれまでに131人(プロライセンス130人、ジュニアライセンス1人)に与えられ、このプロライセンス制度によって「これまで法的な規制で難しかった高額賞金付きの大会を開催することが可能となった」と説明。公認大会は37大会、賞金総額は1億4,477万円を超え、今週末に幕張メッセで開催される「闘会議 2019」および併催イベントで、賞金総額は1億5,000万円を超える見込みであることが紹介された。
実際、併催イベントの1つである「国際チャレンジカップ 日本選抜対アジア選抜」では、4タイトル合計で1,500万円の賞金が用意されている。これはJeSUとAeSF(アジアeスポーツ連盟)との共催イベントで、2018年8月にインドネシアで開かれた東アジア競技大会に続く両団体のコラボレーションとなるが、従来の日本では考えられなかった賞金規模となる。
この国際チャレンジカップには、アジア選抜として6カ国からeスポーツアスリートが出場し、台湾からもOil King選手が「ストリートファイターV」部門で出場することが紹介され、この大会を契機に、「将来、アジア全域を巻き込んだ大会を主催したい」と新たな計画を明らかにした。
浜村氏は、「我々はeスポーツ先進国である台湾を見習いながら、AeSFと協力しながら、アジアのeスポーツを育てていくための力になれればと考えている」と発言。JeSUはもはや日本単体だけでなく、アジア規模で物事を考えており、アジアeスポーツ界においてリーダーシップを発揮したいと言わんばかりだ。
浜村氏のアジア、そしてその先の世界を見据えた大所高所からの発言は、頼もしく感じられる一方で、今回の国際チャレンジカップでは、「Counter-Strike: Global Offensive」が土壇場で急遽「オーバーウォッチ」に差し替えられるという不可思議な出来事も発生した。これはJeSUが頼りとする共催パートナーのAeSFの強い意向があったとされるが、一度発表したことを土壇場でひっくり返し、選手たちを振り回すようなことは今回限りにしてもらいたいところだ。
最後に浜村氏は、本公演の核心的な部分となる、eスポーツ市場予測について言及した。浜村氏が代表を務めていたGzブレインの推計によれば、2017年は3億7,000万円規模だったeスポーツの市場規模が、2018年には48億3,000万円まで拡大しており、2022年には約100億円を見込む。台湾はeスポーツ先進国とは言え、大会の数や規模の面ではすでに日本が上回っており、この大きな展望に魅力を感じた台湾メーカーも多いのではないだろうか。
浜村氏は、「選手のサポート、大会運営、官公庁との繋がりなどについてまだまだ足りない部分は多い」と不十分な点は率直に認めつつ、「eスポーツ先進国である台湾、中国、韓国、香港などから色々なことを学びながら日本のeスポーツ市場を大きく育てていきたい。台湾とも交流戦や大会を通じて交流を深めていきたいので、今後もぜひご指導いただきたい」と挨拶。新たに“eスポーツ”という強みを得た日本のゲームマーケットにより高い期待を寄せてくれることを要請して浜村氏の講演は終わりとなった。
浜村氏は、講演後、24日中に帰国の途につき、26日からスタートする「闘会議 2019」および「国際チャレンジカップ」に参加するという。JeSU、2019年最初の大規模イベントとなるだけに、どの程度盛り上がるのか注目されるところだ。これらのイベントについてはGAME Watchでもレポートをお届けする予定なのでぜひご注目いただきたい。