【特別企画】
新感覚の謎解き"紙ゲー"「紙謎 未来からの想いで」インプレッション
Switchと手元の"紙"をリンクさせて謎を解く新感覚のアドベンチャー
2019年11月27日 00:00
- 11月28日発売予定
- 価格:2,480円(税込)
- CEROレーティング:A(全年齢対象)
ディライトワークスのインディーゲームレーベル「ディライトワークス インディーズ」よりまもなく発売を迎えるNintendo Switch用タイトル「紙謎 未来からの想いで(以下、紙謎)」は、Switchに表示されるゲーム画面と手元に用意した全32枚の紙=“謎用紙”をリンクさせて謎を解いていく、今までにないタイプのゲームだ。ジャンルとしてはアドベンチャーゲームということになるのだが、発売元のディライトワークスは「謎解き"紙ゲー"」と謳っている。
今回は発売に先駆けて本作をプレイすることができたので、デジタルのゲームとアナログの謎解きが融合した、文字通りの"手触り"をお伝えする。
「謎解き紙ゲー」という新たなジャンル
主人公は海が見える家で暮らす、トキオという青年。折り鶴を作るのが得意で、時間があれば紙を折っている。そんな彼のもとに、差出人不明の一通の手紙が届くところから物語ははじまる。封筒のなかに入っていたのは、古い写真。そこには幼いトキオとともに、見知らぬ、いや、知っているはずなのに記憶にない少女が写っていた。
トキオが当時の記憶に思いを巡らそうとしたそのときから、家のなかにいたはずのトキオは彼自身の意識のなかを、ミライという名の写真の少女とともに旅をすることになる。次々と現われる、幼い記憶の一場面。それを覆い隠す謎をひとつひとつ解き明かしていくことで、トキオは少しずつ、封印された記憶を取り戻していくのである。
なぜトキオはミライに関する記憶を失っていたのか? そしてミライとはどういう少女であり、2人はどんな関係なのか? めばち氏が淡いタッチで描くイラストとともに語られていく物語も興味深いが、それ以上にプレーヤーを惹きつけるのが、“謎用紙”を使う、謎解きの過程だ。
あらかじめ絵や図などが書き込まれた謎用紙は、それだけを見てもまったく意味がわからない。しかし、Switchの画面で描かれる風景を読み解き、切ったり、折ったり、並べ替えたり、書き込んだりをすることで、意味をなす何かが現われる。もちろん、ゲーム画面のなかでも同様に、ものを動かしたり、視線の方向を変えたりといった謎を解くための操作が不可欠だ。
ゲーム画面と謎用紙。どちらが欠けても謎を解くこと、物語を進めることは不可能である。画面で提示される場面を読み解き、さらにそれを謎用紙と照らし合わせることで、先に進んだり、記憶の封印を解くための“呪文”が導き出される。呪文に使われる文字は、上、下、左、右、A、B、X、Yと8つのキーに対応している。つまり、8文字の組み合わせなうえ、その場面で求められているのが全何文字なのかはわからない。適当に入力して当たるものではないのは言うまでもないだろう。
驚かされる謎用紙の多彩な用いられ方
前述のように、本作の謎を解くためには、謎用紙を切るためのハサミ、それと書き込みを行なう筆記用具が必須だ。筆記用具はなんでもかまわないが、できれば消せるもののほうがいいかもしれない。試行錯誤を重ねる際に線を誤って引いてしまったり、間違ったメモをしてしまうことがあるからだ。
さて、その肝心の謎用紙は「紙謎」の公式サイトから申し込むと、全20ステージ分、32枚を郵送で送ってもらうことができる。届くまでに2~3営業日がかかってしまうが、送料は無料。また、同じく公式サイトではPDF形式で謎用紙が配布されている。これをダウンロードして、自宅のプリンター、あるいはコンビニのマルチコピー機でプリントアウトするのもひとつの手だ。
ちなみに本作はNintendo Switch/PC(Steam)でリリースされている「マドリカ不動産」や、VRボードゲーム「間取りのかるたVR」、「モニャイの仮面」を代表作とするギフトテンインダストリにより、インディー作品として考案されたものだという。しかし、少人数で作るインディー作品のままでは謎の数や難度、そのバリエーションには自ずと限界がある。そこで発売元のディライトワークスが協力し、体験型謎解きゲームのクリエイター陣に謎の制作を依頼し、完成させたのだそうだ。
その成果は顕著だ。折り鶴を作るように謎用紙を複雑に折ったり、ゲーム画面と一致するように切り抜いた紙を並べ替えたり、あるいは謎用紙に印刷された点を正しい順番を線で結んだり。ステージごと、さらには用意された謎ごとに、謎用紙の用いられ方はまったく違うし、どうすればいいかを理解するまでさえも、一筋縄ではいかない。謎ごとにまったく違う頭の使い方が求められるのだ。
いずれにせよ、手に触れる紙をいじることで謎を解いていくアナログな感覚は、非常に新鮮。ディライトワークスが新たなジャンルを標榜するのもよくわかる。ステージを進めるごとに謎の難度は確実に上がり、悩み、考える時間は増えていく。しかし、悩みが深いほど、解いたときの達成感はどんどん増していく。この快感は、かなりクセになる。
試遊の際は1時間半ほどかけて筆者と担当編集者とともにステージ4までをクリアしたのだが、ステージ3まではあくまでもチュートリアル。本格的な謎解きはステージ4からとなるが、ここまで遊んで、2人とも本作の購入を決めた。それくらい、気づけば時間の経過も忘れて夢中になっていた。
2人で遊んだのも結果的には大正解だった。筆者と担当編集とで先に答えにたどり着く謎が違っていたり、2人で話し合うことで正解に至ることもあった。どちらか1人では同じ場面まで進むのにもっと多くの時間を要したであろうことは間違いない。
無料でチュートリアル部分を体験できるWeb体験版配信中!是非1度プレイを
ここまで書いておいて今更だが、申し訳ないことに、この記事で本作「紙謎」のおもしろさを上手く伝えきった自信があまりない。せめて興味と期待を抱いてもらえるよう、努力はしたつもりだ。
というのも、この「紙謎」は、今までのゲームとは全く異なるプレイ感のタイトルで、プレイから得られる楽しさや興奮は、主にその“違い”に根ざしている。だからなのか、本作をプレイして感じたおもしろさと興奮は、鮮烈さの度合いにおいても、事前に得た情報から想像していたものとはちょっと違っていた。曰く、発売元のディライトワークスの担当者も製品を告知するリリースを作るのに随分苦労したという。たぶん、筆者と同じような、ある種の戸惑いを感じていたのだと思う。
本気で「ここがおもしろかった」と伝えようと思うと、この作品で解くことを求められる“謎”について、どうしても直接的に言及したくなる。それほどに正解を見出せたとき、そのロジックに感じるダイナミズムは強烈なのだ。しかし、伝える側としては、もう最初の最初、Webで公開されている体験版の部分であろうとも、ぜひ「自分で解いて欲しい」とも思う。伝えたいが、触れたくない。そんな逡巡があったのである。
そう、幸いなことにこのゲームはWebでステージ1までを体験版として遊ぶことができる。解くために必要な謎用紙も前述のように公式サイトから入手することが可能だ。もし本作に興味と期待を抱いたなら、是非公式ページにあるWeb体験版にチャレンジしてみてほしい。
「紙謎」は手放しですべての人が楽しめるゲームであるとは言えない。ゲーム中、自分が置かれた状況の描写がわかりづらいことがあるなど、若干の難もある。しかし、この体験版が楽しめたなら、おそらくはそれ以降も同様、あるいはそれ以上に夢中になってプレイできるはず。ステージ4以降、謎が解けたときの快感は大きく増していくし、何より体験版は無音だ。製品版ではトキオとミライの声をはじめとする「音」、さらに映像の「動き」があるだけで、没入感は大きく変わる。
ちなみに、筆者はタカラッシュという会社が日本全国の企業や自治体と組んで展開している「リアル宝探し」の大ファンだ。本作「紙謎」の謎を解くために求められる発想は、タカラッシュの宝探しで求められるものとかなり似ている部分がある。筆者と同様にタカラッシュのファンであったり、また、リアル脱出ゲームなどを好む人にとって、「紙謎」のおもしろさはかなり刺さるはず。
ただ、ゲーム本編を遊ぶ際は、できれば1人ではなく、筆者のように、誰かといっしょににプレイを進めてみて欲しい。LINEなど、チャットをしながら離れた場所にいる人とでもいいだろう。とにかく誰かと足並みを揃え、同時にゲームを進めていって欲しいのだ。解けない“壁”にぶつかったときに、複数の視点があったほうが正解を得やすいのはもちろん、何より誰かとともに悩み、クリアできたときに共有できる喜びの大きさは、また格別なのだ。
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