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ウォーゲーミングジャパン、「WoT Console」プレスイベントにて新体制を初お披露目
泉宏和氏「WGJは第2のフェイズに」。大勢のインフルエンサーも参加して派手な船出に
2018年6月27日 01:01
ウォーゲーミングジャパンは6月26日、PS4/Xbox One/Xbox 360向け「World of Tanks Console」の大型アップデート「World of Tanks: Mercenaries」の配信開始を記念したプレスイベントを本社会議室において開催した。
会場には同社と付き合いのあるメディア関係者やメーカー関係者、インフルエンサーなどが招待され、クリエイターを招いてのプレス発表会のほか、β版の試遊会、レセプション、そして配信開始の26日21時にはカウントダウンも行なわれるなど、派手なイベントとなった。
「World of Tanks: Mercenaries」については、今回「World of Tanks Console」シニアゲームデザイナーのダロルド・ヒガ氏に個別インタビューすることができ、β版の試遊でも新コンテンツ「The Heist」をひととおりクリアしてきたので、ゲームコンセプトを始めとした詳細について後ほど詳しくレポートするつもりだが、本稿でお伝えしたいのは、ウォーゲーミングジャパンがこの春、完全に新体制となり、従来とは異なるポリシーで運営される別の組織になっているということだ。
Wargaming.netは、非上場のプライベートカンパニーであるため、売上やアクティブユーザー数など数字周りは一切明かしておらず、その状況はタイトルの運営状況などにより推測するしかないが、事業の柱である「World of Tanks」がここ数年非常に苦しい状態にある。
理由は、ユーザーピラミッドの頂点に君臨し、全ユーザーの目標であり、最高の娯楽であるプロリーグが2017年に崩壊し、約1年が経過した今なお復活の目処が立っていないことだ。Wargaming.netの「World of Tanks」と言えば、eスポーツの先駆けとしていち早く自社単独によるプロリーグを設立し、リージョン単位で定期リーグを開催し、リージョン1位を決めるリージョンファイナル、世界1位を決めるグランドファイナルという体制を構築し、単に30人で対戦するだけでなく、観戦する楽しみや、プロゲーマーというキャリアパスも用意するなど、eスポーツの分野では先駆的存在だった。
しかし、プロリーグに参戦する選手からは、数年前から大会の数や賞金総額に変化がないことや、eスポーツタイトルとしての「WoT」が進化していないこと、大会直前にアップデートが入り、大幅にバランスが変わり、トレーニングした戦術を変えなければならない点などが不満として挙げられていた。この問題が、誰の目にも明らかになったのは、2017年6月に発生したNAVIの「WoT」部門解散発表である。
プロゲーミングチームの解散自体は日常茶飯事であり、それ自体は珍しいことではないが、NAVIは、「WoT」がもっとも盛んなCISを拠点とするロシアのプロチームであり、「WoT」のグランドファイナルは、NAVIが優勝するのかしないのか、話題は常にそれといっても過言ではないぐらい「WoT」を象徴するプロチームといっていい。その名実共に世界一位のチームが解散したのだ。
これを受けてWargaming.netは2017-2018のレギュラーシーズンの開催を止め、キプロスにプロチームのリーダーを集め、あるべき「Wargaming.net League」の姿を話し合う会議を行なった。会議の内容は完全非公開で、一切明かされていないが、早ければ2017年末にも新たな方針が定まるはずだったが、2018年春、2018年夏と延期が続き、未だに新生「Wargaming.net League」の実施時期はおろか、基本方針も定まっていない。「WoT」が苦しんでいるというのはまさにこの点にある。
この動きと呼応するように、Wargaming.netの社内体制も大きく変更された。これまではキプロス/ミンスクのヘッドクォーターをトップに、各リージョン、各国/地域という3つのレイヤーで運営が行なわれてきたが、春からはプロダクト毎の縦割りに組織変更が行なわれ、各プロダクトの責任者が、各プロダクトの開発のみならず、マーケティング、プロモーションも含めて責任を負うようになった。
開発チームがより力を持ち、開発側の意思をユーザーまでダイレクトに届けやすい環境が整った一方で、ユーザーに近いマーケティング/プロモーション/運営サイドは、自身の発案による独自のプランを実施することが難しくなり、この縦割り化を是としないスタッフの多くがWargaming.netを去った。
日本も例外ではなく、筆者が面識のあったスタッフだけでも10数名が退社している。一例を挙げると、コンポーザー山岡晃氏とのコラボを主導し、eスポーツにも積極的だったAPACストラテジーディレクターのオザン・コチョール氏や、「World of Tanks Console」パブリッシングプロデューサーの斎藤智弘氏、「World of Warships」APACプロデューサーの柳沼恒久氏、Wargaming On Air番組プロデューサーの三輪木大氏、発表会やユーザーイベントではまさに“顔役”だったミリタリーアドバイザーの宮永忠将氏、そして「WoT」ファンには“ウザ過ぎる”と評判のヘルキャット軍曹の“中の人”も退社する。
筆者の感覚では、ウォーゲーミングジャパンの顔としてメディアに登場していたほぼ全員が退社した。もちろん、退社の理由は人それぞれで、上記に当てはまる人もいれば、そうでない人もいると思われるが、筆者はウォーゲーミングジャパンを担当して5年ほどだが、ここまで一気に人が変わるのは初めてだ。
ウォーゲーミングジャパンのトップも川島康弘氏から泉宏和氏にバトンタッチした。泉氏は、マイクロソフト(現日本マイクロソフト)やエレクトロニックアーツでプロダクトマネージャーとして実績を残してきた人物で、インフルエンサーをフル活用したプロモーションを得意とする。
泉氏は、日本地域のカントリーマネージャーを務めつつ、「World of Tanks Console」のAPACリージョナルプロダクトディレクターも兼ねており、泉氏フルプロデュースのイベントとなっていた。
今回もメディアイベントに大勢のインフルエンサーを招き、ファンイベント的な体裁に仕上げていたのはいかにも泉氏らしいし、同日発表された「World of Tanks Console」のキャンペーン「自由すぎる!! WoTチュートリアル!!」は、「WoT Console」の遊び方を動画に収めて投稿するというキャンペーンで、この内容もいかにも泉氏らしく、これまでのウォーゲーミングジャパンになかったアプローチだ。
泉氏は、現在、全タイトルにおいてeスポーツ展開が滞っていることや、大量のスタッフが退社したことを認めつつ、自身がEA時代からFree to Playタイトルに強い興味を持っていて、状況を知った上で、強い意志を持って自ら望んで入社したことを明らかにしながら、現在、志を同じくするスタッフを集めている最中で、「これからです。ウォーゲーミングジャパンの第2フェイズにぜひ期待して欲しい」と熱っぽく語ってくれた。
ちなみに今年は東京ゲームショウには出展しない方針で、ユーザーへのプロモーションのアプローチも大幅に変わりそうだ。新生ウォーゲーミングジャパンが、今後どのような動きを見せていくのか注目していきたいところだ。