【特別企画】
「FFVI」30周年! 14名もの仲間から成る群像劇と、オペラや「妖星乱舞」などのBGMが光る名作
2024年4月2日 00:00
- 【ファイナルファンタジーVI】
- 1994年4月2日 発売
スクウェア(現・スクウェア・エニックス)が1994年4月2日に発売したスーパーファミコン(SFC)用RPG「ファイナルファンタジーVI」(以下、「FFVI」)が、本日4月2日で発売30周年を迎えた。
本作は14人ものパーティメンバーが登場し、その全員が主人公という群像劇スタイルになっているという、「FF」シリーズとしては珍しい作品だ。物語の進行により操作キャラクターが入れ替わっていくほか、14人の中から複数のパーティを作って、パーティを切り替えながら戦う場面なども多くあった。まさに「14人全員が主人公」というシステムになっているのだ。
SFCとは思えないほどの美麗なグラフィックとBGMが、機械文明を中心とした壮大な物語とあわさって、発売当時は「とんでもないゲームが出た」と騒然としたのも懐かしい。
本稿では、「FFVI」の思い出を振り返ろう。
14人の主人公たちから数名を紹介!
14名の主人公の中でも特に有名なのは、ティナだろう。
ティナは魔法が失われつつある本作の世界で、生まれながらにして魔導の力を持つ少女。その力のためにガストラ帝国に操られていたのだが、ナルシェで氷漬けにされた幻獣と共鳴し、気を失ってしまう。その時にジュンという男性によって助けられたティナは、反帝国組織「リターナー」の一員となる。
ティナは長い間自分の心を封印させられていたためか、どこか感情に乏しいところがあるが、最終的にティナは「愛」を知る。
だが「FFVI」の面白いところは、ティナが愛を知る物語を描いているわけではない点である。前述のように本作は群像劇となっており、ティナは最悪(一度みんなが離れ離れになったあと)仲間にしなくてもクリアできてしまうのだ。
ティナはあくまで主人公のひとりであって、彼女がいなくては話が進まない、というような描かれ方ではないのである。
次に紹介するのは、ティナを助けたリターナーの一員・ロック。自称「トレジャーハンター」でもある。
持ち前の明るさで、感情が失われかけていたティナに、前を向かせた。しかし実は過去に恋人を失うという、悲しい過去を背負っている。そのせいもあってか、女性を「護る」ことに執着しており、ティナや後述のセリスなどに「護る」ことを誓っている。
前半の中心人物のひとりでありながら、ティナ同様、後半では仲間にしなくてもクリアが可能である。とはいえロックは実質最強キャラクターなので、彼を仲間にせずクリアしようと思うと、少々難易度は上がる。
お次は、帝国の将軍であるセリスだ。実は帝国の技術者であるシド博士によって生み出された魔導戦士。
ティナが天然の魔導戦士なのに対して、セリスは人工的な魔導戦士であり、魔法が失われた本作の世界の中では数少ない、加入時から魔法が使えるキャラクターのひとりである。
帝国のやり方に疑問を抱いたために捕らえられたところを、ロックたちに救出された。
セリスは、物語後半のキーパーソン。離れ離れになってしまった仲間を探すべく、セリスはたったひとりきりで壊れた世界へと旅立つ。そのため、セリスなしでクリアすることは不可能だ。
1000年前に起こった「魔大戦」から巻き起こる物語
「FFVI」の物語は、1000年前に起きた「魔大戦」から始まる。全てを焼き尽くしたその戦いが終わった時、世界から魔法の力が消えさり、人々は鉄、火薬、蒸気機関……機械の力で世界を蘇らせた。
しかし、帝国のガストラ皇帝が幻獣界とそこに幻獣達を発見したことによって、世界は変わろうとしていた。帝国はその強大な力で、世界征服をもくろむようになっていった。
そしてそれから十数年が経ち、炭鉱都市ナルシェで氷漬けの幻獣が見つかった、というところから、いよいよゲームが本格的にスタートする。
ナルシェに派遣された帝国兵たちの中には、ティナの姿があった。しかしその思考は奪われており、ただの殺戮兵器と化していたティナ。
ビッグス、ウェッジ、ティナは炭坑の奥で幻獣を発見するが、その瞬間ティナと幻獣が反応し合い、ビッグスとウェッジは消滅し、ティナは意識を失ってしまう。
やがて、反帝国組織リターナーの一員ジュンの介抱によってティナは目を覚ますが、帝国の操り人形から脱したかわりに、記憶を失ってしまう。そしてナルシェに帝国の追っ手が迫る中、ティナはリターナーの一員ロックやモーグリに助けられ、ナルシェを脱出するのだった。
ナルシェから出たティナとロックは、リターナーを率いる砂漠の王国フィガロへと向かい、そこで国王のエドガーと出会うが、そこにティナを追って帝国の人造魔導士ケフカが現れる。
命からがらフィガロ城を後にしたティナとロックとエドガー。一行はリターナーの本拠地を目指しながら、途中でエドガーの双子の弟マッシュを仲間に加えた。
他、アサシンのシャドウ、ドマ王国の剣士カイエン、野生児ガウ、帝国の将軍セリスなど、道中で様々な仲間を増やしながら、一行は帝国に反旗を翻す機会を伺うのだった。
ぜひ見てほしい、SFC時代に作られたオペラシーン
冒険を続けていく中で、セリスがオペラ座の歌姫マリアの代わりに舞台に立って、オペラを歌う、というシーンがある。
このシーン、「SFCの時代に、よくぞここまで……!」という感嘆の声が漏れるほど素晴らしい出来栄えになっている。ただしここの演出はSFC版とピクセルリマスター版で異なっているので、本当にSFC時代の演出を知りたいという人はぜひSFC版を遊んでみてほしい。しかしピクセルリマスター版は音楽のアレンジはもちろんのこと、演出も異なっているので、そちらも必見だ。
ちなみにこのオペラ「マリアとドラクゥ」は「FF」のオーケストラコンサート「Distant Worlds」でも何回か演奏されているので、そちらで知っているという人もいるだろう。「Distant Worlds」版の「マリアとドラクゥ」は”完全版”といったところで、「FFVI」の楽曲を担当している植松伸夫氏自身の手によって新たなアレンジが加えられている。ドラクゥ、マリア、ラルス、そしてナレーター役まで登場してのマリアを巡るドラクゥとラルスの戦いが、本物のオペラとして上演されているので、もしもこちらを見たことがない、という「FFVI」ファンがいたら、「マリアとドラクゥ」が上演されている年の「Distant Worlds」のDVD/Blu-rayなどを、ぜひ見てほしい。
2012年に開催された「Distant Worlds music from FINAL FANTASY THE CELEBRATION」や、2017年に開催された「Distant Worlds: music from FINAL FANTASY JIRITSU / 而立」などがこれに当たるが、映像で見れるのは「THE CELEBRATION」のみ。「CDでもいい」という人は、「JIRITSU / 而立」のCDをおススメしたい。
「妖星乱舞」なしに語れない「FFVI」
もうひとつ、続けて音楽の話になってしまうが、「FFVI」はラスボス戦のBGM「妖星乱舞」なしには語れないだろう。
ラスボスについては恐らく「FFVI」をプレイしたことがない人でも知っているのではないかと思うが、もしかしたらこの記事で「FFVI」をプレイしてみようと思ってくれる人がいるかもしれない、という期待を込めて、ここはストーリー的なネタバレをしないでおきたい。
「妖星乱舞」は、第一楽章から第四楽章までで構成される、壮大なラスボス戦曲。オリジナルサウンドトラックでは、なんと17分40秒もある。全体的にパイプオルガンとコーラスが多用されており、教会音楽っぽさが出ている。植松氏のプログレ魂が炸裂した曲とも言え、「FFXIV」などでも原曲の持つ良さをそのままにアレンジされて搭載されている。
第一楽章は、オープニングに流れるBGM「予兆」と、魔大陸浮上時に流れるBGM「大破壊」をベースにしている。
第二楽章は音程の浮き沈みが激しい曲になっており、何かの儀式のような妖しさが溢れている。
第三楽章はバロック音楽調になっており、J.S.バッハ作曲の「トッカータとフーガ ニ短調 BWV 565」のフーガ部分の主旋律が使われている。
第四楽章は再び「予兆」の旋律が使われているが、そこからアップテンポなプログレッシブロックになっている。ラスボスのテーマのアレンジなどがふんだんに使われていて、ここまでゲームを遊んでくれば滾ること間違いない。
第一楽章から第三楽章までは実質1曲のようにつながっていて、実際ラスボス戦でもBGMが不自然な切り替わりをしないように工夫されている。
ちなみにこちらも「Distant Worlds II」などのオーケストラコンサートで再現されている。こちらのコンサートはCDが発売されているので、ぜひ聞いてみてほしい。
ちなみにこの「妖星乱舞」も、ピクセルリマスター版は生の歌声で収録されている。SFC版と同様に第一楽章から第三楽章までがシームレスになっている家庭用機版のピクセルリマスターが、筆者のおススメだ(残念ながら家庭用機版以外のピクセルリマスターはシームレスではないのである……)。
「FFVI」は30年が経っても、まだまだ遊んでみてほしい名作である。ピクセルリマスター版はUIにも手が入れられており遊びやすくなっているので、遊んだことがない人や、久しぶりに「FFVI」に触ってみたい人は、こちらもぜひ検討してほしい。
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