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「ロケットリーグ」成功の裏には探求の7年間があった!
「車&サッカー」1つの手応えに全力投球したPsyonixの挑戦
(2016/3/20 08:49)
Steamで火が付き、PS Plusのフリープレイタイトルに選出され、「爆発的な人気」という言葉がぴったりなほどヒットを飛ばした「ロケットリーグ(Rocket League)」。カジュアルな印象もあるが、GDC 2016で開催されたGame Developers Choice AwardsではBest Designを受賞し、Game of the Yearにもノミネート(受賞は「ウィッチャー3」)されるなど、業界からも高い評価を受けている。
GDC 2016では、開発元のPsyonixでDesign Directorを務めるCorey Davis氏より、「ロケットリーグ」誕生の秘密が明かされる講演があった。
同じゲームを作り続ける根性の7年間
「ロケットリーグ」は2015年にリリースされたタイトルだが、時を遡ること2008年、PS3用に配信された「Supersonic Acrobatic Rocket-Powered Battle-Cars」(SARPBC)というタイトルがその起源にある。
「SARPBC」は車を操ってボールを相手のゴールへと決めるアクション対戦ゲーム……つまり「ロケットリーグ」とまったく同じゲームなのだが、当時はメタスコアも67と低く、とてもヒットとは言えない結果だった。
しかし開発スタッフはゲーム自体には手応えを感じていたし、2015年時点でもプレイする人がいるほど根強いファンが付いていた。PC版もリリースしていなかったし、もっとやるべきことがあったのでは? という思いが残っていたという。
その後、2011年にはRCカーをテーマにした「SARPBC」の続編制作をスタートするも誰の興味も得られず、続いて車の挙動を活かしたオープンワールドレースゲーム「Battle-Cars World」を開発することになる。いずれも未リリースのまま失敗に終わり、この辺りは若干迷走気味だが、改めて車の挙動がサッカー向きであることに気付かされたそうだ。
そしてこれらの回り道を経て、原点である「SARPBC」に再び舞い戻ることとなる。ここでのポイントは、その狙いを絞り込んだということ。
サーバー規模の拡大、60FPSでの動作、マッチメイキングの性能の幼少、車のカスタマイズ範囲拡大、これらの点に注力し、あとは内容をひたすら磨き上げたという。
構想段階ではサッカー以外にホッケーやバスケットボールなどの新モードを考えたこともあったが、スケジュール的に無理があったことと、何より「サッカーモード」に対する長年のノウハウ蓄積があったため、サッカー1本に絞ることに。
またマップも、「SARPBC」で最も人気のあった「Urban」のレイアウトをそのまま用いて、その1つに掛けることにした。ちなみにビジネスモデルについては、当初Free to Playで進めていたが、そうなると計算上182万人規模のプレーヤーが必要になる一方で、20ドルの売り切り型では5万人に販売できれば収入を確保できる。この天秤の結果、20ドルの販売方式を選択したという。
配信は最初PS3とPS4で実施され、その後Steamに配信されるが、2015年夏は競合タイトルも少なかったことも影響し、結果的にこのSteam版が大当たりとなる。制作コストも早々に回収でき、その後は多くの人が知るとおりである。またPS4版は今もなおゲームタイトル数が少なく、配信そのものがニュースになるし、β版を出す意味も大きく、さらにSteamの話題がPS4版に飛び火することもあるため、チャンスであるとした。
なおDavis氏からは、「車とボール」に関する動きの仕組みについても解説があった。
車がボールに当たるとき、ボールの動きは現実的なものではなく、画面の中央に向かって力がかかるようになっており、挙動自体は「Fake」だそうだ。α版ではリアルな動きを採り入れてみたのだが、その時は「SARPBC」のベテランプレーヤーから「強欲で怠惰なデザインだ」と非常に辛辣なご意見が入るなど評判が悪く、元に戻した。ちなみに意見を投稿したこのプレーヤーは、後の「ロケットリーグ」のプロトーナメントで優勝を飾ったという。
ちなみに「ロケットリーグ」は、上級者がプレイすればほとんどボールを独占したままゴールへと運ぶことができる。時には1人でボールを運ぶことができることもあり、一時はシステムを修正しようかとも考えたそうだが、これは練習を重ねたからこその成果であり、他にも素晴らしいプレイが生まれてくることから、残すことにした。
そのほかにも、制限時間が過ぎた後、ボールが地面に落ちたら終了とするルール、車の破壊要素をあえて残したこと、16種類用意されたクイックチャットなど特徴的なシステムや、映像配信やe-Sportsとの相性の良さ、そして「本当の幸運」が重なり、同時接続見込み1万人のところ、18万人に達する成功を収めた。
「ロケットリーグ」は「SARPBC」の経験がなくては存在していないし、何より7年も同じゲームを追求し続けたという根性にも感服する。今後はこの「ロケットリーグ」をどう育て、どう運営していくかがPsyonixの命題になる。e-Sportsとしても非常に可能性のあるタイトルなので、今後もぜひ期待したい。