ニュース

操作性やビジュアルなどを改善!ファン待望の「INGRESS PRIME」配信開始

Niantic廣井氏と石塚氏が「INGRESS PRIME」のポイントを語る

11月6日 配信開始

 11月6日より、言ってみれば“唐突”に「INGRESS PRIME」の配信が開始された。これは言わずと知れたARゲームの先駆け、「ポケモンGO」のベースともなった「INGRESS」の大型バージョンアップ版だ。同日11時より、東京・南青山にあるNiantic日本法人のオフィスにて、プレス向けの発表会「INGRESS PRIME プレスラウンドテーブル」が開催された。

開発スタッフ2人が「INGRESS PRIME」を解説

 今回のプレスラウンドテーブルでは、「INGRESS PRIME」のプロダクトマネージャー廣井隆太氏と、シニア ユーザーエクスペリエンスデザイナーである石塚尚之氏の2名が登壇。本作の制作に携わるスタッフに話を聞くことができた。

 まずは廣井氏が現実とリンクしたARゲームの先駆けとしての「INGRESS」とその現状、そして「INGRESS PRIME」が登場した背景などを解説した。

 7年前に登場した同社の「INGRESS」は、プレーヤーを「外へと連れ出す」という意味の社是、「Adventures on Foot」を体現するAR(拡張現実技術)をベースとしたゲームだ。世界に充満するエキゾチックマター(XM)と呼ばれる目に見えない物質を巡る「エンライテンド(Enlightened)」と「レジスタンス(Resistance)」という2つの陣営の抗争を描いていて、プレーヤーはゲーム中で言う「スキャナー」、つまりスマートフォンに映し出されたゲーム画面を通じてXMを巡るもうひとつの現実を垣間見る。

 具体的には両陣営は「ポータル」として設定された街中に点在するさまざまなものを奪い合い、支配地域の広さを競い合う。当初はそのポータル数も非常に少なかったが、世界中のエージェント(プレーヤー)の協力により、その数は今では膨大なものになった。ユーザーが申請し、承認されることによってゲーム内に登録されていった「ポータル」は、そのまま「ポケモンGO」で言う「ポケストップ」として利用されていることを考えると、その数がいかに膨大であるかがわかると思う。

 これに代表されるように「INGRESS」はユーザーの協力とともに進化、発展を続けてきたが、新たに配信が開始された「INGRESS PRIME」は、「拡張現実をより強く実感できるもの」を目指して開発されたという。

「INGRESS PRIME」リリースに到る背景を解説した「INGRESS PRIME」のプロダクトマネージャー、廣井隆太氏

ビジュアルを刷新、片手での操作を考慮し、UIも大胆に変更

 従来の「INGRESS」と「INGRESS PRIME」の具体的な違いを解説してくれたのが、UXの開発をリードしてきたという石塚氏だった。

「INGRESS PRIME」のシニア ユーザーエクスペリエンスデザイナーである石塚尚之氏は新旧画面を並べ「INGRESS PRIME」の改善点をアピールした

 かねてから「INGRESS」では、現実のポータルからXMがガスのように噴出するというゲーム内の世界を具現化したイメージ映像が配信されていた。今回の「INGRESS PRIME」では、まずそのイメージをスキャナー、つまりゲーム画面でいかに忠実に再現するかに注力がされたという。もとより「INGRESS」の画面もそこを目指したものではあった。しかし、当時の技術における限界が、その再現性の違いとなっていたわけだ。「INGRESS PRIME」では最新の技術を用い、表現力を向上。よりゲーム内の世界を忠実にゲーム画面として表現できるようになったという。

ゲーム中の「ポータル」とは、XMが特に濃密に噴出する場所のこと。「INGRESS PRIME」では、ポータルからXMが噴出するイメージ映像に近づける画面表現を目指したという

 さらに、今回のスキャナー画面ではより高解像度化されて情報量が増えたことに加え、「高さ」の表現を採り入れることで、上空でポータル同士を結ぶリンクを表現できるようになっているなど、エージェントはよりゲームへの没入感を味わえるものに仕上がっているとのこと。これには後に語られたアニメーションやボイス、ビジュアルエフェクトの大幅な追加も大きく貢献している。

 また、エージェントにとって必要な情報をより効率的、効果的に表示するための方法として、画面の拡大率に応じて表示する情報を切り替えるという方法を採用。拡大率を上げたときにはXMが噴出するリアルな画面、そしてズームアウトしていくに従い、そのエリアのポータルやコントロールフィールド、リンクの状態をよりわかりやすく示すようになった。

マップビューでは表示される情報が整理され、さらに拡大率によって表示する情報を切り替えることで、状況の把握がよりしやすくなっている

 映像表現だけでなく、「INGRESS PRIME」の改変は操作にも及ぶ。まずは操作ボタンをゲーム画面の下部に集中させたほか、画面の拡大縮小も片手で行なえるようになっている。また、たとえばポータルへの攻撃といった各機能へのアクセスもより容易になっているとのこと。

 従来の「INGRESS」ではボタンの位置が画面内の隅に点在するなどしていたためにどうしても両手で、あるいは端末を持ち替えたりしながら、頻繁に画面を切り替えつつ操作する必要があった。画面内に表示する情報の整理もあわせ、街を歩いてポータルを訪れて遊ぶには致命的だったこれら操作性に関する問題点が大きく改善されているという。

ボタンの場所を画面下部に集中させることで、端末を持ち替えたりすることなく、片手で容易に操作できる点も「INGRESS PRIME」での大きな改善点だ

初心者に対する新たなチュートリアルと熟練エージェントに向けた新モードを搭載

 操作性やビジュアル、サウンドといったUXの改善と合わせて開発陣が念頭に置いていたのは、新たなエージェントに対して間口を拡げるということ。「INGRESS」はポータルを見つけてハックし、自陣営のポータルを結んでリンクを張り、さらにフィールドを形成し……と、プレーヤーの行動にまつわる細かいルール、覚えなければならないことがかなり多い。

 これを初心者にスムースに理解してもらうために開発陣が出した答えが、「ストーリーと一体化されたチュートリアル」だ。アニメと同じくADAとジャービスという作中に登場する2つの人工知能のナビゲーションにより、映画やドラマの登場人物になったかのような気分でエージェントとして成長し、かつ、「INGRESS」の世界観に深く入り込めるような作りを目指しているそうだ。

 このチュートリアルにストーリー性を持たせるという改変は、現在放映中のTVアニメの存在も大きく影響しているようで、TVアニメを見て「INGRESS」に興味を持った人に対してはかなり親しみやすいものとなるのではないだろうか。

 また、初心者へのサポートと同様、熟練のエージェントに対する配慮も新要素として採り入れられている。それが「PRESTAGE」モードだ。これはレベル16に達したエージェントは特別な特典を得ながらレベル1のエージェントとして生まれ変わり、新しくなった「INGRESS PRIME」の世界をもう1度はじめから体験できるというもの。その際には陣営の変更も可能になる。スキャナーには特別なビジュアルエフェクトが登場したりと、通常のエージェントでは味わえない体験が用意されているという。

ポータルを攻撃して自陣営の支配下にしたときに手に入る「ポータルキー」は、ポータル間にリンクを貼るのに必要だが、所持できるアイテムとインベントリーを共有していたため、数が増えてくるとその整理が困難だった。「INGRESS PRIME」ではその他のアイテムと別リストとすることでこの問題に対処

開発環境がUnityベースへと移行

 今回の「INGRESS PRIME」では新要素が追加されたうえ、クライアントとしてのビジュアル、操作性も大きく改善、変更されてはいるが、基本的なゲームの根幹部分にはほとんど手が入れられていない。実際に今までの「INGRESS」も名前を変えてそのまま配布が継続されるという。

今後搭載したい機能のひとつとして動画で紹介されたのが、このマップ画面。AR技術を使い、テーブルの上に「INGRESS」のマップが出現している

 これは質疑応答によって明らかになったことなのだが、今回の「INGRESS PRIME」では開発がUnityをベースに構築されたNiantic独自の「Niantic Platform」へと移行しているとのこと。これにより、かねてから発表されていたARプラットフォーム「Real World Platform」などとの親和性もより向上するといい、また、これから搭載する新要素について開発陣のなかではさまざまなアイデアが議論されているという。

 開発環境が変わったことで「Real World Platform」の応用なども含め、表現力、拡張性を増した「INGRESS」は、つまるところ、「INGRESS PRIME」のリリースによって“大きく変わった”のではなく、“変革への新たな入口に立った”に過ぎないということなのだろう。今後、「INGRESS」がどのように進化していくのか、注目したい。

「INGRESS PRIME」の変更点は要約するとこれら3点に集約される。たとえば噂されていた第3の陣営が登場したりといったゲームの本質的なルールに対する改変はなかった。今後の“進化”に期待したい