インタビュー

「FFBE」からシナリオの大筋とキャラクター以外は全部変えている――「ファイナルファンタジー レゾナンス」開発者インタビュー

【ファイナルファンタジー レゾナンス】
10月22日 発売予定(Steam版は10月23日発売)
価格:
7,678円(通常版)
9,878円(デジタルデラックス版)
25,500円(コレクターズエディション)

 スクウェア・エニックスより10月22日に発売されるプレイステーション 5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch2/Nintendo Switch/PC用RPG「ファイナルファンタジー レゾナンス」(以下、FFレゾナンス)。本作は、スマートフォン向けゲームとして配信されていた「FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS」(以下、FFBE)を元に、コンシューマーゲーム機向けにHD-2D化が行なわれるなどアレンジが加えられた作品だ。

 その開発メンバーである、プロデューサーの中島啓輔氏とディレクターの古屋海斗氏、バトルディレクターの白神剛志氏、アートディレクターの齋藤昌大氏の4名にお話を伺うことができた。なお、本作のプレイレポートも別記事で掲載しているので、気になる人はぜひそちらもご覧いただきたい。

「FFBE」とはシナリオの大筋とキャラクター以外は全部変えている

――今回HD-2D化するにあたって一番こだわったポイントや苦労されたポイントはどちらでしょうか?

中島氏:まずは、イベントシーンや冒頭のビジュアルの表現の部分ですね。「ファイナルファンタジーとは何か?」と考えたときに、過去作で言うと新表現の挑戦がなければならないポイントだと考えました。HD-2Dではありつつも、新表現のドットでというところを編み出すところが一番苦労しましたね。HD-2Dの部分でいうと、ドットと背景の馴染み……このあたりは、フタを開けてみると思ったよりも大変で、以前からHD-2Dを手掛けるメンバーからは「ドット絵が浮いている」と指摘をたくさん受けました。

 ドット側での調整はもちろんですが、背景やライティングの調整など、ドットと背景の馴染みはすごく気を使った部分です。

――シーンによっては、ぼかしや被写界深度などミニチュアっぽく見える表現などもあり面白かったです。

中島氏:そのあたりもそうですが、暗くすると格好よくなるのは当たり前ではありません。僕らは「ファイナルファンタジーIX」とかも好きですが、“暗くないけどしっかり綺麗”みたいな部分を調整するのが大変でした。

齋藤氏:絵としての完成度を上げるために影の入り方や、シーンとしてよく見せるためにライトの角度などを工夫しました。ここに影が入っていた方がメリハリがあっていいよねとか、そういうのを一律全部見直したタイミングがありましたね。

 あと、ポストプロセス()という画面にかける効果で最終的な絵の見栄えがどのくらいまで上がるのかというのを、開発中盤ぐらいに一気に見直したような経緯もありました。

中島氏:1画面ずつ最適な絵作りで気になったところを、全部やったという感じですね。

:最終レンダリング前に仕上げを行なうこと

――ちなみに本作の開発はいつ頃からスタートしたのでしょうか?

中島氏:厳密にはもう少し長いですが、薄く開発を始めてから5年ほどですね。

――あ、そんな長いんですね!

中島氏:そのぐらいです。自分も当時は「アクトレイザー・ルネサンス」というタイトルを担当していましたが、それが出る前から話自体は動き出していました。そもそも「FF」の新作として、HD-2Dがいいのかボクセルがいいのかというところも含めて検討が始まったという感じです。

――本作で最も苦労されたポイントはどちらでしょうか?

中島氏:「FFBE」のアプリ版とは、シナリオの大筋とキャラクター以外全部変えています。加えてバトルシステムも全く違います。そういう意味では、「FFBE」をなぞれば簡単な部分もたくさんありましたが、ゼロから見直しています。それを生み出す苦しみみたいなのがありました。

 あとはバトルでシリーズのナンバリングキャラクターが登場するため、すべてのキャラクターにちゃんと使いどころがあるようにしています。たとえば、クラウドだけ強くしてもダメだし。すべてのキャラクターたちに魅力があり、キャラクター性が出つつ使える場面があるようにしています。白神がバトルディレクターですが、すごく苦労したと思います。

バトルシステムはFF4、5、6を強く意識した

――バトルもシンプルなようで頭を使うような作りになっていて面白いですね。

白神氏:そうですね。結構その場で考えるというのもそうなんですが、バトルに入る前に、どのようにビルドして攻略していこうかという事前の準備が大事になるような構成でシステムを考えました。

 往年の「FF」も、事前に準備するのをいかに楽しむかみたいなところがありました。そちらを再現する形で、特に「ファイナルファンタジーV」のジョブシステムなどを参考にしながら、いかに昔から「FF」を遊んでくださっているファンにも楽しんでもらえるかということを考えて構築しています。

――ゲーム全体としては、たとえば「ファイナルファンタジー」の1から6まで意識しているとかありますか?

中島氏:バトルシステムに関して言えば、4、5、6はかなり強く意識しています。ジョブシステムを進化させたものと自分たちでは思っていて、キャラクターのビルドが楽しいというのはもちろんありますが、やっぱりRPGの通常の戦闘がサクサク楽しめるところも重要だと思っています。

 そのあたりは「OCTOPATH TRAVELER(オクトパストラベラー)」のブレイクシステムなどちょっと触っても爽快で楽しい部分に加え、奥深さは「FF」1から6をかなり意識していますね。物語の部分でも「FFでああいう場面があったな」と感じられる部分や、面白さがあったなみたいなところは入っています。

――結構過去作を熱く感じる部分はありましたね。

中島氏:そうですね。これは相当あると思います。

――シリーズファンにはたまらない内容ですね(笑)。

古屋氏:そこはもともと「FFBE」がファンゲームよりなので、そのエッセンスは活かしているっていう部分がかなり強いですね。

――古屋さんの一番こだわった部分はどちらでしょうか?

古屋氏:元々「FFBE」はスマートフォンのゲームなので、あちらはステージが進行するとシナリオが見られるようになっています。ゲームジャンルそのものが違うような構成になっていたのですが、それをストーリーやドラマの骨子は変えずにロールプレイングゲームとしてプレイできるようにするという作業を最初にしました。それがめちゃくちゃ大変でしたね。

 プレイしながら見ているものではなく、自分がその世界に没入できるようにしなければいけなかったり、プレーヤーのモチベーションがちゃんと示される形に変える必要もあったりしたので。なおかつ、元々あった面白さはしっかり提案しなければいけません。そこはかなり苦心しました。実際にシナリオの順番も入れ替えながら、ゲームとしてプレイして面白くなるように変えていますね。

――今回プレイした範囲では、テンポよく遊べるようになっていて、次の展開がどんどん気になるような感じでした。

古屋氏:次の目的は何なのかというところも、気になるように完全に作り変えているという形です。

――ちなみに、オートバトルを導入しなかった理由はありますか?

中島氏:最初は、リピートの仕組みを入れて作っていましたが、そうすると考える余地を持たせないといけないなと思う一方で、オートバトルをできるようにするとシンプルなものになりあまり面白くなりません。もう少しビルドで悩めるようなバランスにすると考えた時に、オートはこのゲームにはない方がいいだろうと判断しました。

 元々は入れていましたし、入れるメリットも分かるんですけど……あまりに簡単に過ぎるとあっさりした印象になります。ストレスなく遊べるのは今のRPGゲームの主流だと思っていますが、それでだけで本当にいいのか? と思っていた部分が個人的にはあります。

――たしかに、昔のターン制バトルのいい部分を抜き出したような作りになっていましたね。

古屋氏:ただ、倍速などを入れることで現代風な遊びやすさも担保しました。

スーファミ版「ファイナルファンタジー」の頃の歯応えが楽しめるようにチューニング

――難易度は3段階で用意されていますが「Casual」モードはほかと何が違うのでしょうか?

白神氏:基本的には、敵のパラメーターがちょっと下がったり、こちらが受けるダメージが少し低くなったりします。何も考えずに倒せるというわけではありませんが、ほどよく弱くなっているっていう形ですね。

――先ほど「Normal」でプレイしましたが、そこそこ歯ごたえがありましたね(笑)

古屋氏:これもスーパーファミコンの頃の「ファイナルファンタジー」の歯応えみたいなのが、ちゃんと楽しんでいただけるようなチューニングになっています。

――たしかに、感覚としてはスーパーファミコンの「FF」をプレイしているときに近い印象はありました。

中島氏:これが一番狙っているところですね。

古屋氏:現代の「FF」も好きだけれど、あの頃の「FF」特有の味わいも好きだ、という方もたくさんいらっしゃると思います。私も、そのひとりなので、その体験を現代に提供しても面白さは全然失われていないんじゃないかなと思っています。それがこの作品の初期衝動ですし、白神を含めチーム全員でそこを目指してきました。

――皆さん、原体験はシリーズのどのあたりですか?

古屋氏:私は「ファイナルファンタジーVI」を年末年始に毎年遊んでいました(笑)。最近はできていませんが、数年前まで毎年やっていて、セッツァーのセリフとかも大好きだったりします。

――オープニングから引き込まれるような作り方になっていますもんね!

白神氏:「FF」は、スーファミ世代までだと「ファイナルファンタジーVI」です。自分の人生になったのは「ファイナルファンタジーXI」ですね(笑)。

中島氏:実際に「FF」チームだったんですよね、白神は。

白神氏:モバイルの「メビウス ファイナルファンタジー」など、別の作品でも「FF」を作っていました。

古屋氏:開発メンバーの中にも「FF」作品に関わってきたスタッフが実は何名かいまして、より「FF」らしさが増しているかなと思っています。

中島氏:僕は「ファイナルファンタジーV」が最初に触ったゲームだったので、そのあたりがかなり詰まっているかなと思います。

――スーファミ以降の方が多いんですね。

HD-2Dと比べても新しいことに挑戦している

――本作で、特にここを見てほしいポイントはございますか?

中島氏:ビジュアル面ではHD-2D作品と比べても、新しいことに挑戦しています。あとはドット表現の「シネマティックピクセル」と呼んでいますが、冒頭のオープニングムービーに注目してほしいです。あの規模でやっているものは多分ないと思います。「ファイナルファンタジー」でしっかり新表現があるドットゲームであるというところは、見てほしいですね。

 バトルのシステムも「ファイナルファンタジーV」や「ファイナルファンタジーII」などシステムが評価されているシリーズ作品並みによく仕上がっていると思います。

 あと、ナンバリングのキャラクターも出ますし、ちゃんと愛を持って作っています。ただのシリーズキャラクターが飾りとして出てくるわけではなく、それぞれのキャラクター性に合ったバトルバランスの組み方であったり、アビリティ構成であったりしています。なので、シリーズ好きな方はぜひ遊んでいただきたいと思います。

――作中において、ビジョンとはどのような扱いになりますか?

古屋氏:ビジョンは、異世界の英雄たちの想いの力を借りるという設定になっています。バトルで実際に後ろに出てきて、彼らの力を使うこともできます。戦っていく中でアビリティを取得することもできます。ナンバリングのキャラクター以外にも、一部の「FFBE」のキャラクターがビジョンとして登場します。そちらは、物語を進めるうちに出てくるサブクエストをクリアすることで手に入ります。

 ビジョンはクエストで獲得するものもあれば、異世界につながるとこから獲得するものもあるという形になっています。

――過去作の主人公キャラクターは何人ぐらいビジョンで登場するのでしょうか?

中島氏:「ファイナルファンタジー」の1から16までの主人公が出てきます。「ファイナルファンタジーXI」と「ファイナルファンタジーXIV」はオンラインゲームですが、「ファイナルファンタジーXI」はシャントットで「ファイナルファンタジーXIV」はヤ・シュトラが出てきますね。なので、16人がビジョンとして登場します。

――アート面でここに注目してほしいポイントはございますか?

齋藤氏:HD-2Dのタイトルは弊社からいろいろと出ていますが、その中でもイベント班が頑張って、カメラワークが凝っているんですよね。そのイベントと、バトル内での必殺技の演出。こちらもすごくこだわっており見応えがあるので、ぜひそちらを見ていただきたいです。

古屋氏:ドット絵のゲームでは考えられないくらいカメラが回るので(笑)。

齋藤氏:映さないでほしい背景も映っちゃう場合がありました。そこを綺麗に見せる苦労もあったので、ぜひ(笑)。

――体験としてはかなり新しかったですね。

古屋氏:はい。スーパーファミコンで「ファイナルファンタジーVI」を見たときに、こんな演出があるんだみたいな体感があったと思うので、その感じはこの作品にもあると思っています。

――今回プレイしたのはメインシナリオでしたが、サブクエストみたいなものも用意されていますか?

古屋氏:はい、用意されています。数え方にもよりますが、数は30~40個くらいあると思っていただければ。

――どのようなものが多いのでしょうか?

古屋氏:キャラクターにフォーカスしたものが多いですね。

中島氏:謎解きっぽいものなどミニゲーム系もありますね。

――やり込み要素もいろいろ用意されているのでしょうか?

古屋氏:やり込み要素はかなり深くあるので、そこはぜひ楽しみにしてください。

――元々スマホゲームだったということは、エンドコンテンツ的なものも用意されているのでしょうか?

中島氏:そうですね。エンドコンテンツ的なやりこみ要素はかなりの数が用意されています。

――ゲームとしては、最後はエンディングを迎えるような形になっているのでしょうか?

古屋氏:そこはかなりこだわっていて、本作単体で十分楽しめるエンディングになっています。

――第1章だけで5時間ぐらい遊べるということは、全体としては相当なボリュームになっているのでしょうか?

中島氏:30時間から40時間ぐらいを意識して作っています。メインシナリオだけ遊んだときに100時間かかる、といったものではないです。

古屋氏:やり込みを入れたら、もうちょっと遊べますね。

――ちょうどいい感じですね(笑)。

古屋氏:当時のロールプレイングゲームと同じぐらい……それよりはちょっと長いかもしれないですけど。

「FFBE」の面白い要素をコンソールでも遊んでほしい

――なぜ「FFBE」をリメイクすることになったのでしょうか? 開発初期はアップデートが続いており、2025年10月にサービスが終了したと思いますが、これらの展開はある程度織り込み済みでしたか?

中島氏:アプリとは開発チームも全然違いますし、部署も違います。そのためアプリ側の状態を見て、ゲームの内容とか変えたということは一切ありません。純粋に「FFBE」が持っている素晴らしい要素を、新作の「ファイナルファンタジー」として遊んでいただくという思いで制作してきたので、アプリに関しては知らなかった部分もあります。

 僕は「FFBE」に携わっている時間が長くて、シナリオやお客さんの熱量も含めて「FFBE」の面白い要素や「FF」ファンの方々に楽しんでいただける要素がたくさんあると感じていました。「FF」らしい、今遊びたい、今遊んでいただくべき要素がたくさんある作品だったので、それをコンソールで遊べるようにしたいというのが、純粋な思いです。

――ちなみに、「ファイナルファンタジー レゾナンス」というタイトルはどのような意味で付けられたのでしょうか?

中島氏:レゾナンスは共鳴という意味なのですが、これが物語的にキーワードになっています。あとクリスタルビジョンと共鳴し合うことで主人公たちが強化されていくという意味でも、共鳴がキーワードだなと思っています。

 バトルシステムの必殺技が、システムとしてレゾナンスという技になっており、ゲームとも繋がっています。最後にレゾナンスというワードが、このように終わりに繋がってくるんだというところも、エンディング周りに入れています。

――全体のキーワードになっているんですね! ビジョンを背後に出そうというアイデアなどから生まれたのでしょうか?

中島氏:これは白神のアイデアや、みんなで考えたりしました。アプリ版では主人公たちは単体で出てきます。ビジョンとして出すのは今回の新しい部分で、主人公たちとの組み合わせで補い合って、バトルの深みが出るというところから思いついた点です。

――最後に、本作の発売を楽しみにしているファンに向けてメッセージをお願いします。

中島氏:本作はタイトルを意図的に「FFBE」と関係ないものにしています。これも社内で様々な議論がありました。この品質、この内容、アプリとの変わり具合であれば、「FF」のドットの新作として新しいタイトルを付けて出して良いだろうという判断に至っています。アプリベースではありますが、かなり作り変えてコンソールのドット絵「ファイナルファンタジー」として恥ずかしくないものになっています。ぜひたくさんの方に遊んでいただけたらと思っています。

古屋氏:「ファイナルファンタジー」は、誕生してからこれまで、チャレンジを続けてきた作品だと思います。今作の「レゾナンス」もいろんなチャレンジが入っています。バトルにしてもイベントにしてもそうですし、アートにしてもそうです。そうした「ファイナルファンタジーらしさ」をかなり詰め込んだつもりなのでその部分をぜひ注目していただきながら、お待ちいただければと思います。

白神氏:バトルの観点ですと、アビリティの数が豊富にあります。ビジョンを手に入れた時に、「どういうアビリティを覚えることができるんだろう」といったところがリストで見えます。懐かしいものもあれば、戦術としても過去作で培った経験から閃く戦い方もできるので、ぜひ自分なりのものを見つけて楽しんでもらえればと思います。

齋藤氏:キャラクターや敵もすごい数が出てくるので、いろいろ見つける楽しみや集めて育てる楽しみという、RPGの面白いところが詰まっている作品だと思います。そうしたところを、ぜひ楽しんでいただきたいなと思います。

――本日はありがとうございました!