【特別企画】
「ヴァンパイア:ザ・マスカレード スワンソング」プレイレポート
過激な演出の数々に思わずドキドキ。大人こそ楽しみたいヴァンパイア群像アドベンチャー
2022年8月24日 00:00
- 【ヴァンパイア:ザ・マスカレード スワンソング】
- 8月18日 発売
- 価格:通常版 7,920円(税込)
DMM GAMESは8月18日、PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One用アドベンチャー「ヴァンパイア:ザ・マスカレード スワンソング」を発売した。価格は通常版が7,920円(税込)、デジタルデラックスエディションが8,800円(税込)。
本作は、テーブルトークRPG(TRPG)シリーズ「ヴァンパイア:ザ・マスカレード」をベースにBig Bad Wolfが開発したアドベンチャーゲーム。「ヴァンパイア:ザ・マスカレード」は米White Wolfが1991年に発表したTRPG。吸血鬼を中心に据えたダークで異色の世界観は熱狂的ファンを生み、様々な言語に翻訳されたほか、小説やアメコミにまで幅広く展開されている。
本作ではそんな「ヴァンパイア:ザ・マスカレード」の世界観をベースに、アドベンチャーゲームに落とし込んだ作品だ。ストーリーは本作のオリジナルで、プレーヤーは「エメム」、「レイシャ」、「ガレブ」という3人のヴァンパイアを操作し、この世界を探索して残された痕跡やアイテムを探したり、ほかのキャラクターとの会話から情報を引き出し、時にはなんらかのアクションをすることで、物語を進めていく。しかもプレーヤーのとった選択や行動によって物語が分岐していくのだ。
筆者がプレイしていて印象的だったのは本作の演出だ。ドラマのようなカメラワークも印象的だし、本作のレーティングはCERO:Z(18才以上対象)となっているが、「レーティングを目一杯上げてまでもリアルな描写にこだわった」というような開発側の意気込みを感じるほどの過激なシーンがあった。
本稿では「ヴァンパイア:ザ・マスカレード スワンソング」の序盤について、プレイレポートとしてご紹介したい。
残酷描写からセクシー描写まで、ヴァンパイアらしい際どい表現が魅力
筆者が最も印象に残ったのはゲーム全体の演出だ。それはグラフィックスの美しさというよりも、全体のカメラワークや、キャラクターたちの動きなど、ドラマ的な様々な演出がとにかく印象に残っている。
会話中にアップになるNPCの顔や表情、なんらかの選択肢を選んだあとのNPCのアクション、そんな凝ったカメラワークが素晴らしいと感じた。特に、本作を楽しむにはNPCたちとの様々な交流が鍵になるので、彼らの細やかな感情の変化が伝わってくる描写はゲームシステムとも非常にマッチしている。
そして過激なカットシーンの数々にも触れたい。例えば首を斬られた死体などの目を背けたくなるような残酷な描写もあれば、大人の営みを映すセクシーな描写も遠慮なく登場する。まさに、CERO:Zだからこそできる表現。個人的には吸血鬼が人間から血を吸うシーンなども非常にリアルに描写されており、官能的なものすら感じるほどだった。
現代のボストンでヴァンパイア達が生きているというユニークな世界観
本作の舞台は現代のボストン。我々人間の社会にヴァンパイア達も紛れ込んで生きており、様々なビジネスを行なうなど社会的な活動もしている。ヴァンパイア達は「カマリリャ」という自分たちの組織を構成しており、今回はボストンにある「ボストン カマリリャ」という組織に起きた緊急事態からゲームは始まる。
その緊急事態とは彼らが開いたパーティ会場から「コード・レッド」という信号が発せられたことにある。その名前の雰囲気からも伝わるように、彼らの世界では緊急事態にならなければ発せられない信号で、ヴァンパイア達は混乱しながらも、その信号が発せられた状況と理由を探ろうとする。
その中でも「ボストン カマリリャ」に所属する「エメム」、「レイシャ」、「ガレブ」という3人のヴァンパイアが、この事件に関して調査するのがゲームの導入部分にあたる。
この3人のヴァンパイア達はバックグラウンドが全く異なる。ボストンでビジネスを成功させている「エメム」、予知夢のような幻を見る「レイシャ」、ヴァンパイア達の中でもかなりの年配にあたる「ガレブ」という特色が異なる3人だ。彼らは同じ世界を共有して行動が交差する。
彼らは立場も異なるし、性格も異なる。プレーヤーが選択肢を選ぶなど、彼らの行動に介入する部分ももちろんあるが、ベースとなる部分は持って生まれた性格や背景にある。もちろんNPCとの関係性もあるので同じNPCに対する行動なども違い、その結果多角的にそれぞれのキャラクターについて知ることができるのだ。
TRPGをベースにした会話システムなどはユニーク。自分の選択で未来が変わる
ゲームはアドベンチャーゲームのように進んでいく。3人の主人公キャラがストーリーや展開にあわせて切り替わりながら操作していく。それぞれの主人公でどんなアクションを起こすかはプレーヤーに多くが委ねられている。
例えばヴァンパイア達にはステータスという概念がある。様々なスキルにポイントを割り振っていくというシステムだ。割り振ったポイントによって、行動可能になるアクションは異なる。それは情報を調べる際の様々なアクションや、誰かとの会話の選択肢などで使う。
例えば「ハッキング」のスキルを伸ばしていれば、PCをハッキングして新たな情報を得られるかもしれないし、「心理操作」というスキルを伸ばしていれば特殊な会話ができることがある。
またNPCと会話する時にスキルの値によって会話の成功/失敗の判定が入ることがある。相手NPCとのスキルポイントの差などで会話の成功確率が変わるのがなんともTRPGライクだと感じた。
1つのシーンが終了すると、行動が振り返られ、ヴァンパイア達の成長に必要なポイントが獲得できる。できるだけ多く探索をしたり、NPCから話を聞いたほうがポイントを多く獲得できるので、本作で色々なことをしたいなら、しっかり調査してキャラクターを成長させることを意識したほうが良いだろう。
とはいえ本作はヴァンパイア達がとった行動で後々の展開やエンディングが変化していく。あえて探索をしない、あえて会話をしないという選択肢もある。ここは悩ましいところだ。最初は自分なりのロールプレイをしたほうが楽しめるかもしれない。
本作はプレーヤーのとった行動、選択肢によって展開が変わるのが魅力の1つだ。
印象的だったのは序盤でエメムが「ジャーニー」というキャラクターに接触したときのアクションだ。彼らが所属する組織の最も偉い人物「公子」からジャーニーを連れてくるように指示があるのだが、彼女を連れて行くように誘導することも、ここから逃げ出すように誘導することもできる。この真反対の選択肢をとることで後々のストーリー展開などが変わっていく。
ただ若干気になった部分として、人によっては序盤でとっつきにくさを感じる場合があるかもしれないことが挙げられる。
元となった作品があるため、そちらに出てきた世界観や単語がそのまま本作にもバンバン登場する。「マスカレード」、「カマリリャ」、「コード・レッド」といった本作でキーになる用語もある程度知っている前提で話が進む。
また序盤から登場するNPC達も多いため、「この人はどんな役職で、何をしている人だっけ?」となってしまった。
これらの専門用語や登場するキャラクター達については、ゲーム内で読めるガイドもあるのだが、フレーバーテキストも多く詰め込まれており、余計に混乱する部分も少なからずあった。
もし「ヴァンパイア:ザ・マスカレード」についてまったく知識がないという場合は、まずゲームを進める前にガイドを読み込むことをオススメする。ぱっと見ただけではすべてにまで理解が及ばないかもしれないが、それだけ深く練られた設定があるということだ。焦らずじっくりと会話やガイドを見ながら進めていけば、だんだんとこのダークで壮大な世界の魅力が理解できてくるだろう。
大人向けの過激な演出、そして大きく分岐するストーリー。TRPGをベースにした、ユニークなゲームシステムが面白い作品だ。自分なりのロールプレイをしながら、彼らに何が起こったのか、今後どうなるかをぜひ見てみて欲しい。