インタビュー

NEXON、次期主力MMO「Tree of Savior」開発者インタビュー

作りたいものとユーザーが欲しいもののギャップを埋める難しさ

11月12日~15日開催

会場:韓国釜山BEXCO

NEXONブース内にある「ToS」の試遊コーナー

 韓国NEXONは韓国釜山で開催されているG-STAR 2015に「Tree of Savior(ToS)」のプレイ動画をまとめた最新トレーラーを公開した。「ToS」は、「ラグナロクオンライン」を開発したキム・ハッキュ氏が手掛けたWindows用MMORPG。韓国では12月からオープンβテスト(OBT)がスタートする予定で、日本でも11月11日から第2次クローズドβテスト(CBT)の募集がスタートしている。

 「G-STAR 2015」のNEXONブースにある「Tree of Savior」のコーナーは一般日当日には前に進むこともできないほどの大混雑。プレイするとオフィシャルイラストのジグゾーパズルか、オリジナルサウンドトラック、アートブックのいずれかが抽選でもらえる。どれもお金を出しても欲しくなるようなクオリティで、力の入れようを感じた。

 今回、会期中に開発会社IMC GAMESの副社長キム・セヨン氏の合同インタビューが開催された。珍しくなった2DのMMORPGを開発した理由や、CBTでユーザーから寄せられたフィードバックでゲームがどう変化したかなど、興味深い話を聞くことができたので、ぜひ読んでみて欲しい。

【「Tree of Savior」G-STAR 2015 トレーラー】

ユーザーの要望を受けて1Dを実装。クラスの数も53に縮小

IMC GAMESの副社長キム・セヨン氏

――韓国では12月にOBTが始まるということで、まもなくプレイできるのに会場には3時間待ちの大行列ができていて、韓国での期待値の高さを実感できました。韓国での「ToS」への反応を教えてください。

キム氏: 12月からからOBTが始まりますが、多くの方が期待しています。私たちも開発者として意欲を持って準備をしています。韓国ではCBT3以降テストサーバーを3か月以上もオープンしており、選ばれたテスターの方にテストしてもらいました。その反応を見ると、このゲームをとても気に入っているという人がいる一方、今の最新トレンドには合わないのではないかという反応もいただきました。おそらくOBTでも同じ反応になるのではないか思います。まだプレイしていないプレーヤーからはいよいよ「ToS」が出るんだという反応がありますが、長らくテストサーバーに参加しているユーザーからは、まだ直すところがあるのにもうOBTをスタートするの? という反応もあります。OBTではたくさんのパッチを入れてより安定化したプレイを提供できるかと思っています。

――「G-STAR 2015」 では試遊台と新トレーラーが公開されましたが、この2つの魅力と見どころを教えてください。

キム氏: 正直に言うと試遊台に3時間並んでプリセットされたキャラを20分操作することに果たして意味があるのかなと思ってしまいます。というのは、以前に日本のネクソンでユーザー体験会を開いたのですが、この時にはレベル1からキャラクターを成長させていき、大変楽しんでいただきました。その時、プリセットされたレベル120のキャラを私てダンジョンを攻略してくださいといった時、皆さん非常に戸惑いを感じていてゲームになかなか没入していただけなかったことがあるからです。「G-STAR 2015」のブースでは長らくテストサーバーでプレイしていただいたスーパープレーヤーの方にプレイしていただいて、それをスクリーンに映していますので、長くプレイしている人がどういったプレイをするのかを鑑賞していただくのが1つのポイントではないかと思います。トレーラーは短い時間の中に非常にたくさんのメッセージが含まれています。今後アップデートされる内容。12月に追加される2回目のスタートポイントについて。乗って楽しむアトラクションなど、色々な要素が入っています。

大きな観覧車のような乗り物
細い急流を一気に滑り降りていく
畑はギルドの特性としてもつことができるらしい

――乗って楽しむというアトラクションについて詳しく教えてください。

キム氏: マンゴスチンで作られた船で川を移動したり、ロープを使って修道院に落下したりするシーンがあったと思いますが、それは単に移動につかわれるだけで別途操作する必要があるものではありません。一方、大きな観覧車やケーブルカーが出てきたと思いますが、それはもちろん乗って移動もできるし、移動しながらチャットしたり、その中でバトルもあります。モンスターが一緒に乗ってくるようなシーンもあります。

――ムービーの最後の方に植物を育てているシーンがありましたが、あれは生産系のコンテンツですか?

キム氏: テンプラーという戦士系のクラスが実装されるのですが、そのクラスはギルドを作って運営できます。テンプラーのスキルは主にギルドを運営するためのもので、ユーザーにバフをかけたりといったものが中心になっています。ギルドは成長するとギルドポイントが貯まります。それを生かしてどんなギルドに育てるのかを決めることができます。トレーラーの中で畑に水をやっているシーンがありますが、あのギルドは自分たちの特性を農業と決めています。農業では作物を育てて種を取り、また最初から成長させます。成長の中で水をやるのですが、あまりやりすぎてしまうと腐ってしまいます。畑はギルドのアジト内にあるので、もし農業をやりたい場合には農業スキルを持っているギルドに入れば楽しんでいただけると思います。農業以外にも、工業や牧畜業のギルドも用意されています。牧畜業のギルドを選んだ場合には販売されているコンパニオン以外にユニークなコンパニオンを選んでそれを成長させることができます。

――日本の第1次CBTでは6ランクまでの全44クラス、韓国で始まるOBTでは全何クラスの何ランクまで入るのでしょうか?

キム氏: 当初は、80クラスを10ランクまで作る計画でした。実際、クラスのデザインは80すべてが決まっています。しかしCBTを通じて、ユーザーは私たちが考えているほどたくさんのクラスのランクを上げていくことを好まないということがわかってきました。クラスチェンジを10回入れれば楽しんでもらえるだろうと簡単に思っていた自分たちがバカだったことがわかりました。ほかにもCBTを経験して、パーティプレイを強要するとプレーヤーはあまり愉快な思いをしないということもわかってきたので、テストサーバーではソロプレイが可能になるようバランシング作業をしています。その中の各クラスのスキルが増えました。ですので、当初考えていた80クラス10ランクから考えを改めまして、韓国のOBTでは53クラスが7ランクまでになります。53クラスの中の1クラスは隠しクラスです。隠しクラスといっても転職の条件をややこしくしているだけで、すべてを隠しているわけではありません。トレーラーにある程度ヒントが入っています。

――2Dのゲームは3Dのゲームに比べると、開発に時間がかかりそうですが、そういった開発の大変さが今後のアップデートに影響を与える可能性はありますか?

キム氏: 最近2Dのグラフィックスで作られるゲームは少なくなっているいます。確かに3Dに比べると開発スピードは落ちますし、不利なところも多々あるかと思います。その中でも、今までの3Dゲームになじめないユーザーのために本作を開発しようと思いました。開発スピードを懸念されていると思いますが、見た目がクラシックだからと言って製作手法もクラシックなわけではありません。3Dと融合した最新技術でかなり自動化されているところもありますので、そのあたりはご安心いただければと思います。

今後はフィールドでの戦闘とインスタンスダンジョンが共存することになる
2Dならではの美しいグラフィックス。技術の進化により昔よりも効率的に開発できるようになっているらしい

――確かに「ToS」はインスタンスダンジョンが中心の最近のMMORPGの中ではクラシカルな印象があります。敢えてそういったシステムにした理由はなんでしょうか?

キム氏: おっしゃった通りインスタンスダンジョンを繰り返すゲームが主流になっています。その中で寂しさを感じるゲームをたくさん見てきました。人が集まってお互いに影響しあったり、時には助け合ったり、邪魔しあったりする懐かしいゲームが1つくらいあってもいいのではないかと思いました。ですが、テストサーバーを運営していた期間中、ユーザーから他のユーザーとの関係でストレスを受けるので、インスタンスダンジョンを開いて欲しいという声がありました。そこでテストサーバーにインスタンスダンジョンを作ってみたところ、わりといい反応を得たので、これからはマッシブとインスタンスダンジョンを共存できると考えました。これからはインスタンスダンジョンも考えていきたいと思います。本来私たちが目指していたゲーム性も重視していきたいので、折衷案はどこだろうと悩んだ結果が現在の様子になっています。今まではわりと成功しているのではないかと考えています。

――個人的な話でも韓国の一般的な話でもいいが、日本では2DのRPGそのものになじみがあることと、「ラグナロクオンライン」の大ヒットがあったので2Dで遊びたいという気持ちがあると思います。韓国のユーザーは2Dのゲームにどういう感情を抱いているものなのでしょうか?

キム氏: 韓国でもなぜ今更? という反応も正直在ります。逆に今までこういうのがなかったので、やっと出るんだという反応もいただいております。率直に言うと、私自身「ToS」の開発で一番気を付けていたのは、13年前の「ラグナロクオンライン」を思わせてしまうのではないかということで、なるべく差別化を意識して開発しました。個人的な話ですが、13年前に「ラグナロクオンライン」を作った時にも、今更こんな懐かしいスタイルのゲームを、という反響がありました。10年後に私たちが2Dオンラインゲームを作ったとしてもやはり同じような反応があるのではないかと思っています。

――日本のCBTからなにかフィードバックされることがありますか?

キム氏: 日本でCBTが行なわれていた間、Twitchやニコニコ生放送で日本のプレーヤーさんのプレイをずっと見ていました。日本のユーザーがプレイをするとき、「そこでダンジョンに入らずに転職したほうがいいよ」とか、口出ししてた人がいたのですが、それは実は私です。フォーラムを通じて皆さんからいただいた意見は、韓国とそれほど違いはありませんでした。バグに対しての要望やユーザーインターフェースの改善、クエスト中心のゲーム内容が自分には負担だという意見もいただきました。半角にしたら入力ができなかったという苦情もいただきましたので、それは改善しています。日本のユーザーさんからいただいたフィードバックもきちんとゲーム内に反映して改善しています。私が自分で観察して見つけた日本のユーザーさんのプレイパターンがあります。ほかの国に比べて日本のユーザーさんは、全体チャットをあまり使わないということがわかりました。ほかの国ではラジオじゃないかと思うほど全体チャットがずっと流れていたのですが、日本のみなさんはパブリックな空間では「これやってもらえませんか」というような助けを求めるものしかなかったのですね。そういう日本ユーザーの特殊なパターンを見て、まったく知らない人にパーティプレイを強要するのはよくないことなんだということを、日本サーバーでのテストを通してすごく感じました。それをゲームに反映していきたいと考えています。

――「ToS」のビルドは全世界で共通のビルドを使っていると聞いています。日本のユーザーに向けて、日本の文化に合わせたアイテムなどは実装されるのでしょうか?

キム氏: 日本版限定のアイテムはありませんが、日本を題材にしたクラスが3つ入っています。そして日本を素材にしたアイテムもいくつかあります。それは日本のお客様のためというよりも、私が個人的にいいと思って入れたものなので、世界共通に提供されると思います。

――日本でも第2次CBTが始まりますが、第1次CBTとの変更点を教えてください。

キム氏: 実は日本で行なった第1次CBTは韓国の第3次CBTに比べてもやや修正されたバージョンを提供していました。そのため、韓国のユーザーが感じているバージョンごとのギャップに比べると、日本のユーザーさんが感じるものはそれほど大きくないかもしれません。ただし、日本版でも第2次から入る新しいスキルがありますし、もともとあったのになくなるスキルもあります。あるクラスは交代されています。そういうところがありますので、ぜひ日本のユーザーにはたくさんのご意見をいただきたいです。また、放送を積極的にしていただければ私はぜひ入ってみたいと思います。

――ありがとうございました!

(石井聡)