【特別企画】
マウス、飯山工場で未発表の13.3インチゲーミングノートPCや同社初の“赤いノートPC”を発見! マウスコンピューター飯山工場レポート
2019年6月20日 19:37
- 6月19日開催
- 会場:マウスコンピューター飯山工場
本誌読者には「G-Tune」でおなじみのマウスコンピューターだが、その工場は長野県飯山市にあることをご存じだろうか。デスクトップだけでなくノートを含めて、BTOで生産されるPCはここで作られている。「Build to Order」の文字の通り、顧客の注文に応じてパソコンを作るわけだから、現場はさぞかし大変だろうと思っていたのだが、そこには質の高い製品を作る努力と工程の工夫が一杯つまっていた。今回はそんな工場内をご紹介しながら、マウスコンピューターのモノ作りについてご紹介していければと思う。
1人1台の“セル方式”で生産されているPC
飯山工場はもともとディスプレイを生産していた工場で、生産ラインが2階建てで作られていたこともあり、天井はかなり高い。ディスプレイの製造は近くの別工場に移転しており、ここにはPCの製造部門として第1から第3までの3工場が設けられている。このほか長野と須坂に協力工場が存在する。
飯山工場が扱っているパーツは1,000アイテム程度の量があり、それぞれが組み合わさるわけなので、数万通りの組み合わせになる。それだけの複雑な工程をしっかりと管理しつつ品質のよい製品を作り出すために、さまざまな試みがなされている。
まず挙げられるのが、部品が搬入されてから作られる受入検査表。“不動在庫”と呼ばれるようなムダなパーツを置いておく余裕はないので、すべてをシリアル番号で管理している。このほか、開発部隊がテスト用に発注しているパーツもあるので、行き先がよく分からないものは黄色、不要なものは赤色のラップで巻いて管理しているそうだ。前は開発部隊は東京にいたので、不明なパーツを問い合わせ、その返事が返ってくるまで1日半くらいかかっていた。これはムダだということで、今では開発部隊は飯山に置かれている。
BTOで注文されたPCは注文書で管理され、そこには取り付けるべきパーツが書かれている。その種類は千差万別なので、注文が入った曜日ごとに色分けして管理している。ノートPCは3営業日、デエスクトップPCは4営業日での出荷となっているが、2,000円追加すると翌営業日での出荷が可能だ。
生産は“セル方式”と呼ばれるやり方で作られており、1台のPCを1人の人が責任持って作り上げている。ただしそうすると人によって熟練度が異なってしまい、ケーブルの配置が上手でなかったりと、品質にばらつきが出てしまう。これを防ぐためにもローテーションをして、いろいろな製品に触れるようにしているとのことだ。
何回ものチェックを経て出荷されるPC
PCだが、パーツをひとつの箱に集めて、それを組み立てることで製造されている。PCを自作した経験のある人なら分かると思うが、そのやり方はまさに自作と同じだ。パーツは先ほどのシリアルで管理されているので、バーコードを読み取りながら、部品が間違っていないかを確認して取り付けていく。
こうして作られていくPCだが、コネクタはちゃんと取り付けられているか、ネジはしっかりと止められているかなど、しっかりと作られているのか全数チェックされる。それだけではなく、ユーザーの手元に届いてから壊れたりしないか、数時間のストレスチェックを経て製品は出荷されている。「DAIV」など、クリエイター向けのPCでは、Adobe RGBにしっかりと適合しているかのチェックも行なわれる。
何回もの行程を経たPCは箱詰めされ、いよいよ出荷となる。箱にも注文書のIDが割り振られていて、間違いのないように設計されている。
こうして出荷を迎える製品たちだが、実はまだ終わりではない。この中から7%ほどの製品を抜き取り検査する(ちなみに普通のメーカーだと3%程度とのこと)。その上でエラーが出たら生産部門にフィードバックされる。なお先ほどお伝えしたように、1人がすべてを作るセル方式なので、エラーが出た場合はその人が作ったPCすべてを確認検査するのだという。製品のクオリティには妥協しないという同社の姿勢だ。
生産ラインでのチェックのほか、同社ではさまざまな環境にPCをさらしてチェックを行っている。-30度から80度まで温度を変えてチェックできる恒温槽や、振動を与えて製品が壊れないかテストしたり、40度の温度にさらしてディスプレイの劣化を見ていたりするそうだ。
また最近加わったテストとして騒音レベルのチェックが挙げられる。これは冷却のためにファンが回ることで発生する音を試すというもの。
ユーザーの声を反映して改善に取り組む
工場見学終了後には現在開発中の新製品に関してプレス向けのレクチャーも行なわれた。同社の開発本部としてのミッションについては、製品企画部の今村究氏から話があった。
企画開発部門としては、市場ニーズに適合し、日本品質、新規性、高コストパフォーマンスを兼ね備えた製品を開発することがミッション。このためにさまざまな商品が開発され、市場に送り出されている。そして同社のロードマップについては、2020年前半まではすでに策定済なのだという。
これからの取り組みとして考えられているのは、まずノートPCのナローベゼル化。昨年の11月に発売された製品から行われているが、画面占有率80%以上のPCがこれからのトレンドとのこと。加えてゲーマーやクリエイター向けのノートPCでは、リフレッシュレート240Hzで、有機ELディスプレイを採用したモデルを発売していく計画だ。
またユーザーからはキーボードに対する不満がかなり寄せられたそうだ。こうしたパーツは中国で作られることが多く、日本語で使う場合には文字の配列がおかしかったり、キーが小さくて打ちづらいといった声が上がっていた。この点については2019年後半から新設計のキーボードを導入していくとのことだ。
また近年の課題について今村氏は発熱と騒音と性能低下を挙げる。これは今までよりも高クロック、高コア化されたCPUやGPUはTDP(Thermal Disign Power:熱設計電力)も高くなり、高性能を維持するためには、ここを克服することが課題となっているからだ。そのためにも冷却部品を選定して組み立て、できあがったマシンをテスト。温度を測るとともに、高負荷状態での騒音値を計測していく。こうした取り組みが、合格基準に達成するまで繰り返し行われるのだ。これをすべて満たしてようやく完成品となる。
シークレットマシンが登場!13インチのゲーミングPC
そして、今後発売される予定として、13.3インチのディスプレイを持つゲーミングノートPCが公開された。CPUはCore i7-8709G、GPUとしてRadeon RX Vega M GHを搭載するというもの。インテルとAMDのパーツを使うところがなんとも言えないが、インテルによるとCore i7-8709Gを使ったのは初めてのケースなのだとか。
今や13.3インチのゲーミングPCが世の中から消えてしまったので、このサイズのマシンを希望する声が、特にゲーム開発者から多かったのだそうだ。発売時期などは未定だが、軽いゲームであれば十分に遊べそうなので、早くテストしてみたい気がする。