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MMORPG「Tree Of Savior」CBTレポート
ヒールをトラップにも使用!? 新しいヒーラー像を体験
(2015/10/7 00:00)
「Tree Of Savior」は、韓国IMC Gamesが開発し、ネクソンが日本サービスを展開するアクションMMORPGだ。韓国のゲームクリエイターとして知られるキム・ハッキュ氏が手がけており、2Dグラフィックスのキャラクターと3Dグラフィックスのフィールドという見た目から、MMO古参のファンからも注目されている作品だ。今回は10月1日から5日まで開催されたクローズドβテスト(以下CBT)に参加したので、レポートしたい。
本作は見た目も含めてちょっと懐かしい、言ってみれば「古くささ」も感じる作品だと感じた。しかし、ゲームの感触としてはオーソドックスさもあるが、演出面やスキルの使い方、グラフィックスなどに斬新さがあり、かなり楽しくプレイできた。オススメしたい期待のタイトルである。
オーソドックスな世界観に、斬新なシステムを盛り込んだ挑戦作
「Tree Of Savior」は、“女神”が住む平和な世界を舞台にしている。しかしある時、突如巨大な木が出現すると同時に、人々を守ってくれていた女神が姿を消し、それ以降世界にはモンスターが出現するようになってしまった。本作ではプレーヤーキャラクターは、女神の1人である運命の女神「ライマ」から夢で啓示を受け、消えた女神たちと木の謎を解くための旅に出ることとなる。
本作では最大4人までのキャラクターが作成可能だ。選択可能な職業はソードマン、クレリック、アーチャー、ウィザードの4種類。「Tree Of Savior」の大きな特徴は“転職”にある。キャラクターは職業レベルを15まで上げると、上位職に転職できる。魔法使いでは火や氷などの属性がつけられるようになるし、クレリックも回復特化から肉弾戦強化と様々な方向性が用意されている。どう育てていくかを考えるのが、本作の大きな楽しみだ。
今回、著者は回復魔法が利用できて、近接攻撃も可能なクレリックを選択してみた。外見は髪型のみの選択だが、バリエーションはかなり豊富に用意されており、目移りしてしまった。結果、頭の両サイドに丸くおだんごを盛る感じの髪型「ダブルバーン」を選んでみた。
ゲームの基本操作はカーソルで移動し、Zで攻撃、Xでジャンプ。スキルやアイテムはスロットに装備することで各キーによるショートカットを使う。またゲームパッドにも対応しており、メニュー操作以外のほとんどの操作はゲームパッド上で行なえる。今回はゲームパッドを中心にプレイしてみたが、パッドでの操作感はの極めて良好だった。ただし、クエスト上特別なアイテムの利用などでキーボードが必要な操作もあり、この辺りも何らかのボタンに割り当てが可能ならよかったとも感じた。
クレリックはメイスやハンマーなどの打撃武器を装備できるほか、魔法スキルが利用できる。クレリックの初期スキルは、味方の回復が可能な「ヒール」のほか、状態異常を回復する「キュア」、敵の攻撃ダメージをブロックできる「セーフティゾーン」、敵の防御力をダウンさせる「デプロテクテッドゾーン」の4種類が選べる。この中から使いたい魔法のスキルレベルを上げていくことで、能力を強化していく。
驚いたのはいずれのクレリック用魔法も他のプレーヤーキャラクターや敵などに直接かけるのではなく、地面に魔法陣を描くことだ。そのため魔法を使った直後は地面に魔法陣が描かれるのみで、何も起こらない。その魔法陣を踏んだ瞬間に効果が発動するのだ。自分自身を回復したい場合は、1度地面にヒールの魔法陣を描き、その上を通過する必要がある。他の仲間を回復したい場合も、近くにいく必要はなく、適当に魔法陣を描き、そこを通過してもらうことで回復できる。
もう1つ驚いたのはヒールやキュアなどの回復系の魔法が同時に敵に“ダメージ”を与える魔法としても機能する点だ。クレリックの場合、打撃攻撃が基本と考えていたので、序盤はずっと通常攻撃のみで敵を倒していたが、ヒールの魔法陣を敵が踏んだところ、大ダメージを与えることができた。
つまり、敵の真下にヒールの魔法を使うことで、即座に魔法陣が発動し、ダメージを与えられるため、ちょっとしたゼロ距離の攻撃魔法としても利用できる。他にも、敵の動きを予測して事前に魔法陣を敷いておくことで、踏んだ瞬間にダメージを与えるトラップのような使い方もできる。この辺りはこれまでの魔法のイメージと違っていて、非常に新鮮な気分で楽しめた。ただし、クールタイムが長めで、ヒールの場合2回使うと一定時間は利用できなくなるので計画的な利用が必要だ。
次から次と登場する巨大ボス! スキルを駆使して立ち向かう
ゲームの進行は特定のNPCと会話をすることでクエストを受け、達成することで報酬を貰うオーソドックスなスタイル。クエストでの依頼は目的地に移動してアクションを起こすタイプと、特定のモンスターを指定された数だけ退治するタイプなど様々な物が用意されている。クエスト目標を達成した際には、アイコンをクリックするだけで依頼者の元にジャンプできる機能もある。
メインクエストはエリアごとにいくつものクエストが連動しており、例えば初期に訪れるクラペダの街で騎士団長ウスカと話をすると、鉱山に行って鉱山内部から救済の証を手に入れてくるように指示が出る。単純なクエストかと思いきや、鉱山に向かう道すがらに難所があったり、鉱山に着いてからも内部に入るために必要な条件をいくつもクリアしたり、といった感じで小さなクエストをコツコツ進めていくと、気が付けば鉱山に入り、鉱山の最深部で必要な石板を回収する、といった形で進行していく。
エリアも薄暗い鉱山の内部や洞窟、遺跡などもあれば、草木が生い茂り、色鮮やかな花が咲く山の中など、バリエーションは豊富なので、次のエリアがどんな場所かと、次々とメインクエストを進めたくなる作りになっている。また各エリアの主要な場所には女神像が設置されており、これがワープポイントとして機能し、街などへの帰還も簡単に行なえる。洞窟内などでも同様の効果を得られるアイテムもある。
クエストの中には巨大ボスとの戦闘もある。巨大ボスはカットシーンとともに、画面上に巨大なモンスターがいきなりドーンと出現するド迫力の演出だ。ボス戦が始まると、周囲のプレーヤーたちは表示されなくなり、ボスと自分のみが表示される状態となり、固定エリア内しか移動できなくなる。
巨大ボスはメインクエスト以外のサブクエストでも多く登場する。全体的に攻撃力が高いので、考えなしに突撃すると、あえなく死亡してしまう。敵の動きをよく観察し、攻撃タイミングを読みつつ、回避し、隙を見て攻撃するような戦い方が必要となる。
クレリックが単独でボスと戦う場合、ボスになるべく接近した場所にセーフティゾーンの魔法陣を作り、そこにこもってボスを打撃で削りつつ、体力に余裕がある場合はヒールの魔法でダメージを与える。魔法が使えない状態の時は敵の様子を見つつ、魔法が使えるようになるまで、ヒットアンドアウェイで削りを入れつつ、回避し続ける。クレリックの場合、アイテムなしでも回復できるので、多少時間はかかるがタイミングさえ間違わなければ大抵の敵は1人で戦える。
クエストをクリアすると報酬がもらえるが、ユニークなのは経験値をカードとしてもらえることだ。序盤のうちは特にこのアイテムを使わなくてもレベルがサクサクと上がるので、個々のタイミングでこのカードを使うことでレベル上げの調整が行なえるのは便利だ。
また、メインのストーリーとは別に依頼されるサブクエストでも同様に経験値カードがもらえるので、なるべく多くのサブクエストを受けていくとレベル上げもスムーズだ。サブクエストの依頼は主要なNPC以外にも街を守る衛兵など多く存在する。なるべく多くのNPCと会話してサブクエストを拾っていくのがいいだろう。
ステータスや特性を強化し、理想のキャラクターを育て上げる
キャラクターのレベルが上がると1レベルにつき1ポイント、ステータスが強化できるようになる。ステータスの強化については自分のプレイを振り返って必要そうな部分を上げていくのがいいだろう。著者は打撃武器をより有効に使いたかったため、最初のうちは力ばかり上げていたが、後になってくるとヒールの方が重要になってきたので、慌てて知力を強化したりしていた。
キャラクターのレベルとは別に、職業ごとのクラスレベルもあり、これが上がるとスキルポイントが獲得でき、スキルのレベルを上げることができる。スキルのレベルはクラスチェンジしない場合、最大5までしか上げられない。こうしたスキルはレベルを上げるほかにも、街にいるNPCのクラスマスターにお金を払うことでさらに強化することもできる。クラスごとに用意された特性を強化可能で、クラスごとに強化ポイントは異なる。
例えばクレリックの場合、ヒールの魔法の敵へのダメージ量のみを上げたり、状況に応じてヒールの魔法をダメージを与えず、ヒール専用にするような特殊な強化が行なえる。魔法以外にもクレリックなら敵を確率で一定時間意識不明にできる「スタン」の効果を付与することも可能だ。
スタンはかなり強力なスキルなのでガンガン上げたかったが、残念ながら最大3レベルまでしか上げられなかった。そこでヒールのダメージ量増加のスキルを上げられる限り上げてみた。これはかなり手応えを感じた。スキルの特性の付与は現在のバランスでは結構有効だった。
今回はパーティプレイも試してみた。他のプレーヤーとパーティを組むことで、ストーリーを一緒に進めることができる。今回、2人でパーティを組んで色々なボスなどに挑戦してみたが、1人で戦う場合と比べて、効率が段違いに向上した。
特にクレリックの魔法はヒールやセーフティゾーンなど他のプレーヤーの補助にも使えるので、ボスから離れた場所にヒールの魔法陣を配置して回復してもらったり、セーフティゾーンに一緒に入ることで、仲間を防御したり、逆に自分だけがセーフティゾーンに入り、敵の眼前で壁のような役割を果たし、後ろから援護射撃してもらうなど、1人でボスに対峙する場合と比べて、戦略性も大幅に向上するのだ。コンビによるゲーム進行はかなりオススメである。ソロ以上に戦闘や、クエスト進行の楽しさが大きく膨らんだ。
しかし、パーティプレイでは、開発中ならではの足りないと感じる部分もあった。仲間のプレーヤーを見失った時に合流する手段がないことや、他のプレーヤーがクリア済みのサブクエストを、未クリアのプレーヤーが受けようとしても受けられないなど練り込みが必要だと感じさせるところも多かった。本作はパーティプレイも楽しいゲームであり、パーティ向けのシステムも充実してもらいたいところだ。
どの職業に変えるかが悩ましいクラスチェンジ
本作の大きな特徴であるクラスチェンジは、詳しく語っておきたい。「Tree Of Savior」では、クラスレベルを15レベルにすると「クラスランク」が上がり、基本職をベースにより上位の職業にクラスチェンジが行なえるようになる。
たとえばクレリックの場合だと、クラスランク2では、より豊富な補助スキルが使える「プリースト」や、魔法攻撃スキルが多い「クリヴィス」へのチェンジが可能となる。これらを選ばずこれまでと同じ「クレリック」を再度選ぶことで、今まで5レベルまでしか上げられなかった各スキルを更に強化し、10レベルまで上げることが可能になる。
今回は、上位の新しい職業を試してみたい思いもあったが、あえてクレリックを再度選択し、クレリックを極めてみることにした。ヒールの魔法を更に強化して、どこまで使えるようになるのか見てみたかったからだ。また、最初にクレリックを選んだもう1つの理由が、実はクラスランク4で登場するモンクを試したかったからなので、それまではクレリックを強化するのも面白いと考えたからだ。
同じ職業のクラスを強化する場合でも、新しい追加スキルが登場する。クレリックの場合、クラスランク2では自分の気配をけすことで、モンスターに気が付かれないようにできる「フェイド」が追加となり、クラスランク3では自身のダメージを他のプレーヤーキャラクターに肩代わりしてもらえる「パトロンセイント」が追加される。なお、同じ職業は最大3回までしか選択できないので、1つのスキルにおいて最大のレベルは15ということになる。
今回のCBTではクラスランク3まで到達できたが、いずれもクレリックを選択した。そしてヒールとセーフティゾーンの2つのスキルを最大限まで上げて冒険を続けてみた。通常のクラスチェンジでは見た目が大きく変わるし、新たなスキルが多く追加されるので目新しい部分が多くなるが、同じ職業の継続は見た目の変化がないため正直、地味な印象。それでもその後のボス戦などでダメージをより多く与えられたり、回復量が増えているなど、その効果は大きい。
ただ、個人的に残念だったのは最高ランクまで上げてもスキルの使用回数とクールタイムが変わらなかった点だ。正直、ヒールの魔法を回復と攻撃の両方で使う場合、1度に使える回数が2回という制限が非常に厳しく感じたが、レベルを上げてもその制限が変わらなかったのは少しがっかりした。1度に置かれる魔法陣も5つ以上に増えることはなく、あまり変化が感じられなかった。スキルに関しては、「使い勝手の向上」と「威力の増大」のバランスもプレーヤーで調整できるようになればいいと感じた。調整を希望したい。
今回「Tree Of Savior」をプレイしてみて、改めてファンタジーMMORPGの魅力を再認識できた。ファンタジーRPGはこれまでにも非常に多くのタイトルが世に出ており、戦士や魔法使いが、女神を助ける本作の基本要素はいささか“定番”という感じではあるが、この世界観があるからこそ、キャラクターを動かして敵を倒すというアクションゲームとしての根幹部分の作りこみと、斬新なスキルシステム、自由度の高いキャラクタービルドが活きてくる。定番の設定が「味」となり、本作の楽しさをより一層膨らませてくれている。やっぱり「ファンタジーMMORPG」はいい。
CBTということでまだ物足りない部分や調整が必要と感じる部分も多々あるが、今後のアップデートで洗練されてくれば、より多くのユーザーに受け入れられるタイトルに成長することは間違いない。今後も引き続きチェックしていきたい。