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アキバのオヤジ達、eスポーツを本気で始める。「アキバトーナメント」開催決定
ドスパラ、ツクモ、ソフマップなど、秋葉原を代表するメーカーが「ロケリ」で激突
2018年12月4日 16:42
アキバeスポーツ評議会は、12月9日にeスポーツ大会「アキバトーナメント」を開催する。本日12月4日は、参加企業14社のトップが顔を揃え、組み合わせ抽選会が行なわれた。大会の模様は、ニコニコ生放送およびYouTubeで配信される。
「アキバトーナメント」は、「アキバをeスポーツの聖地にするために」をスローガンに、秋葉原に店舗や会社、売り場を持つ企業および、社内にゲーム部やeスポーツ部を持つタレント事務所やメディアを対象に、メーカーのプライドを賭けて優勝を競う1日限りのトーナメント大会。競技種目は「ロケットリーグ」で、各社3人1組で参戦する。参加企業とその代表者は以下の通り。
もともとの出発点は、発起人として名を連ねているアキバeスポーツ評議会議長の大井裕信氏と、副議長の秋山昌也氏の飲み会だったという。元ソフマップで、現在はイヤフォン専門店「e☆イヤホン」を展開する大井氏は、「せっかく秋葉原にいるのにeスポーツが盛り上がっていない。お店が単独で何かやるよりも、お店が協力し合って何かをやることで秋葉原からeスポーツを発信できれば」と抱負を語った。
この「アキバトーナメント」、“お店が協力し合ってeスポーツイベントを実施する”ということが目標でありゴールになっているため、通常のeスポーツ大会にはないようなユニークな趣向だらけだ。
まず、メーカーの取締役の参加が必須となっている。この手のイベントは、“ゲームが得意な若手に任せて、偉い人は後ろから見守る”というのが通例だが、そうはさせず、メーカー幹部の参加を必須としたことで、「みっともないことはできない」という緊張感を生むことに成功している。
当然、「ロケットリーグ」をプレイするのは初めてという参加者も多く、サードウェーブ取締役副社長の榎本一郎氏は、恒例となっている長い挨拶の中で「秘書が『練習のお時間です』と伝えてきて、2人が(榎本氏の部屋に)入ってきて3人で試合形式で練習をする。ところが昨日教わったとおりに(クルマが)動かせない。だから『本戦、どうやって戦えばいいんだ?』とスタッフに尋ねたら、『榎本さん、自陣のゴール前で動かないで下さい』と言われプライドが傷ついた」と語り、笑いを誘った。
第2に、視聴者が特定のメーカーを応援するような座組になっていない。ある意味でやりっぱなしのイベントになっている。通常、この手のイベントは、推しのメーカーを選択し、推しのメーカーが勝利することで、何らかの特典が得られるような仕組みを用意する。これにより純粋に大会の視聴者を増やし、前のめりにさせ、人が人を呼ぶ相乗効果で大きな盛り上がりを生み出していく。
ところが「アキバトーナメント」は、そのような施策は一切行なわず、MCや解説に有名人やアイドルを起用するわけでもなく、純粋にメーカートップをはじめとしたいわば“アキバのオヤジ達”が、eスポーツに真剣に取り組むという姿を流し続ける。それだけのコンテンツだ。
筆者はかなり長くeスポーツをウォッチし続けているが、このようなeスポーツイベントは聞いたことがない。果たしてどれほど盛り上がるのか、おもしろくなるのか、そもそもゲームファンが配信を見てくれるのか、といった不安は入り交じるが、“アキバをeスポーツの聖地にする施策”の初手としては最高のモノだと思う。
理由は、eスポーツ振興に関して権限と予算を持つ人間が、プレーヤーとして直接eスポーツに携わることで、これまで後ろからでは見えなかった様々なものが見えてきて、真の意味でユーザー本位、選手本位のeスポーツイベントを開くための貴重なノウハウが得られると思うからだ。
日本でeスポーツがこの20年に渡って、小刻みに立ち上がってはしぼむということを繰り返し、何度も“元年”を謳う理由は、eスポーツ振興に関して権限と予算を持つ人間がeスポーツを理解しないまま主役である選手たちを振り回すからだと思っている。
座席に座り、1ゲームプレイするだけで全然見えるものが変わってくると思う。座席から直接ライトが当たって眩しい、エアコンが効きすぎて手が冷える、練習エリアが確保されていない、待合室がない、お昼を取る時間がない、待ち時間が長い、テーブルが高い、イスが硬いなど、内容は何でもよいが、選手の視点になることで多くの学びの機会がある。「アキバトーナメント」はその格好の機会になると思う。
発表会では、参加企業の代表者がそれぞれコメントしたが、それもおもしろかった。ソフマップ渡辺武志氏が「なるべくドスパラとあたりたい」と笑顔でライバル心を剥き出しにすると、イオシスの中本氏が「打倒ソフマップ」を掲げ、弊社インプレス eスポーツ部代表の若杉(PC Watch編集長)が「(お付き合いのあるメーカーに)忖度せず優勝を目指す」と語ると、榎本氏は「サードウェーブのプライドはどうでもいい、個人のプライドを賭けて戦う」と放言するなど、試合前から火花が飛び交った。
アキバeスポーツ評議会議長の大井氏は、締めくくりの挨拶として2019年に「アキバリーグ」を実施する構想をぶち上げた。基本構造は「アキバトーナメント」と同一だが、こちらは“ガチンコの奴”ということで、プロゲーマーを含めたトッププレーヤーを各社が集め1年に渡って戦いを繰り広げるという。タイトルも含め、具体的なディテールを詰めるのはこれからということで、まずは「アキバトーナメント」が盛り上がることを期待したいところだ。