インタビュー
【特別企画】ブラウニーズのベテラン&若手社員に聞く「エグリア」座談会
若手もみんな「聖剣伝説 LOM」が好き!「エグリア」配信直前インタビュー・後編
2017年4月12日 07:00
ブラウニーズが4月13日に配信予定のAndroid/iOS用RPG「EGGLIA(エグリア) ~赤いぼうしの伝説~」(以下、エグリア)。この配信を記念して、GAME Watchではブラウニーズ代表取締役社長の亀岡慎一氏に、亀岡氏の作品ヒストリーを追うインタビューを掲載した。
そして本稿では、インタビューの後編として、「エグリア」開発のベテランチーム、若手チームに分かれて実施した座談会の模様をお伝えする。それぞれの「エグリア」に対する思いから、ワイワイと楽しむブラウニーズでのものづくりの雰囲気まで垣間見えるインタビューになっているので、ぜひご覧いただきたい。
「EGGLIA ~赤いぼうしの伝説~」とは?
「EGGLIA ~赤いぼうしの伝説~」は、絵本のようなタッチで描かれるファンタジーRPG。プレーヤーは世界が封印された卵「ニーベルエッグ」を唯一割ることができる少年「チャボ」となり、失われた世界「エグリア」を復活させるための冒険へと旅立つ。
冒険はサイコロを振ってヘクス状のマス目を進む形式で、ゴール地点に向かうまでの間に敵との戦闘やアイテムや資材集めを行なっていく。集めた資材やアイテムで家を建てたり、家具を作ることが可能。世界を広げ、拠点となる街を充実させていくことで、様々な住民が街に住み着いていく。
素材集めにはじまり、冒険時の能力を上昇させる「精霊」の成長要素、家具作り、住民の願いを叶えていくミッションなど、数多く用意されたやりこみ要素の豊富さも特徴となる。
「エグリア」若手チームは全員「LOM」ファンだった!
――ではここからは、「エグリア」ベテランチームと若手チームによる座談会という形でお願いしたいと思います。
一同:よろしくお願いします。
――若手チームに伺いたいのですが、「ブラウニーズ」に入社された経緯はどんなものだったのでしょうか。亀岡氏の過去作のファンという方も中にはいらっしゃると思いますが。
佐々木氏: 私は大学で就活をしているときに「ブラウニーブラウン」の求人を見つけたのですが、すでに締め切られていて落ち込んだというのを覚えています。昔から「LOM」(聖剣伝説 LEGEND OF MANA)がすごく好きだったというのと、「マジバケ」(マジカルバケーション)のゲーム全体に漂う雰囲気が好きで、入るならばこういう会社がいいと思っていたんです。
もともと美術学校に通ってはいましたが、当時どういう業界に行くかはぼやっとしていて、キャラクターデザインや、イラスト系を目指そうとも考えていました。それでもあきらめきれず、何度も企業サイトをチェックしながら様子をうかがっていたところ、就活を終えなくてはならないギリギリのタイミングで「ブラウニーズ」が設立され、求人を再開していたのを知りました。
「今がチャンスだ!」と思って応募して、そのあとは、大学の教授に頼んで3D関連の授業に潜り込ませてもらったりしながら準備をしていました。
――そのエピソードだけでも思い入れと熱意が伝わってきます。ベテランチームの亀岡さんに伺いますが、「ブラウニーズ」にはそのようなスタッフが多いのでしょうか?
亀岡氏: だいたいうちには、過去の作品で好きなものがあったという人が多くいます。「ブラウニーブラウン」時代に応募してもらって、そこでは断ったけども「ブラウニーズ」になってから改めて入った、という方も何人かいます。「ブラウニーブラウン」時代の終盤に応募してきた人はそこでいったんキープしておいて、「ブラウニーズ」になったときに採用させてもらった、というケースもあります(笑)。だいたい「LOM」か「マジバケ」か「MOTHER3」のファン、という方が多いですね。
――ちなみに、ほかに佐々木さんと同じような理由の方はいらっしゃいますか?
牧野氏: 自分もまったく同じでした。「LOM」が好きで、「ブラウニーブラウン」を目指して就職活動をしていたのですが、それがなくなってしまったことで「つぎはどこを第一目標にしようか」と悩んでいたときに「ブラウニーズ」が設立されるという話を聞いて「これは運命だ!」と思い、応募しました。
亀岡氏: ちょうど任天堂がインターンシップを実施していて、彼はそこに受かってWii Uのタイトルを1本配信してるんですよね。それがハトを捕まえるゲームだったので「ポッポ」という愛称がつきました(笑)。
井戸氏: 自分も「LOM」は好きでしたが、遊んでいたのが小学校1年生ぐらいのときでしたので、どこの会社が作っているなどはまったくわからず、そういう意味で最初から「ブラウニーズ」を目指していたというわけではありません。
学生時代に求人を探していたところ「ブラウニーブラウン」という会社を見つけまして、過去作品をチェックしたら「LOM」があり「マジバケ」があり「MOTHER3」がある。一方、会社の雰囲気を調べてみたら、ブラウニーズのFacebookを見るかぎりでは、美味しいものを食べているだけの会社なんだということはわかって、これは楽しそうだなと(笑)。
6月ぐらいに会社説明会があったので、そちらに行ってみて雰囲気だけでもと思ったのですが、これもまたすごくいい感じで、もうここしかないなと思いました。ポートフォリオを津田さんにお見せしたところ、津田さんにメモを残していただいて「2Dも3Dもいい感じなのでぜひ送ってきてください」となり、応募をしました。
――門元さんはいかがでしたか?
門元氏: 自分は中途なので流れは他の方と違うのですが、気持ちとしては似たような形です。以前に大きいゲーム会社にいたのですが、そこではあまり面白いことができませんでした。それで、「もっと面白いことができる会社に行きたい」と考えていたんですが、情報サイトのインタビューで社長(亀岡氏)のインタビューを見て、そこで「面白いメンバーを集めて面白いものを作りたい」という話をしているのを読み、そういうところに行きたいと。
あと、自分は旧スクウェアのスーパーファミコンやプレイステーション時代のRPGがとても好きで、なかでも「聖剣伝説」シリーズはとても好きなタイトルだったということもあって応募し、今はこうして「エグリア」に関わらせてもらっている、という感じです。
――それでは、松本さんはいかがでしょうか?
松本氏: 私はもとからゲーム業界を目指していて、専門学校にも通っていたんですけど、第1目標としてはアドベンチャーゲームを作りたいと思って、違う会社に勤務していました。
そちらに何年か勤めて、転職を考える機会があったときに「ブラウニーズ」が「会社体感会」という、お花見の席で一般の方とお話をする企画がありまして。それに応募したら運良く当選したんです。実際にお話を聞いたなかで「ここはいいな」と思い、もともと「聖剣伝説」シリーズを作った会社として注目していたということもあって応募し、お仕事をさせていただいています。
――亀岡氏の元に若手が続々集まっている感じですが、社内の年齢層の分布はどのような感じなのでしょうか。
津田氏: 20代か40代が多くて、中間層が少ないですね。おじいちゃんか孫か、という感じでしょうか(笑)。
――狙ってそういう年齢層を集めているのでしょうか(笑)?
亀岡氏: 僕の場合、スタッフが30代くらいになってちょっとおかしくなってきたかな?と思うと一度外に出しちゃうんですよね。ストレスを感じていたり、悩んでいるようならいっぺん外の会社を見てこいと。
うちしか知らないスタッフには、別の会社も見せたいんです。周囲は「えっ!?」って言うんですけど(笑)。できれば、他の職種をやらせたいぐらい。あるいは他の職種を体験してからゲーム業界に入ってきてほしい。「働くとはこういうことなんだ」と実感してからゲーム業界に入ると「なんて幸せな仕事でお金をもらえているんだろう」と僕は思えたので、それを味わってもらいたいのです。
――亀岡さん自身は、20代に囲まれながら、一緒に仕事をしているという環境はいかがですか。
亀岡氏: 僕は若いの大好きなんで楽しいです。彼らがどう思っているかはわかりませんが(笑)。
――好きな作品に「LOM」が多く挙がっていましたが、「エグリア」を制作をするにあたってのメリットはありましたか?
亀岡氏: これは結果論なんですけど、すごく良かったと思います。もともと「LOM」を作ったスタッフと、それを好きなスタッフが多かったことで、絵の方向性はそんなにブレずに済んだので。
一同: (笑)。
――デザイナーの方としては、そのあたりどうだったんですか?
井戸氏: グラフィックスのテイストは掴み易かったです。自分にとっては始めてのゲーム制作だったのですが、ある程度方向性の基準があって統一感は出せたと思います。
――ちなみに、さきほどの「働くこと」に対してはどう思われましたか?
井戸氏: 仕事をさせていただくことは、ありがたいことですね。でも、そうなるといずれ外に出されてしまうのでしょうか(笑)。
亀岡氏: そういうことではなくて、3年くらい同じ環境で働いていると、外の芝生がすごく青く見えて来て……ちなみに外の悪いところは見えないけど(笑)、腐る人も出て来る。そんな状態で同じ環境で仕事を続けるよりも、外の空気を吸ってきて、それで帰ってきたければ帰ってくればいいと。
あと「新しいことをやりたい」って言っているスタッフには、新人だろうがどんどんやらせちゃいます。だから、チャンスはすごく与えている方だと思います。先ほどの門元がいた“大きい会社”はなかなかゲームが作れなかったようなので、今はうちでイヤと言うほど作らせていますけどね(笑)。
門元氏: 楽しいです(笑)。
――佐々木さんは「ブラウニーズ」で働いてみていかがですか?
佐々木氏: 本当に色々なことをやらせていただいていると思っています。私は最初のころは建物などの背景を担当していたのですが「エグリア」からはUIを担当させてもらい、手探りで色々とやって、先輩にも教えてもらいつつ仕事しています。また、個人的にやりたいことも色々あって、自分が作りたいゲームの企画書なんかも社長に見てもらったりしています。
亀岡氏: 「こういう世界観でゲームを作ってみたい!」という企画書を持ってきてくれていますね。世界観は良いと思うので、あとはシステムをどうにかしてみよう、というところです。他にも、やりたいことがある人は遠慮せず、バンバン持って来て欲しいんですよ。
佐々木氏: 今は「エグリア」に専念していますけど、今度はシステムとかも考えてお見せできればなと。
――楽しそうな雰囲気が伝わってきます。若手チームの仕事ぶりというのは、ベテランのお2人から見ていかがでしょう?
津田氏: とてもよくやってくれていますね。
亀岡氏:3年間ぐらいはいいんですよ、若手は(笑)。本当に仕事を楽しそうにやってくれるので。
津田氏: 今どきの若手は草食系というんでしょうか、色々と言いたいこともあるんだろうけど、抑えながらも黙々とこなしてくれています。昔だと「これはこんな感じで直してほしい」と言うと「これのどこがいけないんですか!」ってブースを思い切り蹴ったり……などということもあったのですが、そういうこともなくて「本当にいいのかな?」と思うぐらい素直に聞き入れてくれますね。
――津田さんとしてはどちらの方がいいですか?
津田氏: やりやすさで言えば、今の若手の方がいいですよね(笑)。昔はそういう荒れる若手とのやりとりで、精神的にだいぶ参っていた時期もあったので。でももちろん、自分が腑に落ちないこと、思ったことがあればぜひ言ってほしいというのはありますよ。
――牧野さんは、上の世代の方とのやり取りをどう感じていますか?
牧野氏: 自分はあまりそういうことがなかったです。
亀岡氏: プログラマーに関しては、ドッシリとした先輩がいなくなってしまったことで、申し訳ないね。
牧野氏: そのぶん好きにやれたというのはあります(笑)。
――プログラマーには、頼れる先輩がいらっしゃらなかったんですか?
亀岡氏: 出向に行っていたり、ほかにも、まあ……さっきの中間層の話みたいなものが色々あって。プログラムの方は若手中心でやってもらっていましたね。
門元氏: 好きにやれた反面、どんどん責任が大きくなっていきました(笑)。
津田氏: 最初は下でがんばっていたのが、いつのまにか上昇してきて今ではメインで見てもらっていますからね。
門元氏: すごく勉強になっているというか、面白いなと思うようになりました。
亀岡氏: あと、僕は失敗をさせたいんですよね。普通は失敗させないようにするじゃないですか。でも、周りから「こうすれば失敗しないよ」って教えられるのと、実際に失敗を身をもって体験するのでは全然違うと思うので、まだ取り返しがつく若い人にはとくに失敗をしてほしいなと。
――若手の皆さんは、結構やりたいことができていて、そういう環境に亀岡さんがしているという感じですよね。
亀岡氏: 好きにやってもらうのが1番いいので。ただ、プログラマーはさておき、プランナーなどの場合、僕の思っているものから外れたものになる場合もあるので、そういうところに関しては戻してもらいます。グラフィックスに関してもひと目見ればわかるので、結構うるさがられているんじゃないかな。
――ちなみに「エグリア」は、どういう流れで作られているのでしょうか?
亀岡氏: 結構、うちの作り方は普通ではないと思いますね。一般的な作り方ではシステムから構築して、堅く作っていくのですが、うちの場合「こんなのあったら面白いね。これ入れちゃおうよ。できる? 入れて」って感じで。
――亀岡さんが指示を出して進めるのでしょうか。
亀岡氏: 他が自主的にする場合もあります。僕としては、ゲームに入れる要素の最初の判断は「面白い」か「面白くない」かのどちらかで判断してほしいんです。とくに若いスタッフには。中堅クラスになると「それを入れたら工数が……」といった要素が判断に組み込まれてくるのですが、そういう人たちの出番はあとでもいいと。
まずは「その要素を入れると面白くなるのか?」という部分で判断して、本当に面白くなるんだったら多少の無理をしてでも入れていこう、となる。とくに「エグリア」は満足のいくゲームを作っていこう、というプロジェクトでもあるので。
「エグリア」制作で苦労したポイント
――ご自分のパートで大変だったことはありましたか?
松本氏: キャラクターのメッセージを作成する作業が主体だったので、キャラクターの人数が多くなると物量が増えて大変でした。現在オープンになっている情報以上にキャラクターは用意されているので、その量もかなりのものになります。でも、作業内容としては、それぞれのキャラクターの個性が出せる部分だったので、それ自体はとても楽しくやれました。
津田氏: 物量に関しては、あらゆるところで発生していましたね。自分が統括している背景については比較的少ないほうだったのでもう少しあってもよかったのかもしれないのですが、スケジュールを考えるとこのぐらいなのかな……とせめぎ合っていました。
亀岡氏: 苦労点で言えば、やりたいことを思いつきすぎるベテランのおじいちゃんが暴走しちゃんです……うちの会社は。通常は中間層が止めに入るところなのですが、その中間層があまりいないので……。暴走するおじいちゃんクラスの人たちへは「そんなにやらないで」と言っているのに、どんどんボケて広げていっちゃうんですよ。
津田氏: ボケてって……(笑)。ちょっとでも良くしようかなと思って(笑)。
亀岡氏: そんなおじいちゃんと孫の関係で作られているのが「エグリア」です(笑)。
津田氏: 色々やりたいことはあるんだけどね。私が「俺がやる!」って言ってもだめなんですよ。やらせてもらえないんです(笑)。
――止めることで、結果的には良くなると。
亀岡氏: 時間が無尽蔵にあればいくらでもやらせてあげたいんですが、最終的にはリリースするタイミングがある関係で、どこかで止めないといけない。
津田氏: 作業的にもやれないことはないのですが、それをすることで今度はチェックが追いつかなくなってしまい、結果的に不具合につながることがある。その部分のバランスが難しいですね。やれば、それを喜んでくれるユーザーさんも出てくるので、できればやりたいというのはあるんですけど。
亀岡氏: おじいちゃんたちは、それを誰にも気づかれないようにこっそりやっちゃったり、ということもするんですよね(笑)。
――他に、苦労した点についてはいかがでしょうか?
佐々木氏: UIデザインとしては、操作性を重視するか、わかりやすさを重視するかのバランスが難しかったです。ボタンに文字を入れればわかりやすくなりますが、そうするとデザイン面で見栄えが悪くなってしまうなど、世界観に合うデザインを保つのが大変でした。
1番苦労したのが会話ウィンドウで、1~2週間ほど難航していて、どういうものがゲームに合うのだろうと悩み、何度もリテイクを受けながら現在のバージョンに落ち着きました。これが指針となって、それを軸にほかのUIも制作しています。
井戸氏: キャラクターですと、デザインが上がったものを3Dとして作るのですが、何もテクスチャを貼っていない状態で社長や先輩方に見ていただき、大きさのチェックをしてもらいます。これでOKをもらったあとはテクスチャを貼って色などを確認してもらい、つぎに骨格を作ります。この骨格もチェックで通らないとリテイクとなり……といった感じで、1つのキャラクターを作るのに何度もやり直す、ということは多かったですね。作業は大変ですが、骨格の仕組みのような知らないことを勉強できているのでありがたいです。
それと、苦労というよりは悲しい話がありまして……。「エグリア」の開発当初、主人公だけができていて、まだモンスターがいなかったとき、フィールド上に敵がいないので、何を出そうかという話があったんです。僕が初めて担当した「アロエちゃん」という我が子のようなキャラクターがいるのですが、ある日、会議室で「エグリア」を動かしているときに、そのアロエちゃんがバトルフィールドにいたんですね。それを主人公が倒していて……。
門元氏: わざわざお願いしてダメージモーションを作ってもらいました(笑)。
井戸氏: そうなんですよ。ちゃんと攻撃を食らうようなモーションを作ったのですが、「これ何に使うの?」と思ってたんです。そうしたら、本来バトルフィールドにいないはずのアロエちゃんが攻撃されていて(笑)。……平和に過ごすはず我が子が攻撃されているという、とても悲しくなる経験をしました。
――現場に楽しむ余裕があるというか、皆さん楽しく「エグリア」を作られているのがわかります。
亀岡氏: 僕が若いときにこういう環境だったらすごく楽しかっただろうなと思うんですよ。
一同:(笑)。
亀岡氏: 僕が若い頃に「こういう社長がいたら楽しかったろうな」という社長像を演じている、というのもあるんですけどね。
レジェンドはお父さん? 若手スタッフが語る亀岡氏の印象
――では、せっかくなので「社長の印象」も皆様にお伺いできればと。
牧野氏: 自分が「エグリア」の体験会に出たとき、社長と会って泣いている人がいて、それを見て「人を泣かせる作品を作れる人って本当にすごいな」とあらためて思いました。
井戸氏: 僕の場合、社長と父が同年代で、父は元ヤンキーなんです。結構ヤンチャで。最初は社長がどういう人なのかなと思っていたのですが、話をしているうちにもう父にしか見えなくなってしまっていました……。
仕事中に横を通るたびに「大丈夫か」、「今日は頑張ってるか」と声をかけられると「お父さんが挨拶にきた」という感じで、僕のなかで親近感が湧いてきます。そういう点では、周りの人とはだいぶ違う見方をしているかもしれません。土日にもよく会社に来るのですが、こっちの方が家にいるようで、今住んでいる自宅が学校、みたいな雰囲気でいます(笑)。
門元氏: 自分はもともと「聖剣伝説」シリーズが好きだったので、そういう点で社長はレジェンド的な方ということもあって、憧れの人でした。入社後、一緒に仕事をしてみて自分とは正反対の人だなと感じました。それは担当による部分もあるのですが、自分が理屈で作るタイプなのに対して、社長は直感で作っていくタイプの方だったんです。そういう作り方が異なる人同士が一緒に仕事をすることで、お互いの足りない部分を補いつつ「エグリア」を面白くしていける、というのが今回の開発で社長から学べました。
松本氏: 私も「聖剣伝説」シリーズを作った人であるというところで、憧れの人……入社までは雲上人という感じでしたが、実際に接してみると、ホームページなどでもわかるようにとてもフランクな方です。それでも、こうして自分と接していただいているのが不思議でしょうがないな、という感じがしています。
クリエイターとしてお仕事をされている姿を見ていると、とても情熱を持っていることがわかり、そういうところを見て自分ももっと高めていかないとな、と思っています。
佐々木氏: 私は小さいときに兄が「LOM」をプレイしているのを見て、そこで「LOM」のことを知り、自分でもプレイして……と、幼稚園や小学生の頃から憧れていました。美術学校に進んだのも、津田さんや社長の絵を見てこういう絵を描けるようになりたいと思ったからです。そこで色々と勉強して、ご縁があって入社させてもらうことができました。
入社したてのころは、社長が神のような存在で仕事するときにも浮かれていたのですが、今も社長からいただいたキャラクターデザインをテクスチャ化したり修正したりしているとすごく不思議な感覚というか、一緒に仕事できているんだな、という実感があります。今は私も3年目ということもあって気がゆるんでいるところもあったりするのですが、悩んでいることがあると相談に乗ってもらえますし、ダメになったときにちゃんと怒ってもらえて直してくださっているのがありがたいです。
亀岡氏: 若い頃にくらべたら怒らなくなりましたけどね(笑)。任天堂の方とお仕事をしていたときに「社長に怒られたら、社員が行くところなくなってしまうので怒らないでください」と言われまして、それから怒らないように気をつけています。
僕らはエンターテイナー
――ここまでお話を聞いて、皆さんが暖かい雰囲気でお仕事をされているな、というのをとても感じることができました。
亀岡氏: うちの会社は合う人、合わない人の差がすごく極端だと思います。僕はゲーム作りだけじゃなくて、エンターテイメントで「人を楽しませたい」と思う人しか来てほしくないんです。だからホームページやFacebookもふざけたような感じになっています。
「人を楽しませる」というのはとても難しいと思うんですよ。そういうこともあって、仕事以外でも社内イベントとかを色々とやらせているんですけど、ああいうのはどうなのかな、と社員に聞いてみたくはありますね(笑)。
――今聞いてみましょうか(笑)。井戸さんはいかがですか?
井戸氏: ひとつ不安があるとすれば、拡散力がものすごいというところでしょうか。「あいつが面白くなっているぞ」みたいな感じでFacebookに掲載されると、それを親や友達が知ることになるんですよね。
そうするとLINEとかでメッセージがどんどん飛んできて「お前女装のコスプレしてただろう」みたいな感じですぐに反応が来たり……。1回あるとそれがずっとつづくので、それだけが怖いなと(笑)。僕としては面白いからいいのですが。
亀岡氏: 人を楽しませてナンボじゃない。エンターテイナーだから、僕らは(笑)。ゲーム開発者というだけではないからね。
井戸氏: 親が見ているというのがちょっと(笑)。
亀岡氏: こっちだよ、ドキドキなのは。くあぞー(佐々木さん)なんて母親から連絡がバンバン来るんだから(笑)。
井戸氏: お土産が届きますよね。
――親御さんからも反応があるんですね。
亀岡氏: いやあ、ドキドキしますけどね(笑)。でも、親御さんも僕と同い年ぐらいだと考えればこのノリにもついていけるんだろうなと。
――今日の座談会はベテランと若手の意見の応酬、みたいな形になるかとも思ったのですが、想像以上にチーム一体となって和気あいあいと進行していますね。大家族みたいな雰囲気があります。
亀岡氏: 今回の座談会にはそんなにパワーのある女子が出ていないのですが、ウチは女子が強いんです。
――ちなみになんですが、先程から飛び交っているあだ名は亀岡さんが付けているのですか?
津田氏: 持ち寄り的な感じです。ダンディ(門元氏)なんて自分から「ダンディ」を名乗りましたからね!
門元氏: 高校の時のあだ名がダンディだったので……(笑)。
――それをそのまま呼んでしまう亀岡さんも面白いですね。
亀岡氏: そういうのをFacebookに書いておくと、うちに来る新人さんとかがFacebookをあらかじめ見ているからすぐにわかるんですよ。「あっ、アイドゥさんだ」とか「くあぞーさんだ」とか、もう知っている感じで接してくれるので、そういうのはいい効果ですね。あと、世間では「あだ名で呼ぶのはパワハラだ」みたいな風潮がありますが、そういうの大キライなのであえて逆行してやってやろうかなと(笑)。
井戸氏: たまに本名を忘れますよね。
亀岡氏: そうそう。それがよくないんですよ……。名字なんだっけなと。「くあぞー」とか本名に関連がなくてわからないですからね。
津田氏: ほかにも、「お母さん」と呼ばれている男性プログラマーがいたりしますね。
――亀岡さんはどういうあだ名なんですか?
津田氏: 亀さん(亀岡氏)は「Tシャツ社長」ですね。一時期、練乳ばかり10本ぐらい買ってきたことで「練乳社長」とかになったりもしましたが。
――「Tシャツ社長」は聞いたことがあります。
津田氏: 糸井さん(糸井重里氏)から付けられたんですよ。名前を覚えられず「Tシャツ社長」って呼ばれつづけて、それが定着したんですよね。
――なるほど、確かにこのような雰囲気だと、「お父さん」という気分になってくるのもわかる気がしますね(笑)。
スタッフが語る「エグリア」おすすめポイントはここ!
――最後となりますが、それぞれの担当の方から、「エグリア」のおすすめポイントを教えていただけますか。
牧野氏: 2年かかっていることもあって、操作感はプログラマー、プランナー、デザイナーの方々の意見を採り入れてより良いものになっていると思います。家具を設置して部屋をカスタマイズする、という要素があるのですが、UIの作り直しも含めて操作感を突き詰めているので、すごく触り心地はよくなっていると思います。
井戸氏: ゲーム的には戦闘を避けて素材を集めることもできるようになっていますが、モンスター1体ずつに「やり過ぎだ」と言われるぐらいにちゃんと動きを付けているので、1度はそれを味わってほしいです。あとは、アロエちゃんが僕の最初の娘なので、それを見てもらえるとうれしいです。
門元氏: バトルなどを担当させてもらって、プランナーと「こういうものがあったら面白いよね」というやり取りを結構がっつりと話して、自分でも「こんな要素があるといいのでは」と思ったものを提案して、それが実際に入って面白くなっています。
精霊やスキルの部分を中心に楽しんでもらいたいですね。それから、プログラマーとしては読み込み時間をまだまだ詰めたいなと思っているので、リリース後はより快適に遊ぶことができるようにしていく予定です。
松本氏: まずはタウンにいるキャラクターたちに話しかけてほしいです。好感度のようなものがあり、それが高くなっていくとセリフが変わったり、何かがもらえることもあるので、クエストが終わるたびに話しかけて細かくチェックしてもらえるとうれしいです。
佐々木氏: UIは色々と凝っているので見て欲しいところですが、何よりもプレーヤーさんへの挑戦として、ぜひ図鑑をコンプリートしてほしいなというのがあります。自分でプレイしていても思うのですが、コンプリートはかなり大変だと思うので、隅々までじっくり遊んでいただきたいです。また、図鑑はテキストも面白いので、そちらも楽しんでください。
津田氏: 自分もデバッグのためにテストプレイをたくさんやりましたが、仕事を忘れるぐらいに色々なやりこみ要素があるので、そこを楽しんでほしいです。自分は背景をやらせてもらって、亀さんからもらった「美味しい色で描いてね」という注文もいい感じの色合いで出せたと思うので、それも見てもらえたらと思います。
亀岡氏: 「LOM」も「マジバケ」も、遊んでくれた人がどっぷりとその世界の住人となって浸れた作品だと思っています。「エグリア」でも特にこの世界の雰囲気が味わえるように創ったつもりです。忙しい日常で疲れた心が、家に帰ってきて「エグリア」の世界を味わうことにより少しでも安らぎを得られればいいかなと思います。ぜひとも心が疲れたときは「エグリア」に帰ってきてください!
――ありがとうございました!
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