レビュー
「ファイアーエムブレム エンゲージ」レビュー
過去作主人公も多数登場! 「FE」ファンも未経験者も楽しめる
2023年1月18日 00:00
- 【ファイアーエムブレム エンゲージ】
- 発売元:任天堂
- 開発元:インテリジェントシステムズ
- ジャンル:シミュレーションRPG
- プラットフォーム:Nintendo Switch
- 発売日:1月20日
- 価格:
- パッケージ版 7,678円(税込)
- ダウンロード版 7,600円(税込)
- エレオスコレクション 10,978円(税込)
- CEROレーティング:B(12歳以上対象)
1月20日に発売予定の「ファイアーエムブレム エンゲージ」(以下、「FEエンゲージ」)。本作は、任天堂によるシミュレーションRPG「ファイアーエムブレム」シリーズの最新作だ。4つの王国と1つの聖地から成る「エレオス大陸」を舞台に、”紋章士”なる英雄の力を巡る物語が描かれる。
紋章士の力は12個の指輪に宿っており、紋章士とは「暗黒竜と光の剣」、「紋章の謎」の主人公であるマルスや、「聖戦の系譜」の主人公であるシグルド、「烈火の剣」の主人公リン、「蒼炎の軌跡」の主人公アイクなど、過去作に登場した異界の英雄たちのことである。全部で12名の紋章士が登場し、本作の主人公や登場キャラクターたちに指輪を通して力を貸してくれる他、装備したキャラクターのステータスアップなどの効果もある。
本稿では、本作の特徴とも言える紋章士との合体技「エンゲージ」をはじめ、様々な仲間との出会いなどを紹介していこう。
仲間にできるキャラクターは総勢30名以上!
本作は、主人公の神竜リュール(名前変更可・性別選択可)と紋章士の力が宿る指輪を中心に描かれていく。
紋章士の指輪に眠る力を目覚めさせることができるのは、竜の血を引く王族——すなわち主人公のみ。「英雄王の指輪」を持つ主人公は、指輪に宿る紋章士マルスと共に邪竜復活を阻止するため、世界を回り12個の指輪を集めることになる。
「過去作を知らないと楽しめないのかな?」という不安があると思うが、安心してほしい。道中で様々なキャラクターと仲間になるが、物語の主軸となるキャラクターは、本作のオリジナル。ストーリーはあくまでオリジナルキャラクターを中心に進むので、「FE」初心者でも気軽に楽しめる。しかもそのオリジナルキャラクターは、総勢30名以上!
もちろん本作でも、ユニットを隣り合わせで戦わせたり、一緒に食事をとるなどの行動を行うと支援値が上がり、支援値が一定まで貯まると支援会話が発生することがある。支援会話では、キャラクターの趣味や性格といったものが初めてわかることもあるので、個性豊かな仲間たちとの出会いを、楽しみにしていてほしい。
これはあくまで個人的な体感だが、本作は支援会話などそのものは比較的あっさりしているように感じる。その分、物語運びは非常にスピーディとなっているとも言えるだろう。様々なキャラクター同士での支援会話も発生するため、各キャラクターの関係性も見逃せない。
なお、多くのキャラクターが仲間になることならではの嬉しい悲鳴といえば、スタメン選びである。どのキャラクターも非常に魅力的、そして長所や短所が違うとあって、戦闘に出陣させるメンバーを誰にするのかは困ってしまう。
序盤から大事に育ててきたキャラクターも捨てがたいのだが、次々と加入してくるユニットはいずれも強力なことが多く、どちらかというと新規加入ユニットを活かすべく、古参ユニットは二軍落ちになっていくというバランスに感じた。ユニットの総合的な強さを知る指標として「総合力」というステータスがあるので、この数値を参考にパーティを組んでいくのが良さそうだ。
また本作では、兵種ごとの相性も非常に重要になっている。バトルの詳細は後述するが、相性次第で相手の反撃ターンを打ち消してしまうこともできたりするので、うまく相性を活かせばこちらの被ダメージを減らすことが可能になっている。そういった相性も考慮した上でパーティを組んでいくのも、ひとつの道だろう。
どんなに強力なユニットが後から加入してこようと、どうしてもお気に入りのユニットを使い続けたい! ……という場合は、各地で起こるメインストーリーとは関係のないバトル”遭遇戦”などをたくさんこなしてレベルを上げてクラスチェンジをしていく……、というような地道な努力が必要なように感じた。
ある意味で本来の「FE」シリーズらしくはあるのだが、それだけ頑張って育成しても、登場する敵の強さと味方のパーティの強さがなかなか見合わない(そもそもレベルアップ時のステータス上昇には運も絡むが……)。
それでも長らく苦楽を共にしてきたユニットへの愛を選ぶか、手軽に強力なキャラクターを得て進めていくかは、プレーヤーの選択次第だ。
指輪の力を使って合体したり、ステータスアップ!
本作の最大の魅力は、指輪を使っての合体技(エンゲージ)や、そこから繰り出せる強力なスキルにある。とはいえど、エンゲージによるシンクロ状態は3ターンで解除。再びエンゲージするにはバトルを行ないカウントをひとつずつ溜める他、マップ内にある”紋章氣”の上で待機することでエンゲージカウントを最大まで一気に溜めれば、再度エンゲージすることができる。
指輪によって効果は異なるが、超強力なエンゲージ技はシンクロ中の3ターンの中で1回しか使えないようになっている点は共通。これは注意が必要だ。
ちなみに主人公の初期装備の指輪はマルスだが、指輪は自由に付け替えが可能となっている。好きなキャラクターに、好きな紋章士の指輪を装備させることが可能だ。
例えば重装兵のルイは守備力の高さがズバ抜けている分、足が遅いのが欠点だ。だが、ルイにシグルドの指輪を装備させてエンゲージすることで、騎馬兵であるシグルドの機動力をルイが利用できるようになる。こうなると最早移動する巨壁であり、重装兵の弱点である魔道兵やアーマーキラー持ちの敵でもいない限り、部隊から先行しつつひたすら壁として立ち続けられる。
全部で12個ある指輪と紋章士とそのエンゲージ技については、改めて紹介していこう。
このように豪華な顔ぶれ、及び多彩なエンゲージ技となっている。どの指輪にも初期装備キャラクターは一応いるものの、前述の通りどのキャラクターにどの指輪を装備させるかは自由だ。その組み合わせは無限大とも言えるので、プレーヤーの戦略によって自由な編成を楽しめるようになっている。
例えばベレトのエンゲージ技は、隣接した味方ひとりを再行動可能にする踊り子の性能を彷彿させるが、だからといって踊り子にベレトの指輪を装備させてしまうのはあまりにもったいない。それよりも他のキャラクターにベレトの指輪を装備させて4人を再行動可能にしたあと、踊り子でベレトの指輪を装備したキャラクターを再行動させれば、最大で1ターン5人まで再行動できるようになる。
先程重装兵+シグルドの例を紹介したが、重装兵+カムイなども相性がいい。重装兵はその特性上、壁役になることが多く、狭い場所で敵をせき止めるのに向いている。敵が団子になったところでカムイのエンゲージ技を喰らわせて一気に削る、といったことが可能だ。或いは回避能力の高いシーフなどのキャラクターにカムイの指輪を装備させて、やはり壁役として使用しつつ、薙ぎ払うことも可能。
誰にどのような指輪を装備させるか、自身でじっくりと考えることになり、その戦略性はこれまでの「FE」シリーズとは異なる、新たな楽しみと言えるだろう。
また、持っている指輪から、ステータスアップができる指輪を精製できる(エンゲージは不可)。
指輪はランクC〜ランクSまであり、ランクが高いほどステータスアップ効果が高くなる。ステータスアップ効果は、各キャラクターにちなんだステータスが多い。上げたいステータス上昇効果を持つキャラクターを狙って、精製していくのがオススメだ。
筆者はあまり勝手がわからなかったこともあり様々な指輪から様々なキャラクターの指輪を精製してしまったのだが、同じランクの指輪は重ねて1ランク上の指輪にすることができるので、まずは同じ指輪からひたすら精製する方が良さそうだ。
このように、紋章士の指輪以外でも仲間キャラクターを指輪で強化しながら進めていくのが、本作の大きな特徴である。指輪で苦手なステータスを補うか、はたまた得意なステータスをさらに伸ばしていくかも、プレーヤー次第というわけだ。
バトルはエンゲージを使いこなしつつ、ブレイクなどを狙っていこう
上記のエンゲージというシステムを上手く使いこなしながら、一体ずつ丁寧に敵を倒し、少しずつ目的地へと向かって進軍していくのが、「FE」の進め方となる。
また、敵に攻撃を仕掛ける時には敵にどの程度のダメージを与えられて、敵からどれだけ反撃を喰らうのかがわかりやすく表示される。
そして本作で非常に重要な要素が「ブレイク」だ。剣は斧に強く、槍は剣に強く、斧は槍に強いという3すくみの構図があり、上手く相性を狙えば相手をブレイクすることができる。ブレイクとは、相手を反撃不可能のダウン状態にするようなもの。
ただ、相手をブレイクできるのは自軍だけではない。敵もこちらをブレイクしてくるため、武器の相性などは非常に重要となる。
敵のAIもなかなか賢く、こちらをブレイクできる時は容赦なくブレイクを狙いにくる。「ここまで減らしておけば、あとは敵フェーズの反撃で倒せるな」と甘く考えていたところ、実際には相性の悪い敵から続々とブレイクを喰らい、反撃で倒すどころか一方的に2回攻撃をされまくり、敵フェーズで倒されてしまった……というようなこともあったので、注意が必要である。
出陣前にどのような敵が配置されているかは確認できるので、闇雲にお気に入りのキャラクターを出陣させるだけではなく、いかにブレイクされないか、こちらからのブレイクを狙えるか、そういったことも考えて出陣メンバーを選定したい。
そうすると気になるのが、経験値のあげたいキャラクターがどうしてもブレてしまうことだが、そこは前述の通り、各地で起こるメインストーリーとは関係のないバトル”遭遇戦”などをたくさんこなして、様々なユニットを同時に育てていけばいいだろう。
なお、どうしてもスタメン以外に経験値を与えたくない人は、時間を巻き戻すアイテム「竜の時水晶」を活用してほしい。戦闘中、メニュー画面で竜の時水晶を選択し、戻りたい行動を選べば、その時点までターンを巻き戻すことができる。
「待機場所を誤り、敵からやたらにブレイクを喰らってしまった」、「相性の悪い相手からの急襲で味方が倒されてしまった」、「命中率が100%ではなかったために、攻撃を外してしまった」などなど、様々な出来事で「この行動をやり直したい」と思うことがあるはずだ。この竜の時水晶を使用してプレイしていけば、敵軍フェーズの動きをあらかた見てからひとつ前の自軍フェーズに戻す、なんてこともできてしまうので、改めて相性などを見ながらじっくり進めていくことができる。
ちなみに多くのマップで「主人公が倒される」ことが敗北条件となっている場合が多いが、もしも敗北条件を満たしてしまった場合、ゲームオーバーになるのではなく強制的に竜の時水晶が発動するようになっている。
戦闘が終わると散策パートに。キャラクターへ贈り物を渡すなど、拠点でしかできないことも充実
まずは、「FE」の基本となる戦闘マップがあり、戦闘が終わると散策パートが始まる。散策パートで仲間と会話することで「絆のかけら」という指輪の精製に必要なアイテムがもらえたりするのだが、ひとりひとり話しかけるのが面倒だという場合、マップに落ちているアイテムだけ拾って外に出てしまえば、話しかけることでもらえるはずの絆のかけらをそのまま回収できる、という仕様も非常に有り難く、せっかちさんでも安心の内容となっている。
また、散策のあとの自由行動パートでは拠点となる「ソラネル」へ戻ることもできるが、別に必ずしも戻らなくてもいい。そのままワールドマップを進んでいけば次の章へと進めるお手軽さも気楽でいい。
とはいえ、もちろん拠点に戻る利点もある。指輪の精製やマップに落ちているアイテムの回収、料理当番から料理を振る舞ってもらったり、アンナを仲間にすると彼女が蚤の市を開いていたり、気になるキャラクターへ贈り物をしたり、国への投資を行なったり、マイルームで休息したり、釣り等、拠点でしかできないことも充実しているので、適度に拠点に戻ることを意識したい。
筆者はメインストーリーを2〜3章進めてソラネルに戻る、というのを繰り返して進めていたが、実際この進め方で特に問題を感じなかった。
ただ、料理を毎回食べておけば料理を食べたキャラクターのステータスアップ効果や支援値アップ効果が狙えたりするので、マメにソラネルに戻ることへのデメリットといえば少々寄り道時間を取られる程度でしかない。その寄り道時間すら惜しむか否か、プレーヤーの個性が現れてくるだろう(ちなみに筆者は言うまでもなく、せっかちである)。
「FE」初心者からシリーズファンまで楽しめる
前述の通り、本作はたくさんの過去作の英雄が登場するものの、物語を進めていくのは本作のオリジナルキャラクターたちだ。もっとオールスターのような作品を想定していた人には少々肩透かしかもしれないが、根本的なゲーム性は「いつものFE」であり、シリーズファンの期待も裏切っていない。
主人公が出会うキャラクターはいずれも魅力的で、ストーリーも過去作の英雄に頼らなければならないような内容ではないので、「FE」に今回初めて触れる人でも安心だ。
バトル、ストーリー、散策、拠点、いずれもサクサクと進んでいくようなプレイ感で、非常に遊びやすい。「何から何まで全部やってほしい」というような作りよりも、「やりたい人が、やりたい要素だけ楽しんでくれればいい」というゲーム性になっているように感じられた。
そういう意味では、前作の「FE風花雪月」とは真逆のゲーム性とも言えるだろう。ゲームのプレイ時間も「FE風花雪月」と比較するとだいぶ短めになっており、時間があまりない人でも楽しめる。
さらに本作では武器の使用回数制限がなくなったため、「キルソードは温存するため輸送隊へ……」と次々と送っているうちに出番がなくなってしまった、なんてこともない。
一方で少々気になったのは、こちらの戦力がエンゲージによって大幅に戦力アップとなった分、敵も強力になっている点だろうか。
メインストーリーの敵はこちらの強さに応じて強さが変わるようなことはないので、地道に遭遇戦などをこなしていれば問題なく勝てるようになるのだが、どちらかというと遭遇戦のほうが難易度が厳しいように感じられた。
こちらがまだ「ぎん」シリーズの武器を買えない状態なのに遭遇戦の敵は軒並み「ぎん」シリーズの武器を持ち、容赦なく襲い掛かってくる、なんてこともままあり、さらに敵の数も多めになっている。経験値が稼ぎやすい一方で、苦戦も強いられるのが遭遇戦だ。紋章士の指輪を装備しているキャラクターならばともかく、汎用指輪しか装備していないキャラクターは、あれよあれよという間に一瞬で撃破されてしまったりする。もちろん紋章士の指輪を装備しているキャラクターでも、油断すれば命取りだ。
ただ、遭遇戦は必須の戦闘ではないため、一切やらずともいいようにはなっている。ちょっと難易度高めの遭遇戦をしっかりこなしてメインストーリーを楽に進めるか、メインストーリーに少々苦戦しつつも余計な寄り道は一切せずに進んでいくかを選べるので、どちらにしてもそこそこの苦戦は強いられる、との意味合いではバランスは取れているのかもしれない。
「FE」シリーズ経験者が思わずうなる戦略性もあり、「FE」初心者が楽しめる内容であり、それでいて過去作を知っていれば楽しめる要素あり、過去作を知らずとも充分理解できる内容であり、実にいいバランスとなっている「FEエンゲージ」。
特に「FE」初心者ならば、「FEエンゲージ」を取っ掛かりにして「FE」の過去作へと足を踏み入れてみるのもいいだろう。むしろそうなってくれると、シリーズのファンとしては、非常に嬉しいものがある。ぜひ手に取ってみてもらえれば幸いだ。
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