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ネクソン、MMORPG「Tree of Savior」ユーザー先行体験会レポート

描き込まれたグラフィックスと、高いアクション・戦略性を持った意欲作

8月30日開催

 先日、日本でのサービスを決定したMMORPG「Tree of Savior」。「ラグナロクオンライン」、「グラナド・エスパダ」を手がけたキム・ハッキュ氏の最新作として注目されている作品だ。2Dグラフィックスによるキャラクターと、3Dのフィールドのかわいらしく緻密な絵柄が大きな特徴だ。

キャラクター作成画面。緻密なグラフィックスが特徴だ

 「Tree of Savior」は韓国では3度目のクローズドβテストを行なっており、日本でも10月に5日間ほどのクローズドβテストを予定している。本作は日韓でテストを重ね、じっくり作り込んでいくという方針のようである。今回は、抽選で選ばれた20人以上のユーザーと一緒に本作を体験し、運営担当のネクソンの今濱隆一郎氏、そして開発元のIMC GAMES 副社長/Tree of Saviorディレクター キム・セヨン氏とユーザーの座談会に参加した。

 「Tree of Savior」は“新しいゲームをつくろう”という挑戦心を強く感じさせる作品だ。きちんとしたアクション性、ユニークなスキルの数々、ボス戦やクエストでの凝ったギミック……韓国の新しいMMORPGの息吹を強く感じさせる。今回はゲームの感触と、座談会で明らかになった要素を紹介していこう。

【体験会の様子】
体験会はネクソン本社で行なわれた

巨大ボスに、派手な大技スキルを当てろ! アクション性の高い戦闘

キャラクターの操作はカーソルキーで行なう
いくつかあるスキルを選択して強化していく
エナジーボルトは周囲の敵をまとめて攻撃できる強力なスキルだ
序盤から登場する巨大ボス。かなりの数が存在するようだ

 「Tree of Savior」はかなりアクション性の高いゲームだ。ゲーム画面はクォータービュー形式で、フィールドには様々なモンスターが闊歩している。序盤から多くの敵に追われ、これに対処するためにめまぐるしく動き、戦っていくことになる。

 本作の操作法はカーソルキーでキャラクター移動、Zが基本攻撃、Xがジャンプ、AやQの段のキーは、アイテムやスキル使用のショートカットとなる。最初は「ソードマン」、「アーチャー」、「ウィザード」、「プリースト」の4職業から1つを選ぶ。

 キャラクターモデルに関しては、髪型で差別化していく。今回は女性のウィザードを選択してみた。髪型は、ポニーテールやツインテールもあり、アクションで激しく髪の毛が動いたり、「休憩」の時にキャラクターの向きを変えると座り方が変化したり、かなり力が入っていると感じた。

 キャラクターを作成するとゲームがスタートするが、序盤からかなりストーリー性、演出に力が入っていると感じた。「Tree of Savior」の世界は7人の女神がいたが、彼女たちは1人、また1人と姿を消してしまった。そして最後の女神が消えた後、街の中心に巨大な木が生え、そして各地で魔物の動きが活発化したようだ。プレーヤーは夢に出てきた女神の啓示を受け、冒険に飛び込むこととなる。最初は街を守る兵士達の仕事を手伝うこととなる。

 重要なNPCはイラストが入り、プレーヤーに印象づける。敵の来襲した時などはカットシーンが入るし、戦っているときにNPCが手助けしてくれる。またかなり早い段階からクエスト用の巨大ボスとの戦いも体験できる。コンシューマRPGをプレイしているような感触だ。フィールドや街のグラフィックスも美しく、モンスターは恐ろしさとかわいらしさを感じさせる。またBGMもかなり凝っている。「Tree of Savior」はその世界観と、“センス”に強い魅力を感じさせる。

 今回プレイした「ウィザード」は強力な遠距離攻撃スキルである「エナジーボルト」を持つ。スキルには詠唱時間があり、発動までには時間がかかるが、放つと周囲の敵にも大ダメージを与える強力な技だ。反面杖の先から光弾を放つ通常攻撃は威力がかなり低く、序盤の敵でも何発も当てないと倒せないため、敵がまとまるように逃げ回り、距離をとってからエナジーボルトでまとめて倒すという戦い方となった。

 ウィザードは敵を眠らせる「スリープ」や、数十秒間敵のダメージを反射する「リフレクトシールド」、敵を弱体化させる「レサジー」といったスキルがある。スリープは設置型の魔法でうまく活用すれば敵を複数足止めし、エナジーボルトで一網打尽にするという戦い方も可能だ。本作のキャラクターは「ベースレベル」と、「ジョブレベル」の2つのレベルがあり、ベースレベルを上げたポイントでステータスを上げ、ジョブレベルのポイントでスキルレベルを上げていく。

 ボスは耐久力がある上、ザコモンスターを何匹も呼ぶのでかなりの熱戦になる。常に動き回りザコから逃げ、敵の大技を避けながら戦っていく。ウィザードの場合敵へのターゲットを固定するctrキーを活用するのがコツとなる。ボスはこちらの動きを制限するトラップなども使ってくるので、特にソロでの戦いは、スキルの活用などアクションと戦略性を求められるのが楽しい。歯ごたえも楽しめるゲームバランスだと感じた。

【スクリーンショット】
序盤から歯ごたえのある戦闘が楽しめる
たどり着いた街クラペダ。冒険の拠点となる。
ソロプレイは1時間半ほどだが、様々なフィールド、巨大ボスを見ることができた

ギミック盛りだくさんのダンジョン。炎を使う上級職も体験

多彩な炎のスキルを使う「パイロマンサー」を体験
ダンジョンはMMOとMOの空間がある。MMOフィールドではパーティメンバーがどこにいるかわからない
NPCのグリタと共にダンジョンを進む
サークルを出して、その中でモンスターを倒す

 今回の体験会では、レベル150のキャラクターを使った中級者向けダンジョンのパーティプレイも体験した。筆者のキャラクターはウィザードから転職できる「パイロマンサー」で、炎の魔術を得意とする。スキルはかなり強力な上、派手で、使っていて楽しかった。

 面白いのは「設置型」のスキルが多いところ。「ファイアーボール」はその場に燃え続ける炎球を設置する。これは敵のトラップを破壊するのにかなり便利だった。「ファイアーウォール」は、カーソルを指定していくことでプレーヤーが思い描いたとおりに炎の壁を設置できる。横一列に壁を置いたり、敵を取り囲むように設置できるのが楽しい。ド派手なのが「ファイアーピラー」。数十秒間強力な炎の柱を設置することができるのだ。

 このパイロマンサーで挑んだのが「女神カビヤ」から始まる連続クエスト。女魔術師グリタと共にダンジョンを進んでいくのだ。クエストのギミックはかなり凝っていて、魔術装置を作動させそのリングの中で敵を倒したり、一定の区間にランダムで吹き出す蒸気を集めるといったものもある。サブクエストでもボスが登場したり、パーティでかなり濃密なダンジョンプレイが楽しめるのだ。

 やはり盛り上がるのはボス戦だ。面白かったのは他の職業のスキルも「設置型」が多かったこと。「パラディン」の回復スキルも床にポイントを設置し、傷ついたキャラクターはそこに行くことでライフを回復させるのだ。「レンジャー」は様々な罠を設置でき、敵を足止めするスキルもあった。筆者も設置型のスキルを使いそこに誘導してもらえるように戦った。敵の攻撃をかわしながら時には肉薄してスキルを設置するのはかなり楽しかった。

 ただ、開発中のためか、今回のバージョンでは足りないと感じた部分も多かった。ミニマップにパーティメンバーが表示されないのでおいて行かれたりはぐれることも多かったし、MMOフィールドはキャラが重なって仲間を見失ってしまった。クエストもフラグ管理は各キャラごとのため、一緒に狩りをしていても進行度に違いが出て見失ってしまった。こういった点はその後の座談会で「改善して欲しい点」として挙げられていた。

 また、プレイ後に明らかになったのだが、今回はボスが「サラマンダー」ということもあり、全体的に火属性の魔法に耐性のある敵が多く、ザコモンスターの中には炎で回復してしまうものもあったとのこと。パイロマンサーガ役立たずになるダンジョンだったのだ。「モンスターに弱点などの特性を持たせ、攻略要素を持たせたい」というコンセプトは賛成するが、ある特定の職業が役立たずになってしまうのはおかしい。実はこの仕様は韓国のテストでも不満が上がり、ウィザード系は「炎と氷」の様に逆の属性のスキルも同時に取得するといった方向も考えているとのこと。

 職業は「Tree of Savior」の大きなセールスポイントとなる。今回は体験できなかったが、本作はキャラクターの転職とスキルの取得に大きな特徴があり、キャラクターは1次職をベースに、2次職、3次職といった形で様々な上級職に就いていく。この選択肢は広く、このとき取得するスキルで大きくキャラクター性が変わっていくという。生産に特化した転職なども可能で、多彩なキャラクタービルドが楽しめるとのことだ。今後のテストや、正式プレイで掘り下げていきたい要素だ。

 「Tree of Savior」は開発者達の“気合い”を強く感じさせるゲームだ。設置型スキルを中心においたアクション性の高い敵との駆け引き、美しく描き込まれたグラフィックスと豪華なBGMが生み出す世界観、なにより2Dにこだわりを持って取り組んでいる姿勢がうれしい。様々なユーザーに興味を持ってもらいたい作品だ。
じた。

【スクリーンショット】
様々な炎のスキルを使える
ダンジョンの1階のボスはサラマンダー。設置系のスキルを駆使して撃破
サブクエストでもボスが出現。かなり攻略のしがいのある場所だ

さらなるゲームのディテールが明らかに。さらなる成長を目指す運営と開発

 座談会には、運営担当のネクソンの今濱隆一郎氏、そして開発元のIMC GAMES 副社長/Tree of Saviorディレクター キム・セヨン氏が登壇し、体験会のユーザーと言葉を交わした。

運営担当のネクソンの今濱隆一郎氏
開発元のIMC GAMES 副社長/Tree of Saviorディレクター キム・セヨン氏
座談会では、様々な質問、要望が寄せられた

 ユーザー達は代表者が感想を語ったのだが、グラフィックス、BGMへの評価が高く、ギルドへの興味や、エンドコンテンツの具体的な仕様に関して興味が高かった。筆者も一緒にパーティを組んだ人たちと言葉を交わしたが、パーティプレイへの興味が高かったと感じた。ギミックをきっちり盛り込み戦略性の高い戦いもしたい、というユーザーの意見も見られた。

 “要望”に関しては、やはりパーティプレイに対しての足りない部分、ミニマップでのメンバー表示や、画面上でパーティメンバーだとわかりやすい仕組み、さらにクエストのパーティメンバーでの共有が欲しいという意見を出す人が多かった。パーティ要素に関してはキム氏は「日本でのCBTにはパーティメンバーの表示だけでも間に合わせたい」と答えた。一方、操作に関しては、カーソルキーではなくWASDで動かしたい、カスタマイズさせて欲しい、そしてゲームパッドを使わせて欲しいという要望も多かった。

 PvP、対人戦要素に関してはキム氏は「5対5の戦略性が高いものを考えている」とのこと。PKなどの片方が望まない形での対人戦は考えてないということだ。ユーザー達からはRvRや攻城戦などの要素も欲しいという意見が出た。会場のユーザーは半分以上が対戦に積極的だった。

 現在実装されている対戦要素としては「カードバトル」がある。モンスターを倒して得られる「モンスターカード」を使って行なうもので、お互いがカードを出した時点でルーレットが回り勝利条件が決定する。条件は「足が多いモンスターが勝ち」、「名前が多い方が勝ち」など非常にシンプルで、気軽に楽しめるものになるようだ。

 カードに関しては特定の職業のスキルに密接に繋がってくる。ソーサラーは悪霊を使役するスキルに悪霊のカードが必要になる。カードはキャラクターの強化にも使え、同じカードを重ねると☆が増えて効果が強化されるという。

 協力要素、コミュニティ要素に関しては、ギルドの専用の拠点や、共同生産要素、ギルドメンバーのみが挑戦できるボスといったものもあるとのこと。ちなみにギルドを創設するには「テンプラー」に転職したキャラクターが必要となる。また「ユーザーランキング」という要素があることもあきらかになった。

 アバター要素に関しては、キム氏は「職業のバリエーションや、特別なイベントなどで差別化をしていきたい」と語った。「Tree of Savior」のキャラクターは2Dで描かれているため、1つの装備の変更でキャラクターパターンを書き直していたら作業量が膨大になってしまう。職業や騎乗生物などのペットでバリエーションを増やしていくつもりだという。

 韓国での情報を集めていたユーザーもいて、「人数制限があるクラスがあると聞いたが、そういうのは入れないで欲しい」という意見も出た。これはどうやらデマらしく、きわめて達成条件が難しいクラスがあるという情報が、間違って伝わったもののようだ。条件を満たすNPCがランダムで様々な地域に出現するので、彼らを追いかけるのが難しさに繋がっているとのことだ。

 サービス形態に関しての質問も出た。今濱氏は「現在はまだ考えていない」と答え、さらにまず「Tree of Savior」というゲームを、いかにより面白いものにしていくのかに注力したいと語った。今濱氏は「このゲームは他のゲームとは毛色が違います。完成というゴールを迎えるのではなく、成長を繰り返していくようなゲームになるんじゃないかと思っています」と言葉を重ねた。

 対するユーザーも熱かった。「正直、ネクソンの運営には不安がある。もっと安心してユーザーがプレイできると言うことを強調して欲しい」という意見も出た。またMMORPGというジャンルの衰退を心配しているという意見も出た。「だからこそ新作である『Tree of Savior』には期待している」とユーザーは今濱氏やキム氏に強く語りかけた。

 今濱氏は自身がずっとオンラインゲームに関わっていたことを語り、「Tree of Savior」に関しては開発者たちの技術の向上と、オンラインゲームへの理解により、お互いのオンラインゲームへの理想や想いが理解し合えると言うことを強調し、運営と開発が協力してオンラインゲームを作っていけることをユーザーに語った。

(勝田哲也)