【特別企画】

【特別企画】「Ingress」首都決戦、「Darsana Prime Tokyo」私的参戦リポート

「斬新すぎるアノマリーの新ルール」に両陣営はどう対峙したのか?

3月23日 開催

場所:東京都内広域

 「ポケモンGO」のベースとなった、スマホを使った位置情報ゲーム「Ingress」。開発・運営を行なうNiantic主催による、もはや恒例行事と化したアノマリー(「科学的常識や原則から逸脱した現象」を冠に掲げた一大イベント)「Darsana Prime Tokyo」が3月23日、東京都内にて開催された。

 「Ingress」とはそもそも、レジスタンス(青)とエンライテンド(緑)というどちらかの陣営のエージェントになるかを選びスタートするゲームである。自らがどちらかの陣営に属したのちは、1年365日24時間中絶え間なく世界中でリアル陣取りゲームが続くという、「勝利も敗北も休息も存在しない終わりなき戦い=『Ingress』」と考えていただくとわかりやすいだろう。

 それに対し、アノマリーでは毎度異なるルールがNianticにより提示され、3~4時間ほどの時間内で両陣営が高度な擬似戦争を行なうという、言うなれば「年に数回だけしか存在しない、明確で絶対的な勝敗が存在する特別な日」なのだ。

 それゆえに、当然ながらレジスタンスもエンライテンドもアノマリーのルールが発表された直後から連日戦略と戦術を練りまくり、そして、勝利した陣営は勝利の美酒にひたすら酔い痴れ、敗北した陣営は奈落の底に突き落とされる……という、エージェントにとっての大人気なさ(笑)が大炸裂する1日と化すのである。

アノマリー開催前日である3月22日の17~21時まで、ベルサール渋谷ガーデンにおいて行なわれた事前受け付け風景。アノマリー当日の9~12時に受け付けを済ますことも可能だが当然ながら当日は大混雑と化すため、都内在住のエージェントや、地方から遠征してきて都内のホテル泊としたエージェントは前日受け付けを利用するケースが数多く見受けられた
有料キットを購入した参加者には、画像内に写っているような、グレード(価格)に応じたIngress関連アイテムが封入されたスーヴェニアが与えられる。筆者は「アノマリーさえ堪能できればそれでいい派」なため、今回は0円(無料)参加
受け付けを済ませたのち、ベルサール渋谷ガーデン敷地内に臨時特設されたポータル(陣取りを行なうための、世界中に無数に存在する拠点)をハックすると、後日自分のスマホ内に「Darsana Prime Tokyo」のアノマリーメダルがNianticから送られてくる。逆に言うと、この特設ポータルをハックしないとのちのち涙で枕を濡らすことに……

「皆がイメージする東京都心」と「現実の東京都心」のギャップ

 今回事前に発表された「Darsana Prime Tokyo」のイメージビジュアルが東京駅や東京スカイツリーを合成したCGであったため、かなりの広域バトルに及ぶことは事前から予想されていた。

 そして、3月6日に発表されたアノマリーエリアは案の定、日比谷公園、代々木公園、渋谷、芝公園を突端で囲んだ、六本木を中心地とした“the TOKYO”とでも称すべき領域。もっともこのマップがNianticから提示された際、震え上がったのは東京都心の実情に詳しい、言うなればNHKの「ブラタモリ」が毎週のお楽しみのような都内在住の地形マニアたち(筆者含む)であった。

 「渋谷」、「赤坂」、「乃木坂」といった地名が示すとおり、東京都心は、じつは「坂と谷の街」である。6車線などの主要幹線こそ緩やかな坂道に整地されているもののそれでも高低差は大きく、裏道に一歩踏み込めば、四駆のクルマでないと恐ろしくて登れないようなとんでもない急勾配の坂道や、下手をすると階段しかないルートも存在している。

 これが意味するのはもちろん、「徒歩(駆け足)移動に伴うエネルギーが生半可でない」、「これまで各地のアノマリーで重宝されてきた高速移動用の自転車が、仮に電動アシスト付き自転車であったとしても多大な足枷と化す可能性すらある」ということだ。

 そして実際に、アノマリー当日は徒歩移動部隊も自転車部隊も、無数に存在する急勾配な坂道の存在によりじわりじわりと体力をむしり取られていく結果となった。

公共交通機関が異常なまでに発達しているため、「東京都心を長時間徒歩移動したことがある」という人はそれほど多くないのではないか。ただしテレビ朝日の「全力坂」(2005年4月から放映がはじまった、東京の数ある坂をアイドルや女優など、売り出し中の女性タレントが全力でただ駆け上がるだけの5分間番組)が未だ放映され続けている事実を考えれば、東京が「坂と谷の街」であることが理解できるはずだ

 そしてさらに今回の「Darsana Prime Tokyo」は、「これまでのアノマリーと共通事項がほぼ皆無」と言ってしまってよいほどの斬新すぎるルールが用意されていた。

 これまでのアノマリールールまで解説していくと異常な長文と化してしまうためそこは全面的に割愛させていただくが、今回は「4つのゲームが同時進行していく」というあまりにも斬新なルールがエージェントに向け提示されたのだ。以下にその4つのゲームをなるだけ簡略化しながら説明する。

「Darsana Prime Tokyo」4つのゲーム

1:【キャプチャー・バトル】 オーナメントの点灯したポータルを取り合うゲーム

2:【ロンゲスト・エクスポネンシャル・パス】 メジャメント(得点測定)開始時に突如点灯し発現する自陣のスタートポータルから該当ポータルへのリンクを最大8本繋ぎ、その距離を競い合うゲーム

3:【アーティファクト・コレクション】 13~16時までのあいだに8回、突如点灯し、わずか10分間ほどで点灯が終了してしまうアーティファクト・ドロップポータルから獲得できる特別なメディアを集め、同じ色のメディアを6色/6種揃えるビンゴ的なゲーム

4:【オーバーレイ】 ユニークポータル(アノマリーゾーン内で点灯している、その日まだ一度もハックしていないアノマリー該当ポータル)をハックした数を競うゲーム

 この4つのゲームの中で「これまでのアノマリーと共通しているルール」は、1のキャプチャー・バトルのみ(ただし厳密に言うと、2に近いルールが過去に採用されたことはあった)。キャプチャー・バトルというのは両陣営によるクラスター戦、簡潔に言えば「殴り合いでポータルを奪い合う」という実際の戦争に例えるならば歩兵戦のようなもの。ごく初期に開催されたアノマリーは、設定された戦闘エリアの移動時間を挟みつつこれを数セット繰り返す……というほど簡潔なルールであった。

 しかし、今回は上記した4つのゲームを休息時間なし(!)で3時間行ない続け、しかも、その途中に短時間で複雑な得点計測時間が何度も訪れたり、4のオーバーレイに至っては「両陣営の上位15%と下位15%の数値を除外し、残り70%の平均ユニークポータルハック数が多い陣営に75点が総取りで加算される」などというトンデモなルールが採用されているという鬼畜ぶり。そしてそれを「坂と谷の街」東京都心で行なえ、と言うのだ。

 ダチョウ倶楽部ならずとも、Nianticに対し「……殺す気かーっ!」と叫びたい気分に駆られたエージェントが少なくなかったことは想像に難くないはずだ。

Nianticが公式サイト内にて発表した、英語によるアノマリーの新ルールを部分抜粋。画面右下に掲載されている5つの図形が「4つのゲームを同時進行させていくために、最低限でも記憶しておかねばならないピクトグラム」。ちなみにこれらは昨年11月にバージョンアップされたIngress Primeの画面で見た際の図形であり、旧仕様アプリのScanner [REDACTED]ではまったく異なったピクトグラムが表示されるという問題は最後の最後まで解決されなかった

……とは言いつつ、アノマリーは「楽しむことが最重要」

 ちなみに筆者はエンライテンド陣営で、今回の「Darsana Prime Tokyo」は自身にとって5回目のアノマリー参加。レジスタンスにしてもエンライテンドにしても陣営の中に複数のチームが存在するのでどのチームに所属するかは自由意思なのだが、今回も含め、ここ3回は同じチームから参戦させていただいている。

 その理由は多岐に渡るのだが、同チームのモットーが「安全第一(絶対に交通事故などを起こさない)」、「勝つことよりも楽しむことのほうが重要(楽しみつつ個々のポテンシャルをなるだけ発揮すれば必ず勝てる!)」というマイルドさと、「アノマリーごとにテーマを決めコスプレをしながら戦う(※当然ながらコスプレも強制ではなく緩い自己申請制)」というノリのよさが最大の決め手と言える。

ベルサール渋谷ガーデンでアノマリーの前日受け付けを済ませたあと、近所のピッツァリアでさっそく深夜まで討ち入り飲み会(明日は早朝に起床しないといけないのに……)。なお、よそのチームのことは知る由もないが、少なくともウチのチームは「アノマリーと飲み会は常時1セット」である

 というわけで「Darsana Prime Tokyo」用にチームが再結成された直後から皆が侃々諤々と意見を出し合い続け、最終決定に至ったコンセプトは《純喫茶だるさ奈》(苦笑)。

 デザイン担当の制作部“The Alchemists”がお揃いのチームタグやネームバッジを作成し(これのクオリティがあまりにも高すぎて自分らでも爆笑してしまった。The Alchemistsには大感謝!)、各メンバーがなんとなく喫茶店の店員さんに見えるようなコスプレをして六本木界隈を全力疾走するという、どこからどう見ても異様そのものなスタイルでアノマリーに参戦することとなったのである。

 ……とは言え、これは「六本木のようなメトロポリスたる東京都心だからこそ逆に成立したスタイル」であり、地方の小都市でこんな真似をしたら白い目で見られる&後ろ指をさされることまちがいなしなわけだが。

「初対面のメンバーでも同じチームのメンバーだと認識することのできる部隊マークのようなチームグッズ」と、それを装着し《純喫茶だるさ奈》のコンセプトに沿ったコスプレをしたチームメンバー(ちなみに写真の男性はチームリーダーです)。……はい、完全に「やりすぎ」ですね
アノマリー当日の朝は某所に貸し会議室を借り、個別に込み入った作戦会議を行なったり、コスプレの準備をしたり。そして最後には、チームリーダー=店長から純喫茶開店のお知らせ(苦笑)と「絶対に勝ちましょう!」という気合を注入する掛け声がかかる
貸し会議室を退室しアノマリーへ向かう直前、「メディアへの顔出しNGな人は、うつむくなり手で顔を覆うなりしてね! この写真、GAME Watchに掲載されちゃうからね!」ときちんと説明したのに、結構な人数が顔出しに協力してくれたチームメンバー集合記念撮影。……しかし、お盆にコーヒーカップまで用意してくるのはいくらなんでもなぁ

いざ出陣! そこで待ち受けていた「擬似戦争の実態」とは?

 13時、前日までの春めいた気温がウソのような寒波の元に、「Darsana Prime Tokyo」がついにスタートする。その時間帯、筆者の持ち場は六本木の東京ミッドタウン周辺だったため比較的坂も少なく平常心でアノマリーに突入できたのだが、先述した「突如点灯しわずか10分間ほどで点灯が終了してしまうアーティファクト・ドロップポータル」が出現しはじめてからが地獄のはじまりであった。

 ……じつを言うと筆者は昨年12月から右足の甲に蜂窩織炎というややこしい病気を、左足の親指付け根には痛風を発症しており、ドクターから「長距離歩行禁止(当然ながら駆け足は絶対NG)」、「アルコール摂取禁止」を告げられていて、正直に言えば「アノマリー(とその関連飲み会)に参加するなど、もってのほか」な身。

 が、とにかくアーティファクト・ドロップポータルはわずか10分ほどで消滅してしまうため、スキャナ(Ingressの画面)上でアーティファクト・ドロップポータルが確認できたら、やはり走らないわけにはいかない。昨年末から長距離歩行禁止を言い渡されていたがゆえの運動不足で走りはじめは体が異様に重く、幸いなことに足の痛みこそ一切感じなかったものの、急勾配な坂の上り下りの連続に、真剣に口から心臓が飛び出すんじゃないかと思うほど息が切れまくることに。……Niantic、マジで殺す気かーっ!

今回に限らず、アノマリーでは毎回ベトナム戦争での沢田教一的な従軍カメラマンを気取っているためなるだけ多めにデジカメで写真を撮ってはいるのだが、今回の新ルールではそれは無理! 仮にデジカメ側に手ブレ防止機能が付いていたとしても、全力で走りながら撮影してれば、そりゃあ手ブレしますがな!
画面下側の、淡~い水色の縁取りに覆われた黒い六角形に注目。これが旧仕様アプリのScanner [REDACTED]の画面で表示された、問題のアーティファクト・ドロップポータル。このポータルを点灯時間内にハックするとこのような特別なメディアを獲得することができる……のだが、アーティファクトのメディアは色が6種、図形が6種も存在し、一個人で同じ色の6種の図形をコンプリートするのは物理的な意味において100%不可能。それゆえに、そこから先は陣営全体の戦略が問われることとなった
ロンゲスト・エクスポネンシャル・パスの起点はScanner [REDACTED]でも非常に見つけやすく、計測時間直前には他チームの援軍に加わることも。仮に勝とうが負けようが、クラスター戦は「自分らで勝敗が目視できる」ためにやはりテンションが上がる!

 ……とは言え、この段階あたりから逆にじわじわと生じてくるのがいわゆる「アノマリーズ・ハイ」。チームメンバーから入ってきた連絡に対するアンサーは以下の通り。

「◯◯◯◯◯(←筆者のエージェント名)、痛風は大丈夫ですか? アノマリー終了時刻までまだ1時間もありますが、最後まで歩き続けることは可能ですか?」
「もちろんです。まだまだ走ることもOKです!」
「ということは、計測終了時までユニークポータルハックも……」
「任せてください、いまから麻布十番近辺をハックしまくります!」

 当然ながら足腰はガタガタ、まるで真冬並の寒さのために関節はバッキバキ。それでもアノマリーズ・ハイ状態なので、オレはまだまだ充分動ける(走れる)ぜ!……でもホントはもう、体中ボロボロなんですが(笑)。

 そしてもっとも肝心な「斬新すぎるアノマリーの新ルール」についてだが、「ルールは複雑化したものの、結局のところ陣営内・各チーム内で戦略と戦術がしっかりと練られていたのでとくに戸惑うこともなかった」というのが結論。

 ただし私感を述べさせていただくと、4つのゲームを同時進行化されたがゆえどのゲームにも中途半端なかたちでしか関われなかった感覚があり、アノマリーの最中から生じはじめた消化不良感というかモヤモヤ感が最後の最後まで払拭できなかったというのが正直なところ。これは自分のエージェントスキルの低さによるところなのか、それともアノマリールール自体に問題があったのか、その解答を導き出すにはもうしばし時間を費やし検証を重ねる必要があるように思う。

アノマリー完了。そして両陣営がアフターパーティ会場へ……

 こうして「Darsana Prime Tokyo」は16時過ぎに無事完了し、多くの両陣営エージェントは17時30分から開催されるアフターパーティに向けベルサール渋谷ガーデンへ移動。その詳細を書きはじめるとそれこそとんでもない長文になってしまうため最小限の情報に留めるが、今回「も」エンライテンドの圧勝が報告されることになった(ちなみに日本国内開催のアノマリーでは、ここ最近はエンライテンドが連戦連勝状態!)。

 そしてアフターパーティーではライゾマティクス真鍋大度氏のDJパフォーマンスを皮切りに、「Ingress」エージェントの受け皿的サイトであるGoogle+(4月2日をもって終了)に変わる新設サイトの再建計画、Scanner [REDACTED]の終了予告などなかなかショッキングな話題も飛び出したのだが、そのあたりの詳細は「Ingress」マニアの方々がすでにSNSへ投稿しているためそちらを参照していただきたく思う。

DJパフォーマンス、アニメ版「Ingress」の櫻木優平監督によるトークセッション、海外からの主要ゲストトークなどで間を持たせたとはいえ、勝利結果の発表まで90分も待たせるプログラムにはやはり疑問が残った。しかも、勝利陣営がコールされただけで、詳細な得点結果が現場では発表されないのはどうしたものだろうかと……
アフターパーティー終了後、ベルサール渋谷ガーデンの敷地内にて勝利を祝う最後の集合記念撮影! エンラ~イ!!

 というわけでアフターパーティー終了後は「勝利の美酒に酔い痴れまくるエンライテンド」と「奈落の底でヤケ飲みするレジスタンス」に別れ、各々が祝勝会 or 反省会へ突入。自分はエンライテンドのためレジスタンス陣営にて行なわれた反省会リポートまで追うことはできないが、この原稿は「第三者視点によるドキュメント」ではなく「あくまで当事者によるルポルタージュ」なので、最後はあえて(記名原稿なのだから当然自己責任に基づき)レジスタンスへの煽り台詞にて〆させていただきたく思う。

 そう、合い言葉は「青は灰に!」。……それも、この先も永遠と!!!!

エンライテンド祝勝会会場にて「自分、フリー素材なのでどこでも掲載してください!」とのお許しをいただいた、エンライテンドお祭りガチャピンエージェントことtakuna0228さん。そして、「Ingress」のバックボーンストーリー上エンライテンド陣営において超重要な役割を果たしているJARVISさん(要するに俳優さん)とのヘベレケ記念撮影。もう、とにかく浴びるようにドイツビールを飲みまくっていたから、ほとんどなーんも覚えてません~