【特別企画】

SFC版「ファイアーエムブレム 紋章の謎」が30周年! シリーズの人気を定着させたシミュレーションRPGの名作

【ファイアーエムブレム 紋章の謎(スーパーファミコン版)】

1994年1月21日 発売

 1994年1月21日に任天堂がスーパーファミコン用ソフトとして発売した「ファイアーエムブレム 紋章の謎」が、本日で30周年を迎えた。

 本作は、主人公のアリティア王子・マルスおよびマルスが率いる味方ユニットを操作して敵軍と戦うシミュレーションRPGで、1990年にファミリーコンピュータ用ソフトして発売されたシリーズ第1弾「ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣」のリメイク版にあたる。プレーヤーと敵軍(CPU)が交互にユニットを操るターンバトル方式で、バトルに敗れて死亡した味方ユニットは原則として二度と生き返らず、各章(ステージ)で敵軍の大将を倒し、城門や玉座を「制圧」するとクリアとなる基本ルールはそのままに、ファミコン版には存在しなかったさまざまな追加要素が盛り込まれている。

 以下、節目の年を迎えた本作の特徴や魅力、元祖ファミコン版をリメイクした意義などを改めて振り返ってみることにする。

※スクリーンショットはNintendo Switch Online版

ファミコン版には存在しなかった新要素を多数追加

 本作のシナリオは、第1部「暗黒戦争編 暗黒竜と光の剣」と、第2部「英雄戦争編 紋章の謎」の2部構成になっている。第2部では、第1部から1年後の世界を舞台にマルスたちの後日談を描かれ、まさに「暗黒竜と光の剣」の完結編とも言える内容だ。新シナリオを追加したことによって、「ファイアーエムブレム」シリーズ未経験者だけでなく、すでにファミコン版を遊び尽くした人も新たなチャレンジができるところに、本作ならではの大きな価値があると言えるだろう。

 ファミコン版には存在しなかった新要素が数多く導入されたのも、本作を語るうえでは見逃せないポイント。踊り子などの新ユニットや、レディソードなどの新たな武器、アイテム類が追加されたことで、ファミコン版をさんざんやり込んだプレーヤーも新たなモチベーションを得たうえで本作が楽しめる。武器屋や道具屋などで入手したアイテムを多数ストックしておける「輸送隊」のほか、特定のユニット同士を近付けておくと支援効果が発生したり、馬やペガサスに乗ったユニットが屋内マップでは必ず下馬した状態で行動したりするなど、後のシリーズ作品でもおなじみとなったこれらのシステムは実は本作がルーツだ。

 スーパーファミコン向けにリメイクされたことで、ファミコン版に比べてさまざまな演出が強化されたのも本作の大きな見どころだ。

 各ユニットの顔イラストがさらにカッコよくなっただけでなく、バトル中のアニメーションが多彩になり、加えて敵将のイラストやセリフも多数追加されるなど、ありとあらゆるビジュアルが大幅に改良されている。デモ画面では、本作の舞台となるアカネイア大陸の神話が流れるシーンが追加されたのをはじめ、各章の冒頭で広大な世界地図をバックにストーリーが語られる演出も新たに導入された。

 本作のサウンドはファミコン版から全面的にリニューアルされ、そのクオリティも飛躍的にアップしている。タイトル画面で流れる「オープニング・テーマ/紋章の謎(エムブレム)」などは、まるで本物のオーケストラ楽団が演奏しているかのように聞こえ、本作がファミコン版からさらにグレードアップしたことをプレーヤーに強く印象付けるものであった。あくまで筆者の私見だが、とりわけプレーヤー側が有利に戦いを進め、勝利目前になったときにメインBGMが「勝利は我らに(B)」に切り替わり、達成感をさらに高めてくれる演出も秀逸だった。

 これらの演出が強化されたことで、プレイヤーは各章(ステージ)で攻略法を思案する楽しさが増したのはもちろん、各ユニットに対する愛着が深まることで、エンディングまで到達したとき、あるいは志半ばで戦死者を出してしまった際の感動がさらに高まったように思えてならない。

第1部、第2部のどちらからでもゲームを始めることができる
各章のオープニングのシーンでは、世界地図をバックにストーリーが語られる
各種ビジュアルがファミコン版よりも強化され、「輸送隊」などの新システムが導入された
敵軍に倒された味方ユニットは原則として生き返らない、シリーズ伝統のルールはそのまま継承している

 第2部は、マルスがかつての親友・ハーディン皇帝が率いるアカネイア帝国から派遣されたラング将軍が「〇〇を殺せ」「〇〇を捕らえろ」などと理不尽な指示を次々と受け、帝国に翻弄される展開で幕を開ける。第1章では手負いの敵将が自決する衝撃の展開が待ち受け、第2章でも王女ミネルバが捕らわれの身となっていることが発覚するなど、奇妙な事件が立て続けに起きることで、プレイヤーは悪行三昧な敵軍を倒すべく、否が応でもモチベーションが沸き上がる。

 筆者は第1部、第2部ともエンディングまでプレイした経験があるが、難易度は第2部のほうが高い印象だ。なので第2部は、未知の展開と難易度の上昇とが相まって、マルスとその仲間たちを一兵たりとも失うまいと、よりスリリングなシミュレーションバトルが楽しめる。筆者も何十、もしかしたら何百回も味方ユニットを死なせてしまい、幾度となく悔しい思いをしたが、それでもエンディング到達まで夢中になって遊び続けることができたのは、本作がそれだけ面白いことの何よりの証左だろう。

 本作は「ファイアーエムブレム」シリーズの存在をまだ知らない、あるいはプレイ経験のないスーパーファミコンユーザーに対し、本シリーズの面白さを知らしめた点でも、極めて大きな存在だったように思う。

 筆者がそう考える理由は、元祖ファミコン版「暗黒竜と光の剣」が発売された時期が関係している。シリーズ第1弾が発売されたのは1990年4月20日、つまりスーパーファミコン本体が発売される直前であり、ゲームファンの関心がファミコンからスーパーファミコンへと徐々に移り始めたタイミングであった(※スーパーファミコンは1990年11月21日に発売)。さらに、元祖「ファイアーエムブレム」の存在自体は、テレビCMやゲーム雑誌の広告などを通じて広く知られていたものの、発売時期が「ドラゴンクエストIV」と「ファイナルファンタジーIII」の両ミリオンセラーRPGとほぼ重なっていた(※前者は1990年2月11日、後者は同4月27日に発売)。

 そんな事情もあり、筆者も発売当時は「ドラクエIV」などに夢中になるあまり「暗黒竜と光の剣」には手が回らず、ゲーム仲間の間でも「暗黒竜と光の剣」を持っていた友人は少なかった印象がある。また筆者は「ドラクエIV」のために多額の小遣いを費やした分、きたるスーパーファミコンの発売日に備えて貯金をしなければと、ムダ遣いを極力控えるようにしていたこともおぼろげに記憶している。

 だからこそ、筆者のようにファミコン版の遊ぶ機会を逃した、あるいは存在を知らなかったプレーヤーたちに本シリーズを認知させるためにも、シリーズ第3弾となる「紋章の謎」をスーパーファミコン用ソフトとして発売したした意義は、ことのほか大きかったのではないだろうか。ゲーム自体の出来が良く、プレーヤー間での評価も総じて高かったからであろう本作の発売を機に、以後「ファイアーエムブレム 聖戦の系譜」をはじめ、現在までに数多くの続編やリメイクが発売され、本シリーズの人気が定着するに至ったように思えてならない。

第2部には新ユニットが多数登場。第2章から敵のドラゴンナイトが早くも出現するなど、難しいが見どころ満載だ

 本作は2024年1月現在、サブスクリプションサービス「Nintendo Switch Online」加入者がプレイできる「スーパーファミコン Nintendo Switch Online」にて配信中なので、本サービスに加入していれば誰でも無料で遊ぶことができる。しかもNintendo Switch版では、プレイデータをいつでもセーブ、または巻き戻しができるので、うっかり味方ユニットを死なせてしまった場合でもすぐにやり直せるので実にありがたい。

 さらにNintendo Switch Onlineでは、元祖ファミコン版「暗黒竜と光の剣」も配信中なので、両タイトルを比較しながら楽しむのも一興だろう。ファミコン版しかプレイ経験がない人も、近年発売された「ファイアーエムブレム」シリーズしか知らない人も、この機会に本作をぜひプレイすることをおすすめしたい。

 また、「ファイアーエムブレム」シリーズ最新作として、Switch版「ファイアーエムブレム エンゲージ」が2023年1月20日に発売された。こちらもあわせてプレイしてみてはいかがだろうか。

Nintedo Switch Onlineではファミコン版「暗黒竜と光の剣」も配信中。エンディング目前から始まる「クライマックスバージョン」と、本シリーズおなじみのペガサス三姉妹の必殺技がすぐに使える「トライアングルアタックバージョン」も用意されている
「ファイアーエムブレム エンゲージ」