【特別企画】

「Demon's Souls」が15周年! 「なんだ、このゲーム」と思うほどの難易度でソウルライクという言葉を生み出した原点の作品

【Demon’s Souls】

2009年2月5日 発売

 2009年2月5日、フロム・ソフトウェア開発にてプレイステーション 3用ソフトとしてリリースされた「Demon's Souls(デモンズソウル)」。

 本作は、フロム・ソフトウェアの「キングスフィールド」の流れを汲む3Dアクションアドベンチャーとして発売され、日本はもちろんのこと、世界中で大ヒットした作品だ。後に世界中で爆発的な大ヒットとなる「DARK SOULS」(ダークソウル)シリーズの原点とも呼べる作品で、2020年11月12日にはPS5向けタイトルとして、フルリメイクされた。

 PS3向けタイトルである本作は、販売をソニー・コンピュータエンタテインメント(現:ソニー・インタラクティブエンタテインメント)が行っている。それもあってか、PS3版もリメイク版のPS5版も、いまだに他機種で遊ぶことはできず、プレイステーションハードを所持していないと遊べないソウルライクシリーズのひとつとなっている。

 本稿では発売15周年を記念し、「デモンズソウル」を振り返る。なお、本稿で使用するスクリーンショットは筆者がPS3版の画像を残していないためPS5版のものとなるが、基本的にはPS3版をベースとした記事となるので、ご了承願いたい。

誰もが一度は放り投げた、そんなところから始まったソウルライクの歴史

 現在のフロム・ソフトウェア作品ブームからは考えられないと思うが、発売当時は「デモンズソウル?」と首をかしげる作品だった。それもそのはず、「デモンズソウル」はCMや雑誌広告を一切出さなかったのだ。ではこの作品は何故売れたのか? というと、口コミに他ならない。

 当時は今のようなSNS全盛期の時代ではなかったため、口コミと言っても本当にじわりじわりと広がっていくようなものだったが、それでも出荷分の大半が売れて全国的にも、通信販売も、品薄になるという状態になったのだ。

 何故「デモンズソウル」が売れたのか、それを今更語るまでもないとは思うが、最大の理由はやはり近年稀に見る高い難易度だろう。もちろん、作り込みのレベルが半端ないのもあったが、プレイヤーの目の前にまず立ちはだかったのは、全く先に進めないレベルの難易度であったのは間違いない。

 ゲーム開始直後からいきなり死ぬ。なのに、まずボーレタリア王城1をクリアするまで、レベルアップすらできない。一応楔の神殿という拠点はあるものの、まず最初のエリアは初期レベルでボスのファランクスまで撃破しなければならないのだ。

 いやあ、これがさっぱりクリアできない。クリアできないからレベルを上げたいのに、レベルを上げることすらできない。そもそもゲーム性がよくわからない。マルチプレイができると聞いたのに、マルチプレイもできない(※マルチプレイの解放もボーレタリア王城1クリア後)。

 今であれば、ソウルライクゲームのゲーム性がわからないということはほぼないと思うのだが、この頃はまだソウルライクゲームなんていう言葉はなかった時代である。本当に、何をどうすればいいのかわからなかった。

 特に筆者はどのゲームでも魔法を好む傾向にあるため、素性を魔術師にしたのだが、戦い方がさっぱりわからないうえにMPがすぐ尽きる。そして死ぬ。あと筆者は普段から注意力が散漫なほうだ。つまり、致命的にこのゲームをやるのに向いていなかった。

 だから、当時は思ったものだ。「なんだ、このゲーム」と。

 ようはただ単に筆者が”下手くそ”なだけだったし、本作のような発見と学習、挑戦を積んでいくゲームへの理解力が足りていなかっただけなのだが、認めたくないものだな以下略(CV:シャア・アズナブル)。

 そして筆者は、このゲームを投げ出したのだ。……「投げ出したくなるのを堪えて、それを乗り越えるゲーム」である、ということを誰もが知っている時代ではない。こんな難易度のゲームが目の前に出てきたら、8割(推測)の人間は一度は投げたのではないだろうか。

 それから約2年半の月日が流れ、2011年9月22日に「ダークソウル」が発売になり、懲りない筆者は再び購入。結果的に家族ともども「ダークソウル」に夢中になり、完全にソウルライクゲームの虜になるまで、「デモンズソウル」は仕舞われたままであった。だってクリアできないんだもの。

 なお、この頃にはとっくに「デモンズソウル」の魅力に憑りつかれた有志によって、数は少ないものの攻略サイトもできあがっていた。「ダークソウル」で鍛えられ、筆者のプレイヤースキルも多少上がっていた。また、「ダークソウル」に牽引されて「デモンズソウル」も再び盛り上がった。さらにこの頃には、SNSを通じてオンラインでプレイしてくれるフレンドも増えた。

 これら様々な要素が重なり合うことで、筆者は再び「デモンズソウル」を手に取り、そしてクリアに至ったのだった。ありがとう、「ダークソウル」。

 ちなみに今だから言えるけれど、「デモンズソウル」は難易度としてはヌルめだよね!まあ「ヌルめ」とかどの口が言うか、という感じなのだが、PS5でリメイク版を再びプレイした時もやはり「デモンズソウル」はまだヌルめなほう、と感じたので、こんな筆者でも一作ずつプレイするたびに、プレイヤースキルは上がっているようだ。一応筆者の体感的に、リメイクにあたって敵の強弱にはほぼ手が入れられていないと感じているので、リメイク版が易しめになっているのではなく、単純にプレイヤースキルの向上だと思いたい。

 それもあって、ソウルシリーズに興味がある人には、未だに「Bloodborne」か「デモンズソウル」をおススメすることが多い筆者である。どちらもプレイステーションハードがないと遊べないタイトルだが、ぜひ参考にしてほしい。

画像は「Bloodborne」。筆者がソウルライクシリーズ初心者に推すゲームは「デモンズソウル」と「ブラボ」である

 余談だが、PS5版「デモンズソウル」はあくまでリメイク。しかもリメイクにはフロム・ソフトウェアは関わっていないため、一部グラフィックはPS3版とは大分変更されている。特に人物の顔などは顕著なので、一応ご注意願いたい。

「デモンズソウル」の大きな特徴はソウル傾向

 「デモンズソウル」の一番大きな特徴といえば、ソウル傾向だったと思う。ソウル傾向は一種のステータスのようなもので「最白」、「白」、「中立」、「黒」、「最黒」の5つの状態に分かれている。

 このソウル傾向をきちんと説明しようと思うとそれだけで何千文字という字数になってしまうので比較的簡素な説明になるが、まずは「エリアのソウル傾向」によって難易度が変化するのが、本作の特徴だ。

 エリアのソウル傾向が白い時は敵の攻撃力が弱くなり、プレーヤーのソウル体時のHPが増加する。また、最白時のみ通れる道などがあり、最白時にしか取れないアイテムも存在する。また、最白時のみ戦える敵NPCなども登場する。

 だが、エリアのソウル傾向が黒化しているときは、敵の攻撃力が上がり、プレーヤーのソウル体時のHPが減少するものの、獲得ソウル量やアイテムドロップ率は増加する。また、最白~中立では現れなかった敵が出現していることが多く、難易度が上がるのだ。

エリア傾向。ストーンファング坑道は黒化している

 ……と、これだけを聞くと黒化させるメリットはあまりないように思えるが、エリアが黒化している時にだけ現れるのが、「原生デーモン」。原生デーモンを倒すと「色の無いデモンズソウル」というユニーク武器を強化するための素材がドロップする。一周で入手できる数が10個のみという、非常に貴重なアイテムだったのだ。

 さらに、ソウル傾向には「キャラクターのソウル傾向」というものもある。最白に近寄るほど自身の攻撃力が増加し、黒いほど自身の攻撃力が減少してしまう。また、自身のソウル傾向によってNPCの出現イベントに影響があったりした。

 エリア傾向を白化・黒化させる条件や、キャラクター傾向を白化・黒化させる条件は色々あるものの、基本的に全てのアイテムやNPCイベントを発生させようとすると、ゲームを開始してからまず最白を目指し、2周目で最白から一気に最黒を目指すほうが楽だった。ちなみにボスが残っていない等の条件次第では、その周回では最黒から最白にはできないこともある。そういった事情もあって、最白から最黒を目指したほうが良いのだ。

 このエリア傾向はオンライン要素もあったが、PS5版では削除されている。自身のプレイとは関係のないところでソウル傾向が左右されてしまうので、細かい調整をしようと思うとPS3版では半ば強制的にオフラインプレイをしなければならなかった。

 最白時はソロでも充分プレイできるのだが、最黒時には協力者を呼んでの協力プレイが多かった筆者にとっては、エリア傾向がオンライン要素で変わってしまうのは少々面倒だったのは確かだ。だが、運要素もあって「白寄りにするために対人戦で勝とう」など、対人戦が苦手な筆者でもチャレンジしてみる気持ちにもさせてくれた(やっぱり苦手なのだが)。

 ちなみにPS3版は、2018年2月28日にオンラインサービスが終了。よってすでに協力プレイや対人戦、メッセージ機能、サーバーのエリア傾向など、様々なオンライン要素がなくなり、オフラインでしか遊べなくなっている。代わりにPS5版でのリメイクが発売されたとはいえ、オフラインしかないのは少々残念な気持ちになってしまう。とは言え、9年間もオンラインサービスを続けていただき、ありがとうございました。

マルチプレイはとてもとても楽しかったです、ありがとうございました

ソウル傾向さえ理解すれば、フラグ管理は比較的楽なシリーズ

 本稿の読者の中には「エルデンリング」はプレイしたけれど、「デモンズソウル」はまだ、という人もいるのではないかと思っている。

 上記の通り、オンラインサービスは既に終了してしまったが(PS5版はもちろんオンライン可能だ)、「デモンズソウル」は初期のソウルシリーズとあって、NPCのフラグ管理は比較的楽にできている。

 特に「エルデンリング」などは、誰それがどこへ行ったかなどのフラグ管理だけで訳が分からなくなり、周回を重ねてもまだ取り逃すというレベルだったが、「デモンズソウル」は2周もすれば(ソウル傾向最白と最黒をやれば)ほぼ全てのアイテムを回収しつつNPCイベントも進められる程度になっている。基本的にソウル傾向は普通にプレイしていれば白寄りになることが多いため、最白はとても取りやすい。

 ちなみに「デモンズソウル」をプレイしたことがある人にとって一番思い出深いのは、オストラヴァのイベントではないだろうか。「出会うたびに危機に瀕しているNPC」と言えば、思い出す人もいるはずだ。

 下手に放置しておくと勝手に死んでしまう、オストラヴァ。打たれ弱い彼に死なれてしまい、「霊廟の鍵」を手に入れられず、「デモンブランド」を諦めるしかなかった……という苦い思い出がある人もあるだろう。

オストラヴァ

 デモンブランドとは、ソウル傾向が白くなるほど強くなり、デーモン相手に1.5倍の特攻ダメージが入るという、とても強い武器だ。なおソウル傾向が黒くなるほど強くなる「ソウルブランド」という武器もある。デモンブランドとソウルブランドの2本が揃うと、「北のレガリア」という更に強力な武器を入手できる。そのためデモンブランドを諦めなければならないということは、北のレガリアも諦めなければならなくなり、アイテムコンプを目指すならば必然的にもう1周プレイが必要になってしまう。

 そんな初回プレイヤー泣かせのオストラヴァだったが、一度救ってあげれば楔の神殿にやってくる。助けては神殿で会話をし、また助けては神殿で会話をし……という繰り返しで、フラグ管理という意味では全然難しくないほうであった。なお、オストラヴァ自体は、とても気のいい青年である。最後のオチが実に「ソウル」シリーズらしくはあるのだが……。

 そして未だに信仰方面で使われる「アンバサ」という言葉も、初出は「デモンズソウル」である。いわゆる「アーメン」に相当するような言葉で、神職者が話を締めくくる最後に呟く祈りの言葉がアンバサ。そのため、未だに信仰ビルドがアンバサビルドと呼ばれたりする。何故かアンバサビルドという言葉だけ知っている、という人もいるだろう。こうして未だに根強く残っている言葉からしても、やはり「ソウル」シリーズの原点は「デモンズソウル」なのだと、筆者は思っている。

アンバサ

 PS5版のグラフィックには賛否両論あるが、美しさは文句なしである。また、敵の配置や硬さなどは元祖そのままだ。そもそもほとんど自キャラの背中を見ているようなゲームではあるので、グラフィックが合わないと思っている人もPS5版を遊んでみてほしい。60fps(シネマティックモードは4Kの30fps)でヌルヌル動く「デモンズソウル」には、新鮮さを感じられる。もちろん、現状まだPS3版で遊べるというひとは、そちらで遊ぶのも良いだろう。

 15年経っても色あせることのない、元祖「ソウル」シリーズ。ぜひ、今また「デモンズソウル」に改めて触れてみる人がひとりでも多く増えると幸いだ。