【特別企画】

「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」発売間近! 今作で久々に登場するガノンドロフとの戦いをシリーズ通して振り返る

【ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム】

5月12日 発売予定

価格:
7,920円(パッケージ版)
7,900円(ダウンロード版)
14.520円(Collector's Edition)

 この記事を読まれている方なら、今週の金曜日5月12日は何の日かはご存じだろう。そう、期待の新作「ゼルダの伝説 ティーアーズ オブ ザ キングダム」(以下、ティアキン)の発売日だ。前作「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」(以下、ブレワイ)より6年。いよいよ待ちに待った続編の発売である。

【ゼルダの伝説 ティーアーズ オブ ザ キングダム】

 「ゼルダの伝説」シリーズは、第1作目のファミリーコンピューター用「ゼルダの伝説」(以下、初作)が1986年2月21日に発売されてから、なんと37年にわたって続いている。当時のフォーマットはファミリーコンピューター ディスクシステム。筆者は製品としては購入していないが、ディスクライターで書き換えた記憶を持つ。

 この初作から、その後「ブレワイ」にも続くストーリーで敵となるオクタロック、モリブリンの他にもゾーラといったキャラクターたちが登場しており、作品の息の長さを感じられる。今回はこの「ゼルダの伝説」シリーズをおさらいしつつも、多くのタイトルでラスボスとして登場する「 ガノンドロフ 」という存在を紹介したい。

【ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム 3rdトレーラー】
3rdトレーラーで登場することが明かされたガノンドロフ

そもそも「ゼルダの伝説」とは?

 「ゼルダの伝説」シリーズはアクションアドベンチャーゲームで、主人公となる「リンク」に加えて、ハイラル王国の王女として「ゼルダ」が主に登場する(必ずしもシリーズ全部に登場するわけではない)。超ざっくりというと、さらわれてしまったゼルダ姫などのヒロインをリンクが助けるというのがそのストーリーだ。だが、各タイトルごとに時系列が違っていたり、パラレルワールドであったりするので、タイトル毎に登場するゼルダとリンクは、名前が同じでもそれぞれ別人と考えていい。リンクとゼルダの関係でいえば、リンクは「勇者」として存在し、ゼルダ姫を助けるという構図だ。

初作「ゼルダの伝説」
「ゼルダの伝説 ふしぎのぼうし」
「ゼルダの伝説 時のオカリナ」

 ゲームシステムとしては、リンクが持つ剣で敵を倒していくのがアクションパートの基本。攻撃ボタン長押しでできる「回転切り」のほか、弓矢や爆弾で攻撃したり、岩や壺を持ち上げ、敵に当てて攻撃することもある。アドベンチャーパートとしては、鍵をゲットして扉を開いてダンジョンを攻略したり、体力である「ハートマーク」を増やすアイテムを探して戦いを有利にしたり、爆弾でダンジョンの壁を崩して進んだり、ボス戦前には「大きな鍵」を探すといった一連の流れでストーリーを進めていく。アクションの難易度はなかなか絶妙なさじ加減で作られており、アクションゲーム下手な筆者でもギリギリ何とかいける、というレベル感となっている。

 ところで、リンクが主人公で戦うのに、なぜシリーズのタイトルが“ゼルダ”なのか、というのはいろいろなところで考察されている。それを読むだけでも楽しいわけだが、任天堂からの公式表明がないようで、正解は存在しない。個人的には、マリオが主人公なのに「ドンキーコング」だったり、サムスが主人公なのに「メトロイド」だったりするように、主人公の名前をゲームタイトルに付けないのがその当時の任天堂じゃね? という説に妙に納得した。

敵役として登場するガノンドロフ/ガノン

 リンク、ゼルダはもちろんだが、「ゼルダの伝説」シリーズで外せないキャラクターが「ガノンドロフ」だ。NINTENDO64用「ゼルダの伝説 時のオカリナ」(以下、時オカ)では「魔盗賊ガノンドロフ」、「大魔王ガノンドロフ」として登場。「ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス」(以下、トワプリ)では「大魔王ガノンドロフ」として登場する。

「時オカ」で登場するガノンドロフ

 また、ラスボスとして登場するのはガノンドロフの他に「ガノン」がある。ガノンとしての存在の場合、基本的にはガノンドロフが魔物に変身した存在をいう。ガノンでは基本的には豚の魔物という形を取る。

 ガノンドロフとガノンが登場するのは以下の作品だ。

ガノン

・初作「ゼルダの伝説」
 豚の姿の魔王ガノンとして登場。

・「リンクの冒険」
 登場はしないもののゲームオーバー時に「RETURN OF GANNON」と表示される。

ゲームオーバー画面

・「神々のトライフォース」
 青い豚のような姿で登場。

こちらは「神トラ」の一場面

・「夢を見る島」
 本人ではないが「神々のトライフォース」のガノンのような形態がある。

・「ふしぎの木の実」
 双子の魔女ツインローバによりガノンが召喚される。ただし戦うには「ゼルダの伝説 ふしぎの木の実 大地の章」と「ゼルダの伝説 ふしぎの木の実 時空の章」の2作を遊んでリンクシステムを使用する必要がある。

・「風のタクト」
 本人ではないがガノンの姿をした魔物「クグツガノン」が登場。

・「4つの剣+」
 風の魔神グフーを復活させた黒幕として登場。

・「神々のトライフォース2」
 豚の姿を持つ姿としてユガの手により復活。

・「ブレス オブ ザ ワイルド」
 「厄災ガノン」として登場。

記憶に新しい厄災ガノン

ガノンドロフ

・「時のオカリナ」
 すでに述べた通りゲルド族の王「ガノンドロフ」として登場。

・「トワイライトプリンセス」
 「砂漠の処刑場」で処刑され、影の世界に追放される。その怨念が影の住人「ザント」を操り、元の世界に復活する。

・「ティーアズ オブ ザ キングダム」
 百年に一度生まれるゲルド族の男子「ガノンドロフ」として登場。

 なおこの他、シリーズタイトル以外に「ゼルダ無双」、「ゼルダ無双 厄災の黙示録」、「ケイデンス・オブ・ハイラル: クリプト・オブ・ネクロダンサー feat. ゼルダの伝説」、「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズなどにもガノンドロフは登場する。

ガノンとガノンドロフの描かれ方

 多くの作品に登場するガノンとガノンドロフだが、この2人はどのような関係なのだろうか。「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」で現れた「終焉の者」がガノンとして生まれ変わり、それが怨念となってガノンドロフという人間態となる、ととれる描写がある。ちなみにガノンドロフとしての登場は「時オカ」が初出で、以降“ガノンドロフ”というと「4つの剣+」を除き全て同一人物となる。また前作「ブレワイ」では「厄災ガノン」としての登場となっているため、ガノンドロフ名義で登場するのは2006年に発売された「トワプリ」以来、「ティアキン」で17年ぶりとなる。

「ティアキン」のガノンドロフ。17年ぶりの登場だ

 さて、ガノンドロフとはどのような人物なのだろうか。設定としては砂漠の民ゲルド族の男性。女性だけの種族であるゲルド族から100年に1人生まれるとされる男性として生を授かった。「時オカ」では野心にあふれた盗賊であり、こども時代のリンクが3つの宝石を集めてハイラル王国に帰るまでに魔盗賊としてクーデターを起こす、文字通りの悪役として描かれる一方、最終バトルではガノン城にてパイプオルガンを演奏するシーンもあり、知性も感じられる。

 そこから歴史は“時の勇者が敗北した”、“勝利した”、“勝利しこども時代の勇者が帰還した”世界でガノンドロフの動きは異なる。

 時の勇者が敗北した場合は「神トラ」につながり、ガノンドロフではなくガノンが闇の世界の王として君臨する。時の勇者が勝利した場合は「風のタクト」につながり、封印され海没したハイラル城にて「風の勇者」と対峙。老成した二刀流の姿で「風の勇者」やゼルダと戦うことになる。

「ゼルダの伝説」ポータルサイトでは、時系列順でハイラルの歴史を振り返られる

 筆者が最も好きなガノンドロフはこの「風のタクト」の彼だ。長い封印の時を経て己の本心を知ったのか、戦う際に「ハイラルに吹く風は違うものを運ぶ ワシはこの風がほしかったのかもしれぬ」と、自身が欲していたものを確信する。激しい戦いののち、どこか満足した顔をして「風が吹いておる……」と石に変わっていく様は、潔く敗北を認める悪役の理想型ともいえる。

 時の勇者が勝利し、こども時代の勇者が帰還した世界では「トワプリ」につながる。同作のガノンドロフはまさに怨念の塊ともいえる。ゼルダの体に憑依し、魔獣ガノンに変貌、ハイラル平原での騎馬戦を経て一騎打ちを演じ、しぶとく勝利に固執する戦いを見せる。この戦いで使用する剣が自身の封印に使われた剣であることや、最期に「これが、光と闇の血濡れた歴史の始まりと思え!」と呪詛を吐いて死ぬなど、力に溺れた敵役といった印象を受ける。このガノンドロフは死亡するが、のちに「4つの剣+」で新たなガノンドロフとして転生する。

 これまでの流れから見ると、ガノンの怨念がゲルド族の男児に取り憑いたものがガノンドロフといえそうだ。「時オカ」、「トワプリ」でガノンドロフがガノンに変身するシーンが描かれるが、どちらも変身後に豚のような姿(ガノンそのもの)になる。そもそも終焉の者が生まれ変わった怨念そのものなので、悪いやつが蘇らせようとしたり、勝手に蘇ったりしてくるのはストーリーの王道とも言える。

魔獣としてのガノン。豚になっている

 なお、ガノンそのものは厄災や怨念でしかないが、ガノンドロフはゲルド族の人間としてゲルド砂漠に自然を戻そうとしたり、繁栄させようとしているという目標があるなど、一概に“ヒール”というわけでもない。ハイラル王国への反感もあり、義賊であったとも描かれている。

 「時オカ」でリンクが勝利した世界線の「トワプリ」、「ゼルダの伝説 風のタクト」(以下、風のタクト)で再登場するが、「トワプリ」では再びの世界征服をもくろむ一方、「風のタクト」では老成したような雰囲気を感じる。

ガノンドロフという存在の魅力

 ガノンドロフとしての存在といえば、もちろん初出の「時オカ」を外しては語れないだろう。NINTENDO64用「時オカ」は、3D化された最初のゼルダとなっており、歴代ゼルダの中でも好きなタイトルだ。「ファイナルファンタジーVII」が3Dで描かれた時もそうだが、好きな作品が3Dになったタイトルというのは、とても強烈な印象を残しているもの。リンクのジャンプ斬りも、こうも格好よくなるのかと思った。

 話を元に戻すと、まず何より、こども時代のリンクとガノンドロフが初めて会った際のワンシーンが印象的だ。逃げるゼルダを追う際、ゼルダの行き先を言わなかったリンクに対して「面白い。気に入った」と評価し、おとな時代のリンクでも大きなダメージを負うはずの魔法弾を発射してリンクに尻餅をつかせるだけで済ませる。これがのちに正式な戦いを望んでのことか、こどもだからと甘く見ていたのかは分からないが、好きなシーンの1つだ。

 そもそも、3つの宝石を手に入れるために謀略を巡らせたり、上述のシーンの後にリンクを尾行し、マスターソードを抜いた後にトライフォースを強奪するなど、ガノンドロフには策略家の面もある。さらにはガノン城の最上階でパイプオルガンを弾きながらリンクを待つなど、品のある一面もあり、ただの悪役ではないことが伺える。

 その後「風のタクト」では老成し優雅さすら感じさせる二刀流と死に様を見せつけ、「トワプリ」では怨讐に満ちた本物の悪として君臨し、それまでガノンドロフに感じていた品性を揺るがしている。それでも「トワプリ」の戦車のような風体はかっこいいと思うが。

 ここまで見てきた通り、ガノンドロフはガノンとほぼ同一と捉えられる存在だ。「ブレワイ」でガノンは封印されたとはいえ、ガノンドロフに野心がないとはいえない。このあたりが、「ティアキン」でどう描かれるかが気になる。早く5月12日が来ないものかとひたすらに祈る日々だ。

 余談だが、Nintendo Switch Onlineと追加パックに加入すると、「ゼルダの伝説」シリーズの中の初作と「リンクの冒険」、「神トラ」、「ゼルダの伝説 夢を見る島DX」、「時オカ」、「ゼルダの伝説 ムジュラの仮面」、「ゼルダの伝説 ふしぎの帽子」といったタイトルをNintendo Switchで遊ぶことができる。今回の原稿を書く際に「時オカ」や「神トラ」を再びプレイしてみたのだが、いい具合にストーリーを忘れていて堪能できた。興味を持った方はプレイしてみてはいかがだろうか。