【特別企画】

「戦場のヴァルキュリア」本日15周年! ガリアの義勇軍たちが強大な敵を相手に戦う物語と歯応えのあるバトルが魅力の一作

【戦場のヴァルキュリア】

2008年4月24日 発売

 セガが2008年4月24日に発売したプレイステーション 3用アクティブ・シミュレーションRPG「戦場のヴァルキュリア」(以下、「戦ヴァル」)が、本日発売15周年を迎えた。

 本作は手描きイラストが3Dで動くグラフィック表現「CANVAS」が特徴で、”戦場”の物語でありながら独特の温かさが表現されている。また、「BLiTZ(ブリッツ)」と呼ばれる、シミュレーションとアクション(TPS)を融合したバトルシステムも大きな特徴だ。

 本稿では、当時、全てのマップを最高難易度「HARD-EX」までクリアした筆者が、「戦ヴァル」の思い出を語る。

主人公のひとり、ウェルキン。画像は公式サイト(http://portal.valkyria.jp/vc1/)より
【『戦場のヴァルキュリア リマスター』システム紹介ムービー】

「戦ヴァル」の一番の魅力はバトル!

 先日公開した「戦ヴァル4」の周年記事でも触れたが、「戦ヴァル」の最大の特徴は、コマンドモードとアクションモードを行き来するシミュレーションゲームというところ。シミュレーションといえば、基本的にはマス目状に区切られたマップ上に敵のキャラクターと味方のキャラクターが配置され、それぞれマス目を進んで攻撃をするタイプが多いものの、「戦ヴァル」は一味も二味も違っていた。

 動かしたいキャラクターを選ぶところは通常のシミュレーションゲームと同等だが、キャラクターを選ぶとアクションモードへと移行する。アクションモードではTPSゲームさながら、三人称視点で自由に行動し、敵の銃弾を潜り抜けて目的の位置まで突き進んでいく。

 TPSとの大きな違いは、こちらが銃を構えると敵からの反撃が止むところだろうか。おかげで、銃を構えてからは、じっくりとどの敵を攻撃するかを考え、そしてヘッドショットなどを狙える。なので、TPSが苦手でも充分プレイすることができた。

 実際筆者はいわゆる対人戦のようなTPSは苦手もいいところで、まったくキルできないまま自分ばかりがキルされていくようなタイプなのだが、「戦ヴァル」は最高難易度の「HARD-EX」まで楽しくプレイできた。

 また、本作で重要だったのが”兵科”だ。移動力に優れており、潜伏している敵を発見できるがHPや防御力は低めの「偵察兵」。攻撃力と防御力に優れているが移動力が低めの「突撃兵」。戦車の撃破に優れている「対戦車兵」。遠距離攻撃(狙撃)を得意とする「狙撃兵」。蘇生や弾薬補充などができるが移動力もHPも防御力も何もかも低めなのが「支援兵」(※上級兵種は割愛)。この5つの兵科をどう使い分け、どのように進めていくかというところで頭を悩ませるのが、本作の魅力だ。

 1人プレイ専用ゲームなので、セーブとロードを駆使して、ヘッドショットがうまく決まらなかったらロードし直す、というようなこともできた。というより、1周目でSランクを取ろうとするとセーブロードをしないと厳しかったこともあり、筆者も散々ロードしたものだ。

 ヘッドショットが決まらなかったからロードする、くらいならば可愛いほうだ。本作では、確率で各ユニットの特殊能力「ポテンシャル」というものが発動するが、一部の偵察兵が使用できる「連続移動」が発動しなければリセット、なんていうこともあった。

 特に本作の主人公のひとりアリシアは、偵察兵ながらも非常に優秀なポテンシャル持ちで、HPが全回復するポテンシャルや射撃がアップするポテンシャルをはじめ、不可避射撃、迎撃耐性、連続移動など、ヒロインに相応しい能力を多数持っていた(もちろんそれにも理由があるのだが、それについては後述しよう)。

アリシア

 敵の中にはとんでもなく回避能力などが高い「エース」と呼ばれるキャラクターがおり、このエースの撃破には不可避射撃の発動が必須……とまでは言わないが、発動しないと倒すのが相当厳しい。つまり発動するまでひたすらリセットし続けるという(しかも発動したところで大体一回では倒しきれない)なかなかの苦行が続くこともあったが、運すらも攻略のひとつである。

 もちろんこれは最速でSランクを狙うという一種のやり込みプレイのようなものなので、クリアするだけならロードを繰り返すような必要はまったくない。その難易度の塩梅も非常に良く、「可能な限り最短(ロードをしているので最短ではないのだが)でクリアすればS、それより1ターンほど増えるとA」……というような感じになっている。しかし、ランクが出てくれば高ランクを狙いたくなるのが、本作にハマるひとつのツボとも言えるだろう。

数少ない筆者の「戦ヴァル」プレイ当時の所持画像の中で残っていた1枚なのだが、Sランクを狙うどころか1ターンクリアなどを目指しているので、必然的にセーブロードも増えるというものだ

 Sランクを狙う戦いは「○○兵でここの敵をヘッドショットで倒す」等、半ばロジック化しており、これはこれで楽しいから筆者も夢中になってプレイしていたのだが、本作の最大の魅力は5つの兵科を自分なりにどう運用していくかにもある。ランクは低くてもいいからお気に入りの兵科で、ロードを挟まずにクリアしていく、というのも遊び方のひとつである。それら含めて「戦ヴァル」の魅力なのだ。

ストーリーと音楽の相乗効果に震えた

 現在4作目まで発売されている「戦ヴァル」シリーズだが、本作は筆者の中では歴代イチオシの作品である。その理由のひとつは、バトルだけでは終わらない重厚な物語にもある。

 本作のタイトルにもある通り、本作において「ヴァルキュリア」が非常に特別な存在である。ヴァルキュリアとは、数千年前、厄災を引き起こしたダルクス人に勝利してヨーロッパを救った伝説的な民族で、超人的な強さを誇り、青く輝く槍と盾が特徴。だが、純粋なヴァルキュリア人は遥か昔にいなくなり、現在はおとぎ話のような存在になっている。

 本作を知っている人も知らない人も、「ヴァルキュリア」といえば、帝国のセルベリア様が浮かぶのではないだろうか。実際、主人公ウェルキンたちの前に立ちはだかるヴァルキュリアはセルベリア様であり、彼女は非常に強敵だ。

帝国の将校セルベリア様。彼女はあえて”様”をつけて呼びたい

 だが、本作に登場するヴァルキュリアはセルベリア様だけではない。本作の主人公のひとりとして登場するアリシアも、ゲーム中、イベントを介してヴァルキュリアとして覚醒する。このアリシアの覚醒した時のイベントが未だに筆者にとっては非常に強く印象に残っている。

 本作の楽曲は筆者最愛の作曲家、「FINAL FANTASY XII」や「タクティクスオウガ」などで有名な崎元仁氏なのだが、アリシアの覚醒時の緊張感を盛り上げたのが、氏の音楽である。

 ヴァルキュリアは行動するときに独特の効果音を出すのだが、その効果音と、覚醒したばかりで無意識のようにふらふらと動くアリシア、そこに流れる不気味なBGM……これらがあわさることによって、ヴァルキュリアという存在の異質さも表現できていたように感じる。

 実は筆者は「戦ヴァル」は発売日から数カ月遅れてプレイをしたため、先にオリジナルサウンドトラックを聞いていたのだが、サントラを聞いた時は「勇戦」、「市街戦」といったわかりやすい崎元節全開のバトル曲を好んでおり、「難戦」のBGMの良さを本当の意味で理解していなかった。しかし、ゲームを実際にプレイしてアリシアの覚醒時にかかっていた「難戦」を聞いた時に、この楽曲の素晴らしさを初めて理解した。

 自身のゲーム体験を通して、初めて真の良さに気付くことができる……これぞゲーム音楽の醍醐味というやつである。

 もしも崎元氏のファンで、サントラは聞いているが「戦ヴァル」自体はプレイしていない、という人がいたら、ぜひともプレイしてみてほしい。そうすれば「ゲームのために作られた音楽」というものが何たるかを、改めて知ることができるだろう。

 崎元氏の「戦ヴァル」楽曲といえば、忘れてはならないのが「ヴァルキュリアの覚醒」である。「ヴァルキュリアの覚醒」はセルベリア様の登場シーンなどで主にかかるが、ヴァルキュリアの力を彷彿させる勇ましさと、未知の存在ということへの恐れが合わさった名曲であり、後の「戦ヴァル」シリーズでも、ヴァルキュリアの登場シーンといえば、この「ヴァルキュリアの覚醒」が使われていることが多い。シリーズを通して、象徴的な楽曲だとも言える。

 ヴァルキュリアといえば、ギルランダイオ要塞戦とBGM「決戦」も忘れられない。セルベリア様との正面からの直接対決は物語的にも大きな山場のひとつで、ここは苦戦したという人も多いのではないだろうか。そして強大な敵に立ち向かう味方の決意と、敵の大きさを音楽で表現したような楽曲が「決戦」である。

 他にも「このストーリーのタイミングで、この曲が流れるかー!」となるほど、どの音楽も実に絶妙なタイミングで使われている。

 個人的に印象深いのは、「8章−森林の包囲網 後編 森林の合流戦」でウェルキンが戦車に合流した瞬間に流れる「激戦」である。これまで主に守勢の戦いだったが、「これから攻勢に移る」という瞬間を盛り上げる、最高のBGMチョイスだった。

 また、崎元氏の楽曲といえば、メインテーマをモチーフにした「最終決戦」のBGMも忘れてはならない。これまでの戦いの思い出とラストバトルの緊張感、これらを上手く盛り上げてくれるのは氏の楽曲ならではだ。

RAITA氏による魅力的なキャラクターたち

 本作はシミュレーションRPGとあって、非常に個性豊かな仲間たちが多数登場する。物語のメインとして登場する仲間はそこまで多くなく、戦争ものはどうしてもストーリーがごちゃつきがちだが、メインストーリーは奥深いながらもすっきりとまとまっているのが嬉しかった。

 一方でバトルに出せるユニットの数は豊富で、50名以上のキャラクターがおり、ポテンシャルもキャラクターによって様々。プラスのポテンシャルばかりではなくマイナスのポテンシャルもあり、どのキャラクターも様々な特徴があって魅力的だった。もちろんバトル面での使い勝手の良さ云々はあり、偵察兵ならばアリシアの他にアイカ、突撃兵ならばハンネス、狙撃兵ならばマリーナ等、いわゆる”強力なキャラクター”はいたものの、全体を通しては「クリアするだけならば(もちろん頭は使うが)好きなキャラクターを使えばいい」というようになっており、キャラクター選びの自由度が高いのも魅力的だった。

 そんな本作のキャラクター原案を手掛けたのが、人気イラストレーターのRAITA氏(本庄 雷太氏)である。RAITA氏の絵が好きな人ならば絶対に本作を遊んでほしい、というくらい、本作にはRAITA氏の魅力あふれるキャラクターが揃っている。「CANVAS(キャンバス)」と呼ばれる独特な描写システムに落とし込んだうえで描かれるキャラクターたちは、とても力強く画面の上を駆けずり回った。

難易度は高いが、遊びやすい

 本作はシミュレーションゲームとアクションゲームが合わさったような内容になっていることから、雑にプレイすると非常に難易度があがってしまい、あっという間にユニットを失ってしまうようなタイトルだ。だが、丁寧にプレイすれば一見無理なように見える敵の配置でも意外とクリアできてしまう、非常によく考えられた難易度となっている。

 特に、難易度HARDやHARD-EXは最早NORMALとは完全に別ゲームであり、「なんだこりゃ」という声が漏れてしまうような敵の配置になっていた。特にHARD-EXはあまりに無茶なように見える敵の配置で、笑ってしまったのを覚えている。あいにく画像は難易度HARDのものしか残っておらず残念だったが、HARDの時点でも充分無理そうである。

かろうじて筆者の手元に残っていた当時のスクリーンショットの一枚、難易度HARD。いきなり自軍の真ん前に訳がわからないほど敵がいる上に、戦車の数なども多い

 発売当時はPS3でしかプレイできなかったものの、後にPS4/switchにてHDリマスター版が発売となっており、価格もお手頃となっているので、本作をこの機会に改めてプレイしてみるのも良いのではないだろうか。特にHARDやHARD-EXを放置している場合はもったいないとも言えるので、ぜひこの頂きに挑んでほしい。