ニュース

「キルラキル ザ・ゲーム -異布-」、命を燃やす開発に注ぐ熱意を聞く

プロデューサー山中丈嗣氏と開発ディレクター溝田英明氏へインタビュー

9月21日 実施

【東京ゲームショウ2018】

開催期間:9月23日まで

会場:幕張メッセ

 9月21日、東京ゲームショウ2018(TGS2018)2日目にアークシステムワークスが2019年に発売予定のプレイステーション 4/PC(Steam)用キルラキル 耐繊アクション「キルラキル ザ・ゲーム -異布-」のインタビューを行なう機会に恵まれた。

 そのお相手は、プロデューサーの山中丈嗣氏とエープラスの開発ディレクター溝田英明氏。とても楽しくお話を聞けたので、ご覧頂きたい。

この看板が目印。8ホールに出展している

 また、一般公開日である明日22日、そして23日には是非ともアークシステムワークスブースの本作試遊台へ。筆者も体験したが、格ゲー下手な私も難なくカッコよく遊べる飛び込みやすさ、それでいて近接攻撃を刺すか、遠距離で叩くか、ガードブレイクをするかといった駆け引きの熱さと原作を再現する演出のそれぞれが魅力ある仕上がりになっているのがとてもいい。会場では2人対戦専用となっているが、一緒に来場した友人はもちろん隣に並んだ誰かさんとも楽しく遊べるはずだ。

――早速ですが、本作はアークシステムワークスさんが作っている、たとえば「ブレイブルー」や「ギルティギア」のようにコンボで魅せるゲームではなく、簡単な操作性で楽しめるゲームだと感じました。ゲームデザインにおいて力を入れている部分はどこでしょうか?

山中氏:「キルラキル」という人気のあるアニメがあって、それをいかにゲームに落とし込むかという点です。おそらく購入者のほとんどが原作「キルラキル」のファンであろうと考えていて、私たちが普段作っているハードルが高めの格闘ゲームではなく、手軽に楽しめる形にしていこうというのが根幹にあります。格闘ゲームやアクションゲームが苦手なプレーヤーにも、気持ちよく自分の好きなキャラクターを動かせるというのが一番大事だと思います。

 原作アニメにあった攻撃の再現はしっかりとやっていきつつ、対戦ゲームならではの「原作にはない」組み合わせは「IF」の部分になってくるので、「この人たちが戦ったらこういう会話をするよね」という部分を損なわないように、意識して作っています。

――イメージを損なわないということですが、原作をかなり意識したパースの効いた描写がとても綺麗に作り込まれていると思いました。その開発で、苦労した点はありますか?

溝田氏:アークシステムワークスさん側で「ギルティギア」などで培った技術を僕たち(エープラス)が教えてもらって、それを「キルラキル」らしさを出した上でどう表現するかという点ですね。

山中氏:ひとつひとつを格好良く見せるために片太刀バサミの変形(武滾流猛怒)をやっていて、そこは単純に物量が多いので頑張らなければいけないところですね。技術的には「ギルティギア」や「ドラゴンボール ファイターズ」で培ってきたノウハウがあるので、それをしっかりエープラスさん側に伝えています。

――原作アニメを制作したTRIGGERが監修を行なっています。ステージでも生で監修されていました。その監修が細かく入っている印象ですが、今開発している段階で「難しかったな」という点はありますか?

イベントでは生監修も行なわれた

溝田氏:まだ全部修正が終わってないんです(笑)。溜まっているものをどのタイミングで直していくかというのが大変ですね。

山中氏:2D、手描きだからできる変形とか、誇張というのでどうしても3Dモデルだと出来ない部分が出てきます。そのあたりは可能な限り原作側に寄せているのですが、物理的・技術的に難しい部分があって、歯がゆいところが結構あります。

溝田氏:(TRIGGERさんは)”手”にこだわりがあって、原作で握り込んだ親指の膨らみが出るかという相談がありました。

 これは個別にボーン(モデルの骨組み)を仕込んで、握り込んだときに盛り上がるような表現ができるようにしました。拳の指ひとつひとつにできる山の形があって、それもやってほしいというすしおさん(原作アニメキャラクターデザイン・総作画監督など担当)からの要望があって、じゃあやりましょうと。ボーンを仕込むのはそこまで時間が掛かるわけではないのですが、筋肉の盛り上がりを意識してアニメーションするのは結構大変です。それを全キャラクター分仕込んでいくときに手間をかけていますね。

――ではゲーム内部の点へ。「血威表明縁絶」というジャンケンに似たシステムがありますが、この文字に込められた意味はどういったものでしょうか。

溝田氏:初期段階で、原作アニメのように斬り合いながら喋る「講釈ウォーク」というのがあったんですけど、その「講釈」が締まりが悪いと。原作再現のために色んなパターンを作って、今の形になっています。

山中氏:現状「血威表明縁絶」という名前になっていますけど、ものすごい段階を踏んでいます。途中は音ゲーでした。

溝田氏:ゲーム性を求めすぎて、ボタンを押す回数が増えました。相手の押してきたボタンに対して、ちゃんと返せたら成功みたいな。高速ジャンケンで最後に何を押すかわからないけどめちゃくちゃボタンを押すというのも考えましたが、システムとしてわかりにくいし、キャラクター同士の掛け合いが聴けない。見せたいところを見せられないということで、今の「血威表明縁絶」がわかりやすくていいなと思っています。

――「血威表明縁絶」には罵倒、挑発、愚弄と3つのコマンドがありますが、すべてに掛け合いボイスが収録されるのでしょうか。

溝田氏:レベルごとに台詞を用意する予定で、キャラクターの組み合わせで専用のセリフを喋ってもらいます。

山中氏:「大量に」テキストを用意して「大量に」喋って頂きます。

溝田氏:そこは「全部見たいな」と思ってもらえるように。

山中氏:でも皐月様(鬼龍院皐月)は全部「ブタ」だから(笑)。

溝田氏:「ブタ」ってセリフが多くて、すごく言うんですよ。スタジオでそれを聞いていると、だんだん気持ちよくなってしまうという(笑)。

――分かる気がします。さて、ブースで配られていたファイルの同梱物であった冊子に生徒会の残る2人(犬牟田宝火と蛇崩乃音)の姿が。……出演しますか?

山中氏:まぁ日本語に「二天王」という言葉はないので、四天王ですよねっていう。メインビジュアルにも入ってますし、出さないわけにはと。

――そこでなのですが、原作アニメに登場した部長たち。彼らの出演チャンスはありますでしょうか。

山中氏:「キルラキル」ってサブキャラクターも含めてキャラクターが立っていて、個性があって。それぞれにファンがいて、そういった要望は多く頂いています。それよりまずは最優先で出さなきゃいけないキャラクターがいるので!その次をお楽しみに、という感じです。

――では流子と皐月にはそれぞれ(「鮮血閃刃」とか「弩血盛武滾猛怒」、「縛斬」二刀流の皐月など)形態がありますが、登場予定はありますか?

山中氏:――ご期待ください!要望には可能な限り対応していきたいです。

溝田氏:望みは捨てないで、ということで。頑張ります。

――さて、ストーリーは皐月が主人公の、アニメ脚本を描かれた中島かずき氏描き下ろしということですが。どういった展開になってしまうのでしょうか。

皐月が主人公となるストーリーを本作に収録

山中氏:展開については秘密です。ただストーリーが中島先生描き下ろしで、アニメの”ある点”から分岐するもので、「純潔神髄」が出るよ、というところですね。あれはできればコスプレを作りたい……と。

――(「キルラキル」は衣装の露出が高いので)際どさとか、大丈夫なんでしょうか。

山中氏:シルエットだけだとわかりませんが、「スゴい」と。僕たちは「異布」を作りはじめて長いので皐月や流子の衣装に慣れちゃった部分もあるんですが、その感覚からしても絵を見せていただいたときに「おおっ」と歓声が沸くくらいです。お楽しみに。なかなかセクシーでございます。

溝田氏:3週間か4週間前くらいに見せていただいたんですが、歓声が。

――楽しみです。ところで試遊台でアンケートを採っていましたが、どれぐらいの来場者がいて、アンケートはどれだけ送られてきましたか?

山中氏:昨日(20日)の時点で来場者数が420~430名、アンケートが90件ほどでした。結構いい回収率です。今日はまだ来場者数を掴んでいませんが、アンケートは110件ほど頂いていて、列も長かった印象です。

 アンケートは全体的に「良い」、「とても良い」の評価が8割ほどで、好評です。よくあるコメントはやはりキャラクターの話で、衣装のバリエーションでキャラクターを分けてほしいとか。システム面では「血威表明縁絶」のテンポ感をよくしてほしいというのがありました。

溝田氏:厳しい意見もあったので、それは試遊版として製品版にむけて改善していきます。

山中氏:今回はアーケードゲームでいうロケテスト的な位置づけの側面もあって、アンケートをもとに改善すべきところは改善して、伸ばしたいところは伸ばすという形で……TGS終わったら反省会ですね。あと褒められている点なんですが、グラフィックスが綺麗というのと原作再現度が高い、原作への愛を感じるというコメントを頂いていて、嬉しいところです。

溝田氏:グラフィックスに関しては「いい」と言って頂けているのが大多数で、ありがたいです。

――エフェクトも綺麗です。とても原作の風味を感じていて、ガードブレイク時の”金田光り”とか、あれが綺麗で「キルラキル」だ!という印象でした。

溝田氏:背景とか塗りの雰囲気を3Dに起こしていくところで苦労しているんですが、原作に寄せつつもゲームとしていい雰囲気はどこだ、というのを模索しています。ステージである本能町の空き地の町並みの塗りは褒められたんですよ、「いい感じじゃない」って。また流子の戦維喪失奥義シーンでは、原作の素材をモチーフに作った手描き感のあるタッチとゲームで作ったエフェクトが入るという。(皐月の戦維喪失奥義カットを見せながら)この光のエフェクトはゲーム側でランダムに出るんですが、たまたま原作再現が決まってます。

流子(左)、皐月(右)それぞれの戦維喪失カット

――その戦維喪失奥義ですが、全キャラクターに搭載されますか?

山中氏:Sure(もちろん)。固有の演出があり、みんな破れる。そう、みんな破れるんですよ。――でも原作だと全員破れてはいないじゃないですか。なのでどうしましょうという話で、設定がないんです。誰が脱げたらどうなるの、ブリーフ派なの、トランクス派なの、ボクサー派なの、というのをTRIGGERさんと話を進めています。色はどうするのとか、”モッコリ”してたりとか。

――「ギルティギア」だと蔵土縁紗夢の下着が変わっていたりしましたよね……?

山中氏:あれはモデラーがいつの間にか作っていて、「パンツのバリエーション作っちゃいました」と、じゃあ日替わりにしようよと。それでゾロ目の日は特別な柄にして、プログラマーさんに頼んで……。デバッグが大変で(笑)。全然関係ない話ですが。

――皐月と流子も戦維喪失するんでしょうか。

溝田氏:試遊台で戦維喪失奥義を放てるので、ぜひ試遊してください。

――楽しみです。……では、今開発に力を入れているところを教えてください。

山中氏:やっぱり、どこまでTRIGGERさんに「いいね」をもらえるかというところですね。合格点は超えてきていると言ってもらえていて、すしおさんの絵をどこまで再現できるかという点にすごく力を入れています。それが積み重なっていくと”いい絵”になって、「キルラキル」らしい、すしおさんらしい絵が出せるようになったらプレーヤーの皆さんも喜んでもらえると思うので。演出を含めて絵作りというところです。

――先ほど見せて頂いた本能町のほかに「いいね」をもらえたところはどこですか?

溝田氏:今日のステージでエフェクトを褒めてもらえて、他にも節々で褒めて頂けて、それが励みになります。褒められたら全部共有してます。

――体験版の配信などは予定されていますか?

山中氏:トレーラーだけではわからないところも多くあるし、TGSは遠方からの体験は難しいというのもあって、オンラインでの体験版配信は前向きに検討しています。対戦ゲームということで、オンライン対戦機能も導入予定です。

――ありがとうございます。では、最後に「キルラキル」ファン、アークシステムワークスタイトルのファンに向けてひと言お願いします。

山中氏:「キルラキル」ファンの方には、原作再現であったりストーリーモードを含めて「原作にはなかった部分」でがっかりさせないように楽しんで頂けるものを作っていきます。アークシステムワークスタイトルのファンの方々には、「浅い」と絶対に言われない駆け引きを楽しんで頂ければ。2D対戦格闘とは別ベクトルですが、駆け引きがあって楽しめる、かつ操作も簡単ということを重点的に作っています。2019年の発売を期待してお待ちください。

溝田氏:そうですね。皆さんに楽しんで頂ける作品になるように。もうちょっと待ってね、と。

――ありがとうございました。