【特別企画】

「聖剣伝説LOM」のDNAはここに受け継がれる! Switch「エグリア Rebirth」プレイレポート

心温まるストーリー&楽しい素材収集に浸れる年末ゲームの決定版

【エグリア Rebirth】

12月16日 配信

価格:2,200円(税込)

 初代プレイステーションの名作アクションRPG「聖剣伝説 LEGEND OF MANA(以下、「聖剣伝説LOM」)」(1999年発売。発売元:スクウェア、現スクウェア・エニックス)をご存知だろうか。つい半年ほど前の6月にもリマスター版が発売されたばかりなので、名前をご記憶のかたも多いことかと思う。

 今回、12月16日に発売となったブラウニーズ開発のNintendo Switch「エグリア Rebirth(以下、「エグリアR」)」は、その「聖剣伝説LOM」のDNAが大いに受け継がれたと言えるRPGだ。

 ブラウニーズといえば、「聖剣伝説LOM」でキャラクターデザインでチーフを務めた亀岡慎一氏率いる開発会社。「エグリアR」では亀岡氏が製作総指揮とキャラクターデザインを担当し、「聖剣伝説LOM」でアートディレクターだった津田幸治氏が背景、「聖剣伝説LOM」の音楽を作曲した下村陽子氏が引き続き作曲で参加している。ビジュアルの温かみのある雰囲気を見れば、一発でその魅力を感じ取れるだろう。

【【PV】EGGLIA Rebirth】

 そんな「エグリアR」だが、こちらはかつてスマートフォン用アプリとしてリリースされていた「EGGLIA(エグリア) ~赤いぼうしの伝説~(以下、旧エグリア)」を、新たにNintendo Switch用のソフトへと大幅にリニューアルしたものだ。

 オリジナル版と比較してUI関連が変更されていることはもちろん、演出面の強化、ゲームバランスの調整、新イベント追加などその変更点は多岐にわたっており、新規プレーヤーのみならず、従来のファンも楽しめる仕様に変更されているのが特徴だ。今回は「エグリアR」をプレイし、Switch版で進化した部分を含め、改めて「エグリア」そのものの魅力をお伝えしていきたい。

キャラクターデザインに亀岡慎一氏、背景グラフィックに津田幸治氏、そして楽曲は下村陽子氏という豪華スタッフを中心に生み出された作品、それが本作「エグリアR」だ

ハートフルなストーリー展開とゲームシステムが魅力の「エグリア」

 まず、今回リメイクされた「エグリア」そのものの魅力についてお伝えしたい。大きな魅力のひとつは、なんと言ってもストーリーだ。ファンタジー色に包まれた世界観を背景に、もとは凶悪な鬼であった主人公「チャボ」がエルフ族の「ロビン」を始めとする住人たちと織りなす物語は、コミカルながらも温かみがあり、個性的なキャラクターが数多く登場することも相まって、自然とその世界へと引き込まれていく。

 また、作品の根幹を支えるゲームシステムも魅力的だ。住人のリクエストに答え関係値を高める「ラブリティ」や、素材アイテムを使った街施設の拡充、そして主人公の能力を高める「精霊」の育成など、ストーリーの豊富さとカスタマイズの幅の広さでプレーヤーを飽きさせない。フィールドでの探索の楽しさと相まって、その気になればいつまでも遊んでいられる仕組みになっている。

 ビジュアルや音楽に惹かれたと思ったら、想像以上の奥深さにどんどんと引き込まれていく。様々な要素が絡み合うことで、「エグリア」ならではの魅力的な世界が展開されている作品だ。

ユニークなシステムに収集要素……「エグリアR」の注目ポイントはココだ!

自由にワールドマップを作れる「ニーベルエッグ」

 では、具体的に特徴的なシステムを見ていきたい。「エグリア」は、ジャンルで言えばRPGとなり、アクション要素はほとんどない。「聖剣伝説LOM」がアクションRPGだったことをあえて持ち出すなら、本作はよりじっくりと落ち着いて、登場人物たちのストーリーを楽しめるゲームだと言える。

 面白いのは、本作には定まった「ワールドマップ」ないということ。そのキーとなるアイテムが「ニーベルエッグ」と呼ばれる卵で、これを入手し、“空”の「ワールドマップ」に設置することで封じられた世界(ランド)が1つずつ解放されていく。ゲームの進行とニーベルエッグの設置を繰り返して、だんだんと世界を広げていくような形だ。

 「ニーベルエッグ」を置く場所は、既存のランドに隣接していればどこでもOK。つまりプレーヤーが好きなように、自由にワールドマップを作ることができる。さらに特定のランドを隣接させると「リンクフィールド」と呼ばれる現象が発生し、通常では探索ができない新たなフィールドが誕生することもある。「聖剣伝説LOM」の「ランドメイク」システムを想起させるこのシステムには、往年のファンなら思わずニヤリとしてしまうかもしれない。

一度設置を終えたランドでも「卵の殻」が溜まっていれば再配置が可能なので好きなように配置していくといい
リンクフィールドが完成すると表示が出現。これで隠されたフィールドを探索できるようになる

住人が増えて街も拡大! 深く大きく広がる「マイタウン」

 冒険の拠点となるマイタウンでは、主人公と住人たちとの交流が楽しめる。ただ会話をするだけではなく、ときに住人たちにプレゼントをしたり、それぞれが持つ希望を叶えることによって、アイテムの獲得や住人ごとに用意されたストーリーが進行する。最初は数人程度だが、ストーリーを進めるごとにどんどんキャラクターが登場していく。

 また、それぞれの住人には誕生日や趣味、好きなものといった細かな設定がきちんと用意されていて、それらは気軽に確認もできる。住人と交流し、仲良くなり、そうしているとまた新たな住人が登場したりして、どんどんとゲームの世界が深まっていく。

住人とたちは、そのお願いを聞いたりプレゼントをあげたりすることでどんどん仲良くなれる
仲の良い住人を探索に連れて行くと、素材をたくさん集めてくれることも

 拠点となる「マイタウン」を大きくすることもゲームを進めるために重要な要素のひとつ。特定の住人には家を建ててあげることができたり、もとからある施設を増築したりすると、街がどんどん大きく、にぎやかになっていく。街が大きくなると「マイタウン」のレベルも上がり、主人公が成長しやすくなる。

 住居や施設を建設したり、拡張するためにはそれ相応の多くの素材が必要となるが、それらを集める労力に見合った効果が期待できる。積極的に活用して効率よくゲームを進めていきたいところ。

 ちなみに「素材を集めて強化する」といった要素が大好きな筆者には本作のこういった部分がとくに刺さっており、原稿を執筆している今も早く素材集めに戻りたい気持ちでいっぱい。同好の士にならこの気持ちがわかってもらえるはず……。

施設の拡張は多くの素材を必要とするが、やれることも増えていくため優先的に処理していきたい。また、獲得できるお礼も魅力的だ
街の拡張のみならず、家具さえ作れば自分の部屋の飾り付けだって自由自在。特定のコーディネートは何かのフラグになっているという噂も

世界の探索は「すごろく」で! 運の要素がほどよいアクセントに

 世界の探索と素材集めが主目的となる「ワールドパート」では、さまざまなランドに用意されたマップを攻略していく。フィールドはヘックスが連なって構成されていて、プレーヤーがサイコロを振って出た目以内の数だけキャラクターを動かすことが可能。最終的に規定ターン内でゴールへと到達すればクリアとなり報酬がもらえたり、ストーリーの先を知れるような仕組みだ。このシステムこそ、ブラウニーズが本作のジャンルを「すごろくRPG」と謳っているゆえんである。

 ゲーム内で必要となる各種素材は、フィールド上の木を伐ったり宝箱を開ける、敵キャラクターを倒すといったことで手に入れることができる。ほとんどのフィールドにおいては規定ターン以内に余裕をもって探索を終えることが可能だが、出目が不調だったり強敵が出現した場合はその限りではない。

 このサイコロというランダム要素が探索へのほどよいアクセントとなっており、結果として絶妙な緊張感が味わえる。実際、筆者がプレイしていて強敵やサイコロ運の悪さに阻まれゲームオーバーになったことは一度や二度ではない。悔しいってレベルじゃないですよ、これ。

サイコロを振って出た目に従いフィールドを探索。残りターン数と相談しながらゴールを目指そう
通常攻撃を行なうときにはなるべく大きい数字のときに仕掛ければ効率よくダメージを与えていける
レベル2のフィールドには、強敵「ドラゴン」の姿も。「旧エグリア」ではかなりの強さだったが、果たして……

成長要素にもこだわり満載。「精霊召喚」&「育成」で主人公を強化

 RPGである本作には、主人公に成長要素が備わっている。特定のイベントをこなしたり、探索をクリアすることで経験値が溜まっていき、それが一定量に達したところでレベルアップ。それにともない、主人公のHPや攻撃力、防御力も高まっていく。その一方で、RPG定番の武器や防具で強化するといった要素は用意されていないのだが、その代役を担う存在として「精霊」が用意されている。

 精霊はフィールドを探索する際に任意で3体まで連れて行くことが可能となっていて、その際に選んだ精霊の強さに応じて主人公のステータスが変化。HP、攻撃力、防御力のほか、属性防御力などにも影響があり、強敵が出現するようなフィールドに赴く前にはとくに慎重に選ぶ必要がある。

チュートリアルの時点で3体の精霊が仲間になってくれるが、属性のバランスがいいため、序盤はそれだけでも十分に対応できるはずだ

 また、各精霊にはルーン(必殺技)が用意されており、「ASSAULT」なら攻撃タイプの、「SUPPORT」なら補助・防御タイプのルーン(必殺技)が使用可能。発動には探索中に溜まるマナが必要だが、そのぶん強力な効果があるため、切り札として活用していくといいだろう。

 ちなみに精霊は「火・水・風・光・闇」の5つの属性にわかれており、低いレアリティから高いレアリティまで、様々にいる。食材アイテムをマイタウンにある「精霊のほこら」に使用すると、できた食べ物に応じて召喚できる、という流れだ。

 高級な食材を使って作る食べ物ほど強力な精霊を召喚できる確率も高まる傾向にあるようだが、どうやら確実性はないようなので、ある意味ガチャを回すような感覚でチャレンジするのがよさそうだ。

 一度呼び出した精霊は永続的に仲間となり、フィールド探索時に連れて行くことが可能。連れて行った精霊には経験値が入り、主人公同様に成長もしていくが、さらに精霊の大好物である「ポテト」を与えれば一気に成長できる。

 なお精霊の召喚やポテトの作成にはリアルでの時間経過が必要となる。価値の低い素材なら短時間で、価値の高い素材なら長時間となっていて、どうバランスを取るかはプレーヤー次第。ちなみに強化が好きな筆者は、記事を執筆している現在も、コツコツと精霊召喚&ポテト集めを進行中だ。

なお、特定の精霊を組み合わせて連れて行くとステータスにボーナスが加わる「リンクスキル」が発動する。色々と組み合わせを試したい
精霊に特定のポテトを渡すと一気に経験値を獲得できるほか、スキルがパワーアップすることもある。また、ある条件を整えれば上位の精霊になるらしい……?

「エグリアR」、スマホ版からの最大の変更点は「良好なバランス」!

 「エグリアR」では、「旧エグリア」からの移植にあたって、様々な部分がNintendo Switchにフィットした形で変更されている。

 操作方法やUIの変更、演出の強化など様々な部分が事前に紹介されているが、「旧エグリア」をそこそこやり込んでいた筆者が感じたのは、全体的に遊びやすいバランスに仕上げられているという点だ。「旧エグリア」ではあえて極端に難しく設定しているなと感じる場面もあったが、「エグリアR」では全体的になだらかな難易度設定になっている。

 一方で重要な部分の攻略フラグなどが意図的に変更されているところなどもあり、前作をプレイしていても挑戦しがいのある内容となっていたのは好印象だ。

 プレイ自体はまだまだ序盤だが、これに加えて新たな住人や精霊も出てくるとなれば、もう一度この世界に浸ってみようかな、という気にもなるというもの。また、目的の素材を集めきるまでフィールドで収集と戦闘を繰り返すこの感覚は、ともすればハックアンドスラッシュ的な楽しみに通じるものもあり、人によっては止め時がわからなくなるかもしれない(少なくとも筆者はそのタイプ)。

 これだけ遊べる要素が入っていて、税込2,200円というプライスを考えると、この「エグリアR」はかなり破格のボリュームを持ったお得な作品と言えるのではないだろうか。年末年始、まったりと遊べるハートフルなRPGを探しているのであれば、筆者は間違いなく本作をイチオシとしたい。そして、本作を期に新たにパブリッシャーとして活動を始めたブラウニーズにもしっかりと注目をしていきたいと思う。

UI関連はすべてコントローラー前提の形に置き換えられた。なおタッチ機能は搭載されていない
この雰囲気を、家の大画面でも持ち歩いても楽しめるのはSwitch版ならでは。街のなかを歩く主人公の姿も「エグリアR」で初めて登場している