【特別企画】
ソニー、FPS向けゲーミングモニター「INZONE M3」ファーストインプレッション
発色の美しいIPSパネルでFPS/FPSに最適な240Hzを実現
2022年11月17日 10:00
- 【INZONE M3】
- 12月1日発売予定
- 86,000円前後(税込)
今年6月29日、ソニーがゲーミングブランド「INZONE」を立ち上げてゲーミングデバイス市場に本格参入した。発表されたのはゲーミングモニター2機種とゲーミングヘッドセット3機種で、ゲーミングモニター2機種のうち、27型4K/144Hz対応の「INZONE M9」は7月8日に発売されたが、27型フルHD/240Hz対応の「INZONE M3」は、2022年内発売予定としか明らかにされていなかった。今回、INZONE M3の発売日と価格が決定した。今回、発売に先駆けてINZONE M3の実機を試すことができたので、ファーストインプレッションをお届けする。
フルHDとしては大型の27型パネルを採用
INZONE M3は、27型フルHD/240Hz液晶モニターであり、すでに発売済みのINZONE M9とパネルサイズは同じで、外観もそっくりだ。フルHD対応モニターは24~25型クラスが主流だったが、最近は一回り大きな27型パネルを採用した製品も増えてきており、INZONE M3もそのトレンドに沿った製品だといえる。解像度を重視したINZONE M9がMMORPGなどを主にプレイするゲーマーに向いているのに対し、リフレッシュレートを重視したINZONE M3はFPS/TPSを頻繁にプレイするゲーマーに向いた製品だ。
INZONE M3は、INZONE M9と同じくホワイトとブラックを基調としたカラーリングで、3本の脚で支える構造を採用している。特にPS5用モニターというわけではないが、カラーリングやデザインはPS5に非常に似た雰囲気だ。
スタンドの機能は、INZONE M9と同じく、上下の高さ調節と上下の角度調節(チルト)のみという比較的シンプルなもので、モニターを左右に回転させるスイベルや画面を回転させて縦画面で使うピボット機能はないが、ゲーミングモニターとしては特に不満はない。上下の高さは70mmの範囲で、上下のチルトは0~20度の範囲で変更が可能だ。狭額縁設計なので、27型クラスとしてはコンパクトで、リビングなどにも違和感なく溶け込むデザインだ。
中央に台座がないので、キーボードを使わないときに奥に収納したり、斜めに配置して利用できることもメリットである。FPSプレイヤーは、俗にハの字置きや、逆ハの字置きなどと呼ばれる、斜めにキーボードを配置することを好む人も多いが、INZONE M3なら、そうした置き方も自由自在だ。また、中央の脚にはケーブル収納穴が空いており、ケーブルもスッキリと取り回せる。
INZONE M3は、バックライトとしてINZONE M9が採用している直下型LED部分駆動ではなく、一般的なエッジ型LEDを採用しているため、INZONE M9よりも消費電力が小さくなっており、付属のACアダプターも一回り小さくなっている。
FPS/TPSの「勝利」に繋がる機能を満載
INZONE M3は、「勝利」を追求するFPS/TPSゲーマーのための機能が充実している。まず、最初に挙げたいのが、画質調節幅の広さである。輝度やコントラスト、色合いなどを0~100%の範囲で1%刻みに細かく調整できるため、各ゲームタイトルに応じて敵を見つけやすい輝度や色に設定できるのだ。
FPSゲーム用のモードもあらかじめ用意されており、そこからさらに好みに応じてより細かく画質の調整を行うことができ、調整した画質は2つまで登録が可能だ。また、DisplayHDR 400の認証を取得しており、10.7億色表示にも対応しているため、HDRコンテンツを高コントラストかつ色鮮やかな表現で楽しめる。色域もsRGBカバー率99%と広く、写真や動画なども美しく表示される。
パネルはIPSを採用しているため、発色も良く、水平/垂直の視野角も178度と広い。表面にはノングレア処理が施されており、外光の映り込みも抑えられているため、長時間ゲームをプレイしても目への負担が少ない。
VRR対応で表示の乱れやカクツキを防ぐ
液晶の応答速度そのものも1msと高速で、FPSでの動きの速いシーンでも残像感はほとんどなかった。NVIDIAが規定した「NVIDIA G-Sync」とHDMI 2.1規格で規定された「Variable Refresh Rate」、VESAが規定した「Adaptive-Sync」のすべてに対応しており、画面が引き裂かれたようになるティアリングや動きのカクツキなども防げ、快適なプレイが可能だ。
さらに、暗い部分の輝度を持ち上げて敵などの視認性を上げるブラックイコライザーやクロスヘアやフレームレートの表示機能も備えているのが、ゲーミングモニターらしい。ブラックイコライザーなどの細かな設定は、OSDメニューでも可能だが、INZONEシリーズの設定アプリ「INZONE Hub」で行うこともできる。INZONE Hubでは、ゲームタイトル毎に設定を保存することも可能だ。
映像入力としてDisplayPort 1.4×1とHDMI 2.1×2の合計3系統が用意されているので、最大3台の機器を接続できるほか、USB Type-B(アップストリーム)が1つ、USB Type-A(ダウンストリーム)が3つと、USB Type-C(DP Alt Mode対応)が1つ用意されており、USBハブとしても利用できる。また、入力機器を切り換えた際に、自動的にキーボードやマウスの接続先を切り換えるオートKVMスイッチ機能を備えているので、PCを複数台接続して使う場合などに便利だ。
画面モードなどの設定は、OSDメニューによって行うが、OSDメニューの表示が大きく表記も分かりやすい。OSDメニューの操作は、モニター背面のスティック状のデバイスで行うが、このスティックの操作性も良好だ。また、ゲーミングモニターとしては珍しく2W×2のステレオスピーカーを搭載している点も好印象だ。
実際にいくつかのFPSをプレイしてみたが、ブラックイコライザーや輝度、色合いの調整により、背景に埋もれやすい敵もくっきりと浮かび上がってくることが実感できた。いわゆる黒浮きも抑えられており、コントラストも高い。また、24~25型クラスのフルHDモニターよりも画面自体が一回り大きいため、遠くにいる小さな敵も見つけやすいというメリットもある。
FPS/TPSはもちろん、さまざまなゲームを快適にプレイできる
INZONE M3は、ソニーがBRAVIAで培ってきた高画質技術をゲームに特化する形で活かした製品であり、カタログスペックだけでは分からない優れた画質を実現していることと、使い勝手が優れていることが魅力だ。240Hzに対応していれば、eスポーツのプロプレイヤーを目指すような人でも十分な性能である。オートKVMスイッチも複数のPCを接続したい人には便利だ。
機能的な面では不満はないものの、気になるのはやはり価格だ。上位モデルのINZONE M9の15万4,000円(ソニーストア価格)に比べれば安いとはいえ、240Hz対応の24型フルHDゲーミングモニターは、実売5万円を切る製品も珍しくはない。もちろん、INZONE M3にはIPSパネル採用による発色の良さや視野角の広さ、27型という画面の広さというメリットはあるが、2倍近い価格差があることを考えると、コストパフォーマンスが優れているとは言いがたい。価格は高くてもいいから、FPS/TPSの勝率を上げるための最高の環境が欲しいというプレイヤー向きの製品といえるだろう。
また、上位モデルINZONE M9との棲み分けだが、高解像度かつ高ダイナミックレンジで、MMORPGやオープンワールドアクションゲームなどの世界に没入したいという人にはINZONE M9が、FPS/TPS中心で、勝つことを最優先する人にはINZONE M3が適している。もちろん、PS5で4K/120fps出力をしたいのなら、INZONE M9を選ぶことになる。
INZONE M3はFPS/TPS向きの機能が充実しているが、他のジャンルのゲームや動画鑑賞、クリエイティブワークなども快適に行えるモニターであり、TNパネルを採用した24~25型クラスのゲーミングモニターでは物足りなくなってきた人の買い換え用途としてもおすすめだ。