【特別企画】

大人のためのゲーミングDIY講座 パートV

「超ファミつく」を使って初代プレステをスーファミ化する

【超ファミつく】

6月2日発売

価格:オープンプライス

参考価格:5,478円(税込)

 ファミリーコンピューターやスーパーファミコン、メガドライブなど、1980年代に登場した家庭用ゲーム機はレトロゲーム機と呼ばれており、昔遊んだ懐かしいゲームをまたやってみたいという人や、高精細な3Dグラフィックスを活用したゲームしかやったことがないような若い世代のゲームファンにとっても、ドット絵が新鮮に見えるなど、今もなお一定の需要がある。

 しかし、これらのレトロゲーム機の純正品はもう30年以上も前の製品であり、とっくに製造が終了している。レトロゲーム専門店やリサイクルショップなどで中古品が売られていることもあるが、新品が欲しいという人もいるだろう。そういう層をターゲットにした製品として、レトロゲーム機の互換製品が各社から販売されている。こうした互換製品は、基本的にメーカーのライセンス商品ではなく、すべてのソフトが動作することが保証されているわけではないが、最近発売されている製品は完成度も高く、多くのソフトが動作する。

 そうした中で、今回ご紹介するコロンバスサークルの「超ファミつく」は、レトロゲーム互換機の中でもちょっと変わった製品だ。普通のレトロゲーム互換機は、ちゃんとした筐体に入った完成品で、買ってくればすぐ遊べる製品がほどんどだが、超ファミつくは、“SFC互換機DIYキット”という別名が付けられていることからもわかるように、スーパーファミコン互換機の中身を筐体に入れずに、むき出しの基板のまま販売するという製品なのだ。もちろん、基板のハンダ付けなどは全て終わっているので、そのまま動作はするが、実用的に使うには何かしらの筐体を用意して中に組み込む必要がある(裸で使っていると感電や故障の原因となる)。

 製品パッケージやWebサイトには、トースターや机に組み込んだ例が紹介されているが、アイデア次第で、身の回りの色々なものをスーパーファミコン互換機に変身させることができるのだ。まさに「大人のゲーミングDIY」にうってつけの製品である。今回は、当時任天堂の強力なライバルとして登場した初代プレイステーションの筐体に、超ファミつくを組み込んでみることにした。

用意した5本のスーパーファミコンカセットは全て動作

 「超ファミつく」は、レトロゲーム機互換機などを多数販売しているコロンバスサークルの新製品だ。実は、同社の互換機DIYキットとしては第2弾となる製品であり、6年ほど前に互換機DIYキットの第1弾「ファミつく」が販売されていた。ファミつくは、初代ファミリーコンピュータ互換機だったが、今回の超ファミつくは、スーパーファミコン互換機にグレードアップしている。

 パッケージの中には、超ファミつく基板と専用コントローラーが2つ、ACアダプターと2種類のケーブル、基板固定用のセルフタッピングビスが20個入っている。特にマニュアルなどは付属していないが、このままACアダプターとテレビ、コントローラーを基板に繋いで、スーパーファミコンカセットを差し込んで電源を入れるだけで、スーパーファミコン互換機として動作する。出力端子はAV端子(ビデオ端子)とS端子なので、接続するテレビもそのどちらかをサポートしている必要がある。

【超ファミつくの中身】
SFC互換機DIYキット「超ファミつく」のパッケージ
「超ファミつく」のパッケージを開けたところ
「超ファミつく」の内容物。マニュアルは付属していない
「超ファミつく」のメイン基板
出力はビデオ端子とS端子
コントローラーも2つ付属している
付属のACアダプター。出力は10V/600mAである
AVケーブル(ビデオケーブル)とS端子ケーブルが付属
基板固定用のセルフタッピングビスが20個付属

 超ファミつくを、プレイステーション筐体の中に組み込む作業をする前に、動作を確認してみた。筆者も、昔はスーパーファミコンの実機を持っていたのだが、本体もソフトももう全て処分してしまっている。そこで、近所のリサイクルショップなどを回って、「ストリートファイターII」、「ドラゴンクエストVI」、「ドラゴンボールZ 超武闘伝」、「プルライムゴール」、「ラモス瑠偉のワールドワイドサッカー」の5本のスーパーファミコンカセットを購入してきた。

 部品むき出し本体に、ACアダプターとAVケーブル、コントローラーを接続し、カセットを挿入して電源を入れる。電源スイッチとリセットスイッチは、コントローラーのコネクタ基板に実装されており、左が電源スイッチ、右がリセットスイッチになる。最初、そのままカセットを挿入してテストをしたら、画面が出て起動したのはわずか1本で、「あれ? 大丈夫かこれ?」と思ったのだが、長年抜き差しされていないカセットのため、端子に酸化皮膜ができているのではないかということに気付いた。そこで、目の細かい紙やすりを使って、カセットの端子両面を磨いてみたところ、5本全て正しく動作するようになった。ただし、「ドラゴンクエストVI」などでは、BGMの音色というか音量バランスがちょっとオリジナルとは違うように感じたのだが、それも仕様のようだ。

【スーパーファミコンのソフトを5本用意】
「ストリートファイターII」「ドラゴンクエストVI」「ドラゴンボールZ 超武闘伝」「プルライムゴール」「ラモス瑠偉のワールドワイドサッカー」の5本のソフトを用意した

初代プレイステーションの筐体をバラして加工する

 無事動作が確認できたので、プレイステーションへの組み込み作業を開始することにした。動作テストをして判明した事実としては、超ファミつく基板の手前にあるアルミ板は放熱板であり、動作中はかなり温度が上がるということだ。ファンの風を当てる必要はなさそうだが、筐体への組み込みの際には注意したいところだ。

 今回は、初代プレイステーションの筐体をできるだけ活かして、超ファミつくを組み込むことにチャレンジしてみた。器として初代プレイステーションを選択したのは、あまり深く考えずに、プレイステーションのサイズなら丁度入るだろうと思っただけで、現物合わせでなんとかする方向だ。

 今回用意したプレイステーションは、ネットオークションでジャンク品(動作しない)として安く売られていたものだが、筐体は思ったよりも綺麗で一安心。早速分解をはじめる。この時代のコンソール機は、分解も比較的容易であり、基本的に見えているネジを全部外したり、コネクタからケーブルを外したりすることで、バラバラにできる。裏蓋を外して、2枚に開いたら、ネジを外して基板を覆っている金属板を外す。すると、基板が出てくるので、さらにネジを外せば、基板を裏蓋部分から取り外せる。

【プレイステーションを分解する】
用意した初代プレイステーションのジャンク品(不動品)
まずは裏蓋を固定している黒いネジ(6本)を外す
2枚に分離したところ。左が基板部分(下側)。右が上側である
黒いのはCD-ROMドライブユニット。左側は電源回路だ。見えているネジを全て外せばよい
金属板を取り外すと、プレイステーションのメイン基板が現れる。CPUやGPUは、左の金属シールドの下にある
基板を固定しているネジを外して基板を外すと、このように裏蓋だけになる

 裏蓋だけになったら、その上に超ファミつくの基板を載せて、配置を考える。あまり考えずにプレイステーションを選んだ割りには、サイズ的には結構ぴったりだった。超ファミつくのメイン基板とコントローラーコネクタ基板、出力端子基板は、それぞれフレキケーブルで接続されているが、その長さはそれほど長くないので、基板同士の位置関係はある程度固定されている。

 配置と同時に固定方法も考える必要がある。メイン基板については、メイン基板の左手前の穴に裏蓋に用意されている基板固定用の出っぱりをはめると、位置的にはちょうどよさそうだ。ただし、その場合、カセットのスロットの左端が壁と干渉するので、その壁の部分に穴を空けることにした。筆者は本格的な電動工具は持っていないので、とりあえず手持ちのハンドドリルで6mm径の穴を並べて2個空けて、ヤスリで繋いで形を長方形に整えることにした。

 コントローラーのコネクタ部分に関しては、開口部が少し狭いので、ノコギリでその部分を切って広げることにした。さらに、カセット挿入部の窓もノコギリで切って広げる必要がある。カセット挿入部についてはノコギリで切断後、ヤスリで断面を整えつつ、広げていったのだが、手でのヤスリがけはいつまで経っても終わりそうになかったので、電動リューターを導入。リューターの威力は絶大で、パワフルに穴を広げていくことができた。

 ところで、今回のこだわりポイントは2つある。一つは下にも写真を掲載しているが、電源LEDインジケーターの流用だ。このインジケーターは本体左手前にあるが、導光アクリルによって、基板上のLEDからの光がよく見えるようになっている。そこで導光アクリルに穴を空け、超ファミつくの電源LEDを差し込むようにした。もう一つは、プレイステーションの特徴であるCD-ROMドライブのフタ開閉機構をそのまま活かしておくことだ。フタ開閉機構は、ばねの力を利用して動作するため、このバラした状態でもオープンボタンを押せば、問題なく動作する。

 超ファミつくをプレイステーション筐体に組み込む際に、ちょっと悩んだのが、電源スイッチとリセットスイッチをどうするかということだ。もちろん、プレイステーション筐体に入れた状態で、それぞれのスイッチを操作できるようにしないと実用的とはいえない。こだわるなら、もともとのプレイステーションの電源ボタンとリセットボタンをそのまま活かせるようにするのがベストなのだろうが、そのDIYはかなり難易度が高くなるので(超ファミつくの基板からスイッチの線を取り出して別のスイッチを使えばいいのだが、そのスイッチの固定が難しい)、今回は断念した。超ファミつく基板に実装されているスイッチの真上にあたる位置に穴を空けて適当な棒などを入れて、ケースの上から押せるようにするという、シンプルな作戦だ。当初、直径5mmのアクリル丸棒を切っていれようかと考えていたのだが、近所のホームセンターをうろついていたら、木工用パーツコーナーでサイズ的によさそうな木のつまみを発見した。早速買って帰り、実機に合わせてみたところ、つまみの丸くなっている部分を切り落とせば、ぴったり合うことがわかった。ケースに入れた状態で、ちゃんと電源スイッチもリセットスイッチも動作することを確認した。見た目はあまりかっこよくないが、実用上は問題ないだろう。

 懸案のスイッチ問題も解決したので、再び上側のケースと合体させれば、“プレイステーションの皮を被ったスーパーファミコン互換機”の完成だ。

【筐体を加工して超ファミつくを組み込む】
裏蓋に超ファミつく基板を乗せて、どう配置してどう固定すればよいか考える
基板の穴と、裏蓋の基板固定用の出っぱりを合わせてみたところ、カセットのスロットの端が壁部分と干渉するので、その部分に穴を空けることにした
こちらはコントローラーのコネクタ部分。超ファミつくのほうが横に広いので、プレイステーションの筐体を少し切って広げることにした
カセットのスロットの端を入れるためにハンドドリルで穴を空ける
穴を二つ並べて空けて、ヤスリで削って長方形に形を整える
コントローラーのコネクタ部分の開口部はノコギリで筐体を切って広げる
カセットが入る部分もノコギリで切って広げる
こだわりポイントの一つ。電源LEDの導光アクリルに穴を空ける
導光アクリルに超ファミつくの電源LEDを差し込んで固定する
カセット挿入部の窓は、最初手で削って広げていたが、時間がかかって大変なので、電動リューターを導入。リューターで削ることにした
ボルトとナット、セルフタッピングビスを使って基板を固定したところ。コントローラーのコネクタ基板の左の白いスイッチが電源スイッチ、右の黒いスイッチがリセットスイッチだ
電源スイッチやリセットスイッチを押すために何かいいものがないかとホームセンターで探したところ、よさげな木のつまみを発見。このつまみの丸くなっている部分を切り落とすとちょうど高さ的によさそう
コントローラーのコネクタ基板のスイッチの位置に合わせて穴を空け、さきほどの木のつまみを下から入れたところ。ちょうどいい感じだ。この出っぱりを押すことで、電源のオンオフやリセット操作が可能

加工には苦労したが、出来映えにはまあまあ満足

 筆者は、はっきりいって不器用な方であり、DIY経験も多いわけではない。また、使った工具もドライバー、ハンドドリル、棒やすり、紙やすりくらいで(そして今回新たにリューターが加わったが)、製作にかけられる時間もそれほど多くはなかったため、細かい点を見ると不満もあるが、出来映えにはまあまあ満足している。

 皆さんも気付かれたようにコネクタ部分が手前に出っ張ってしまったのが気になるが、カセットを入れた状態で横から撮影した写真を見てもらえば分かると思うが、メイン基板をこれ以上後ろに配置すると、オープンしたCD-ROMのフタ部分とカセットが干渉してしまうのだ。フタを切ってしまえばコネクタも中に入りそうだが、今回はフタを切らないことを優先した。

 単にプレイステーションの筐体に超ファミつくの基板を入れただけでなく、フタ開閉機構をそのまま活かし、電源LEDインジケーターもそのまま元と同じ役割で流用していることがポイントだ。もっと技術と時間があれば、板を加工してフタの手前の開口部を塞いだりすることもできただろうが、素人が手持ち工具だけで挑戦したDIYとしては頑張ったほうだろう。このまま、電源スイッチもリセットスイッチも使えるので、十分に実用的だ。

【完成した超ファミつくinプレイステーション】
超ファミつくinプレイステーションが完成。CD-ROMフタの蓋を閉じると、見た目は普通のプレイステーションに見える(コントローラーのコネクタ部分がちょっと雑だが)
CD-ROMのフタを開いたところ。フタのオープンギミックはそのまま生きており、右のオープンボタンを押すことでフタが開く
フタを開いたら、カセットを装着できる
正面から見たところ
背面から見たところ
フタをオープンしたところ
フタをオープンして
横から見たところ。フタとの隙間はそれほどないが、カセットの脱着は問題なくおこなえる
電源を入れると、左手前の電源LEDインジケーターが青く光る。ここもこだわりポイント

DIYの試行錯誤を楽しめる人におすすめ

 肝心の超ファミつくのプレイ感覚だが、動きや反応については実機との違いはほとんど感じられなかった。サウンドはソフトによっては多少違いがあるように思えるが、気になるほどではない。ただ、コントローラーがやはり任天堂純正品に比べると作りが安っぽいと感じた。娘と「ストリートファイターII」で勝負したのだが、昔は純正コントローラーで簡単に出せていた波動拳や昇龍拳がなかなか出せなかった。ただ、娘はわりと確実に波動拳を出していたので(そのせいで完敗したが)、慣れもありそうだ。名作「ドラゴンクエストVI」も快適にプレイできた。コマンド型RPGやSLGなら、多少コントローラーが安っぽくてもほとんど気にならない。

 今回、購入したスーパーファミコンのソフトは1本80~300円程度とかなり安価で売られていたものであり、5本全部問題なく動作したことから、互換性も高そうだ。昔好きだったスーパーファミコンのゲームをまた遊びたいという人には魅力的な製品であろう。

 ただし、超ファミつくは、あくまでDIYキットであり、むき出しの基板で売られているため、自分で何らかの筐体を探して組み込む必要がある。単にスーパーファミコンのソフトを動かせればいいのなら、ちゃんとケースに入った完成品の互換機を買えばよい。超ファミつくの発売元のコロンバスサークルからも、スーパーファミコン互換機「16ビットコンパクト」が発売されている。超ファミつくは、DIYが好きで、筐体に組み込む作業を楽しめる人をターゲットにした製品だ。世界に1台しかない自分だけのスーパーファミコン互換機が欲しいという人や、意外なものに組み込んで友達を驚かせてやりたいといった人におすすめしたい。

【早速スーパーファミコンのソフトをプレイ!】
娘と「ストリートファイターII」で娘と勝負。大学生時代、スーパーファミコンで死ぬほどストIIやってた記憶が蘇るが、あっけなく娘に完敗
今回はAV端子(ビデオ端子)経由でテレビに接続したが、映像もにじみがなく綺麗だ
2つの世界を行き来する名作「ドラゴンクエストVI」もこの通り快適だ
もちろん、カセット内へのデータのセーブやロードもちゃんとできる