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Instant GamesがもたらすFacebook Gaming“第3の波”

ひたひたと世界中に浸透しつつあるHTML5/クラウドゲーミングの世界

3月19日~24日開催

会場:Moscone Center

 Facebookが、メッセンジャーアプリにゲームをビルトインした「Instant Games」のサービスを2016年11月にスタートさせてから1年余りが経過した。正直な所、PC/コンソール/モバイルを問わず常にフルスペックのゲームを好む日本人にはあまり受け入れられていないが、欧米、そして新興市場で大きな成功を収めているゲームプラットフォームだ。

GDC恒例となっているFacebook Developer Day
オープニングスピーチを行なうFacebook Global Director of Gaming Leo Olebe氏

 GDC初日のFacebook Developer Dayでは、Instant Games尽くしのプログラムが組まれ、FacebookのInstant Gamesの注力具合を実感することができた。本稿では、キーノート「Instant Games: The Platform Awakens」から、Instant Gamesの最新動向をお届けしたい。

 まず、Instant Gamesは何かというと、Facebookがスマートフォン向けのFacebookメッセンジャーアプリ向けに提供しているゲームプラットフォームで、HTML5/クラウドベースで提供され、インストール不要で低スペックでも楽しめる。サービス開始当初は、30カ国、17タイトルでのスタートだったが、現在はグローバルで、70タイトルを提供。もちろん、オープンプラットフォームで、サードパーティータイトルを中心に日々何億という単位でゲームが遊ばれている。マネタイズは、広告モデルを採用しているが、動画の視聴とリワードがワンセットになっており、広告を見せられているという感覚を薄めている。

 その最大の特徴は何と言ってもメッセンジャーアプリに組み込まれているため、フレンドへのシェアや、フレンドと一緒に遊ぶといった、従来、一手間二手間必要なことをすべてワンストップで行なえるところだ。Facebookの調査によれば、ソーシャルプレイはソロプレイに比べてユーザーリテンション(顧客維持)が2~3倍に跳ね上がるという。ソロと比較してそれだけユーザーが離脱しにくくなるわけだ。

【開幕試合】
Instant Gamesの起点は2016年3月の「Basketball Emoji」
圧倒的な数字が並ぶInstant Gamesの実績
ソーシャル要素が鍵を握る
CoolGames CEOのLaurens Rutten氏
CoolGamesは、Facebookをグローバルパートナーとし、Facebook Messengerにコンテンツを供給している

 Facebookといえば、ブラウザゲームの時代にはZyngaやPopCap、モバイルアプリの時代にはKingやSupercellといった具合に、時代ごとに重要パートナーとタッグを組む形で一時代を築いてきた。Instant Gamesの時代の重要パートナーがCoolGamesで、2010年に設立され、HTML5の開発に特化したオランダのデベロッパーだ。

 CoolGamesはアムステルダムと東京にオフィスを構え、これまでに7タイトルをリリースし、いずれもInstant Gamesを代表するヒット作となっている。ラインナップを見ると、「Arkanoid(アルカノイド)」、「Snake」、「Jewel Academy」、「Daily Sudoku(数独)」、「Battleship」、「Tetris(テトリス)」、「Angry Birds(アングリーバード)」という具合で、人気が出るのもさもありなんという印象の著名タイトルの移植版ばかりとなっている。

【強力なラインナップ】

 CoolGames CEOのLaurens Rutten氏は、今まさに全盛期といって過言ではないモバイルアプリをすでにレガシーな存在とみており、Instant Gamesのメリットについて様々な視点から力説してくれた。たとえば、エントリーポイント。アプリなら、アプリストアからダウンロードするしかないが、Instant GameならあたかもWEBを見るような感覚で誘導を図れるため、WEB、メッセンジャー、ニュースフィード、広告、フレンド招待など、あらゆるところからアクセスできるとする。実際その効果は絶大で、フレンドの招待から来た新規ユーザーの割合は全体の47%にも達するという。アプリの時点で、「すでに47%以上のユーザーを捨てている」というわけだ。

【豊富なエントリーポイント】

 マネタイズについては、先述したようにコンティニュー時に課金させるのではなく、広告映像を見せることで可能になるという広告モデルが全タイトルにおいて採用されている。途中でゲームオーバーになると、続きを遊びたいという気持ちが働く、そこに着目したビジネスモデルだ。

 CoolGamesではここでユニークなABテストを取り入れ、コンティニュー率を向上させること、つまり広告ビュー数をあげることに成功したという。「CONTINUE」のボタンはそのままにして、もうひとつの「SKIP」を「NO THANKS」にして、ボタンサイズを小さくした。これだけで35%もの効果があったという。

 Rutten氏は、1年半にわたってFacebookのInstant Gamesの開発に携わってみて学んだことは、上記のようなABテストによる絶え間ない最適化が有効なほか、プレーヤーのほとんどはコアゲーマーではなくカジュアルゲーマーであり、ソーシャル機能の活用がリテンションを高め、頻繁なコンテンツアップデートがゲーム寿命を延ばすという、オンラインゲームの原理原則がInstant Gamesにおいて有効であることを強調。課題はマネタイズであり、Facebookと共同で新たな広告システムを試していると語っていた。

 実際にInstant Gamesを遊んでみると、コンテンツの充実ぶりもさることながら、その手軽さ、招待のしやすさに驚かされる。日本の場合、最初のとっかかりに失敗しており、誰もやっていないからやるにやれないというソーシャル性が逆に壁になってしまっている。70タイトルものゲームがすでに自分のスマートフォンに入っていることに気づいていない人が多いはずだ。日本で今後盛り上がるかどうかはともかく、新興市場では、新たなゲームプラットフォームとして間違いないと思われる。ブラウザゲーム、モバイルアプリに続く、“第3の波”の今後の展開に注目していきたい。

【マネタイズの工夫】