ニュース

【特別企画】PC版とは独自路線を歩む「WoT Console」、大規模アップデート「Mercenaries」で“WWIIが終わらなかった架空世界”に全面移行へ。その魅力を徹底解説する

【World of Tanks: Mercenaries】

6月26日配信開始

利用料金:無料(アイテム課金制)

 Wargaming.netは6月26日21時より、プレイステーション 4/Xbox One/Xbox 360向けオンラインタンクバトル「World of Tanks Console」において大規模アップデート「World of Tanks: Mercenaries(以下、Mercenaries)」の配信を開始した。アップデートの概要カウントダウンイベントについてはすでにお伝えしているので、本稿では開発者インタビューと試遊で得られた情報をもとに、「Mercenaries」の具体的な中身、魅力についてお伝えしていきたい。

 「World of Tanks」は、ご存じのようにPC版、コンソール版、そしてモバイル版と3種類が存在し、それぞれ別の開発チーム、別のゲームエンジンを採用し、まったく別のゲームとして運営されている。今回大規模アップデートが行なわれた「World of Tanks Console」(PC版と区別するために便宜上こう呼んでいるが、実際はPC版と同名)は、シカゴの開発チームがXbox 360向けに開発し、PC版から遅れること4年後の2014年よりサービスを開始したタイトルで、PC版をベースに、ゲームパッドでの操作をはじめ、コンソールゲームとして遊びやすいように改良を加えた作品だ。

【World of Tanks Console】
「World of Tanks Console」は、「WoT」フランチャイズで唯一米国で開発されているタイトルだ

 このコンソール版は、先行するPC版の“劣化版”と言われないように、サービス開始当初から独自路線を模索し、独自のイベント、独自のキャンペーンで、新規ユーザーの開拓を行なってきた。そして決定的な差別化を図ったのが2017年8月に実装された大規模アップデート「World of Tanks: War Stories」だ。

 コンソール版には、もともとAIを相手にシングルプレイが行なえるモードがいくつか用意されていたが、その評価が高く、「シングルプレイモードをもっと充実させて欲しい」という意見が多かったことから「World of Tanks: War Stories」では、シングルプレイキャンペーンを大量導入した。1シナリオあたり、1マップから3マップで構成され、ストーリー、戦車、登場キャラクターはすべてコンソール版完全オリジナル。現在、7つのストーリーが実装され、すべて無料で楽しめるだけでなく、すべてクリアしてストーリーをコンプリートすると、特定のプレミアム車輌(課金戦車)が、割引価格で購入できるという特典が与えられる。

【World of Tanks: War Stories】
2017年8月に実装された初の大型アップデート「World of Tanks: War Stories」

 さて、前置きが長くなったが、今回実装された「Mercenaries」は、その「War Stories」の続編となる大型アップデート第2弾だ。今回はシングルプレイのみならず、マルチプレイにもコンテンツ拡充を図っているのがポイントで、最大の特徴はゲーム内の世界設定がPC版やモバイル版から変わってしまうことだ。

【World of Tanks: Mercenaries】
こちらが6月26日に実装された大型アップデート第2弾「World of Tanks: Mercenaries」

 といっても、PC版やモバイル版に明確な世界設定があるのかというと“ない”のだが、コンソール版では、第二次世界大戦が1945年で終わらず、その後の米ソの核攻撃で世界は荒廃し、アメリカは分断され、勝者不在のまま、戦車乗りの傭兵が跋扈する1948年頃の新世界に固定される。「War Stories」では、一部のシングルプレイキャンペーンに同じ設定のストーリーが存在していたが、「Mercenaries」ではマルチプレイを含むすべてのゲームモードにその世界設定が強制的に適用される。かつてMMORPG「World of Warcraft」の拡張パック「World of Warcraft Cataclysm」では、初期エリアの再構築を目的に地殻変動を起こしたが、似たようなアプローチだと言っていい。

【「Mercenaries」の概要】
世界観
新要素
コンテンツ内容

【ロビー画面はジャングルに】
世界観が変わるので当然マルチプレイのロビーも変わる。まずは新しくなったHDR風ビジュアルで、お気に入りの戦車を眺め回す

 さて、気になるのは「それでゲームがどうなるのか?」だ。順番に説明していこう。

 まず、シングルプレイキャンペーンでは、新ストーリー「THE HEIST」が実装された。これは「War Stories」6本目、7本目のキャンペーンとして実装された「SPOILS OF WAR(戦利品)」シリーズの直接的な続編となるもので、上記世界観のもとで、傭兵達が自らの生き残りと稼ぎのために、アメリカシアトルにあるという秘密の核施設に戦車部隊で突入し、核物資を奪取するというストーリーが展開される。

【「THE HEIST」チャプター1 下準備】
舞台となるマップは「港」。だが、荒廃後の新たなビジュアルになっており、雰囲気が全然違う

Wargaming.netシニアゲームデザイナーのダロルド・ヒガ氏

 シングルプレイキャンペーンとしての従来の「War Stories」との違いは、これが「Mercenaries」第2のセールスポイントとなるが、搭乗する車輌が“マーセナリーズ車輌”だということだ。

 マーセナリーズ車輌とは何かというと、戦車ファンなら誰しも夢想した、「高精度のドイツの主砲、硬いアメリカの砲塔、避弾経始に優れたソ連の車体、各国戦車の良い部分だけを集めたら最強じゃないか?」という机上の空論を実現化してしまったもので、「国によって砲塔と車体を繋ぐターレットリングが違うから合わないはず」とか、「その車体にそのエンジンはハマらないし、そもそも動かないはず」とか、「その主砲は、その砲塔のサイズに合わないから付けられないはず」みたいな、至極まっとうな議論を全部すっ飛ばしてとりあえず戦車ファンの夢を実現してみた、というダイナミックな企画だ。

 「THE HEIST」で搭乗できるTrinityと呼ばれる戦車は、先述した「高精度のドイツの主砲、硬いアメリカの砲塔、避弾経始に優れたソ連の車体」を採用した“理想の戦車”で、非常に乗りやすく、圧倒的に強い。個人的な意見として、「War Stories」の各キャンペーンの難点は、搭乗車輌の性能に難易度が大きく左右されてしまうことで、全部クリアするためにはパッケージ(戦車パーツ)のアップグレードがほぼ必須で、そのためには何十回も乗らなければならない、といったビギナーには辛い設定になっていた。

 ところが「THE HEIST」のTrinityは、初期時点で最強状態で、キチンと操作すれば、どんな戦車でも貫通でき、避弾経始を意識すればしっかり弾ける文字通りの“最強戦車”になっている。インタビューに応じてくれたWargaming.netシニアゲームデザイナーのダロルド・ヒガ氏は、「新規ユーザーはぜひ『THE HEIST』から始めて貰って、戦車に乗る楽しさを知って欲しい」と語ってくれた。

【マーセナリーズ車輌「Trinity」】
ドイツの主砲、アメリカの砲塔、ソ連の車体と、良いところばかりを備えた理想の戦車。搭乗員も優秀で最初から第六感と迷彩を持つ。迷彩塗装もすべてオリジナルでカスタマイズする楽しさがある

 筆者もTrinityのあまりの手触りの良さに驚き、体験プレイでそのまま3マップともクリアしてしまった。戦車性能が驚くほど高いため、戦車の操縦方法が理解できていれば誰でもクリアできるし、シングルプレイキャンペーン史上もっとも簡単になっていると思う。まさにこのTrinityは、「World of Tanks」を始める絶好の機会を与えてくれる存在だと思う。ちなみに、Trinityは明らかにオーバーパワー戦車なので、プレミアム車輌としては用意されず、マルチプレイでは乗ることはできない。

 次にマルチプレイについては、2点の大きな変化がある。1つは、先述したように世界設定が変化した影響で、マップバリエーションとして“荒廃した世界”が追加された。コンソール版は、初期時点からグラフィックスにこだわっており、HDR/4K対応で、天候や昼夜の概念もあり、マップによってはピクニックに来たような牧歌的な雰囲気すら漂わせていたが、「Mercenaries」では新たに荒廃した世界が加わる。これはおそらくユーザーによって好みが分かれるところで、戦車戦らしい世界観だと喜ぶ人もいれば、殺伐としすぎではないかと嫌う人もいると思う。いずれにしても全プレーヤーはこの世界観から逃れることはできない。

【「Mercenaries」のマップ】

 そしてもう1つが極めて大きな要素となるが、“マーセナリーズ国家”という新たな国家が導入され、独自の技術ツリーを持っていることだ。もっとも、技術ツリーといっても低いTierからバトルを重ね、経験値を貯めて順番に育てていくわけではなく、基本的にすべてプレミアム車輌で、一定のゴールドを支払うことで手に入れることができる。ただ、従来のプレミアム車輌と大きく異なるのは、傭兵として「契約」を交わし、その「契約」を履行することで、その戦車が無料で手に入るところだ。

【マーセナリーズ国家/車輌】

Wargaming.net CISリージョナルパブリッシングプロダクトディレクターのアナスタシア・プリビルスカヤ氏。傭兵のキャラクターモデルも務めている

 これはコンソール版ではお馴染みの定例イベントである「戦車獲得Ops」の常設化と言って良いかもしれないし、拡大版とも言いうるもので、「Mercenaries」からは、定例の戦車獲得Opsとは別に、いずれかの「契約」を受けた状態で、契約履行に向けてマルチプレイを繰り返していくことになる。

 契約は、まさに「戦車獲得Ops」の名を変えたものといって差し支えない。8つのステージで構成され、進めば進むほど難易度が上がる。1つ進む毎に、ゴールド購入時の価格設定が安くなるため、契約の途中で、これ以降は無理、あるいは面倒だと感じた時点で、ゴールドで購入することも可能となっている。

 現時点ではTier IVからVIIまで、計5輌のマーセナリーズ車輌が実装されている。この5輌には、タイトルイメージにも使われている5人の傭兵達がそれぞれ搭乗しており、最初からいくつかのスキルを所持しており、通常のプレミアム車輌以上に優遇されている。ちなみに車輌性能についてはTrinityのようなオーバーパワーではなく、同Tierとの性能差は維持しているという。オーバーパワーでPay to Winを楽しむゲームではなく、違う国家同士のパーツを組み合わせたらどういう戦車になるのか? という“歴史のIF”を楽しむゲームだというわけだ。

【契約】
「Mercenaries」では初回起動時に契約のアンロックを通知され、すぐ契約に臨むことができる。契約は全8つのステージで構成され、1つずつクリアすることで報酬が獲得できる

 さて、気になるのは、「契約」の難易度だろう。もう早い人は26日21時からガンガン契約を進めていることと思われるし、もっと早い人はご祝儀ゴールド買いしてガンガン乗っている人もいるかもしれない。Wargaming.net CISリージョナルパブリッシングプロダクトディレクターのアナスタシア・プリビルスカヤ氏によると、基本的な想定難易度は、戦車獲得Opsと同様、2週間の継続プレイで獲得でき、高難度の勲章獲得のような理不尽な契約内容はなく、コツコツプレイする事で誰でもクリアできる設定にしているという。

 実際に筆者も契約内容を確認してみたが、契約の内容自体は、経験値の獲得を基本に、一定量の与ダメージ、一定量の特定車輌の撃破などストレートな内容がほとんどだ。ただ、唯一「これはキツいな」と思ったのは、搭乗車輌の縛りがあり、それがかなりピンポイントなことだ。設定上、マーセナリーズ車輌に関連する国家の関連する車輌に乗る必要があり、たとえばプリビルスカヤ氏が搭乗員のモデルを務めたTier VIIの「Bigtop」は、砲はM6の90mm Gun M3、車体はM4シャーマン、砲塔はM26パーシング、そしてエンジンは、VK 30.10(D)等が採用しているドイツのMaybach HL210を採用しており、「Bigtop」の契約をすべて履行するためには、前提としてこれらの車輌を保有していなければならない。

【Bigtopの依頼内容(一部)】
Tier VIIのマーセナリーズ車輌「Bigtop」の契約依頼内容。条件そのものは大して難しくないが、車両制限がキツい。M4シャーマン、M6、M26パーシング、VK30.01(D)などを保有しておく必要があり、ハードルは決して低くない

 これから始めるようなビギナーは、無課金ないし微課金でこれらの車輌を集めようと思えば数カ月は掛かり、それだけで契約の履行期限を過ぎてしまう。全ツリー育成済みというようなコアユーザーでも車庫のスペースには限りがあるため、これら中Tier帯の車輌は売ってしまっているという人も多いだろう。Tier IV車輌の契約でも、Tier V戦車の搭乗が条件になっているものもあり、プレイそのものの難易度はほどほどだが、条件をこなすのが難易度が高いと感じた。

 ヒガ氏からは「まずはTierが低いほうが簡単なため、低Tierの契約から進めた方が良い」とオススメされたため、とりあえずTier IV車輌「Needle」の契約を受けたところ、ステージ1はTier III~Xのドイツ車輌だったため簡単にクリアできたが、ステージ2ではイギリスのTier V駆逐戦車のArcherが必要で、筆者はこのツリーを伸ばしていなかったため、いきなり詰まってしまった。この数戦で戦場には異様なぐらいValentineが急増していて、何故だろうと思っていたが、Archerのツリーの手前がTier IV軽戦車Valentineだった。皆考えることは同じようだ。

 なお、それぞれの契約は2週間から2カ月程度の履行期限が設定されており、これが高難易度化に拍車を掛けている。契約は1つまでで切り替えはできないため、契約を受ける前に、期限内にすべての車輌を確保できるのかどうか、その上で回数をこなせるかどうか確認しておきたいところだ。

【マーセナリーズ国家ツリー】
マーセナリーズ車輌は現時点ではまだ5輌だが、ほかにもマスクされる形で存在が明かされている。中にはアメリカ/フランスハイブリッドのTier X軽戦車などもあり、今後のアップデートが楽しみだ

 最後に、「World of Tanks Console」は、アジアサーバーが閉じ、兄貴分のPC版が「1.0」という史上最大のアップデートを実施したこともあり、ここしばらく寂しい状態にあった。「Mercenaries」はそうした気運を吹き飛ばしてくれるメジャーアップデートであり、ここ数カ月はやることに困ることはなさそうだ。心配なのは、シングルプレイキャンペーンがビギナーに配慮した設計になっている一方で、マルチプレイの契約は高難度過ぎるのではないかという点で、筆者自身もその輪に加わりながら、コミュニティの反応を見守りたいと思う。いずれにしても、「Mercenaries」の登場によって、新規ユーザーにとっては未だかつて無いほど参戦しやすい環境が整っているので、「『World of Tanks』ちょっと興味あるけど、どうかなあ」と思っている人は、ぜひ気軽に参戦してみては如何だろうか。

【「自由すぎるWoTチュートリアル」キャンペーン】
チュートリアルモードを自由に遊ぶというものではなく、「WoT」そのものの遊び方を動画に収めたチュートリアル動画を買い取るというユニークなキャンペーン

【レッツバトル!】