【特別企画】

「ゼルダの伝説 ムジュラの仮面」23周年おめでとう! 怖いけど魅力的でいつまでもいたい世界

【ゼルダの伝説 ムジュラの仮面】

2000年4月27日 発売

 2000年4月27日に任天堂が発売したNINTENDO64用アクションRPG「ゼルダの伝説 ムジュラの仮面」が今日で23周年を迎える。

 本作は1998年11月21日に発売された「ゼルダの伝説 時のオカリナ」の続編となっており、「時のオカリナ」から数カ月後の世界が描かれている。

 物語は、「時のオカリナ」の最後に別れてしまった妖精のナビィを探して主人公のリンクが旅をしているところから始まる。旅の途中で不思議なお面をつけた少年「スタルキッド」に襲われ、大事なオカリナと愛馬エポナを奪われてしまう。その上不思議な呪いをかけられ、リンクは小さなデクナッツの姿へと変えられる。奪われたものを取り返すために必死に追いかけるが、その道中3日後に月が落ちてきてしまうタルミナという異世界の「クロックタウン」へと迷い込む。スタルキッドから大切なものを取り戻すため、そして月が落ちてきて世界が滅ぶのを防ぐためにリンクが奔走する。

彼が「スタルキッド」。彼に出会ったことで不思議な世界に迷い込んでしまった

 本作では「3日間システム」と仮面という、前作とは違う要素が取り入れられており、続編とはいってもゲームシステムが異なる。ちなみに「3日間システム」は文字通りゲーム内時間の3日間でゲームをクリアしなくてはいけないタイムリミットがあるというものだが、実際はゲーム内の3日間では基本的にはクリアできないので、何度も同じ3日間を繰り返すことになる。

 本作が発売された当時、筆者は高校2年生で、割と進学に力を入れていた高校だったこともあってか、勉強に力を注いていた。その当時はあまりテレビも見ないし、ゲームも息抜き程度で遊ぶ程度だったが、そんな中ゴールデンウィーク前に本作が発売されることを、たまたま兄弟が見ていたテレビのCMで知った。ちょっと異質なそのCMは筆者の心を一気に掴んだ。

 当時のキャッチコピーも「こんどのゼルダはこわさがある」となっており、テレビCMも「暗い中でゲームをしていたら怪現象が起こる」といった、怖いゲームですよと言わんばかりの演出だった。CMを見た翌日高校の帰りにゲーム屋に予約しに行ったのを今でも覚えている。

 また本作はNINTENDO64のメモリを増やさないと遊べないため、メモリー拡張パックが同梱されたものも発売されていた。筆者もメモリー拡張パック同梱型のパッケージを買った。

 今回はNintendo SwitchのNintendo Switch Online+追加パックにある本作をプレイしながら当時のどんな思いでプレイしていたか思い返していきたい。

【『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』 3つのポイント [NINTENDO 64 Nintendo Switch Online 追加タイトル]】

3日間という同じ時間を何度も繰り返す

 本作の特徴の1つが“3日間を何度も繰り返す”というところだ。リンクがクロックタウンに足を踏み入れてから3日後の夜明けに月が落ちてくる。月が落ちてくると、問答無用で町もろともリンクも消し飛んでしまうので、オカリナのメロディである「時の歌」を吹くことで、最初の朝に戻れるのだ。月替落ちてくるのはゲームオーバーの演出としてはなかなかショッキングな映像で、どうあっても助からないであろう最後に衝撃を覚えた。

クロックタウンに月が落ちてくる。

 また、ゲーム内で時間が流れていく際は、初日の朝に「最初の朝ーあと72時間ー」、2日目に「次の日の朝ーあと48時間ー」、3日目の朝に「最後の朝ーあと24時間ー」と黒い画面に白文字でカウントダウンされていく。その表示によってより強く時間経過を感じることができるし、世界の滅亡が迫っていることに焦りを感じられた。正直あのダンダンという音は今聞いてもちょっと焦る。この演出はクロックタウンの中にいないと見ることはできず、フィールドやダンジョン内にいると画面内の時計の名上に文字で表示されるだけ。見落としてしまって月が落ちてしまうと前にセーブした最初の朝まで戻されてしまうので注意が必要だった。

この画面を見た時ドキッとしてしまった。これが表示されるともう後戻りはできない気がしてしまう

 町に月が落ちてくるのを阻止するために、リンクは沼、海、山、谷のダンジョンを攻略しそこに眠る巨人たちに協力を仰ぐ。ダンジョンは最初の朝に戻るとクリアしたギミックもすべてリセットされてしまう。ダンジョンの数こそ少ないが、後述するさまざまな仮面をつけることで攻略方法がいくつもあるため、何度挑戦しても目新しい発見があるのが楽しい。

 また3日間を常に繰り返していくので登場人物はそこまで多くない。その分登場するキャラクターたちは背景などもしっかり描かれており、中には個人的なミッションやお願い事を頼まれることもある。また、クロックタウンにいる子どもたちのミッションをクリアすると手に入る「ボンバーズ団員手帳」によって出会ったキャラクターたちのスケジュールを把握することができるようになる。

ボンバーズ団員手帳でいろいろなキャラクターのスケジュールを把握する

仮面やお面を手に入れて攻略の糸口を探す

 「ムジュラの仮面」では、主人公のリンクがさまざまな仮面やお面をつけることで特殊能力を得ることができるようになっている。

 また、仮面とお面は少し効果が異なり、お面は付けてもリンクの姿は変わらず特殊能力のみ使えるが、仮面はリンクの姿そのものを変えてしまう。特に「デクナッツの仮面」、「ゴロンの仮面」、「ゾーラの仮面」は、リンクをそれぞれの種族に変身させるので見た目がガラッと変わる。ただ、この仮面をつける瞬間の演出がちょっと怖い。デクナッツの仮面をつけるときは目が血走っているし、ゾーラの仮面をつけるときは目が真っ黒になる。その上ちょっと怖い叫び声も聞こえる。仮面をつけると呪われてるのかなと感じてしまうが、よく考えれば最初のデクナッツの仮面はオカリナで「いやしの歌」を演奏するまで自力で外すことはできなかったので、多分呪われている。

 正直当時の筆者はこの仮面をつけるシーンが不気味で気持ち悪かった。なので夜にプレイするときは極力に演出をスキップしていた。あの叫び声を何度も聞くとだんだんと怖さが増してしまう。心霊的に怖いはずではないのに精神的に怖さが蓄積していくといった感じだろうか。

仮面をつける際はちょっと演出が怖い

 また仮面やお面をつけることで、話しかけたキャラクターたちの反応が異なる。それによってストーリーが進むこともあるし、ミッションを進めることもできる。この世界の滅亡を防ぐには呪われようとも仮面をつけないことには始まらない。ダンジョンも、姿が変わることで違う場所に行けるようになったりする。同じ3日間を繰り返しているだけではなく、リンクやプレーヤーにとって少しずつ違う3日間を過ごせるのは、この仮面やお面があるおかげだ。

リンクの姿だと衛兵の人も外に出してくれるが、デクナッツの姿だとずっと町から出ることができない。

魅力的なキャラクターたちが3日間をより楽しくしてくれる

 本作は、終わりに向かっている世界に触れることができるのも魅力だ。本作をプレイすると、最初にクロックタウンに迷い込んだ日から違和感を覚えると思う。それは、月が落ちてくることが分かったうえで、クロックタウンの住民はパニックにもならず普通に3日目の夕方ごろまで生活していることだ。月が迫ってきているのだから、ちょっとくらいパニックになってもよさそうなものだが、誰1人としてそんなそぶりはない。むしろ3日目になって今から避難するんですよという余裕を持った人が多い。そして、3日目の夜にはクロックタウン内にほぼ人がいなくなる。急に町中が寂しくなってしまう。急に滅亡を感じてしまうのだ。

月が落ちてくる12時間前に逃げるという宿屋のおかみさん。間に合うのだろうか…
さすがに3日目の夜になると町中は閑散としている

 最後の夜になっても町中に残っている人もいる。その中で、大人になって改めて見ると印象が変わったのが「ポストマン」だ。彼は普段、郵便配達のためにクロックタウンを走り回っており、話しかけても相手にしてもらえないのだが、3日目の夜に彼の家を訪ねると膝をついて項垂れているポストマンに出会える。そのときに話しかけると、「そりゃ・・・に、逃げたい! け、けど、そんなの予定表に書いてないのだ」と答える。高校生の頃は正直この悩みが理解できず、「逃げればいいんじゃ……?」と思っていた。大人になってこのセリフを見てみると、なんだかいろいろ想像できて、彼のことが可哀想に見えてしまった。

ポストマンは子どもの時と大人になってからだと少し印象が変わった

 ちなみに筆者はクロックタウンでもう1人気になる、というか当時から不思議に思っているキャラクターがいる。それは、宿屋「ナベかま亭」のトイレに深夜0時から朝6時まで登場する謎の手だ。彼なのか彼女なのかはわからないが、なぜかトイレの中から手を伸ばして紙を要求してくる。高校生の当時も大人になった今も何者なのかは謎だが、ただ悪い人ではなさそうなので気に入っているキャラクターだ。

彼は一体何のためにあそこにいるのか今でも謎だ

 当時から感じていたのだが、本作は登場するキャラクターたちがとにかく魅力的だ。いい人も悪い人もよりその印象を強く感じるし、物語を進めて行くと見え方が変わってくるキャラクターもいる。キャラクター1人1人が会話や動作などしっかり作りこまれているのでどこに行っても楽しい。ミッションがないキャラクターでも、1日目、2日目、3日目と行動が変わってくることがあるので、観察しているだけでも楽しめる。また、仮面やお面をつけると反応も変わってくるので、仮面やお面を手に入れるたびにどんな反応をしてくれるのかワクワクしながら話しかけに行っていた。

 ダンジョン攻略や物語を進めるのも楽しいが、何よりキャラクターたちの反応を楽しんでいたと思う。3日間という決まった時間を繰り返すからこその楽しみ方だ。

 当時は高校生でゴールデンウィーク前に発売ということもあって、筆者はゴールデンウィーク中にガッツリゲームをプレイして5月上旬にはクリアしてしまった。それでも本作が印象に残っているのは、登場キャラクターの存在があったからだろう。そのせいか、ダンジョンの攻略方法は全く覚えてなかったが、あのキャラクタ—に会いたいなと思うと割と迷わずに会いに行くことができた。不思議なものだ。

 ちなみに当時よりもゲームは下手になっていたようで同じ日数プレイしたが全然前に進まなかった。今回はクリアまでじっくりプレイして続きを楽しみたいと思う。改めて23周年おめでとうございます。