「グランディア オンライン」開発担当岩田容賢氏インタビュー
人の繋がり、職業バランス、感情移入できるストーリー……
他のMMOで実現できなかった課題に挑戦!
ガンホー・オンライン・エンターテイメントは、冒険活劇オンラインRPG「グランディア オンライン」のオープンβテストを8月10日から開始した。「グランディア オンライン」は、1997年にゲームアーツが発売し好評を博したRPG「グランディア」と世界観を同じくするMMORPGだ。現在オープンβテスト中で、今夏の正式サービス開始が予定されている。
プレーヤーはパートナーと共に謎の現象で故郷の村人達が石化するという事件から逃れ、謎の女性リエーテの導きにより冒険者となる。村人を救うことができるか、世界で何が起きているのか? 「グランディア オンライン」コンシューマーゲームのようなストーリーとオンラインゲームならではの人の繋がりという2つ大きなテーマを持った作品となるという。
筆者はクローズドβテストに続きオープンβテストも少しプレイしてみたが、現状ではコンテンツはこれからという感じで、どんな方向に進むかまだわからない。転職という概念がなくスキルを取ってキャラクター性を決めていくシステムや、常にパートナーと一緒の展開など、ユニークなシステムは多数盛り込まれているが、バランスや、情報の出し方などでもまだまだだと感じさせられる部分が多い。
本作の開発担当は「ラグナロクオンライン」に運営スタッフとして参加し、「エミル・クロニクル・オンライン」でも開発担当を務めた岩田容賢氏が担当している。いくつものMMORPGを見てきて、ユーザーと開発運営を繋いできた岩田氏がこの作品にどんな想いを持っているか、インタビューを行なった。「グランディア オンライン」これからどんな方向へと進化していくのだろうか?
■ 2度のプロジェクト見直しを経ての開発。目指すテーマは「ストーリー」と「人の繋がり」
「グランディア オンライン」開発担当、開発事業部部長代理の岩田容賢氏 |
8月10日からスタートしたオープンβテストではたくさんのユーザーが冒険に参加している |
編: 「グランディア オンライン」の発表は2005年のゲームショウでした。それから4年たちついにオープンβテストとなりましたが、「グランディア オンライン」のこれまでの開発経緯を教えてください。
岩田氏: 実際に私が「グランディア オンライン」を担当するようになったのは2008年の2月からです。「グランディア オンライン」は立ち上げ当初、ガンホー代表取締役社長の森下とゲームアーツの宮路洋一さん、ジー・モードの宮路武さんが組んで開発を進める形でスタートしました。私は「ラグナロクオンライン」や「エミル・クロニクル・オンライン」を担当していてこちらには関わっていませんでした。
ゲームアーツのIPである「グランディア」をオンラインゲームとして出したいという想いからスタートしたプロジェクトですが、これは2001年から企画が始まりました。しかし当時はオンラインゲームの開発ノウハウが蓄積されていなかったため、完成形には至りませんでした。この後、初代「グランディア」で展開した物語より前の世界を描くというコンセプトで「グランディアゼロ」をガンホー取締役開発本部長の堀の下、開発がスタートすることになりました。こちらはある程度動く形のものができていたのですが、公開できるレベルまでには至らず最終的に企画から見直すことになりました。
結果として2度のプロジェクト見直しとなってしまったのですが、「グランディア」をオンラインにしたいというのはガンホーの夢でもあったため、根幹となる部分は引き継ぎつつ、いちから作り直す形で第3のプロジェクトがスタートしました。企画が固まり、IPを売却したオンラインゲーム革命ファンド1号の管理の下、開発と運営はゲームアーツとガンホーが担当して実際の作業がスタートすることになりました。このファンド売却が発表されたのが2007年の12月、そこから開発チームを作り作業がスタートしたのが2008年の2月になります。
編: 「グランディア オンライン」に関しては開発が長期化しているというイメージがありましたが、実際内部ではいかがだったのでしょうか。また「グランディアゼロ」から受け継ぐコアの部分というのは、どんなものなのでしょうか。
岩田氏: そうですね。エンジンにBigWorldを使うというのも現在のプロジェクトで決めたことであり、開発スケジュールとしてはハイペースで進む形となりました。「グランディアゼロ」は原作である初代「グランディア」との関係性を濃密に持たせる方向でしたが、私達が「グランディア オンライン」を作るにあたっては、どういう形で作っても、当時のプレーヤーさんの想いと私達が作るコンテンツでは解釈の違いがどうしても生まれてしまうのではないかと思いました。
そこで光翼人やエンジュール文明といった世界観の根幹は残しながらも、初代「グランディア」とは別の世界であるという方向で進めることにしました。そのため、設定上では共通でない部分も生まれましたが、イメージボードや、人物の配置、ストーリーラインなど一部の設定を受け継いでいます。ただ、ゲームとしては新しい「グランディア オンライン」となっていますね。
編: 1年半という開発期間の現在の「グランディア オンライン」ですが、今の時点で実装されている地域というのは構想の何割くらいでしょうか。「グランディア オンライン」でのテーマ、たとえば「冒険を楽しんで欲しい」といったものはどういうものになるでしょうか。
岩田氏: 正式サービスを迎える段階までの開発はほぼ済んでいます。しかし、こういうゲームにしたいという企画で思い描いた今後のアップデートも含む全体像から見ると、2割というところです。マップに関しては3割、4割目まで制作に入っています。今後随時アップデートしていきたいと思います。
テーマとしては、今までも私達ガンホーがやってきたのですが、「みんなでわいわいコミュニケーションを楽しむ」ということを追求していきたいと思っています。もう1つがストーリーです。ストーリーが充実したMOタイプのゲームもありますが、MMOでストーリーを追求していくゲームというのはそれほどないのかなと。一本筋の通ったコンシューマーゲームのようなストーリーラインを目指していきたいと思っています。
メインのシナリオクエストでは感情移入しやすいようにムービーやキャラクターのエモーションを入れています。「グランディア オンライン」ならではの世界観を感じてもらいたいと思っています。「ストーリー」と「他のプレーヤーと同じ時間を過ごす楽しさ」の2つがテーマになっています。プレーヤーが異世界に飛び込む「ガイアの鼓動」は世界観とコミュニケーショがを同時に楽しめるギミックです。
MMOフィールドで敵を倒していると一定の確率でパートナーが光の翼を発現させ異世界への入口が開きます。これが「ガイアの鼓動」で、そこに入ると特別なマップで冒険ができるのですが、ここの敵はかなり強いため、飛び込んだプレーヤー達は生き残るために団結する必要があります。みんなで協力しなくては生き残れない突発イベントなんです。ここで仲間を作る楽しさを体験して欲しいですね。そして3つめが「自由度」です。種族や職業の選択で後悔するようなゲームにしたくなかったんです。
「グランディア オンライン」はキャラクターに称号をつけることでスキルを習得していくシステムとなっています。プレーヤーは能力値によって称号の条件さえ満たせば、「戦士」、「魔術士」、「狩人」、「聖職者」、「格闘家」の各スキルツリーから気に入ったスキルを習得していけます。またパートナーは自由にスキルツリーからスキルを修得することができます。
このシステムはプレーヤーの意志でキャラクターの方向性が変えられるように、またサブキャラクターを新しく作るのではなく、メインキャラクターで様々なアプローチができることを目指しました。パートナーとのスキルの組み合わせでも色々なキャラクター像を追求できるゲームになっています。
編: これまでテストを繰り返している中で、ユニークな組み合わせ、感心したキャラクターを作っているプレーヤーさんはどういったタイプでしたか。
岩田氏: クローズドβテストはMMO経験者が多かったようで魔法で攻撃してから突っ込んだりとスキルの組み合わせをうまく使っている人も多かったのですが、驚いたのは「ホントにこの人は1人でやっているの?」と思わず目を疑ってしまうほど、パートナーとプレーヤーキャラクターを別々の敵に振り分けて速いペースで敵を倒している人がいたことです。他の人もスキルの組み合わせなどで感心したのですが、この方の動きは明らかに違って、驚かされましたね。
街には様々なNPCがいて、一部のNPCにはイラストと声優によるセリフが入っている。左のニーナはプレーヤーを冒険者へと導く人物。演じるのは皆口祐子さんだ |
■ パーティープレイのための状況作り、スキルによる職業バランスなどこれまでの経験を活かしたシステム作りを
称号をつけることでスキルを習得していくスキルシステム。プレーヤーキャラクタのスタイルは自由に設定できる |
オープニングに登場するリエーテ。初代「グランディア」で重要な役を務めたキャラクターだ |
突然開く「ガイアの鼓動」の入口。他プレーヤーと力を合わせることで多くの経験値を得ることができる |
編: 今回ゲームを触っている限りでは、序盤はクエストを受けてMOで狩りをしていく事を繰り返すというのが効率が良いと感じました。「グランディア オンライン」は比較的ソロ指向の強いゲームなのでしょうか。
岩田氏: 色々なタイトルを運営した経験で、サービス開始当初はどうしても狩場が混雑してしまいモンスターの取り合いになってしまいます。それに対する懸念から、プレーヤーが自由に狩りをすることができるギミックを多くしました。MOで自分のペースで狩りに行くこともできますが、MMO空間でも狩りをしてもらいたいという考えからMMO空間でのみ「ガイアの鼓動」が発動するようにしてあります。
「ガイアの鼓動」では他のプレーヤーの皆さんと協力して戦うことでレベルが一気に上げられるのですが、ソロプレイが好きという人は同じクエストを何度も繰り返してのレベルアップも可能です。ただ、パーティーで同じクエストを受けると「パーティークエスト」になり、モンスターを多く討伐する場合はさらに効率が良くなります。速度的にはMOでのパーティーがオススメですが、自分のペースでゲームが進めるようにしました。
アンケートを取って、必ずパーティー、絶対ソロ、基本はソロでパーティーも、積極的にメンバーを募集するか、などどんなプレイスタイルの人が多いかを調べたことがあるんです。結果としては、基本はソロで人から誘われればパーティーも、だけど自分からは誘わないという人が多かったんです。やはり積極的にパーティーを組もうと声をかけてくれる人が少ない。「グランディア オンライン」ではそれならば半ば強制的にパーティーを組ませるような方法も考えています。
例えば、離れた場所に行くためにある移動手段を使わなくてはいけません。この移動手段を使っているとき、敵が襲ってきます。プレーヤー達は協力しなければこの移動手段は壊れてしまい、危険な場所に乗っていたプレーヤーすべてが放り出されてしまいます。目的地に着くには歩いて、立ちはだかるモンスターを倒しながら進まなくてはいけない。プレーヤー達はパーティーを組んで進む、というわけです。パーティープレイをしなくてはならない状況、というのを提供できないかなと思っています。
ある作品で面白いと思ったのは、レベルで提供されるクエストの中に「そのレベルでは倒せない敵」が提示されているんです。パーティーで戦うことで倒せるのですが、ソロでは倒せないので、プレーヤーによってはいつまでも未解決クエストとしてリストに残り続ける。こういうシステムもパーティーを推奨するシステムかなとも思いました。
ユーザー検索システム、募集掲示板などでパーティーを希望しやすくする方法を考えています。パーティー募集の時に実は「匿名性」というのは必要じゃないかと思っているんです。その場限りの関係でもいいからパーティーを組みたい、募集をするときに「待ちぼうけで恥ずかしい」という人もいるかもしれません。募集している人がいる、その意志だけわかればいいと思うんです。
さらに乱暴な考えでは、パーティープレイを募集する待合室を作って、先着順などで自動にパーティーを組み、ダンジョンに送るという方法もありかもしれません。「なんかリーダーになっちゃったし頑張るか」くらいでもいいのではないかと思います。こういったアイデアも含めて、他のプレーヤーさんとどうやったらふれ合ってくれるかを考えていきたいと思っています。
これまで様々なゲームを見てきて突き当たる部分は一緒で、そこを何とか改善していきたいと考えていました。「グランディア オンライン」に関しては1からシステムを作っていくことができ、私達は「こういう事をやりたい」と項目出しをして、それを実現させるためのシステムを考えています。まだまだ現状ではそれが実現できていませんが、どれくらいの期間で思いを実現させるシステムを実装していくかが課題だと思っています。
編: 岩田さんはかつて「岩田教授」として、「ECO」では開発のヘッドロックとユーザーの間をつなぐためにとても頑張っていた、というイメージがあります。今回はガンホーとゲームアーツの共同開発という形でゲームが制作されていますが、「ECO」と比べ、開発スタッフとの繋がりはどうでしょうか。
岩田氏: 「ECO」では週に1~2度ヘッドロックさんにお伺いするという形でしたが、今回は「グランディア オンライン」用の部屋を借りた形で、ガンホースタッフもゲームアーツスタッフと共に、同じ場所で仕事を進めています。同じチームという意識で開発を進めています。
ガンホーのスタッフは運営の経験から長年考えていた問題点と、アプローチに対しての意見を持っています。職業間バランスの意見が多かったからこそ、好きなスキルを取れるようなキャラクターシステムにしたり、今までの問題に対処できるようなシステムを目指しています。他のゲームで実現できなかった要素を目指すなど、現在の「グランディア オンライン」はまだまだシステムは未実装ですが、将来的にはもっともっとゲームシステムを充実させる予定です。そのために拡張性を考えたデザインにしてあります。
編: 職業バランスはプレーヤー間で非常に興味深く、そして議論の起こる問題です。「グランディア オンライン」ではスキルを取っていくことでここに幅を持たせていますが、現在のバランスではスキル習得のためのスキルポイントが厳しく、結局有用なスキルを取ると戦士なら戦士のスキルしか取れないようなバランスになっています。バランスに関してはまだこれから調整されるのでしょうか。
岩田氏: スキルを取るためには称号を獲得する必要があります。基本的な照合のハードルは低く、多くのスキルを組み合わせられるシステムを目指しています。しかし、スキル習得にポイントを食い過ぎているため、まだ自由度を実現できていないのも確かですし、マルチキャラクターを目指すと中途半端になってしまいます。このバランスに関しては現在まずゲームバランスを見させていただいてから、称号を取った結果で選べる「上位称号」という概念で調整していこうと思っています。
上位称号を取ることでスキルポイントの消費が抑えられるなど、方向性を考えた育成ができるような要素を考えています。何でもできるところから、どういう選択をしたらより強いスキルを獲得できるかといった方向を模索できるシステムを考えています。スキルポイントの初期化は課金アイテムで可能になりますが、大きくバランスを変える場合など、何らかのフォローもしていきたいと思います。
編: パートナーに関してはまだお互いの繋がりや、例えば友好度などまだ演出システムの上でこれからという感じです。どういった要素を考えていますか。
岩田氏: 実は友好度というパラメーターも設定可能なのですが、ゲームとしてそのパラメーターをどう演出に繋げるかというところで明確な方向性、意見がまだ固まっていない状態です。友好度に関しては街や国のNPCに対しての友好度、冒険者としての知名度でゲームが変化するという方向を考えています。現在のストーリーは選択肢を選んでもセリフが変化するだけの一本道ですが、今後はストーリーが分岐していく要素が必要になってきます。そのとき、パートナーが決断を迫る、パートナーと考えると言うこともあるかもしれません。わかりやすいたとえだと、「『ドラゴンクエストV』でビアンカとフローラどっちを選ぶ?」みたいな選択肢があったとき、より感情移入してもらえるようなNPCやパートナーとの演出を入れていきたいです。
パートナーは現在何の伏線も説明もなく、突然光の翼を発現させて「ガイアの鼓動」への入口を開けます。初代「グランディア」をプレイしている人には「これは!」と、ゲームの設定や名場面が浮かぶと思うのですが、しかし今作が初めてという人にはわからないのであえて情報を提示していない部分もあります。もちろん原作との関わり合いでユーザーが推測を出し合うこともいいことです。そして後々そういった推測をストーリーとして回収できればいいのではないかと。パートナーとの関係性などのストーリーは考えているのですが、ユーザーに感情移入してもらえるための順番などを考えていると言うところですね。
■ BigWorldのチューニングや、ユーザーの誘導、課金アイテムなどの様々な課題。正式サービスは今夏予定
「ECO」では岩田教授としてユーザーと開発運営を繋げた岩田氏。岩田氏を始めとしたスタッフのオンラインゲーム開発の想いが、本作でどう結実するかに注目したい |
編: 現在の「グランディア オンライン」に関しては、序盤のチュートリアルクエストをクリアしたらもういきなり「レベル20になったら遺跡を越えて新しい村に行ってね」と言われてしまい、結局20レベルを目指して同じクエストを繰り返すような展開になっていますね。ちょっと展開として単調だと感じました。
岩田氏: コンテンツボリュームとして現状では充分に用意できていないところがあります。様々なクエストをクリアしていけばいつの間にかレベル20になった、という方法も、効率重視の繰り返しプレイでレベル20にするというような所までサポートできるようにしていきたいと思っています。
今はまだ各レベル帯のクエストに関しては不十分ですが、近日中のアップデートでクエストは増える予定です。他にもガイアの鼓動を体験してもらうイベント、1度しか受けられないストーリークエストは報酬も大きく、レベルアップしやすいので通常のクエストとは異なる楽しみがあると思います。
また、所持できるGOLD(ゲーム内通貨)や精霊石の合成に関してもバランスを見ていきたいと思っています。現在まだGOLDを稼ぐ要素は少ないです。アビリティを使い合成でGOLDを稼げるなど、ゲーム内での金策は考えていきたいです。ただ「グランディア オンライン」は装備を買うと強くなるのではなく、モンスターを倒して得られたり、別途購入して入手できる精霊石によって強くなるというシステムなので、お金の使い道は回復剤などになるため、お金がないためにゲームが進められなくなったというバランスにはならないようにしていきます。
協力することで大きな報酬が得られるガイアの鼓動に関しては、確率的に出現しにくかったのですが、8月12日のアップデートで倒せば必ず「ガイアの鼓動」が発生するイベントモンスターを定期的に出現させるようにしました。このモンスターを協力して倒して、みんなで異世界に飛び込んで欲しいですね。
編: 「ガイアの鼓動」に関しては、ゲーム内で「異世界にいったらみんなで協力しよう」という誘導がありません。また、称号システムと関連したスキル習得システムはユニークなのですが、プレーヤーにゲームシステムを覚えさせるシステムに関してまだ足りないと感じます。オープンβテストに移行するのは早かったのかな、とも感じました。
岩田氏: 足りない要素は多くありましたが、ゲーム開発の段階においてどうしても多くのユーザーさんの協力が必要な段階になっていました。さらにクローズドβテスト、オープンβテストを行なうことで得られるデータによって、作品のクオリティを高めたかったからです。
編: 韓国のMMORPGを日本に持ってくる場合、オープンβテストはあくまで正式サービス前のお試し期間、という印象ですが「グランディア オンライン」の場合は本当に大人数のテスト、という要素が強いわけですね。正式サービスはいつぐらいを予定しているのでしょうか。
岩田氏: 正式サービス開始時期については、改めて発表させていただく予定ですが、現状では今夏を予定しており、正式サービス開始時には、新しいマップは追加できる予定です。それ以外は、今までの各種テストの内容に対して、ユーザーの皆様からいただいたご意見を開発に盛り込んでいきたいと考えています。それをどこまで盛り込めるかによって、追加内容はギリギリまで粘りたいと考えています。
編: 「グランディア オンライン」に関してはやはりBigWorldエンジンはボトルネックになってしまっている印象があります。どうしてもグラフィックスがレガシーで、最新のMMORPGと比べて見た目で差がついている印象があります。
岩田氏: BigWorldエンジンの大きな利点はサーバーの負荷分散にあります。クライアントに関してはUnreal Engineなどグラフィックスに秀でたエンジンもあるのですが、先の利点を優先しBigWorldを採用しています。さらに独自の改造を加えたり、BigWorldの開発元に協力してもらうことでより良いゲームを目指しています。描画に関してはロースペックのPCを視野に入れた戦略なのですが、それでもまだ最適化しきれていない部分、挙動が重いという課題が厳然としてあります。
私達としてはグラフィックスの前にもっとクライアントとしての最適化を図っていきたいという段階ですね。できるだけ安定して軽いクライアントを目指していきます。BigWorldエンジンはサーバー周りは開発しやすい機能が揃っていますね。
編: 開発のウェイトとしては、見た目よりも今までのMMORPGで感じてきたことや、できなかったことを本作で実現したいという想いが開発でより大きな割合となっているという感じですね。
岩田氏: そうですね。他のゲームにある要素を組み合わせてゲームを作るという方法もあるとは思うのですが、他のゲームと違いが見えないということになるくらいならば、今までのゲームでサポートできなかった部分、オリジナルの要素を何らかの形で実現していきたい、というのが「グランディア オンライン」が目指す方向性です。
「グランディア オンライン」だからこそのストーリー、そしてせっかくオンラインゲームなんだから、人と人の繋がりを重視していきたいという方向でコンテンツをブラッシュアップしていきます。そういった部分でユーザーさんに選んで欲しいですね。キーボードで密なコミュニケーションができるというのはPCゲームがやはり強い部分だと思うんです。
編: 課金アイテムに関してですが、現在公式ページにアイテムが提示されています。気になったのはレベル5やレベル10といったゲームでは必要ないんじゃないかと思えるアイテムがラインナップされているところです。正式サービス時にこういった武器が必須のバランスになるのかと心配してしまいます。
岩田氏: あくまでラインナップの方向性、特に序盤のアイテムに関しては「ゲーム内で少しの苦労もしたくない」というプレーヤーさんに魅力があると考えてラインナップに含めてみました。ただし、課金アイテムがないとゲームが進められないようなゲームバランスにはしていません。最初にアイテムをまとめて買ってしまう「大人買い」をするプレーヤーさんもいらっしゃいますが、実際に触って課金アイテムが必要だと感じた方は適したアイテム選んでいただければと思っています。
編: それでもやはりラインナップにある以上、本来ゲームで必要のないアイテムを売り、メーカーが買ってもらう期待を持つというのはゲームのイメージとして大きなマイナスになると思います。韓国の開発者さんで「私達は生活に絶対に必要なアイテムを課金で売っているのではなく、ゲーム内の生活が豊かになるものを課金アイテムとしてサービスしている」という意見がありました。一方でMMORPGでは絶対必要な装備強化やゲーム内でほとんど手に入れられない回復アイテムを課金アイテム化するメーカーもありますが、「グランディア オンライン」はどういった方針にしていくのでしょうか。
岩田氏: 僕らも絶対的に必要なものを課金アイテムのみでサービスするのは良いとは思っていません。「グランディア オンライン」の課金アイテムは「プレイ時間の短縮」というのがわかりやすいイメージで、経験値の倍増などを考えています。他にも例えばAの街からBの街に行く、というようなときに移動時間がかかる場合、課金アイテムで短縮できるように考えています。
編: 課金アイテムのアバター要素で、「グランディア2」で出てきた武器を出す、といったシリーズのファンに訴求できる要素は考えていますか?
岩田氏: 「グランディア2」、「グランディア3」に関してはゲームアーツだけでなく、他社さんも管理するタイトルであり、「グランディア オンライン」は初代「グランディア」をリスペクトした作品となっていますので、現在は考えておりません。ですが、ユーザーさんの要望が多ければ今後検討させていただきます。
編: 最後に、ユーザーへのメッセージをお願いします。
岩田氏: 現在はテクニカルテスト、クローズドβテストで寄せていただいたご要望に関してすべて目を通して実現に向けて開発作業を進めています。しかし現状はテストに時間がかかってしまっていて、不十分なところがあります。「何も変わっていない」と思われる方もいるかもしれませんが、皆さんの意見は何らかの形で還元していきたいと思っています。
「俺が言ったことがようやくできたか」くらいの気持ちでアップデートをチェックしてくれれば幸いです。ゲーム内容は時間と共に変化するんだな、というご理解をいただけるようにやっていきたいですし、楽しみにしていただければと思います。
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Published by GungHo Online Entertainment, Inc.
(2009年 8月 19日)