【特別企画】

「おもちゃのまちバンダイミュージアム」内覧会レポート

超合金、電子ゲーム、昭和から最新、さらにアンティークまで玩具が大集合!

場所:栃木県下都賀郡壬生町おもちゃのまち3-6-20

営業時間:10:00~16:30(入館は16:00まで)

休館日:毎週水曜日、年末年始(※祝日・GW・お盆休みの水曜日は営業)

入館料:大人1,000円(税込)/子供600円(税込)

 栃木県のおもちゃのまちにある「おもちゃのまちバンダイミュージアム」をご存じだろうか。日本が高度成長期にあった1960年代から1970年代にかけて、玩具の製造工場と工業団地が成形された栃木県下都賀郡の「おもちゃのまち」に設立された、バンダイが運営するおもちゃをテーマとした博物館だ。

 2007年に現在の場所へと移転し、各所から集めた35,000点のコレクションの中から厳選した国内外の新旧おもちゃをテーマ別に展示。見て楽しむだけでなく、参加して楽しむコーナーなどもあり、親子の世代で楽しめる施設である。そしてもうひとつ、意外な見どころとして、希代の発明家トーマス・エジソンの発明品の実物を展示した「エジソンミュージアム」にも注目だ。

 そんなおもちゃのまちバンダイミュージアムのメディア向け内覧会が、この夏休みを控えた7月18日に行なわれた。展示内容の紹介のほか、普段は入ることのできないコレクションの保管室の内部なども披露されたので、そのレポートをお届けしていきたい。

「おもちゃのまちバンダイミュージアム」外観。外には蒸気自動車とヒーローの銅像が
蒸気自動車「ペンデルプリンセス号」。国内唯一の現存する蒸気自動車だ
キャラクターロボット玩具発祥の地を記念する銅像。アバレッド、仮面ライダー1号、アカレンジャーが並ぶ

 北関東自動車道壬生インターより5分、東武宇都宮線「おもちゃのまち駅」から徒歩10分の立地に設けられたおもちゃのまちバンダイミュージアム。エントランスから入ると、巨大な1/1スケールのガンダムがお出迎えをしてくれる。約5.6mの巨大な胸像で、前を通り過ぎると時折顔が左右に動くのでチェックしてみたい。

エントランスの中央で来場者を迎える1/1スケールのガンダム胸像。台場にあったものよりもアニメテイストが強い造形だ

あらゆる世代の子供達が楽しんだおもちゃが並ぶ「ジャパントイミュージアム」

 館内はいくつかのエリアにわかれていて、カテゴリー別におもちゃが展示されている。まずは「ジャパントイミュージアム」から紹介していこう。ここはその名の通り、日本産の新旧おもちゃを展示したゾーンで、高度成長期に登場したレトロなものから、バンダイが得意とするヒーローやロボットもの、ゲーム、そして女の子向けのものなど、多彩な展示物が並び、必ず自分が持っていたものや欲しかったものがあるはず。

 1つ面白いのは、展示されているおもちゃのメーカーはバンダイの製品に限らないということ。特に最初の「懐かしのレトロ玩具ゾーン」には、各社を代表する名作おもちゃが展示されていて、その歴史を知ることもできるだろう。ちなみにこれらの展示品は、問屋に補完されていたものを引き取ったものだそうだ。

その入口にあるのが、ポピーブランドから発売された、「超金属 鉄人28号」(太陽の使者版)。「超合金」が亜鉛ダイキャストだったのに対し、こちらは装甲を鉄の板で成型したもの
「懐かしのレトロ玩具ゾーン」。ブリキのおもちゃをはじめとする、1950年代頃からの歴史あるおもちゃを展示
金属板を加工してメッキをかけて製造するブリキのおもちゃ。ゼンマイで動くものもある
1955年の萬代屋(現バンダイ)製の「トヨペットクラウン」は、業界初の品質保証玩具で、壊れたら直してもらえたという
飛行機や電車のおもちゃもブリキでできたもの。電車はレールが付属している
日本初のプラモデル「潜水艦ノーチラス号」(上段右)や、初代「プラレール」(下段)も

 「男の子のおもちゃとキャラクターヒーローたち」のゾーンでは、今のバンダイが得意とするキャラクターのおもちゃが多数展示されている。「仮面ライダー」、「ウルトラマン」、「メタルヒーロー」、「ゴジラ」、コミック原作ものなど、1970年代から現在までの幅広いラインナップが揃えてあり、男の子ならばどの世代でもワクワクするはず。また「超合金」や「ポピニカ」、「ジャンボマシンダー」などの、一時代を築いた人気シリーズもここで見られる。

昭和と平成の時代で活躍した仮面ライダー達。ソフビ人形やアクションフィギュアなどが勢揃い
なりきり玩具の先駆けとなる、仮面ライダーの変身ベルトとそれに付随するシリーズ
仮面ライダーよりも歴史の古いウルトラマンのおもちゃ達。ソフビ人形が定番だ
ウルトラ怪獣のソフビ人形は、巨大な「ウルトラ怪獣タワー」として展示されていた
「宇宙刑事」シリーズから派生した、メタルヒーローのシリーズ。今も根強いファンが存在している
「ゴジラ」や「ガメラ」など、怪獣映画のコーナー。ずらりと並ぶ歴代ゴジラは見ていて楽しい
亜鉛ダイキャストでずっしり重い「超合金」。その第1号「マジンガーZ」は、現在本社に貸出中とのこと
超合金の複数のメカが合体するシリーズは、昭和の男の子垂涎のアイテムだった
超合金とともに男の子が欲しかったおもちゃ「ジャンボマシンダー」。ブロー成形の大型人形だ
「オバケのQ太郎」や「ゲゲゲの鬼太郎」、そして現在は「妖怪ウォッチ」と、妖怪作品も商品は多い
「ドラゴンボール」、「キン肉マン」、「ワンピース」など、アニメ化されたコミック原作のコーナー
現在も「聖闘士聖衣神話(セイントクロスマイス)」として展開される「セイントクロス」シリーズ。日本はもちろん、ヨーロッパで大人気だそうだ
おもちゃから派生した新旧のテレビゲーム達。バンダイが発売した「TV JACK 1200」や「アルカディア」なども展示されている
1980年前後にテレビゲーム以前のおもちゃとしてブームとなったLSIゲーム。見ているだけでも楽しい

 「女の子のおもちゃとキャラクターヒロインたち」のゾーンには、女の子達が慣れ親しんだおもちゃが勢揃いしている。古くはセルロイド製の人形から、ぬいぐるみ、ごっこ遊び用のおもちゃ、キャラクター人形などが揃う。商品の多くがピンクや白を基調とした色味なのも特徴的だ。

ファンシーな色使いの女の子向けのおもちゃ。なりきり玩具も多数存在
もちろん、アニメやコミック原作のおもちゃも多数。上段は懐かしい東映の「不思議コメディー」のシリーズ
今はほとんど見られなくなったセルロイド製人形や、キャンディーズやピンクレディーなど芸能人をモチーフにしたおもちゃも
アサヒ玩具の「ママシリーズ」を筆頭とした、料理や裁縫などの大人へのあこがれを体験できるおもちゃ達

世界のビンテージおもちゃが並ぶ「ワールドトイミュージアム」

 こちらは世界で発売された、国内のおもちゃよりも古い世代のアイテムが多数展示されて「ワールドトイミュージアム」。1900年代前半以降のかなり古いもので、ロンドンの博物館に収蔵されていたものを集めたものだという。主にドイツ製やイギリス製のもので、どちらかというと富裕層が手にしていたものがほとんど。大型で精巧に作られているものが多く見られる。

入口に鎮座する「キャデラック・オープンカー」は、キャデラック社からタイ国王に贈られたペダルカーだ
乗り物や人形などが中心で、キャラクターものはほとんど見られない
ブリキやダイキャストを使ったミニカーの数々
インテリアとしての存在感を持った超大型のおもちゃも。右のメリーゴーランドは可動する
館内で最も古いウッドゥン・ドールは、18世紀半ばの1750年前後のイギリス製のものだ
1880年代に作られたという、ノアの箱舟をモチーフとしたおもちゃ。つがいの動物たちの人形が揃っている
26代大統領セオドア・ルーズベルトの美談からその名を取ったテディベア。左にはルーズベルトの人形も

ガンプラをはじめとしたプラモデルの展示ゾーン「ホビーミュージアム」

 バンダイといえば、プラモデルの存在も欠かすことはできない。「機動戦士ガンダム」をプラモデル化したガンプラを中心とした展示ゾーンが「ホビーミュージアム」だ。1/144スケールのホワイトベースのジオラマや、富野由悠季氏が手がけた造形作品「ZAKUの夢」など、他では見られない特別な展示物が目玉となっている

展示量はそれほど多くないが、ガンプラを中心としたプラモデルのラインナップが並ぶ
1/144スケールのホワイトベース。鉄道模型のスケールとも近く、下には線路が走る背景も。右手前に見えるホワイトベースは1/400スケール
富野由悠季氏自らが手がけた造形作品「ZAKUの夢」。ガンダムのブロンズ像を中心に、全高1.5mの12体のザクが主役の作品だ
ガンダムのブロンズ像は、上井草に設置されたガンダム像の成形を失敗したものをリサイクルしたものだそうだ

ミュージアム入り口のエントランスにも楽しめる展示が多数

 1/1ガンダム胸像を中心としたエントランスにも、見応えのある展示物が存在している。「合体ロボットエリア」には、東映の「スーパー戦隊」シリーズに登場したメカやロボットのおもちゃが並ぶ「スーパー戦隊シリーズ歴代合体ロボタワー」を設置。世代ごとに楽しむのはもちろん、戦隊のモチーフが現われたロボットの比較も面白い。

 もうひとつ目を引くのは、19世紀の炭鉱街の1日をテーマに作られたジオラマ「モデル・コールマイン」だ。1904年から1922年にかけて、イギリスのフェルペス夫妻が手作りで製作した巨大なジオラマで、合計170体の人形や機械などがたった3つのモーターによって制御されて動いている。表側は街並み、裏側は炭鉱の内部となっている。

「スーパー戦隊シリーズ歴代合体ロボタワー」。スーパー戦隊シリーズ44年の登場メカがタワー状に並べられている
ショーケースには変身アイテムやフィギュアも展示。最上段にあるパネルには、スーパー戦隊シリーズの豆知識が書かれている
18年の歳月をかけて作られた「モデル・コールマイン」。15分ごとに一定時間動く様子を見られる
1900年代前半の貴重なアーケードゲームは、なんと実際にプレイができる。受付で借りたメダル(有料)で遊ぶのだ
現役(!?)のお子様たちがおもちゃで遊べる「プレイエリア」。ファミコンゲームを遊ぶコーナーも併設
記念撮影用のコスチュームやおもちゃの貸出コーナーもある

 そしてこの博物館のもう1つの目玉となるのが「エジソンミュージアム」だ。アメリカの発明家トーマス・アルバ・エジソンが発明した発明品の実物を、エジソンの軌跡とともに展示しているゾーンとなっている。

 バンダイとエジソンの関係を不思議に思う人もいるかもしれないが、このおもちゃのまちバンダイミュージアムの前館長で、このゾーンでガイド役を務めている金井正雄氏は次のように説明する。

おもちゃのまちバンダイミュージアム 顧問 金井正雄氏。団体向けにこのように壇上で解説をすることもあるそうだ

 アメリカの弁護士でエジソン研究家のヘンリー幸田氏という物と知り合ったときに、「エジソンが作った発明品の実物を子供達に見てもらうために、バンダイさん何とかしてもらえないか」と口説かれたことがなれそめだという。幸田氏はそのために自分のエジソンコレクションの一部をバンダイに譲り、バンダイは同館にエジソンミュージアムを設立し、その功績や人間性、そして科学の面白さを来場者に伝えている。

 同館ではエジソンの発明品を3,000点以上収蔵し、常時400点以上をこのゾーンに展示している。その多くはエジソンが発明した実物で、しかもほとんどが実際に可動する。内覧会当日も「ターンオーバートースター」を使って実際に焼いたパンを来場者にふるまい、蓄音機「ダイヤモンドディスク A-100型」でレコードに吹き込まれたエジソンの肉声を再生してみせた。

現在も使える「ターンオーバートースター」。片面ずつ2枚を焼け、蓋を開けるとパンがひっくり返るという仕組みも
蓄音機とレコード。当時のレコード盤が厚いのは、音が記憶された溝が縦に刻まれるのが理由だそうだ

 おもちゃとエジソンという意外な組み合わせだったが、発想や創造という根底の部分は繋がっていて、おもちゃの展示を楽しんだ人なら、エジソンミュージアムも必ず楽しめるかと思う。金井氏によるガイドは主に団体向けだが、スタッフがいれば個人の質問などにも答えてくれるとのことなので、ぜひ楽しんでみよう。

レトロな雰囲気が漂う「エジソンミュージアム」の一角
展示品は基本的に実物。今も身の回りにあるものが、彼の発明品だったりする
コレクションのメンテナンス用に、ジャンクパーツも保存している

 このおもちゃのまちバンダイミュージアムに収蔵されているのは、展示されているものが全てではなく、多くのものは館内及び別館の保管室に保存されている。展示の入れ替えの他に、博物館や学校など、公的な機関に限ってイベントなどに貸し出すこともあるそうだ。

展示していないコレクションの保管室。厳重に管理されている
当日もイベント向けにに貸し出す収蔵品が整理されていた
こちらはエジソンミュージアムの収蔵品の数々

 単に懐かしいだけでなく、おもちゃの歴史や進化などを細かな解説のもとに楽しめるこの博物館。解説文などは手作りのものなどがあり、暖かみを感じられるのも好感触だった。またエジソンミュージアムも、おもちゃと同様に発明品の実物を見られるのは貴重だ。7月20日から8月31日までは「らくがきたんけんたい」という、白い壁に自由にラクガキができるイベントも行なわれている。ぜひこの夏休みに親子や友達同士で遊びに行ってみることをオススメする。

おもちゃのまちバンダイミュージアム現館長の鈴木勝氏(左)と、前館長の金井氏