【特別企画】

ゲーミングモニターの“高リフレッシュレートわからない説”は本当なのか?高校生~高齢者ゲーマーで検証してみた

BenQ「ZOWIE XL2566K」で「360Hz」vs「240Hz」を比較!

【ZOWIE XL2566K】

発売日:2022年11月16日

参考価格:110,800円

 PCだけではなくPS5やXbox Series Xなど、いまや家庭用ゲーム機でも快適なゲームプレイの必須アイテムとなりつつある“ゲーミングモニター”。その最大の特徴は「高リフレッシュレート」であることだが、よく言われるのが「60Hzと144Hzの違いはわかるけど、それ以上は見分けが付かない」というもの。それは本当なのか? 今回は240Hzと360Hzのゲーミングモニターを用意し、幅広い年代のゲーマーに実際にゲームプレイに使用してもらい、違いを体感できるのか試してもらった。超高リフレッシュレートモニターの購入を考えている人の参考になるのではないだろうか。

見た目は同じ240Hzと360Hzのゲーミングモニターを用意し、違いがわかるのかテストを敢行した

リフレッシュレートが高いほど滑らかな描画が可能に

 比較テストに移る前に、「リフレッシュレート」について解説しておこう。わかっている人は飛ばしてもOKだ。リフレッシュレートとは、1秒間の画面書き換え回数のこと。60Hzであれば、60回となる。コマ数として考えると分かりやすく、1秒間に60コマよりも144コマのほうがずっと動きが滑らかになる。

 リフレッシュレートが高ければ、ゲーム、特にFPS/TPSにおいては遠くにいる敵のわずかな動きを捉えやすくなる、振り向きなど画面全体が素早く大きく動くようなシーンでも描画が滑らかなので状況の視認性が高まる、近距離での撃ち合いでも相手の動きを把握しやすいので照準を合わせやすい、など数々のメリットがある。勝敗を決定付けるのはプレイヤーの腕ではあるが、それをサポートしてくれる存在としてゲーミングモニターは非常に有用だ。

リフレッシュレートが高くなれば1秒間に描画できるコマ数が多くなり、敵の動きを把握しやすくなるなどさまざまなメリットを享受できる

 その一方で、高リフレッシュレートを活かすにはPC側の性能も必要になる。例えば、360Hzのモニターをフル活用するにはPC側は360fps以上の描画性能が必要だ。fpsは、1秒あたりに処理されるフレーム数のことで、フレームレートと呼ばれる。これもコマ数と考えて問題ない。高フレームレートを出すにはゲームにもよるが、基本ミドルレンジ以上の高い性能が求められる。ゲーミングモニターを使うには、ハード側の準備も重要になる点は覚えておきたい。ちなみに、PS5やXbox Series Xの最大フレームレートは120fpsだ。

現役最速クラスの360Hz「ZOWIE XL2566K」を用意

 今回360Hzのゲーミングモニターとして用意したのは、BenQの「ZOWIE XL2566K」だ。ZOWIEはゲーミングデバイスのブランドとして知られ、特にモニターはゲームでの快適度を追求しており、プロゲーマーにも愛用者が多い。

 「XL2566K」はフラッグシップと言える存在で、視野角こそやや狭いが応答速度に優れるTNパネルを採用することで、360Hzの超高リフレッシュレート、0.5ms(GtoG)の超高速な応答速度を実現。サイズは24.5型で解像度はフルHD。残像感を軽減する「DyAc+」、ゲームごとに最適化されたプロファイルをWebサイトからダウンロードして適用できる「XL Setting to Share」といった独自機能も用意している。

 スタンドも高さ調整、チルト、スイベル、ピボットと高機能で自分にとってベストな角度に調整しやすい。画面に集中できるよう、左右にアイシールドも備える徹底ぶり。まさに“競技向け”と言える仕様だ。

 いまどき24.5型は小さいと思うかもしれないが、視線を動かさずに画面全体を視野に入れられるのが24型前後と言われており、それ以上大きくなると画面全体の状況把握が難しくなり、視線移動も多くなってしまう。FPS/TPSに集中しやすいサイズが24.5型なのである。なお、サイズ(W×D×H)は571×200.18×442.84~521.17mmで重量は6.2kgだ。

BenQのゲーミングモニター「ZOWIE XL2566K」。実売価格は10万円前後
24.5型のTNパネル。視野角は狭めだが正面から見れば十分美しい画面
入力端子はHDMI 2.0×2、DisplayPort 1.4×1の3系統。PS5とXbox Series Xの120Hz駆動にも対応する
高さは155mmの間で調整が可能
チルトは下方向に5度、上方向に23度調整できる
スイベルは左右45度に動かせる作りだ
90度回転できるピボット機能も備える
背面にはヘッドセットをかけておけるフックを用意
OSDメニューを操作できるリモコンが付属しているのも便利。1から3ボタンに好みのプロファイルを設定もできる
【OSDオプション】
OSDメニュー。暗部を見やすくする「Black eQualizer」を用意
見えない速度で黒色を挿入して残像感を軽減する「DyAc+」
応答速度を高める「AMA」という機能もある

240Hzの「ZOWIE XL2546K」とブラインドテストを実施

 ここからは、見た目、サイズはまったく同じでリフレッシュレートが360Hzの「ZOWIE XL2566K」と240Hzの「ZOWIE XL2546K」を並べて設置し、どちらが360Hzなのか当ててもらうブラインドテストを実施する。使用するゲームは「VALORANT」(開発元:Riot Games)。描画負荷が軽めで高フレームレートが出やすく、人気も高いFPSであるため。ディスプレイに接続するゲーミングPCも「VALORANT」で360fps以上を安定して出せるハイスペックなものを2台用意した。もちろん2台ともまったく同じスペックで外観まで揃えてある。

360Hzの「ZOWIE XL2566K」と240Hzの「ZOWIE XL2546K」を並べて設置し、それぞれVALORANTを起動して違いと確かめてもらう
セッティングをそろえるためにどちらもXL Setting to ShareでVALORANTのプリセットを適用。DyAc+もプレミアム設定で有効化している

 テストに協力していただいたのは、60代の2人、30代の2人、10代の1人の合計5人だ。シニア層、中年層、若年層のそれぞれが360Hzと240Hzの違いを体感できるのか注目したい。

 まずシニア層には、日本初というシニアeスポーツチームの「マタギスナイパーズ」に協力をしていただいた。秋田を拠点とする同チームの平均年齢は67歳(2023年2月現在)とのことなので、ゆるくゲームを楽しむ同好会のようなものを想像するかもしれないが、「孫にも一目置かれる存在」をスローガンに、世代に関係なくガチで勝つための練習をする本格的なeスポーツチームだ。現在は「VALORANT」を中心にプレイしているとのことで、今回の企画にピッタリと言える。さらに240Hzの「ZOWIE XL2546K」は使用したことがあるという。期待が高まるところだ。

今回協力していただいたのはマタギスナイパーズのMark25さん(左、66歳)とナギさん(右、62歳)の2人だ

 指導を行なっている監督の須田善斗氏によると毎日何時間も練習するとのことで、その腕前はかなりのもの。「VALORANT」で敵に対して淀みなくAIMして撃つ60代の様子を見ていると、40代の筆者が“若い頃に比べてAIMがヘタになった……もう年だな”と思うのは言い訳でしかないなと痛感させられた。年齢に関係なく対等な条件で戦えるeスポーツはシニアの楽しみとしてよいのではないだろうか。

2台のディスプレイそれぞれでVALORANTをプレイして違いを確かめてもらった

 中年層は30代の2人。2人とも普段から「VALORANT」や「Apex Legends」などFPS/TPSをプレイしているという。カジュアルなゲーマーと言ってよいだろう。

30代の1人。AMIを中心に240Hzと360Hzの違いを確かめようとしていた
30代のもう1人。こちらは動きを中心に違いを確かめていた

 最後の若年層は17歳の高校3年生だ。普段はPCでは「VALORANT」、PS5では「Apex Legends」や「Call of Duty」シリーズを中心にプレイしているという。普段は165Hzのゲーミングモニターでゲームをプレイしているとのこと。一番若いだけに違いを見いだせるか気になるところだ。

17歳の高校生ゲーマー。AIM、移動、スキルなど幅広いアクションで違いと確かめていた

正解者は出たのか!? よく見ればわかる360Hzと240Hzの違い

 早速、それぞれ正解したのか下の表にまとめた。

年齢回答
シニア層Mark25さん不正解
ナギさん不正解
中年層30代①不正解
30代②不正解
若年層10代高校生正解

 残念ながら正解したのは若年層だけだった。10代高校生によるとヨルのスキルであるデコイを出すフェイクアウトの動きが360Hzのほうが滑らかだった、近接戦闘でも360Hzのほうが状況把握しやすかったなど幅広く試した結果、違いを感じたようだ。

若年層の正解は、左右のモニターで同時に同じ動きをするなど柔軟に幅広いテストを行なったのがよかったようだ

 シニア層の2人は、高リフレッシュレートモニターはブレが少なく遠くにいる敵を狙いやすいなど、普段から使っているだけにそのメリットはよく理解していたのだが、若干コントラストが強めでメリハリよく見える240Hzの「ZOWIE XL2546K」の色味に引っ張られて、不正解になってしまった。その一方で、“遠距離でのAIM時に違いがある気がする”との感想もあったので、挙動の違い自体は感じていたのかもしれない。

 中年層も同じ傾向だ。AIMや動きだけでは360Hzと240Hzの違いを判別できず、わずかな色味の違いで240Hzの「ZOWIE XL2546K」のほうがよく見えてしまったようだ。今回はそれぞれ15~20分程度のプレイ時間だったので明確な違いを見つけ出すには時間不足だった面もある。みなさんゲーマーだけに、もう少しじっくりプレイに時間をかければ結果は変わったかもしれない。

 なお、モニターは基本的にリフレッシュレートを高めるほど残像感は軽減していく。AIMや単純な移動だけでは感じられない違いも、モーションブラーが起きやすい箇所では360Hzと240Hzの違いがハッキリとわかる。「VALORANT」の射撃場であれば、射撃テスト場の天井がモーションブラーが起きやすく、天井を見ながら素早くマウスを動かせば360Hzのほうが残像感が少なくなる。実際、シニア層や中年層にその部分を見てもらうと違いを認識できた。このほか、ぐるっと一回転するような動きでもブレの違いは体感しやすい。

射撃テスト場の天井などモーションブラーが起きやすい箇所で比べれば、より残像感が少ない360Hzの優位性が見えてくる

最高のゲーミング環境を目指すなら360Hzはアリ!

 ZOWIEのゲーミングモニターは、高いカスタマイズ性を備える点も特色の1つだ。今回検証に使った360Hzモデルの「XL2566K」、240Hzの「XL2546K」のいずれも、高速応答技術の「AMA」やモーションブラーを軽減する「DyAc+」を搭載している。これらはユーザーに合わせて好みの表示になるよう調整でき、設定をプロファイルで一括変更する「XL Setting to Share」といった独自機能も組み合わせて実に柔軟に設定できる。

 性能の面では、240Hzのゲーミングモニターでも十分なほど高リフレッシュレートと言え、360Hzが絶対的に優位とは言えないが、残像感が軽減するのは確かだ。シビアな撃ち合いでは、そのわずかな残像感がAIMに影響する可能性はある。表示面の不安をできる限り取り除き、より勝ちにいく環境を追求するなら360Hzの「ZOWIE XL2566K」を選んで損はない。また、「VALORANT」でフルHD解像度ならば、GeForce RTX 3060やRadeon RX 6600 XTなどミドルレンジクラスのビデオカードで十分360fps以上のフレームレートを出せるため、360Hzを活かし切れる環境を構築しやすいのもポイントと言える。

マタギスナイパーズの2人には、検証後に普段使っているデバイスで1試合じっくりとプレイしてもらった。“ここが違う”というのを理解したうえでプレイしてみると、長距離射撃時の反応のしやすさを例に360Hzのメリットを体感できたと話した