【特別企画】

マウス、飯山工場で未発表の13.3インチゲーミングノートPCや同社初の“赤いノートPC”を発見! マウスコンピューター飯山工場レポート

6月19日開催

会場:マウスコンピューター飯山工場

 本誌読者には「G-Tune」でおなじみのマウスコンピューターだが、その工場は長野県飯山市にあることをご存じだろうか。デスクトップだけでなくノートを含めて、BTOで生産されるPCはここで作られている。「Build to Order」の文字の通り、顧客の注文に応じてパソコンを作るわけだから、現場はさぞかし大変だろうと思っていたのだが、そこには質の高い製品を作る努力と工程の工夫が一杯つまっていた。今回はそんな工場内をご紹介しながら、マウスコンピューターのモノ作りについてご紹介していければと思う。

飯山工場を上から見たところ

1人1台の“セル方式”で生産されているPC

 飯山工場はもともとディスプレイを生産していた工場で、生産ラインが2階建てで作られていたこともあり、天井はかなり高い。ディスプレイの製造は近くの別工場に移転しており、ここにはPCの製造部門として第1から第3までの3工場が設けられている。このほか長野と須坂に協力工場が存在する。

 飯山工場が扱っているパーツは1,000アイテム程度の量があり、それぞれが組み合わさるわけなので、数万通りの組み合わせになる。それだけの複雑な工程をしっかりと管理しつつ品質のよい製品を作り出すために、さまざまな試みがなされている。

 まず挙げられるのが、部品が搬入されてから作られる受入検査表。“不動在庫”と呼ばれるようなムダなパーツを置いておく余裕はないので、すべてをシリアル番号で管理している。このほか、開発部隊がテスト用に発注しているパーツもあるので、行き先がよく分からないものは黄色、不要なものは赤色のラップで巻いて管理しているそうだ。前は開発部隊は東京にいたので、不明なパーツを問い合わせ、その返事が返ってくるまで1日半くらいかかっていた。これはムダだということで、今では開発部隊は飯山に置かれている。

赤と黄色のラップと、その下にあるのがシリアル管理するもの。男性は案内してくれた飯山工場 工場長 松本一成氏
搬入されてきたパーツたち。右の緑の箱にはASRockの文字が見える。マザーボードだ

 BTOで注文されたPCは注文書で管理され、そこには取り付けるべきパーツが書かれている。その種類は千差万別なので、注文が入った曜日ごとに色分けして管理している。ノートPCは3営業日、デエスクトップPCは4営業日での出荷となっているが、2,000円追加すると翌営業日での出荷が可能だ。

 生産は“セル方式”と呼ばれるやり方で作られており、1台のPCを1人の人が責任持って作り上げている。ただしそうすると人によって熟練度が異なってしまい、ケーブルの配置が上手でなかったりと、品質にばらつきが出てしまう。これを防ぐためにもローテーションをして、いろいろな製品に触れるようにしているとのことだ。

色分けして整理されている注文書
ここにはCPUが置かれて管理されている
RYZENのロゴが目立つが、その右に置かれていたのはCore i9-9900Kだった

何回ものチェックを経て出荷されるPC

 PCだが、パーツをひとつの箱に集めて、それを組み立てることで製造されている。PCを自作した経験のある人なら分かると思うが、そのやり方はまさに自作と同じだ。パーツは先ほどのシリアルで管理されているので、バーコードを読み取りながら、部品が間違っていないかを確認して取り付けていく。

 こうして作られていくPCだが、コネクタはちゃんと取り付けられているか、ネジはしっかりと止められているかなど、しっかりと作られているのか全数チェックされる。それだけではなく、ユーザーの手元に届いてから壊れたりしないか、数時間のストレスチェックを経て製品は出荷されている。「DAIV」など、クリエイター向けのPCでは、Adobe RGBにしっかりと適合しているかのチェックも行なわれる。

ここは第1工場。ここでPCが作られている
この箱1つ1つに、作り上げるべきパーツが集約される
1つ1つのパーツをチェックしながら取り付け。工員さんがキビキビと作業している
内部を確認して、取りつえの間違いなどがないかチェックする
Officeなどのソフトはサーバから自動でインストールされるが、こちらについてもチェックをかけている
Adobe RGBの評価は暗室で行う
ストレスチェック中のマシン。グラフなどが高速で表示されていた

 何回もの行程を経たPCは箱詰めされ、いよいよ出荷となる。箱にも注文書のIDが割り振られていて、間違いのないように設計されている。

箱詰めの行程
箱に割り当てられているID
中箱にもIDが打たれている

 こうして出荷を迎える製品たちだが、実はまだ終わりではない。この中から7%ほどの製品を抜き取り検査する(ちなみに普通のメーカーだと3%程度とのこと)。その上でエラーが出たら生産部門にフィードバックされる。なお先ほどお伝えしたように、1人がすべてを作るセル方式なので、エラーが出た場合はその人が作ったPCすべてを確認検査するのだという。製品のクオリティには妥協しないという同社の姿勢だ。

無事出荷となった製品たち
ここで抜き取り検査を行っている

 生産ラインでのチェックのほか、同社ではさまざまな環境にPCをさらしてチェックを行っている。-30度から80度まで温度を変えてチェックできる恒温槽や、振動を与えて製品が壊れないかテストしたり、40度の温度にさらしてディスプレイの劣化を見ていたりするそうだ。

 また最近加わったテストとして騒音レベルのチェックが挙げられる。これは冷却のためにファンが回ることで発生する音を試すというもの。

ここが恒温槽
振動試験機。ちなみにこれは30年もので、今はなき三洋電機から受け継いだのだとか
ディスプレイの劣化を見る長期ライフ試験室。ディスプレイはある意味PCよりも寿命が長いので、7年も入れっぱなしでチェックしている製品があるとのこと
マウスコンピューターの品質を守るためのスローガン
QCについては日々報告され、改善されている

ユーザーの声を反映して改善に取り組む

 工場見学終了後には現在開発中の新製品に関してプレス向けのレクチャーも行なわれた。同社の開発本部としてのミッションについては、製品企画部の今村究氏から話があった。

 企画開発部門としては、市場ニーズに適合し、日本品質、新規性、高コストパフォーマンスを兼ね備えた製品を開発することがミッション。このためにさまざまな商品が開発され、市場に送り出されている。そして同社のロードマップについては、2020年前半まではすでに策定済なのだという。

マウスコンピューター製品企画部 今村究氏

 これからの取り組みとして考えられているのは、まずノートPCのナローベゼル化。昨年の11月に発売された製品から行われているが、画面占有率80%以上のPCがこれからのトレンドとのこと。加えてゲーマーやクリエイター向けのノートPCでは、リフレッシュレート240Hzで、有機ELディスプレイを採用したモデルを発売していく計画だ。

 またユーザーからはキーボードに対する不満がかなり寄せられたそうだ。こうしたパーツは中国で作られることが多く、日本語で使う場合には文字の配列がおかしかったり、キーが小さくて打ちづらいといった声が上がっていた。この点については2019年後半から新設計のキーボードを導入していくとのことだ。

マウスコンピューターが取り組んだのにあまり伝わっていない改善点の1つとして紹介されたのが、内部ケーブルのカラーを黒に統一したこと。これによりゲーミングPCで使っているLEDの色が映えるようになった

 また近年の課題について今村氏は発熱と騒音と性能低下を挙げる。これは今までよりも高クロック、高コア化されたCPUやGPUはTDP(Thermal Disign Power:熱設計電力)も高くなり、高性能を維持するためには、ここを克服することが課題となっているからだ。そのためにも冷却部品を選定して組み立て、できあがったマシンをテスト。温度を測るとともに、高負荷状態での騒音値を計測していく。こうした取り組みが、合格基準に達成するまで繰り返し行われるのだ。これをすべて満たしてようやく完成品となる。

シークレットマシンが登場!13インチのゲーミングPC

 そして、今後発売される予定として、13.3インチのディスプレイを持つゲーミングノートPCが公開された。CPUはCore i7-8709G、GPUとしてRadeon RX Vega M GHを搭載するというもの。インテルとAMDのパーツを使うところがなんとも言えないが、インテルによるとCore i7-8709Gを使ったのは初めてのケースなのだとか。

 今や13.3インチのゲーミングPCが世の中から消えてしまったので、このサイズのマシンを希望する声が、特にゲーム開発者から多かったのだそうだ。発売時期などは未定だが、軽いゲームであれば十分に遊べそうなので、早くテストしてみたい気がする。

こちらが新型の「NEXTGEAR-NOTE」メモリは最大16GB、M.2 SSDはNVMe対応のものが512GB搭載できる。サイズは約307×215×19.8mm。重さは約1.6kg
キーボードはこのような感じ
右サイドにはTypeCのUSBポートとHDMIコネクタが見える
左サイドは電源コネクタとUSBポート、ヘッドフォンジャックがある
底面。左右に2つのファンが搭載されている
なおこのほかAMDのPicasso APUを搭載する「赤いノートPC」を計画していることも明らかになった。ベンチマークテストの詳しい数値は公開されなかったが、「Fire Strile」のテストではCore i5-8265Uよりも倍程度のビデオ性能があるとのことだ