【特別企画】
「ディシディア ファイナルファンタジー」が15周年! シリーズの垣根を超えたクロスオーバー作品
2023年12月18日 00:00
- 【ディシディア ファイナルファンタジー】
- 2008年12月18日 発売
スクウェア・エニックスが2008年12月18日に、PlayStation Portable用として発売したドラマチック プログレッシブ アクションゲーム「ディシディア ファイナルファンタジー」(以下、「DFF」)が、本日で発売15周年を迎えた。
「DFF」は、「ファイナルファンタジー」(以下、「FF」)シリーズの登場キャラクターが一堂に会し、各シリーズの主人公やボスキャラクターを操作して1対1で戦う3Dアクションゲーム。「FF」シリーズは一話独立型の作りのため、設定などは各シリーズで異なるが、本作はその垣根を飛び越えて作られた「異説(ラテン語でディシディア)」で、「FF」シリーズ実質初となるクロスオーバー作品であった。
発売当時である2008年は、シリーズ作品としては「FFXII」までが発売されているが、本作では初代「FF」から「FFX」までの主人公10人とボスキャラクター10人での20人+隠しキャラクター2人が操作キャラクターとして登場した。
本稿では、そんな「DFF」を当時の思い出とともに振り返っていく。
ドット絵時代のキャラクターがアツい
「DFF」の思い出といえば、やはりまず真っ先に浮かぶのは、キャラクターだろう。本作の登場人物は……。
となっており、登場キャラクターは調和の神コスモスか、混沌の神カオスのどちらかの陣営に属するようになっていた。
キャラクターデザインは野村哲也氏が務めており、「FFI」~「FFVI」までの天野喜孝さん時代のキャラクターは野村氏の手によって新たにデザインし直されている。しかし、ドット絵時代のゲーム画面と天野さんの原案イラスト、そこに野村氏流のアレンジが加わることで現代向けにリファインされたキャラクターたちは、まさに見事のひと言だった。
特に「FFI」のパッケージイラストのデザインがベースになったWOLことウォーリア オブ ライトのデザインは秀逸。CVの関俊彦さんのイケボと相まって、コスモス陣営のリーダーに相応しい風格を見せるデザインだったように思う。
「FFIII」以前の作品は主人公キャラクター、ボスキャラクター共に描かれていることが少なかったからこそ、ファンの想像と開発陣の想像で補われた部分も多かったのだが、WOLは「光の戦士」の名に恥じぬ、そして「勇者」の称号に恥じぬキャラクターに仕上がっていた。
ドット絵時代の作品らについては本作が初の3DCG化となり、その点でも非常に評価がされた作品だったのではないだろうか。元々天野さんのイラストレーションが存在したキャラクターもさることながら、「FFI」のガーランドなどは天野さんのイラストレーションの存在がなかったため、ゲーム内に登場するドット絵からデザインを想像して新たに描き起こされている。
ガーランドと言えば、2022年3月に発売された「STRANGER OF PARADISE FINAL FANTASY ORIGIN」でも彼に焦点が当てられているが、「FFI」の代表的なキャラクターでありながらゲーム中で描かれていることが非常に少なく、「DFF」でガーランドというキャラクターの大きな軸がデザイン・キャラクター性共に初めて作られている。
「FFII」の皇帝や、「FFIII」の暗闇の雲も、天野さんのイラストレーションこそあれど、キャラクター性は「DFF」で固まったと言っても過言ではない。
例えば、皇帝は「FFII」での世界征服という野望を「DFF」でもそのまま膨らませたキャラクターになっているし、暗闇の雲は「FFIII」のグラフィックをそのまま「DFF」向けに進化させた結果、大人の艶気をこれでもかと纏ったキャラクターになっている。
そんな暗闇の雲も、口調は「FFIII」の頃から変わらず「ファファファ……」と仰々しさを感じさせ、見た目とセリフのギャップがユニークなキャラクターに仕上げられていた。なお皇帝は「ウボァー」のボイスが聴けるだけでも、プレーヤーとしては盛り上がったものだ。
このドット絵時代のキャラクターの再生には、当時「イメージと違った」というような感想も少なからずあったのだが、筆者としては非常に満足しており、特にストーリー全体を通じて1本しっかり軸が通っていたのは、素晴らしい出来栄えだと感じた。様々な世界からのクロスオーバー作品ながら、見事に様々なキャラクターを「DFF」の世界に調和させることに成功したタイトルである。
ストーリーではティーダとジェクトが邂逅を果たしたりといった「本編では見れなかったif」の場面もあり、プレーヤーの涙を誘った。「DFF」で行動を共にしていたバッツ、スコール、ジタンは「589トリオ」という呼ばれ方で本作のプレーヤーから愛された。
「DFF」を通じて、数多の世界の垣根を超え、「FF」という世界とキャラクターに新たな可能性を見出したプレーヤーは多かったのではないかと思う。
アクションが苦手なRPGファンでも遊びやすい設計に
「DFF」といえば、爽快なアクションも楽しかったひとつ。
〇がブレイブ攻撃、□がHP攻撃、×がジャンプと、基本の動作はほぼワンボタンでできるようになっており、元々がRPGというジャンルのファンでも簡単に遊べる設計になっていた。
ブレイブ攻撃というのは本作や派生作品を遊んだことがある人でないと聞きなれない言葉だと思うが、「DFF」で登場した攻撃アビリティのこと。ブレイブは簡単に言うと”持ち点”のようなもので、HPにダメージを与えることはできないが、ほぼいずれのキャラクターもブレイブ攻撃でこの持ち点をお互いに奪い合うようになっている。ブレイブ攻撃でお互いのブレイブ(持ち点)をやり取りし、ここぞというところでHP攻撃を使用。現在のブレイブをHPダメージとして叩き込むのだ。このブレイブのやり取りとHP攻撃の駆け引きが、「DFF」の本質である。
ブレイブをそこそこ持っているときにHP攻撃をちまちまと当てていけばいつかは勝てるのではないかというと、確かに理論的にはそうなのだが、HP攻撃の最大の特徴は非常に隙が大きいところで、当てる前も非常に大振りな動きをしたり、攻撃判定後もしばらく動けなかったりしてしまう。なのでHP攻撃を相手に1回当てるだけでも大変で、しかも当てた後はブレイブが一時的に0になり、そこで敵のブレイブ攻撃を食らうとBREAK状態になってしまうというデメリットもあった。相手をBREAK状態にした側は、マップブレイブを獲得して一気に自身のブレイブを高められるチャンスとなる。その状態でHP攻撃に当たってしまうと、一撃でKOされてしまうこともあるほどだ。
なので、格闘ゲームが苦手な人ほど、如何に高ブレイブを維持しながら少ないHP攻撃で相手のHPメーターを一気に削るか、というゲームバランスになっている。もちろん、隙が非常に大きいHP攻撃をバンバン何回も当てられる自信があるのであれば、ブレイブをあまり持っていなくてもHP攻撃を当てて、じわじわと相手のHPゲージを削っていくこともできるのだが……それだけHP攻撃を当てられるほどの腕前があるのであれば、必然的に高ブレイブを維持するだけの腕前も持っているというのは、少々皮肉な点だろうか。
本作は通信対戦も可能で、対人戦となると普通の格闘ゲームと同じような難しさがあり、もちろん露骨に上手い下手が出てくる。隙の多いプレーヤーが相手ならば1試合で何回もHP攻撃を入れることができてしまうが、こちらのモーションをきっちり見れるような相手だと隙の大きなHP攻撃は簡単に回避されたりしてしまう。
ただ、対人戦限定でアーティファクトと呼ばれる装備品をドロップすることがあり、通常の装備品よりも強力な追加効果がついていたりする。
これを求めて、筆者は「FF」好きな友人とはもちろんのこと、PS3のアドホックパーティ機能を使って野良対戦も楽しんでいた。2008年当時はまだPS3の普及台数はそれほど多くなかったので、野良対戦と言えど大体決まったメンバーが集っており、なんとなく互いのプレイスタイルや使用キャラクターなども理解し合っていたものだった。
もちろん対CPU戦も可能で、こちらはCPUの強さやレベルを選べたところがポイントが高い。苦手な人はCPUキャラの強さを弱く設定してしまえば、一方的にぶちのめす爽快感が味わえる。クイックバトルはキャラクターの経験値稼ぎにこもっていた人も多いのではないだろうか。
ストーリーモードに関しては、格闘ゲーム初心者でも比較的プレイしやすい難易度に落ち着いていた。極めようと思えば、ブレイブ攻撃、HP攻撃、ジャンプ以外にも防御、回避、アビリティ使用、召喚、EXモードなど様々な技を駆使していく必要があるのだが、ストーリーモードではそこまで複雑な操作を求められることはなかった。
それに、プレイしていて操作に慣れてくれば何となく他の技も繰り出せるようになっていく難易度で、実際格闘ゲームはかなり下手な部類に入る筆者でも、ストーリーモード自体は問題なくクリアできる程度になっていたのが嬉しかったところだ(もちろんクイックモードで経験値稼ぎはしているが)。この部分は、「DFF」がファン向けのお祭りゲームという位置づけならではである。
本作がいわゆる格闘ゲームと違ったのは、レベル制の採用だろう。レベルが上がれば様々なステータスが上昇し、新しいアビリティを覚えていく。アビリティはもちろん各キャラクターに装備する必要があり、規定内のCPに納まるように装備しなければならなかった。このアビリティシステムが、「DFF」を非常に奥深いゲームにしていた。
いわゆる剣やアクセサリといった装備品や召喚石などもあり、そこでさらにキャラクターを自分色に染め上げるカスタマイズが可能だったのも、本作が他の格闘ゲームと一線を画すところだった。
音楽のアレンジも素晴らしい作品
「DFF」の音楽は、一部原曲からも使用されていたが、メインはアレンジBGMとなっていた。本作のアレンジを担当したのは、「すばらしきこのせかい」や「クライシス コア ファイナルファンタジーVII」などの楽曲を担当した石元丈晴氏、「ファイナルファンタジーXIII-2」や「ファイナルファンタジーVII リメイク」などの楽曲を担当した鈴木光人氏、「ラストレムナント」や「聖剣伝説 RISE of MANA」などの楽曲を担当した関戸剛氏ら。
ロック系の音楽を得意とする石元氏、透き通ったメロディに定評のある鈴木氏、スクエニ作品でギターが光る曲と言えば関戸氏、という3名の個性が入り混ざった本作のアレンジBGMは、非常にクオリティが高い。
「FF」シリーズはそれまでにも多くのアレンジアルバムなどを出しているが、「FFI」~「FFX」までの曲が万遍なく、それもスクエニ作品を代表するコンポーザーが集い、聞き馴染みのある有名楽曲に斬新なアレンジを施すゲームタイトルというのは、本作がほぼ初めてのことだった。
関戸氏の「ゴルベーザ四天王とのバトル -arrange-」や、鈴木氏の「あの丘を越えて -arrange-」、石元氏の「更に闘う者達 -arrange-」など、ファンなら皆が知っている様々な楽曲らが装い新たにアクションゲームのBGMとして生まれ変わり、爽快感のある本作のアクションバトルを盛り上げたのは言うまでもない。楽曲面でも、まさに”お祭り”であった。
とにかく手間暇かけられた究極のお祭りゲーム
あまりキャラクター性が立っていなかった「FFI」~「FFIII」を含め、全ての「FF」に平等に愛を注ぎ、どのシリーズのファンも納得させる出来栄えに仕上げてきたのが、「DFF」である。
ここまでに数度「お祭りゲーム」という単語を使ってきたが、お祭りゲームとは思えないほど手間暇のかけられたタイトルだ。
各シリーズの名シーン、各キャラクターの名セリフなどは不自然にならないように上手くストーリー内で使われている。強いて言うなら、これらを全部余さず楽しむためには、全「FF」シリーズを履修しておく必要がある、というくらいの欠点しかない。
システムは当時まだまだ粗削りな部分はあったとはいえ、後続のシリーズ作品につながるベースとなるブレイブ攻撃・HP攻撃のシステムを作り上げた功績は非常に大きかったのではないだろうか。
続編「ディシディア デュオデシム ファイナルファンタジー」はもちろんのこと、アーケード版に成長した「ディシディア ファイナルファンタジー」では、「FF」を知らない格闘ゲームプレーヤーすら取り込むことに成功した。
余談だが、筆者は未だにPS4版「ディシディア ファイナルファンタジーNT」をプレイしている1人である。
「FFXVI」までのキャラクターが勢揃いした、新たな「ディシディア」をぜひプレイしたいものだと心からそう思う。スマートフォン向けゲームである「ディシディア ファイナルファンタジー オペラオムニア」に期待していたのだが、残念ながら「オペラオムニア」は2024年2月にサービス終了が決定してしまった。
どうか現行機で遊べる「ディシディア」を開発してほしいと祈りながら、15周年のお祝いをしたい。
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CHARACTER DESIGN:TETSUYA NOMURA